2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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大野誠一氏(以下、大野):ここからは「カイシャの未来研究会」のコアメンバーに入っていただいてのパネルディスカッションです。まず4名の方々に、パート1でご登壇いただきます。これ、全員並べますと終わらない人数になってしまうので……。
(会場笑)
大野:2つに分けてやらせていただくんですけれども、まずパート1にご登壇いただくみなさまに一言ずつ簡単な自己紹介をお願いしたいと思います。ではいちばん遅れてきました島田さん、お願いします。
(会場笑)
島田由香氏(以下、島田):遅れてきました(笑)。みなさま、こんにちは。
会場:こんにちは。
島田:ユニリーバの島田です。安藤さんの作られた、そして大野さんの率いられている「ライフシフトジャパン」は、ものすごく魅力的なタイトルの会社だと思います。また、今日は、みなさまがどんなふうに人生を送られているのかという(お話をお伺いするという)ことで、すごく楽しみにしています。自己紹介になっていませんが、よろしくお願いします。
(会場拍手)
大野:はい、ありがとうございます。では、田中さん、お願いします。
田中研之輔氏(以下、田中):こんにちは、法政大学の田中と申します。私はキャリアデザイン学部で10年教員をしています。2年ぐらい前から(ライフシフト・ジャパン株式会社の)大野さんにお越しいただいて、法政大学で特別講師として授業をしてもらったり、いろいろなお話をさせていただいていました。
(この前のお話で紹介されていた)リンダ・グラットンさんの『LIFE SHIFT』という本と、あとは『WORK SHIFT』もですね。うちの学部の方針にもすごく近くて、個人的にも関心があり、この間、読み込んでいます。
あと、会長の安藤さんも学部授業で毎年、講演をしてくださっています。ライフシフト・ジャパンとキャリアデザインはすごく親和性が高いだろうということもあり、ご縁をいただいて、非常に楽しみにしてまいりました。よろしくお願いします。
大野:はい、よろしくお願いいたします。
(会場拍手)
では、次は宮城さん、お願いします。
宮城治男氏(以下、宮城):はい、ETIC.の宮城です。私は、1993年の学生時代にちょうどこの仕事を立ち上げたんですけども、当時の学生が「自分で会社を作る」ということを、キャリアのひとつとして意識するということはまったくなかった。そういうことを、大学の教育プロセスの中で教わるといったことが当時はまったくなくて。
起業をするのはもちろんですけど、ベンチャーに就職するというのも、誰もそんなことを積極的な選択肢として考えなかった時代だったんですけれど、そこでたまたまご縁があって、起業という生き方をして、それを同世代の人たちに伝えていくというようなことをやっていました。大野さん、『アントレ』を創刊されたのは何年ぐらいですか? 90……。
大野:97年。
宮城:97年。アントレが創刊される頃というのは、本当に創業ということ自体がまだ縁遠いもので、すごく狭い村のできごとだったんですけれど、それが今、これだけの世界に広がっているということをとても感慨深く思っています。
一方で、2000年以降ぐらいから、私としては、だんだんビジネスの創業を支えるエコシステムやマーケットができていったことで、今後しばらくはそれを支える基盤の成長が必要であろうと思い、ソーシャルビジネスや、社会起業家と言われる人たちの挑戦を支えていくということで、これまで1,000社ぐらいのソーシャルビジネスの立ち上げを応援してきました。
大野:はい、宮城さんでした。ありがとうございます。
(会場拍手)
大野:じゃあ最後に、和光さんお願いします。
和光貴俊氏(以下、和光):和光でございます。こちらでご紹介いただいたように、今はヒューマンリンクという、親会社である商社の人事部が100パーセント出資をしている機能分社の社長と、それから親会社の人事部を兼務しているという立場でございます。
おそらくこちらにお声がけいただいたのは、大企業に所属している者という立場と、それからその機能分社である子会社の経営をしているという立場で、いろいろなジレンマやパラドックスに日々対面していますので、そのあたりを生の声としてフィードバックさせていただいて、みなさまと一緒に考えていければと思っていますので、よろしくお願いいたします。
(会場拍手)
大野:はい、よろしくお願いいたします。
大野:それではパート1ということで、今、豊田から100年ライフのイメージ調査のご説明をさせていただいたんですけれども。リンダ・グラットンさんの本は、僕もすごくインパクトがあったんですが、やっぱりどこか「イギリス人が書いた本だよな」というようなところも一部あって。日本人があれを読みかえていくときに、ポイントになるようなところが何かないのかなぁと思っているんですけれど。まず田中先生、キャリアデザイン学部の立場でいかがでしょうか。
田中:これ、すごいですよ。ノー打ち合わせです(笑)。
(会場笑)
田中:端的に言って、「自分の人生なんだ」ということを、みんながどれだけ思えるかというのが、ポイントだと思うんですよね。欧米系の論文を読んだり、本を翻訳したりする経験もあるんですけれども、リンダ・グラットンさんの本では、もう1冊のほうの『WORK SHIFT』にもけっこうポイントがあるなと思っています。
グローバル化する社会の中において、激変していく人生100年を考えなきゃいけないので、日本社会というのは超少子高齢化の先頭をひた走る世界的なロールモデルだと。だから、リンダ・グラットンさん自身が日本社会を追いかけていきたい、学んでいきたい、と。序文にも、彼女は、これから人生100年時代を本格的に迎える先駆的なケースとして日本社会を見ているということが書いてあります。
私自身があの本を読むときに意識しているのは、彼女の『LIFE SHIFT』の序文です。これは、大野さんたちがまとめられた本の結びにも書かれていますし、先ほどの豊田さんによる調査報告にも出ていたんですけれど、人生100年時代を、なんだか重苦しく考えてしまう日本社会ってあるじゃないですか。
そこをどうやってブレイクスルーしていくのかが、認識を転換していくのか、いわば、LIFEに関する認識をもいかにSHIFTしていくのかが、おそらくこれから我々の研究会の軸でもあるかなと思っています。
どういうことかと言いますと、人生を自分の人生として生きるようになって、100年時代をワクワク楽しくマネジメントして、無形資産を貯めながらデザインしていけるのであるならば、それは100年もあるんだから、今までの短い人生よりも豊かなんだよ、というコモンセンスが持てるようになればと思うのです。ちょっと短めですけど。
大野:はい。短めにありがとうございます。
田中:ははは(笑)。
大野:私どもも「人生の主人公」ということを事業展開上のキーワードにして考えているんですけれども。島田さんはかねがね「パーパス(purpose)」ということ、生きる意味というより、生きる目的というものについて、いろいろなところで発信されてらっしゃるんですが、それとの関係で感じられていることがあればよろしくお願いします。
島田:すっごい無茶振りですね(笑)。
(会場笑)
田中:大野さんっぽい、おもしろい(笑)。
島田:はっきり言えば、やっぱりパーパスってひと言で言っちゃうんだけど、これがあるかないか、これについて考えてみたり感じてみる体験があるのとないのとでは、本当に大きく違うと思っています。
今日ここにいらっしゃるみなさまは、少なくともやっぱり何かしらの関心を持っておられる方々だとも思うし、もうすでにご自分の生まれてきた理由や、今この1秒1秒を何のために使うのかということを考えていらっしゃる方が多いと思います。けれども、そうじゃない方もものすごく多いなぁというのが、日頃感じていることなんですよね。
私、3週間ぐらい前ですかね、宮崎のある神社に行った時に、天からのひらめきが降りてきまして。
(会場笑)
パーパスってなんなのかと。ずーっと言い続けてきているけど、「パーパス」と「ミッション」と「ビジョン」は、それぞれどう違うのか、自分の中でもまだなんとなくモヤっとしてたのが、すごくはっきりとした瞬間があったんですよね。……ほら、私また、話が長くなるのでこれで終わりますけど。
(会場笑)
パーパスというのはやっぱり「Being」、あり方そのものだと思っています。それで、ミッションは、何をやっていくのかという「Doing」。ビジョンは、作り上げたい世界なんですよ。だから、みなさまが自分の人生にどんなビジョンを持つか。ビジョナライズというのと一緒で、やっぱりイメージを持つ。そして、それを実現するためにやっていくことがミッションで、そこでどういうあり方をするかがパーパスなんだろうなと思っています。
大野:はい、ありがとうございます。島田さんとは思えない短いコメントですね。
(会場笑)
島田:努力、努力したから(笑)。
田中:完璧ですよ(笑)。
大野:次は宮城さんにちょっとお聞きしたいんですけれど。さっき自己紹介にもありましたが、90年台前半にETIC.を立ち上げた時には、学生さんには起業というような選択肢はほとんどなかった。個人的には、やっぱりライフシフトは、マルチステージということを考えると、選択肢が豊富な社会というのが望ましいんだろうな、というふうにすごく思うんですけれども。
宮城さんは、ETIC.の活動を25年続けてこられてきて、その中で、とくに若い世代かな、ずいぶん選択肢が変わってきたのかなと思うんだけれど、実際に日々現場で活動されている中で感じている変化など、そのへんはいかがでしょうか?
宮城:ありがとうございます。25年活動をやってるんですけど、毎年大学生とか、最近だと高校生にも向き合ってるんですね。私は次世代が好きなので、今の話で言えば、次世代にとっての人生の選択肢を豊かにしていきたいというか、「豊かなのに気づく」ためのアシストをしたりしているわけですけれど。
そういうふうに定点的に見ていて、今の島田さんのお話にかぶせると、(次世代の若者たちが)パーパスということにものすごく率直に向き合おうとしているという感じがするんですね。なので、彼らを見ていると、その点で違和感がある会社には行かなくなる。それはもうはっきりしているんですね。
なので、そのパーパスの中に、例えば「お金を稼ぐ」ということが入る人もいるでしょうし、「社会の課題を解決する」ということのほうを高いウェイトに置く人もいる。そういうことがけっこう当たり前に選択されるということが、もう彼らを見ていると、ネイティブというか。我々「ソーシャルネイティブ」って言ったりもするんですけど。
ソーシャルというのは、ソーシャルネットワークだけじゃなくて、ソーシャルビジネスなどのソーシャルなんですけれど、普通にそういうことを選択できる。90年代、私がこのETIC.を始めた頃は、起業をする選択もなかったし、2000年の頃には社会起業家という選択もなかったです。
宮城:私が社会起業家というテーマを掲げたのは、90年代に創業支援をやっていて、まさにそのパーパスがない。ないというか、スルーされていると思ったんですね。それで、IPOした後にすごく苦悩してる経営者だとか、ITベンチャーなどで棚ぼたでお金を得てしまったが故に、心の病になってしまうような人もけっこう見ていて。
彼らはパーパスを持って起業するという準備をしなかったので、IPOした後に、何をしていいのかわからなくなっちゃう。そのわりに株主からめちゃめちゃ追い立てられるみたいなことが起きるのを見たりしてきました。
その中で、このソーシャルというのは、パーパスをそのまま形にする生き方をしていいんだということを伝えたいと思って始めたんですけど、そっちのほうが自然になってきていて。今度は逆に「ビジネス回帰」じゃないですけど、ソーシャルから入ってきて、「やっぱりそれはビジネスでやったほうがいいな」というのが大きい。そういうふうに、若者の世代からすると、選択肢が広がってきているという感じがしています。
大野:なるほど、やっぱり若い世代はすごく変わってきている。勇気づけられた感じだなぁという気もするんですけど。和光さんは今度、先ほど逆に自己紹介にありましたように、大企業の三菱商事の人事部という立場で仕事をされていく中で、まぁ宮城さんの目線と対極というわけでもないんですが、社会課題みたいなことと、企業や大企業に入ってくる人たちの変化についてはいかがですか?
和光:先ほど豊田さんの発表の中にあったものの中で、「アンラーン(unlearn)」というキーワードがものすごく大事だなと思っていまして。一度学んだりフレームとして入ったものや、ステレオタイプな認識を外すのは、言うのは簡単なんだけど、ものすごく難しいんです。でも、やっぱりそこがないと、なかなか次のステップは踏み出しにくいんだろうなと思っていて、会社の中でもそれをすごく考えているところです。
ずっと大企業の論理で来た人たちなので、どこかのタイミングでそれを変えようとすると、会社を辞めるという選択肢に直結してしまい、それは馬鹿げた選択だという結論になってしまうのが今までの常識だったわけです。でも「そうじゃないんじゃないの?」とか、「そもそも辞めなくてもできるんじゃないの?」とか。そのあたりは、なかなかシフトするのも難しいんですけど、大事な要素かなと思っています。
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