社会人としてクズになってからじゃないと始まらないものがある

小倉ヒラク氏(以下、小倉):それで僕、ギーク担当なわけですけど。

小野裕之氏(以下、小野):ギーク担当なわけだけど(笑)。

青木耕平氏(以下、青木):どう見ても、そうだよね(笑)。

小倉:でも僕は意外に、わりとヒップスター的、プロデューサー的なところから始まっているんです。今は完璧ギークなんですけど。もともとクリエイティブディレクターだったから、もうちょっと幅広くやってたんだけど、自分がギークであるということに気づいてみると、バランスを崩さないと、できないことがあるんだよね。

すごく具体的な話で言うと、僕は、やっぱりメールとかちゃんと返したほうがいいな、というタイプだったの。メールが来たら、夜中じゃなければちゃんと2、3時間以内に返すとか。もう最近ね、メール、ぜんぜん返さないんだよね。

(会場笑)

小倉:ぜんぜん返さない。

青木:そうね、僕らでさえ、メッセンジャーへの回答を期待してないもんね。

小野:「おー、来た」みたいな(笑)。

青木:「お、来た。来ちゃった」みたいなね。

小倉:社会人として、クズになってからじゃないと始まらないものがある、っていう。

(会場笑)

小野:ギークの場合ね。

ギーク不在のビジネスの苦しさと分業の大切さ

小倉:そう。だから、クズにならないと始まらないものがあるんだっていうことに、僕は遅まきながら気づきましてですね。やっぱ、そこぐらいからじゃないと見えないもの、って実際にあるんで。

バランスを崩しまくって、本当になんかこう、中断されたくない。なにかを掘るときにノイズを入れたくないから、ノイズをシャットアウトしていくと、どんどん社会人としてはクズになっていくんですけど。

それを延々続けて、1ヶ月とか2ヶ月とか1年とか続けて、初めて見つかるものがあるんだけど、それが見つかったときに、もうクズだから、どうしようもないんだよね。

小野:(笑)。

小倉:それで僕、やっぱりなんだか自分は器用だから、じゃあ今度は、クズとして見つけたものを成立させる側へと、スイッチを切り替えられるかなと思ったんですよね。

小野:一人の中でね。

小倉:そう。でもね、やっぱり本当にクズになると、スイッチが切り替えられないんですよ。というかね、スイッチが切り替えられる程度のクズさだと、何も作り出せないから。

小野:スイッチを壊すという(笑)。

小倉:そう、ぶっ壊すっていう。器用な自分をすべて破壊するようなところまでじゃないと、至れないものがあるということがわかった時に、やっぱり分業は大事だということに気づいたわけですね。

青木:だって、そういうの見つけるとワクワクするでしょ。

小野:します、します。あ、この人、壊れてるって。スイッチ壊してる、って。

だって、本当にギーク不在のビジネスほど苦しいものないな、って思いますからね。源泉から泉が湧き出ていないのに、掘り出して供給しなきゃいけないのって、すごく辛いですよね。

ないところに動機を求められることが一番辛い

青木:やっぱり、今の世の中で一番コモディティ化してない資源って、動機じゃない?

小野:それ、本当よく言うんだよね(笑)。

青木:自分の中に動機が(ない)、僕なんか本当に空っぽだから。なんにもないから。だから、動機を求められるのが一番辛いよね。やっぱり一番辛いのって、たぶん社員とか新しく入った子に「青木さん。この会社、どういうふうにしていきたいんですか?」って、すごくキラキラした目で、聞かれたりとかするじゃないですか。「いや、知らんから」っていう(笑)。

小野:(笑)。「なるようになるわ」って。

青木:なるようになるわ、とか。なんて言うのかな。誰かの中にある動機を利用して生きてる、というのがあるじゃない? 人の動機に乗っかって生きてるから、自分で動機を自家生産する人がいると、やっぱり自然と吸い寄せられて、そこから汲み出そうとするところがあるよね。

それは濃淡があるというか、動機の有り無しの濃淡がすごくあるから。

小倉:小野っちはさ、なんか動機無尽蔵みたいな人と一緒にやるの、得意じゃん。

小野:得意ですね、はい。

小倉:どうなの、大丈夫なの。

小野:何が大丈夫なの(笑)。僕はハスラー役。たぶん、ハスラーかけるヒップスター、みたいな感じかな。アイデアもわりと出せるので。軸足がありながら、ちょっと他のところも一丁加味して。でも、ギーク性は本当にない感じです。

小倉:そうね。

小野:(笑)。だから、なんだろうね。……その、一緒にやっていけないと生活できないんだっていう(笑)。

青木:(笑)。

小野:普通の動機。でも、プロデュースっていうと、なんだかこう、いじくって冒険させてみたり、「いや違うよ。今はそれを作りたいとか言ってるけど、本当は違うから。とりあえず、旅していこうよ」って、プロデューサー側が言うような感じがけっこう。まあ、そういうスタイルもあるのかもしれないですけど。

でも、実際にやってることって、もうちょっと「待つ」みたいなこととか。一緒に「ねえ、どうしよっかねえ」とかって悩んだりとか(笑)。

青木:(笑)。

小野:「じゃあ、今度一緒にこういうとこ行ってみようか」みたいなことをやったり。わりとこう、導くというよりは、ちゃんと一緒に悩めるかどうか、みたいな。

それで、違う時は「ぜんぜんよくわからない」というふうに話をする。ちょっとギーク性が上がると、基本チヤホヤされがちになるじゃないですか(笑)。だから、そんなときに冷静に、スッと一言どこかでは言うのは、たぶん自分の役回りなんだろうな、という感じのお付き合いですかね(笑)。

自分で抱えるよりも、人に頼むほうがうまくいくことがある

小倉:この企画をやってる時に僕が気づいたのは、自分が今回やりたい企画(「Fermentation Tourism NIPPON ~発酵から再発見する日本の旅~」)には金がかかると。すげえ大変だと。じゃあ、とりあえず小野っちを呼んで、お金を作ってもらおうと思って。小野っちに頼んだら、本当にお金を作ってくれて。

小野:いや、そんな作ってないけど(笑)。

小倉:「そっか。僕、今まで自分で抱えてきたけど、人に頼んでよかった」と思ったよね。それで「発酵でしょ」みたいな。小野っちに相談したら「発酵だから、スポンサーメニュー85万円でいいじゃん」みたいな。

小野:(笑)。

(会場笑)

小倉:そういう資本主義的なものとぜんぜん違う考え方でつけるんだ、というような。そこから、じゃあ85万円に見合う価値というものを小野っちが作ってさ。それでメニューを作って、ちゃんとやってますね。

小野:やってますね(笑)。あと半年。

小倉:はい、がんばりますけど。いやだから、そういうのがすごいなと思って。

小野:いやまあ、そういうのが本業なんで(笑)。

小倉:じゃあ、いい感じかな。さ、じゃあいこうか。もうなんか、温まったよ。僕らの話したいこと、この3人で話せることはだいたい終わった。さあ、じゃあ一人目いきましょうか。

青木:こういう時に、最初に手上げる人ってすごく感謝されるよね。

小野:さっき、練習もしましたし。

青木:練習したし。でも絶対いるのよ、こういう時にいたたまれなくなって、手上げちゃうって人がね。

小野:一人目のね、質問したいなって。

青木:したいというよりは、ほぼ責任感。

小野:俺がやる、私がやるってことでしょ。

青木:そうそう、絶対いるのよ、こういう時。

小倉:いない? じゃあ、僕ら3人で打ち上げ行っちゃう?

(会場笑)

小野:今日ね(笑)。

小倉:あ、いらっしゃいました。

青木:どうぞどうぞ。

小野:長く居ていただいてもいいですし、本当にぱっと戻っていただいてもいいので。

小倉:すげえメモしてる。僕らの話ってメモする価値あることあるの?

小野:(笑)。

イベントの登壇者のタイプが移り変わっている

質問者1:よろしくお願いします。僕ね、このイベントに来たのは5年ぶりくらいなんですよ。前に1回来たことがあって。

青木:へえー。

小野:ほとんど初回ぐらいにやった時ですかね。

質問者1:そうですね。それで、今回ちょっと、ヒラクさん。生ヒラクさんを初めて見に来た、という感じで。

青木:ああ、なるほど。

小倉:本当、恐縮です。すいません。ただのビール飲んでるおじさんですよ(笑)。

質問者1:僕、ブログで「元才女おばさん」を読んで。

小倉:あれはねー(笑)。

青木・小野:(笑)。

小倉:みなさん、検索しないでください。

青木:それだけは検索しないで(笑)。

小野:「話を聞いてもらえるおじさん」と「元才女おばさん」だけは、検索しちゃダメです(笑)。

質問者1:横石さんもさっき、あんまり言わないで、みたいな話があったんですけど(笑)。

青木:(笑)。

質問者1:そんなこともあって。

小倉:「女の敵」っていう苦情メールがいっぱい届いたブログ記事ですね。

小野:(笑)。

質問者1:そんなのもあって来ました、というところです。で、ちょっと、どう……。

小倉:なんでもいいよ。

青木:なんでもいいですよ。

質問者1:えーっとですね、たぶんみなさん、同い年ぐらい……?

青木:実はね、ぜんぜん違うんですよ。

小倉:(注:小野氏と)同い年……。

小野:35です。

青木:僕46なんで。12個ぐらい上ですよ。

質問者1:僕、なんか久々にこのイベント来て、普通の人がすごく増えたなってイメージがあるんですよ。話す人が、というか。僕が来た時は、滝本(哲史)さんでしたっけ? そうですね、京大の先生で。

青木:あー、はいはい。それは狂ってるわ(笑)。

質問者1:そうなんですよ。「僕は今日は嫌われようと思ってここに来た」みたいなことを言ってて。でも今日来た時に、みなさんの語り口とか本当に普通の人だなというか。……すみません。

青木:いえいえ。

質問者1:そういうところは、すごくイベントの移り変わりみたいに感じました。それで、さっきのスター性のような話もあったじゃないですか。でも、そういうのじゃない、地味と言ったら大げさですけれども。そういう華みたいなものを思いましたね。

社会人としてはダメでも、大きな仕事を取ってくる同僚

小倉:ちなみにふだんは、どんな活動をなされて? お仕事とか。

質問者1:ふだんは、僕は普通のサラリーマンです。

小倉:どんな業種……、差し障りなければ。

質問者1:ラジオを作っている会社なんですけど、新規事業でインバウンドの仕事をしてます。今、働いて1年ぐらい経つんですけれども、外国人と一緒に働いてるんですよね。それで、さっきの社会人としてダメという感じの話……。これちょっと、残らないようにしたいんですけど(笑)。

小倉:今日、残る。ログミー入ってるから(笑)。

質問者1:同僚で、社会人としてはぜんぜんダメなんですけど、すげえでかい仕事取ってくるやつがいるんですよ。

青木:あー。

質問者1:それを見てると、さっきの話じゃないですけども。なんて言うんですか、すげえな、みたいな。よく何かを変えたよそ者とか、馬鹿者とか言うじゃないですか。そういうものって、きっと通じてるし。たぶん、シャッフルする人って必要なんだろうな、ということをすごく思ったので。すみません、質問というか……。

青木:いえいえ、質問でなくても。でも、今まず一点は……。

小倉:大丈夫。もう、この足掛かりで、おじさんは大丈夫。

(会場笑)

質問者1:大丈夫ですか、よかったです(笑)。

小倉:この足掛かりで大丈夫(笑)。

青木:昔に比べたら、昔出ていた人たちに比べたら、僕らがだいぶ普通だっていうのは、これ一点だよね。

質問者1:はい、すみません(笑)。

青木:いえいえぜんぜん、それはいいんですよ。もう1つは、すっげえダメなとこあるんだけど、すっげえできるやつがいるというね。そういう投げ込みがあった、っていう感じですけど。

その普通って、だんだん普通になってるって。よく僕らでも「最近の大学生とか、すごくちゃんとしてない?」みたいな話するじゃん。自分たちの頃って、すごく変なやつがいっぱいいて、僕は彼らよりも、さらに歳を取ってるから。

僕らの頃のイメージがどういう感じかというと、同い年ぐらいのやつが働き始めるじゃないですか。仕事がんばってるやつって「うわ、ダサっ」って感じだったんですよ。「なに、こいつ活躍してんの?」みたいな。「恥ずっ」みたいな。

小野:(笑)。

青木:まだバブルの残り香の頃。だからなんか、そういう系を出してくると恥ずかしいみたいな。たぶん、なんとなく今でもそうなっちゃうんですよね。そうすると、なんだか変なことしてみせる。それがもう、マウンティングが逆に向いてるような。

だから「いや俺さー、朝行ってだいたい午前中は、ほとんど喫茶店で昼寝してるんだよね」というようなことが、ちょっとこうマウンティングになったり。

質問者1:わかります、わかります。

青木:だから、なんだかマウンティングの種類が変わっただけかな、という気もするんですよ。

小倉:ひどい極論だな(笑)。

(会場笑)

真の変態は紳士の仮面をかぶっている

青木:いやいや、つまりどういうことかというと、変な人って「変だから変」という感じはしないんですよね。変になろうとしてるというか、そういうきらいがある。

まあ、変な部分もあるんですよ。だけど「変さ」で勝負しようとしているのを感じることがあって。なんていうんですかね、新手のマウンティングかな、みたいな(笑)。

小野:(笑)。

小倉:僕の友達に、元SM嬢がいて。それで、鞭でいろいろなやつを叩いてるんですよ。今はもう普通の堅気に戻ったんだけれど。彼女の話を聞いていると、真の変態は紳士の仮面をかぶってる、というのがわかるんですよね。

小野:あー。

青木:本当にそうなんだ。そういうのよく聞くじゃない。やっぱりそうなんだ。

小倉:そう。本当にニコニコしてて、むっちゃ普通のおじさんほど、変態性欲がやっぱりすごいんですね。

青木:抑えてる。

小倉:そう、だから僕はやっぱり、全身から「変さ」があふれ出てる人って、実はその変態性欲、性欲じゃないんだけど。変態性のレベルは、中ボスぐらいなんじゃないかって。

青木:逆にね(笑)。

小倉:そう。そういうボスもいるんだけど、ちょっとパフォーマンスを見せて、伏兵に一瞬でやられるような。

質問者1:はいはい。まあ、そんな感じね、みたいな。

小倉:そうそう。『幽遊白書』の、戸愚呂チームの中堅ぐらいのレベル。

小野:わかるかなー、これ(笑)。

青木:わかんねー。俺ぜんぜん、わかんねー(笑)。

(会場笑)

小倉:鴉とかのレベルのような気がしていて。それで、本当に「こいつ、やべーな」という人は、「こいつには、この変という自分のカードを見せてもいい」というところまでは、絶対見せない。

青木:あー。

小倉:その「変さ」のカードが見えてる状態で、誰かれ構わず、そいつは中ボス止まりだという感じはあります。

小野:(笑)。

青木:なるほどね。俺たちはじゃあ、なんなの?

小倉:たぶん、モブキャラの可能性が(笑)。

青木:(笑)。

質問者1:だから、そういう意味では、本当に真の変態のみなさんかも知れないってことですよね。このテンション感でいうと(笑)。

青木:いや、どうなんですかね。でも、そんなでもないですよ。ただ、なんていうんですかね。もし共通点があるとしたら、こういう感じに見られたいというものは、あんまりないのかもしれないです。