「IoT×AI」で製造業をサポートするスカイディスク

田中:どうでしたでしょうか。我々もお手伝いはしていますが、住友電工さん自らIoT・AIを使って、それをかたちにできている。そんなすばらしい事例をご紹介できました。

でも、みなさんが住友電工さんと同じことをすぐにできるかと言うと、まだまだ課題があると思います。次は、そのあたりを一緒に手伝ってくれる会社をご紹介します。

IoTとAIを使って、製造業のためにさまざまな取り組みをしている会社であるスカイディスクの橋本さんをお呼びしたいと思います。橋本さん、よろしくお願いします。

橋本司氏(以下、橋本):株式会社スカイディスクの橋本です。よろしくお願いします。はじめに、我々の会社が何をやっているかを少しお話しさせていただきます。

田中:そうですね。スカイディスクをまだご存知ないという方もいらっしゃるかもしれません。

橋本:初対面の方もいらっしゃると思いますので、ぜひよろしくお願いします。我々スカイディスクは福岡に本社を構えている会社でして、そのなかで私自身が何をやってきて、どんな会社を立ち上げたのかを、まず少しお話しさせていただきます。

私は大学で材料の研究をしていました。そこにシステムを掛け合わせる開発を行っていまして、その後、35歳ぐらいになってから大学にもう一度入り直してAIの研究を始め、それをもとにいまの会社を立ち上げたという経緯になっております。最初は自動車業界で製造業をやっていまして、そのノウハウもいまの事業のなかに織り込んでいます。

我々の強みとして、自身のAI研究も含めた分析プラットフォーム「SkyAI」というブランドで、分野別にAIの学習モデルを提供することで、みなさまの課題を解決するという事業展開をしています。

例えば、保全の学習モデルをパッケージ化して提供する、歩留まりを向上するためにはどういう学習モデルが必要なのか。そういったことをやらせていただいているのが我々の事業になっております。

先ほどのキーワードにもありましたスマートファクトリー化というところで、これらの技術を工場分野の製造業の設計工程から生産・品質管理まで、AIを適用することによってスマートファクトリー化の後押しをするといったことが、いま我々がやっている事業の柱になっております。

クラウドのデータを分析する「CPS」というキーワード

田中:AIやIoTを使ってスマートファクトリー化されていると思うのですが、そもそも橋本さんはどうしてこの会社を作ろうと思われたのでしょうか?

橋本:2013年に会社を立ち上げたのですが、当時はまだ「IoT」「AI」というキーワードがいまほど一般的ではなかった時代です。もしご存知の方がいらっしゃったらうれしいのですが、「CPS(サイバーフィジカルシステム)」というキーワードがございまして。当時はまだそういった方向で進めていました。

田中:サイバーフィジカルシステム……会場は「シーン」としていたので、誰もわからないと思うのですが(笑)。

橋本:ですね(笑)。いわゆるセンシングをして、データを取って、クラウドにデータを上げて、クラウドに上がったデータを分析していこうという流れが「CPS」でして。当時は我々も、どちらかと言うとデータを取るほうに寄せて、いかにして効率的にデータを取れるのかというセンサの開発なども行っておりました。

田中:ハードから始まったわけですね。

橋本:そうなのです。

田中:創業初期はエンジニア3名だそうですが、それで事業は難しいですね(笑)。

橋本:そうですね(笑)。私はAIをやって、ハードウェアの開発をやるエンジニアとシステムをやるエンジニアと3人で立ち上げた会社でした。技術に深く突っ込んでエンジニアリングを強化していたのですが、なかなかうまく世の中に広めるタイミングが計れなかったのです。

そこでシリーズAという、いわゆる資金調達を行いまして。そこでビジネスのメンバーを招致して入ってもらうことによって、いまの工場向けのAI・IoTというところに特化してサービス化をしているところです。

工場における水処理の効率化実績

田中:なるほど。まさしくIoTのはしりですね。それを今度は実際に活用するほうに会社をシフトしたということですね。

橋本:そうですね。いまであればニーズの高まりもあって、集まったデータをいかに活用して、現場で有効活用できるのかにフォーカスし始めていると思います。当時はまだ「そもそもデータがない」「データをいかにして取るかが問題」と言われていたところで。それから、いまのように「AIをどのように活用することで一番効果が出るのか」といったところに進んできました。

田中:そこまで言われているのだから、当然スカイディスクさんの成功事例がきっとあると思うので、ぜひご紹介ください。

橋本:ハードルが上がりますね(笑)。

田中:(笑)。

橋本:でもせっかくご機会をいただけたので、みなさんにも参考にしていただけるような事例をと思って、今日はピックアップしてお持ちしました。

そのうちの1つが、水処理の事例です。ちょっとニッチな事例のように感じるかもしれませんが、これは「工場のなかにある水処理の効率化を行う」というところでやらせていただいた事例になります。「逆洗」のタイミングの最適化です。

田中:逆洗ですか? 逆に洗ったら、汚くなりそうですが(笑)。

橋本:(笑)。逆洗とは何かと言うと……工場のなかにあるでっかいタンクのなかにはフィルターがあって、フィルターは水を流していればどんどん汚れていきますよね。この汚れたフィルターを、家庭用のフィルターとかであればパッと交換すればいいのですが、なかなかそうもいかないと。

その場合に、水の流れを逆に流すことによって、フィルターにたまった不純物を吹き飛ばすということをやります。その逆洗のタイミングを最適化することによって、さまざまな効率化を行います。それにAIを活用するというのをやらせていただいた事例になります。

人間の判断をAIに置き換え、よりよい最適化を行う

田中:つまり、「タイミングを考えるのが難しい」ということだったのでしょうか?

橋本:そうなのです。「タイミングなんて普通に計れるのでは?」と思われるかもしれないですが、やはりさまざまな要素があって。このタイミングではやっぱり動かせないとか、前後にある別の水のたまっている層との関連を考えたりなど。

そういったさまざまなパラメータがあって、これまで人間が判断していたものをAIに置き換えることによって、より正確な、本当に必要なタイミングで最適化することによって、数十パーセントの費用削減、経費削減、時間の削減などにつながったという実例がございます。

田中:すばらしいですね。しかも、(今日のイベント開催地である大阪に合わせて)ちょうど関西のお客さまの事例を持ってくるところがすごいですね(笑)。

橋本:ありがとうございます(笑)。

(会場笑)

名前を出させていただいているのですが、この中島工業さんは大阪にある会社でして、水処理をもう数十年、老舗企業としてメンテナンスをやっています。そんな会社さんとやらせていただきました。つまり、メンテナンスの専門の技術と、我々のようなAIの技術を掛け合わせて、新たなサービスを生み出したという事例になります。

田中:お話があったように、うまくAIを使うことによって完璧なタイミングを予測して成果が出せるということですね。逆に言うと、いままでは予測していた「人」がいるわけですよね。

熟練の技を教え込むのではなく、データから自然に学ばせる

田中:そういう方たちからすると、「全部AIにそれを渡すと自分の仕事がなくなってしまうのではないか」と思われることが多いです。「AIが仕事を奪うのではないか」と。いまの例はそれを実際にやられたわけなのですが、橋本さんから見て、AIは本当に仕事を奪うのか。いかがでしょうか?

橋本:よくバズワードのように上がってくるものとして、「AIが奪う仕事トップ10」みたいなものがあると思います。我々は、AIの提供をしていきながら、実際に現場で見ていくと、「AIが仕事を奪う」ということはちょっとキーワードとしていき過ぎなのではないか、と感じます。

AIが得意とするところとは何かと言うと、人間では判断しづらい、すごくパラメータ数が多いようなものを、瞬間的に処理をするというところです。

そういったAIが得意なところ、もしくは、コンピュータリソースを使うことで解決が早くなるところにAIを使い、そこから生まれる時間を有効に活用して、人が本来やらなければいけないところ、やったほうが効率の良いところに使い分けをすることで、ここはうまく解決できるのではないかと考えています。

田中:たぶんここにいるみなさんは、「それはけっこうきれいごとなのでは」と思われていると思うのですが(笑)。

橋本:(笑)。

田中:実際にそういうふうに変わった事例は、あるのですか?

橋本:まさに次にお話しさせていただきたい事例になっています。保全モデル……保全の1つの例になります。とある大手の電力会社さんでやらせていただいた事例で、そこでは課題がありました。

それはなにかと言うと、「技術継承ができない」という課題です。何を技術継承できないかと言うと、機械のメンテナンスをする時に、音を聞いて機械のヘルスケアチェックをする、状態を監視するという業務がございます。ただ、みなさんも想像していただくとわかるように、音の情報って、人に伝える時に口でなかなか伝えづらい、という傾向があると思うのです。

それをデジタル化して、AIが分析をすることによって、プロフェッショナルでない方でも、入社数ヶ月そこそこの技術を持ってさえいれば、プロフェッショナルと同等レベルの判断ができるようになるという、「故障予知」というところにAIを活用した事例を今回お持ちしました。

田中:そうすると、熟練の技と同じことを、ある意味新人の方でもできる、というケースがあると思います。熟練の方は、このAIに教え込むことが仕事になっているのですか?

橋本:ここは、どちらかと言うと、熟練の方が教え込むというよりも、そこから上がってくるデータを自然に学習させ続けるというところがポイントになってきます。