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1,000万人の健康づくりをどう実現するか(全4記事)

2019.03.07

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右肩上がりの目標に、社員は傷ついていた ロート製薬が「健康経営」を導入した背景

提供:株式会社リバネス

2018年10月13日、未来の健康のあり方をさまざまな分野から解き明かす「超異分野学会 大阪フォーラム2018」が開催されました。セッションA3「1,000万人の健康づくりをどう実現するか」では、医薬基盤・健康・栄養研究所の吉田司氏、京都大学医学部附属病院・杉山治氏、リアルワールドゲームス・岡部典孝氏、ロート製薬・河崎保徳氏が登壇。リバネス・西山哲史氏をモデレーターに、「社会単位での健康づくりの実現」について語りました。本パートでは河崎保徳氏が、ロート製薬が「健康経営」を導入した背景を説明します。

ロート製薬が「健康経営」を導入した背景

西山哲史氏(以下、西山):それでは、河崎さんですね。

河崎保徳氏(以下、河崎):すいません。だいぶお疲れかもわかりません。最後です。ロート製薬の河崎と申します。よろしくお願いします。

私にいただいているお題は「ロート製薬が取り組んでいる健康経営について少し語るように」ということでございましたので、15分ほどでご紹介をさせてください。

ロートがどんな会社かは飛ばします。ただ、製薬会社の中では中堅どころです。大阪市生野区に本社があります。120周年が来年の2月ですので、119年目を迎える比較的老舗な企業なんですが、意外と常識に抗ってきた歴史があります。

「鳩と目薬の会社」とみなさん思われているかもわからないですけど、意外と化粧品の売上が6割あることや、世界110ヶ国ほどに商品が行っていること、あるいは兼業・副業を2年半も前に解禁にして、70人以上がそういう仕事に就いていることなど、変わったことをどんどんしてきている会社でございます。

そんな会社が2年半前にある発表をしました。「薬に頼らない製薬会社になります」と。薬は必要です。再生医療についても一生懸命開発をしています。ただ、本当は薬がこの世の中にないほうが、みんなが健康だということとイコールだと思うので、薬に頼らない製薬会社を世界で初めて目指すという宣言をしました。

そして、同時に、社員の健康づくりをしっかりやっていきたいという宣言もさせていただきました。そこから健康経営が始まるんですけど、その前身は、実は15年前から社員の健康を考えてやってきたことが土台にあります。

アプローチの方向が変わるんですけど、見ていただきたい点があるんです。これが日本の実情です。

5歳刻みで、スライド左が男性、右が女性。死因の一番多いものが、男性は10〜44歳がなんと自殺です。女性も15〜30歳は自殺が増えています。その次に悪性腫瘍のガンが来る。これが今の日本人の実態ですね。

学校教育のときもそうですけど、企業に勤めたりしている、一番大事な働き盛りの若い人たちを中心に、実はこういう状況が起こっている国だということが事実としてあります。

日本人労働者は昭和の遺産に傷ついている

河崎:このスライドは労働生産性について、いくつかの発表の寄せ集めです。(日本は)世界で2番目に睡眠時間が短い国で、世界で2番目に週50時間以上働いている国です。労働生産性は世界で22番目。OECD加盟国のうち「熱意ある労働者」の比率は132位。「自社を信用していない労働者」は、なんと世界1位。

(会場笑)

信じられないでしょ? でも、これはWeb調査をして、世界で発表されたデータです。僕らの世代は、社員は愛社精神ということで、親から「会社を愛せ」「石の上にも三年。辞めるな」と言って送り出されましたが、これが実態です。

こんなに一生懸命、僕らはヘロヘロになるまで働いているつもりなんだけど……なにが起こっているのかというと、社員がどんどん傷ついていっているんです。

我々は一般消費財のメーカーです。目薬は人の目玉の数以上には売れません。ところが会社は、経営企画室がいつも立ててくる目標は、なぜか前年比105パーセント。

(会場笑)

人口減を考えると98パーセントが正しい数値目標のはずですよね。この差の7パーセントをいつも営業マンがかぶってくれているわけですね。目標達成しないと心が喜ばないから、営業マンがだんだん暗くなっていきますよね。

こういうことが、ロートだけではなくて、右肩上がりをよしとする昭和の時代の上場企業の姿ではないかと思います。傷ついていっているのは、社員がそれを吸収してくださっているのが実態かと思います。言い過ぎたかもわかりませんけど。

ロートが掲げる「プロの仕事人」の定義

河崎:そこで健康経営を始めました。

スライドのジュネジャ・レカがロートの副社長でインド人です。経営がこの健康経営にコミットするということで、彼はCHO(注:Chief Health Officer、最高健康責任者)に日本で初めてなりまして、2年半前に話題を呼びました。

彼が言っているのは、健康は病気にならないという意味ではなくて、「目標や夢に向かって挑戦する情熱を持って取り組むことなんだ」と。そして、「働きがいや生きがいを感じることなんだ」と言っています。リバネスさんのような世界になってきていますけど(笑)。

病気にならないことではなく、健康は手段であって目的ではない。僕らが何か生き生きとしたことをやっていくために必要なことだという位置づけです。だから、経営が社員の健康にコミットするんだということですね。

僕らが目指しているのは「社員をプロの仕事人へ導くこと」。スライド下に「マイナスをゼロへ」と青く書いていますが、経営は当初、健康診断で引っかかった、高血圧や中性脂肪の人を治すためのことばかり考えていました。だから、会社に産業医を置いた、産業保健の領域でした。

ところが、「ゼロからプラスへ」と書いていますけど、ジュネジャの言う健康は、健康な人をさらにパフォーマンスよくするためのいろいろな仕組みのことを指しています。

考えてみてほしいんです。プロ野球の選手がバッターボックスに立つときは健康ですよね? でも、その打席で最高のパフォーマンスをしないといけないわけですね。サッカーのフォワードも、一瞬で最高の働きをしないといけない。これがプロですよね。

でも、僕らは毎朝9時に自分の机に座るときに、そんな最高な状態で会社には出てません。「今日も嫌やな」と思いながら会社に出ているんです(笑)。

つまり、ロートの目指している「プロの仕事人」は、一番大事なときに一番力が出たり、気力が充実したり、パフォーマンスが出せる状態を社員に持ってほしいということなんですね。

女性の「痩せすぎ」が問題になっている

河崎:ところが、社員の多くにアンケートを取ると、いろいろなことを抱えています。夜21時以降に晩飯を食べている人が36パーセントもいたり、朝ごはんも23パーセントが食べてきていないなどですね。ゆっくり寝れているように思えない人も44パーセントいます。こういう状態ですね。

健康経営を広めていくのにはいろいろな施策があります。気づかせて、そしてソリューションを与えて、それを評価する。いろいろなことを会社としてはやってきています。

このあと少し気づいたことがあります。健康経営をやってきたら、全国平均よりもロートの社員はよくなっていっています。ただ1つ、低体重。とくに女性の体重が全国平均よりもロートが少ないんです。

「細くて良いことやん?」「みんな片方で『肥満はよくない』と言っているのに、良いことやん?」と思われるかもわかりませんけど、実はこの裏にはすごく大きなことが眠っています。

日本全国にわたって見ると……BMI値は身長を体重の2乗で割った数値ですが、戦後から20歳代の女性のBMI値は下がり続けています。この飽食の時代にカロリーがどんどん少なくなっているんですね。

戦後の摂取カロリーがだいたい1,600キロ。今、東京丸の内で1,079人に2年前に調査しました。その結果は1,470キロ。丸の内でバリバリ働いているOLたちの1日のカロリー摂取は戦後よりも低いんですね。

でも、日本だけじゃなくてフランスでも同じようなことが起こっています。BMI値18.5以下のモデルはこれからテレビや報道には出れません。「痩せすぎ」が1つの問題になっています。

先進国の中で10人に1人、2,500グラム以下の赤ちゃんが生まれている先進国は、この時代に日本だけです。これは事実です。

二分脊椎症は葉酸不足(が原因)ですね。鉄分や葉酸などの栄養素が若い女性にいくつか欠けていると言われています。葉酸不足が起こると、先天性の障がいを持って生まれてくる。こういうのも増え続けている先進国は日本だけです。低体重に潜むリスクがあることに気がつきました。

「DOHaD」という考え方があります。もしお時間あったらまた一度ネットで検索してみてください。

健康経営を推進する「Well-Being OSAKA Lab」

河崎:僕らは今この歳になりましたが、成人病の原因はタバコや睡眠不足、ストレス、運動不足など、いろいろあると言われています。今わかってきたのは、受精から1,000日、約3歳までの間に、実は遺伝子の中に成人病の種が刻み込まれるということです。痩せすぎているお母さんの母体で育った赤ちゃんは、「このお母さん、栄養少ない」と思ったら栄養を貯め込む遺伝子が発現します。

つまり、少ししか食べていないのに太る人、たくさん食べているのにぜんぜん太らない人、体質で片付けていますが、どうやらここにも遺伝子があって、しかもそれは受精してから1,000日ぐらいまでの影響が大きいと研究の成果でわかり出した、というのが「DOHaD」という考え方なんですね。

こんなことはあまり表には出てないと思うんですが、女性が痩せ体型を求める理由に、「どうやら漫画の影響があるんじゃないか?」というのが研究者の中で言われています。

僕らの子どもの頃は『魔法使いサリー』でした。比較的、寸胴です。今、30歳の女の子が育った世代は『セーラームーン』ですね。だいぶ腰の細さも違うような気がしますね。例えば『ゲゲゲの鬼太郎』の猫娘、僕らが子どもの頃はああいう猫娘でしたよね。それがだんだん変化していって、今やこんなふうに(細く)なっているのに驚きました。

(会場笑)

子ども心に男の子も女の子にも刷り込まれるんです。だから、普通なのに「自分は太っている」。

中学校になって好きな子ができて、男の子から「お前太っているな」と言われたら、傷ついて無理なダイエットをします。無理なダイエットをすると卵巣が老化することが、うちの傘下の病院でもデータとして出ています。娘さんがいるお父さんやお母さんは、無理なダイエットを思春期にすることは止めてあげてほしいなと思います。

そんな中で社員もそうなんですが、世の中にもこれを広めていかなければいけない。脅さずに広めていかなればいけないので、2018年5月からABC Cookingさんと組んで、全国でこれから赤ちゃんを生もうとする女性のための料理教室を始めました。サプリメントやお薬じゃなくて、日常の料理で栄養を摂れば十分大丈夫なんですよね。こんなことをやっておりました。

最後に、大阪万博。11月23か24日に、来るか・来ないかが決まるらしいですけど、このテーマが「いのち輝く未来社会をデザインする」。いのち、健康、食をテーマにしている万博なんです。

ところが大阪の現状は、平均寿命が男性43位、女性47位。日本で一番寿命が短い。「大阪のおばちゃん元気って嘘八百やん」ですよね。これ(寿命が短いこと)を大阪では「べった」と言うんですね。「べったくそ」と。これを紐解いていくと、野菜の摂取量が少ないことや、女性の就業率が悪いことなどがいろいろわかってきました。

ところが、府も市もいろいろな努力をされて、この現状があります。これを変えていくには、僕は企業からしかないと思いました。2018年3月28日に、ロートが中心になって、大阪府の協力を得て、企業に声をかけたらなんと56社が集まってくれて、「Well-Being OSAKA Lab」を発足しました。健康経営などを一緒に勉強していくプラットフォームですね。

これは発足したばかりで小さなダイアログしかできてないですけど、これが健康経営のプラットフォームだとしたら、ここの世界に、例えば先ほどのリアルワールドゲーム的なものなどを乗せていくことで、企業の社員から健康を求めていく流れができたらいいなと思います。

以上、人生100年時代に向けて、健康経営をこれからも大事に取り組んでいきたいと思います。ありがとうございました。

(会場拍手)

西山:みなさま、ありがとうございました。

地域社会の特異性と健康促進の関係性

西山:それぞれに、効果的な取り組みをされていたり、ロートの河崎さんからはわりとショッキングな社会背景のご紹介もありました。お話を聞いているなかでいくつか思ったことがありまして、そこをディスカッションのポイントにできればと思います。

まず1つ思ったのは、いったいどういう枠組みで、健康をつくっていく行動をするときに、どのような枠組みをそれに当てはめることができるのか? 

杉山さんから「地域社会だからできたんじゃないか?」みたいな話があったと思うんですが、地域社会の特異性というか、どういうポイントで実現できたのかを教えていただきたいです。

杉山:そうですね。我々としては「ITの我々の作ったWebサイトで素晴らしい効果が出てきた」と言いたいところなんですが、たぶん違いますね。

長浜市はめちゃくちゃ地域社会です。半分ぐらい市役所関連の人が参加してくれています。そうすると職場で話すんですね。職場で「昨日、あんた何歩だった?」「ああ、私、〇歩やった」「負けたわ〜」みたいな会話が繰り返されているらしいです。

なので、そういったところで90パーセントを叩き出されているところがあるので、我々としては「サイト作ってうまくいきました。ITすごいでしょ?」と言いたいんですけど、実際はおそらくそういったリアルワールドの人間関係が、悪く言うと縛り、良く言うとうまく円滑剤となって、うまくいっていると思います。

逆に言うと、「10万人規模」「車社会」のようなキーワードがあるところはそのまま広めていけると思っているんですが、都会はまったく別のソリューションが必要になるだろうと思っています。たぶん横にいる人(岡部氏)のソリューションだと思いますけど(笑)。

西山:ありがとうございます。

マインドの健康も重要な要素である

西山:そうですね。岡部さんに振る前に、地域社会、リアルなコミュニティの話です。河崎さん、例えば、会社の中も1つの地域社会にできると思ったんですが、いかがですか?

河崎:いや、そうだと思います。ただ、会社の中というのは、実は目指しているものがありますよね。例えば「売上を上げたい」「結果を出したい」「シェアを上げたい」「競争に負けたくない」という大きな目標に向かっていっているので、地域とはまた別の意味のストレスというか、躓くと別の重りが乗っかってくるような変わったところはあるかなと思います。

西山:そのまま当てはめられるわけではないと。

河崎さんの話では、若い人の死亡原因に自殺が多いことや、ストレスに晒されているなどの話もありました。肉体的な健康をどう作っていくかにフォーカスがあったと思います。一方で、やはり心というか、その人のマインド的な意味での健康もすごく重要であると思っています。

その中で、例えば吉田さんの亀岡スタディであったり、岡部さんが非常に詳しいゲーミフィケーションなどで、心の側がどう動いているか。これに関してデータを取られたり、論文などは書かれているんですか?

吉田:データとしていくつか、抑うつの尺度であったり、幸福度、精神的な健康の尺度を調査はしていますが、縦断的な分析は我々はまだ手をつけられておりません。

西山:岡部さん、何かご存じのことあります?

岡部:そうですね、ゲーミフィケーションでいうと、各社が徹底的にデータを採っていて。ただ、けっこう囲い込んではいるんですね。

ただ、一般的な話でいうと、ガチャに代表されるアドレナリン駆動のインセンティブのつけ方もあれば、どちらかというとランナーズハイみたいな、きついけれどもいつの間にか気持ちよくなるエンドルフィンやセロトニン系のものもあって、大きく分けるとたぶん2通りあるんだろうなと思っていて。

やはりアドレナリンに行き過ぎると射幸心を煽りすぎて社会的にマイナスな面も出てくるので、どちらかというとセロトニンとかエンドルフィンのほうが、心のためにはまだいいのかなと思います。

売上はアドレナリンのほうが上がるかもしれないと思っている会社もたくさんあるとは思うんですけど、心のためにはエンドルフィン・セロトニン系かなと思っています。

西山:なるほど。どういうタイプの心の動きかも必要であるということで。ちなみに今回、登壇者ではないんですが、先ほどのベンチャーピッチの中で話していただいたハーテック LAB.さんのように、髪の毛からホルモンの状態を測るような技術も最近出てきたりもしています。

そういうことも含めて、例えばロートさんの従業員の方たちが健康行動をしていると、その心の状態がそこに蓄積されていったのかが見えてくると、何かまた深い議論が1個できるかもしれないですね。

河崎:検査は実はすごい大事なキーワードだと思って、我々はビジネスとしても、この健康の入り口はまず自分の状態を知ることだと思っています。多くの企業や大学の先生など、お医者さんが健康についていろいろな発信をしてくれているのに行動が変わらない1つの原因に、自分がどういう状態かがわからない。

例えば、お肌年齢や脳内年齢といったら、自分が実年齢よりも歳とっているかどうか、老化しているかどうかという1つの尺度がありますが、なかなかそのエイジングはわかりにくいです。

そういうものが簡単な検査で、髪の毛や唾液など、できれば血を抜かずに取れるような検査で気づけるものが、会社としても技術開発できれば、ずいぶんと行動変容のきっかけにはなるのかなとは思っています。

西山:ありがとうございます。

「現実×仮想」の両場面で健康を推進

西山:(吉田氏を向いて)先ほどはわりと歩くことや運動の話が多かったんですが、例えば「食事介入」といっても、たぶん吉田さんがやられた亀岡スタディは、人がそこにしっかりとついて記録を取ってもらうことや、運動や食事も「どうしよう」と(一緒に考えながら)指導する。それをできる人を増やしていく、1つの仕組みがある。

もう一方で、例えばアプリケーションなのかもしれないですけど、そういった別の仕組みで、例えば食事や睡眠など、運動じゃない介入もできていけると、それが世の中を変える1つのきっかけになるのかなとは思います。

実際、吉田さんにうかがいたいんですけど、食事や睡眠に対する介入はやはりやりづらいと思うんですね。どれぐらい変えると、人の健康にどういう影響を与えるみたいなことは、例えば「江戸時代の食事にみんなしましょう」と言ったら、たぶんみんな健康になるんですけど、無理じゃないですか。どのレベルで人の変化って起こせるんですかね? 無茶な質問ですみません。

吉田:わかりません……。

(一同笑)

私の所属は「国立健康・栄養研究所」という名前ですけど、私自身は体育屋さん、体力学を中心にしているので、やはり栄養はわからないです。

ただ、例えば、ゲーミフィケーション。それこそ地図、マッピングの情報を使って、地図情報、GISの情報を使って、健康的な食事を食べられるレストランに行く。

そこで現実世界のお金を出して、ご飯を食べます。そこでご飯を食べることによって仮想の世界でトークンが貯まるみたいなことをしてインセンティブをもらうことなどの方法はあると実際に思いました。あまり答えにはなってないです。

西山:でも、なるほどという感じですね。ロートさんもグランフロントのところにレストラン1つ持っているんじゃないかと思うんですが、ああいうところに歩いてくれば何か割引券がもらえるような仕組みも考えられるんですかね?

河崎:あの、岡部さんに頼んで作ってもらいます(笑)。

(一同笑)

西山:はい。そうですね。

さまざまな行動のインセンティブを作るべき

西山:実際、岡部さんとしては考えられているのはそういうような、リアルな世界とどうつなげていくかというところですかね?

岡部:そうですね。「行動変容」というのが今日けっこうキーワードになっていたのかなと思うんですけど、行動変容のためのインセンティブという意味だと、別にぜんぜん運動に限らない話だと思っていまして。

「Proof of Walk」というのはたまたま運動系ですけど、それが睡眠だったら「Proof of Sleep」でもいいんでしょうし、それに対してトークンをあげること自体はぜんぜんできるんじゃないのかなと思っています。

なので、それはおいしいものを食べて、健康的なものを食べたのに対して、「Proof of Delicious」なのかわからないですけど、何かそういう概念を作って、それ用のトークンを作ってもいいし、大きく健康通貨みたいなもののうちの一部分というふうにしても、設計次第で十分作れるかなと感じました。

西山:ありがとうございます。すみません、そろそろ時間が来てしまったので、まだまだ話したい部分はあるんですが、このセッションに関してはそろそろ終わりにしようと思っています。

ひと口に「健康」をどう作っていくかというところでも、例えば、じゃあ「筋トレせい」とか「よく眠れ」とか、そういう話だけではなくて、人々の行動を自然と変えていくであるとか、あるいは、そういうマイルドな変化を全体として多く人に起こしていくことによって、本当に世の中に変えていくこともできるんじゃないかと思っています。

その中でやはり、河崎さん先ほどおっしゃっていたように、企業は大きな旗振りをある意味しやすいというか、1つの企業体の中で数千人、数万人の方がやはり所属しているところで、そこに対するアプローチをみんなでうまく作っていくことによって、1,000万人に届くような行動介入もできていくと思っています。

今日この時間のセッションはこれで終わりになるんですが、まだまだこのあと、休憩時間等を含めて、こちらでみなさんともディスカッションをしていただければと思いますので、みなさま、ぜひ積極的にこのあともお話をしていただければと思います。ありがとうございました。

(会場拍手)

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