世界が統一から分散へ向かうのは必然
価値観が多様化する時代の自治体のあり方

ブロックチェーンで何が変わる? #5/7

SOCIAL INNOVATION FORUM
に開催

日本財団「SOCIAL INNOVATION FORUM」と、渋谷区で開催された複合カンファレンスイベント「DIVE DIVERSITY SUMMIT SHIBUYA」の連携によって開催された、都市回遊型イベント「SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA」。今回は「ブロックチェーンで何が変わる?」と題し、Next Commons Labの林篤志氏、ICT4D.JP 代表の竹内知成氏、株式会社スマートバリューの深山周作氏が登壇。モデレーターに佐々木俊尚氏を迎えて、ブロックチェーンと社会課題をテーマにしたトークセッションが行われました。本パートでは、これまでの機能や役割そのものが問われている自治体の未来について議論しました。

20年経っても遅々として進まない、自治体のIT化

佐々木俊尚氏(以下、佐々木):加賀市の取り組みは非常におもしろいと思います。実は僕、3拠点生活というのをやっていて、東京と長野県と福井県の3ヶ所で暮らしています。月2週間は東京で、残りは1週間ずつ長野と福井なんです。

福井県美山町という若狭湾のそばの(人口)9,000人の小さな町に住んでいます。美山町役場には、役場のウェブサイトも一応あるんですよ。ゴミをいつ出すかとか、なにか必要があったら見ています。いろいろな問題があって(ウェブサイトを)見るんだけど、まったくワンストップ化されていない。

どこになんの情報があるのかわからないし、ようやく情報に行き着いたと思ったらプレスリリースがPDFで入ってるだけというようなものがやたらと多い。これだけIT化(が進んでいて)、90年台後半くらいから始まってもうすでに20年以上やっているのに、現実にはいまだにそういう状況のところが非常に多いですよね。

霞ヶ関でもさんざん言われているのは、行政サービスをいかにワンストップ化するかということと、もう1つはパーソナライズですよね。例えば、子どものいるお母さんだったら子ども関係の情報がすぐ出てくるとか、働いている男性だったら、その人に向けた控除の情報がちゃんと出てくるとか。そういう仕組みが必要だと思うんです。

今おっしゃった加賀市のブロックチェーンによるマッチングのようなものは、そういうワンストップ化を可能にする仕組みなんですよね?

深山周作氏(以下、深山):そうですね。そういうふうにしていこうと思っているところです。ただ、もちろん、そこに直接ブロックチェーンを使っているというわけではないんです。

佐々木:IDの管理、アカウントの管理をブロックチェーンでやる(ということですか)?

深山:そうですね。

佐々木:現状、加賀市にさまざまなシステムがあるじゃないですか。そのシステムとは別に作るということですか?

行政サービスは市民に合わせたパーソナライズが必要

深山:そこは別に作ろうと思っています。みなさんもたぶん行政での手続きをされたことがあると思うんですけど、行政の基幹系のシステムに本当につながなきゃいけない手続きは、実はすごく少ないんですね。

そんな手続きをする場合は、だいたいみなさんは(市役所などに)直接訪れていると思います。年間に何回行政に訪れますかと言ったら、数える程度ですよね。行政のサービスを使うにあたって、大事な基幹系のシステムにつなぐような認証はそんなに必要ないので、まずはつながないで、そういう柔らかいところをやるということです。

佐々木:最終的には、外部のブロックチェーンによるアカウント管理システムのようなものを作って、今話していたパーソナライズ的なものもできるようになるんですかね? 

深山:外部の? すみません、もう1回お願いします。

佐々木:要するに、現行の市役所のシステムの外側で、ブロックチェーンによる台帳管理のID管理をしますよね。将来的にはワンストップになるだけじゃなくて、子どもがいる人向けのサービス、働いている人向けのサービスというような、市民にとってのパーソナライズがけっこう必要じゃないかなと思っていて。そういう方向まで見据えられるものなんですか?

深山:そうですね。むしろどちらかと言うと、それが最初になってきています。そこには、ブロックチェーンよりも、たぶんAIなどが絡んでくるんですけれども。

それをやりながらIDの部分......要は僕というIDがもちろんあるんですけれども、このIDに対していろいろな資格情報や、そこの認証の部分にブロックチェーンを使う感じですね。

佐々木:なるほど。果たしてこれをブロックチェーンにする意味があるのかどうかという話もさっきおっしゃっていましたよね。実際に新しくシステムを立ち上げて中央集権的にやる場合と、SIerさんに頼むような感じで、それをブロックチェーンで管理する場合、コストはどう変わってくるんですか?

深山:それは正直、やってみないとわからないからやってみようと思ったというところがけっこうあります。

我々もそうですけれども、我々以外でブロックチェーンのシステムを(変えた事業者さん)、例えば既存のポイントシステムをブロックチェーンのポイント管理システムに変えた事業者さんと話していると、思わぬところでコストがかかるという話がやっぱりあります。そこは試しながらなんですけれども、コストが下がることを見越してやっていこうと思っています。

ブロックチェーンでトレーサビリティをする際の障壁

佐々木:おもしろいですね。あともう1個、最初のほうで(無農薬の)野菜を売る話があったんですけれども......トレーサビリティですね。レタスでしたっけ。トレーサビリティをブロックチェーンの台帳管理でやったら2倍の値段で売れた。これは買う側から見ると、ブロックチェーン上のトレーサビリティのデータが見えるということなんですか?

深山:そうです。スマホアプリで見えるようになっているんですね。レタスにQRコードが貼ってあって、それをピッとやるとわかるようになっています。

佐々木:それをブロックチェーンでやる意味は、例えばある野菜の流通業......例えばイオンみたいなところが、自社の野菜に関してはトレーサビリティを確保します、ということで独自のアプリを開発して、イオンの店頭で売ってる野菜にQRコードを貼っておいて見えるようにする。これは誰でも思いつくサービスだと思うんですけど。

例えば今のような仕組みだと、そのブロックチェーンを使った野菜のトレーサビリティシステムを、小規模の農家さんや流通会社がどんどん横展開しながらみんなで使うという方向性はあり得るんですかね?

深山:あり得ると思いますね。ただここにはけっこういろいろなハードルがあります。さっきもIoTデバイスが出てきたと思うんですけれども、「それを買わなきゃいけないの?」という話が出てきます。そのへんの技術的な障壁や、何を用いてそれを証明していくのかといったところが、今はまだけっこう壁になっていると聞いていますね。

佐々木:なるほど。林さんは今の話を聞いてどう思いました? Next Commons Labの方向性とちょっとかぶっているところがあるような、ないような感じがするんですけど。

林篤志氏(以下、林):地方創生的な文脈でいうと、消滅可能性都市という言葉があります。あれはぶっちゃけ自治体が生き延びられるかどうかみたいな視点なんですよね。要は人口が減っていくことによって自治体の税収が減って、自治体が機能しなくなるという話なんですけど、本質的にはそれはどうでもいいかなと(笑)。

佐々木:自治体よりも住んでる人の問題ですもんね。

自治体は機能そのものを見直すか、役割を変えていく時代

:そうなんですよ。自治体がなくなったとしても人はそこに住んでるし、山や川や海は残っているはずなんですよね。自治体という機能そのものを見直さなきゃいけない。もしくは、役割を変えていかなきゃいけない時代かなと思っています。

今スマートバリューさんがやっていらっしゃることで、自治体の機能のようなものをコンパクトに進めていくことができれば、我々が共感をベースにした新しいレイヤーを作っていくという話と、そうはいってもベースで万人に対して機能を提供しなきゃいけないよねというところが……。

佐々木:ユニバーサルなサービスということですね。

:そうです。そこがうまく合致する可能性、ポテンシャルというのはあるんじゃないかなとお聞きしていて思いました。

佐々木:深山さん、これは将来的にはブロックチェーン化することによってコストをさらに削減していけるという可能性はあるんですかね?

深山:今言ったところだけに限らず、あるんじゃないかなとはもちろん思っていて、その適用範囲をどんどん増やしていきたいというところがあります。

ただ、やっぱり行政はベースをやっているところがけっこうあって、スモールスタートがしにくいということもあります。今、スモールでどこからトライできるのかというところを、例えば市民投票をしてもらって市民のバックアップを得たうえでスモールでやるとか、システム的な枠とは違うチャレンジも含めて加賀市でトライできる環境を作っていくと。

佐々木:林さんもおっしゃってましたけど、自治体というベーシックなサービスを提供しているところにいきなりバーンと入っていくというのは意外と難しいのかもしれないですね。

深山:いや~実はすごく難しくて。今質問とかでもいろいろいただいているんですけど、本当にけっこうツッコミ鋭いなと思っていて(笑)。「ブロックチェーン都市宣言」自体は、本当に構想でしかないんですけれども。

Iターン・Uターンコミュニティからおもしろい取り組みが生まれていく

佐々木:2つ目の質問ですね。「『ブロックチェーン都市構想』を発表するに当たり、市民より前に、そもそも市役所や議会にどうやって話を通したんですか? そうまでして自治体が構想の必要性を感じた理由はどこにあるんですか?」。

深山:これはかなり政治的な答えになっちゃうんですけれども(笑)。

(会場笑)

けっこう言ったら来るところってあるんです(笑)。アドバルーンをバーンと打ち上げたら、それに応じて企業が融資されることはまあまああることで。ある意味、それをやっていくのが政治家なんです、という答えになっちゃうんですけれど(笑)。

佐々木:なるほど。ここに来られている方はご存知かもしれないですけれども、一般的に地方自治体ってすごくわかりやすくて。今政治とおっしゃったんだけれども、とりあえず見た目が派手なものに飛びつきたがるという。だからプロジェクションマッピングとか、こういうAIとか、ブロックチェーンとかがあれば飛びつくというところ。

そして、どこかで1ヶ所それが成功すると、次々にみんなが同じことをしたがるという。もう今や何年も経つけれども、プロジェクションマッピングをやっている自治体は、全国に何ヶ所あるのかという。もはや集客もできないのに、ずっとやり続けている状況があるわけです。だから、一種アドバルーン的に始まってしまうのは、しょうがない部分もあるのかなと。

そのアドバルーンをいかにうまく定着させていくかが、たぶん事業者側の取り組みの重要性ですよね、というところだと思います。主に林さんのNext Commons Labと今の話を組み合わせて考えると、今は自治体レベルじゃなくて、それこそIターン・Uターンの移住者コミュニティみたいな。すごい勢いで、あちこちにどんどんできてきているじゃないですか。

東京などの都会に住んでいる20代に世論調査をすると、国土交通省の数字では、20数パーセントが「地方に住みたい」と答えるという。4人に1人くらいが地方移住を希望しているのが、現状、都市の若い住民の気持ちなんです。そうしたときに、どんどん地方でおもしろいことをやりはじめる。

そういうIターン・Uターンのコミュニティの中で、ブロックチェーンを作った新規の経済圏であったりとか、新しい仕組みにトライしていくというのが、実は現実的な落としどころとしてはありなのかなという感じもしなくもないです。林さんどう思います? あんまり振って(ばかりで)申し訳ないですけれども。

世界は統一ではなく、分散に向かっている

:いやいや、おっしゃるとおりで。だから、先ほど相談に来ている、今検討している宗教法人があるという話なんです。こう言ってしまうと、「え?」と思うかもしれないけれども、一番まともなんですよね。

(ブロックチェーンを)自治体に導入するより宗教法人に導入するほうが、一番まともで、本当にリアリティがあるなと思っていて。だから、あらゆるものが宗教化していくだろうという感覚があります。

つまり、与えられた器の中で生きるんじゃなくて、みなさんが信じたいものを信じればいいじゃんという世界が続いてくるだろうと。それを一応、サイバー技術としてブロックチェーンと言うし、それを国家的と言うのかもしれません。要はこれだけ価値観が多様化した中で、ある一定の共通の価値観を有しているほうが、コミュニケーションは取りやすいし、我々がサバイブしやすいよねというだけの話なんです。

だから、だんだんとそういう方向性に向かっていくのは、けっこう必然で。どちらかと言うと今までの時代は、それを統一し、一元化することによって、効率を高める世界だった。でも、今の世界がそういう方向に向かっているかと言うと、どちらかと言うと分散に向かっていると思います。

だから、イギリスがEUから離脱するとか、カタルーニャ地方独立運動するとかという話が出てきている。どちらかと言うと、世界統一で平和に向かっていくというよりは、世界中のそれぞれの価値観ベースで、平和になればいいじゃんという。今、見ていると、そういうシナリオは現実味があるんじゃないかなという気はします。

人口を地方創生のKPIにしているのはナンセンス

佐々木:地域共同体とは、単に同じ場所に住んでいるというだけで、どこまで共同体感覚を持てるかというのは、もう1回見てみたら、確かにそれぞれの文化があるかもしれないですよね。

:そうなんです。だから自治体が人口を住民票で管理して、よく地方創生のKPIで、住民票がどれだけ移ったかを(見ていて)……。

佐々木:移住した人口を。

:そうそう(笑)。だから、けっこう市長室とか自治体の会議室に行くと、こうやって紙が貼ってあるんです。

佐々木:(笑)。でも、そんなに増えないじゃないですか。

:(自治体の住民が)先月はこれだけ増えて、先月はこれだけ死んだというのがあって。

(会場笑)

:「もともとの想定より、ちょっとKPIをクリアできていないんですよね」という話をしているんですけれども、全体的に(日本の人口が)減っていくので、意味はないですよね。ナンセンスなんです。どちらかと言うと、エストニアとかイギリス人の概念が動いているんだけれども、例えば加賀市だったら、加賀市の未来に向かって共感している、加賀市共感経済圏の人口はどれだけ増えていくかというほうが(意味があって)。

佐々木:関係者人口みたいなことですよね。

:そうそう。これからもし自治体が選り分けていくということであれば、たぶんそういう方向性に向かないと、厳しいだろうなと思います。

深山:それはめっちゃ共感しますね。

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