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生産者が語る、Agrionでの農業日誌活用術(全1記事)

計測できないものは制御できないーーお茶農家の後継ぎになって実感した、鉄鋼メーカー時代の教えと学び

2018年11月9日、freee株式会社 五反田オフィスにて「農業Meetup@五反田 ~わかりやすい農業の販売・流通・事務~」が開催されました。「消費者への販路作り」「栽培のIT化・見える化」「経営・事務の高度化」といったワードが飛び交う昨今の農業ですが、実際の現場では実践への道筋が想像しづらいことが課題となっています。当イベントでは、これからの農業のあり方について、「農業の販売・流通・事務」にスポットを当てたセッションが繰り広げられました。そのなかから今回は、農業生産者にフォーカスしたセッション「生産者が語る、Agrionでの農業日誌活用術」の模様をお送りします。

圃場の作業管理、作業時間の記録に活用できるAgrion

斎藤脩平氏:株式会社TrexEdgeの斎藤と申します。農業経営支援アプリ「Agrion」を紹介させていただきたいと思います。

もともと私は、エンジニアとしてTrexEdgeに入社いたしまして、現在はAgrionの責任者として、Agrionを広めるべく、日々奮闘しております。そもそもなんですけれども、Agrionを知っているという方は、どれぐらいいらっしゃいますか? 

(会場挙手)

結構、有名ですね。ありがとうございます! 本日は、知っている方も、知らない方もいらっしゃると思いますので、そもそもAgrionはどんなものなのかというところから紹介させていただければと思います。

Agrionは元々、圃場管理や作業管理、作業時間の記録といったところで活用できます。今回、新しく10月からオープンしているのが、Agrionの販売管理です。納品書や請求書を簡単に作ることができるサービスです。今、freeeさんとも連携しているので、この場をお借りして、紹介させていただいているということです。

収穫後の工程の効率化支援までを担う

まず、Agrionの農業日誌についてです。(スライドを指して)こういったかたちで画面上で自分の圃場を管理できます。また、スマートフォンで簡単に作業の記録ができ、その作業の記録をWeb画面上で可視化して見ることができます。ユーザーの実際の活用方法については、後ほどご説明いたします。

基本的に、農業日誌は無料で提供させていただいております。レポートの出力など、一部の機能は有料でございますが、基本的には無料で使っていただけますので、今、多くの生産者の方々にご利用いただいております。

規模でいうと、大小さまざまで、従業員30名ぐらいのところだったり、家族経営されているような個人事業主の方にもご活用いただいております。

Agrionの農業日誌をメインで運営してきたんですけれども、作業管理はAgrionでなんとかなりそうというところでしたが、「もうちょっと、こういうのってなんとかならないの?」といった声がちらほらあがってまいりました。

(例えば)バラバラに来る注文や、手書きでの伝票作成、また、そもそもどの作物でどれくらいの売上が上がったのかがわからないといったお話がけっこうありました。

作業記録もそうなんですけれども、その後の、収穫した後の工程といったところに対して、効率化のご支援ができないかというところで始めたのが、Agrionの販売管理になります。

詳しい機能のご説明は、(このセッションが)終わりましたら、懇親会等でお話しできればと思います。また、後ほどデモでも案内させていただきます。弊社のメンバーも何人かいますので、興味のある方はデモのご説明をいたします。

私の方から説明しましても、ふーんといった感じだと思います。私が勝手にAgrionのパートナーユーザーと名付けてしまったんですけれども、かわばた園の佐藤様から、Agrionの活用方法について説明いただきます。それでは、かわばた園の佐藤様、よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

メーカー勤務から家業のお茶農家の後継ぎへ

佐藤寛之氏:あらためまして、こんにちは! かわばた園の佐藤寛之と申します。

今日は10分ほどお時間をいただいておりますので、かわばた園では今、Agrionさんやfreeeさんをどのように使っているのか、簡単にご説明したいと思います。

名前は佐藤寛之と申します。1990年生まれで、28歳です。簡単な経歴は、2013年に大学を卒業しまして、愛知県にある大同特殊鋼という会社に入社して、生産管理室という部署で4年半ほど働いておりました。その後、短い海外留学を挟んで、今年の1月から家業のお茶農家を継いで、現在に至ります。

次に、弊園の紹介です。栽培しているのはお茶と梅で、それぞれ農薬を使用せず、有機での栽培しております。事業形態といたしましては、栽培から加工、販売までをすべて自園で行っております。従業員は、父と母と私の三人。

こちらが、弊園の茶畑になります。静岡県静岡市の北側の山間部に圃場がいくつか点在しております。茶畑は、このように山林に囲まれていたりして、周りには他に茶畑がないようなところがとても多いです。

ここからは具体的に、どのようにAgrionとfreeeを使っているかというお話に入っていきます。まず、(地元に)帰ってきて最初にやったことが、うちの状況がどんなふうになっているんだろうという現状把握です。

「稼げない」と言われていた家業の実態を調べるところからスタート

両親からは、継ぐ前に、稼げない稼げないとひたすら言われておりまして、実態はどうなのかなというところを、まず最初に知ろうとしていました。以前勤務していた会社では生産管理という(部門にいて)生産量や歩留まりといったものをコントロールする職場におりましたので、まずそれを確認しようと思いました。

結論から言うと、(状況は)全然よくわかりませんでした。すぐにデータとして使えるものでなかったり、加工が必要なものであったり、そもそも記録していなかったりというのが最初の状態でした。

私が就農したときの記録の方法というのが、表の通りです。作業に関するものは手書きのノートで、農業日誌のようなものはあったんですけれども、家庭の外出の用事が書かれていたり、仕事に関係ないことがたくさん書いてあって、パッと見てもよくわからない。受注や売上に関しては、謎のシステムを使っておりまして、入力方法を覚えるのがまず大変なレベル。その入力内容を記録するのが、1.4メガバイトのフロッピーディスク。今ではあり得ないぐらい小さな容量のものに記録しておりました。

日々の経理業務というものは一切行っていなくて、年度末の確定申告のときに、市販の農業簿記というパッケージソフトを使って、1件1件、適当に管理されたレシートや通帳を見ながら手打ちしていくという状態。管理が大変というか、あまりやりたくないなというのが率直な感想でした。

メーカーで学んだ「計測できないものは制御できない」を体感

メーカーにいるときは「計測できないものは制御できない」とよく言われていて、まさしくそのとおりでした。現状を記録していない以上、完全な無管理状態。なので、数字をきちんと記録するということを、最初の僕の改善としました。そして、これが現状の管理用法です。農作業については、AgrionやExcelを使って、出荷はクロネコヤマトのB2クラウド、経理業務や確定申告はfreeeを使用しています。

まず、Agrionをどのように使用しているかについてです。基本的に同じ場所で同じ作業をしていることが多いので、私が一括でアプリへの登録を行っています。目的は、作業時間の見える化です。これは、Agrionを使用し始めたときからの、Agrion上での作業別の統計グラフです。

このように、それぞれ誰が、どんな作業に、どれくらいの時間を使っているかが一目瞭然です。どの作業にどれだけ時間がかかっているのかなというのがわかると、具体的な対策として、何をしようかなというところに落とし込めます。

弊園の場合、有機農業の宿命と言いますか……草刈りにすごく多くの時間がかかっていて、この時間を短縮すると、改善効果が大きいなということがわかります。

ですので、Agrionで時間というものさしを農作業にあてはめてあげて、問題がどこにあるかということを、簡単に見つけることができるようになりました。問題を具体的に浮き彫りにしたので、具体的な対策……例えば、マルチをかけてみようとか、カバークロップを使ってみようといった改善に落とし込んでいくことができます。

お茶の場合は、1年に1回しか収穫できないので、こうした対策の効果がどうだったのかを来年に確認して、改善に繋げようと思っています。

お金の出入りに、極力人が介在しない仕組み

次に、freeeをどのように使用しているかについてです。年度末の確定申告がまだなので、日々の業務に限った話にはなってしまうんですけれども、お金の「入」と「出」のところに、極力人が介入しない仕組みにしている最中です。

freeeの機能であるクレジットカードだったり、銀行口座との連携を利用しまして、現金の出入りも極力楽になるようにしています。

現金の支払いを極力なくすために、法人用のカードを親に渡しているんですけれども、どうしても(現金での支払いが)ゼロにはならない。現金に関しては、一番左の写真のように、よく使う仕分け項目別の整理棚を用意しまして、両親にもレシートの分類を協力してもらっています。

(レシートを)放っておくとですね……先日、仕訳をしていたときに、父親の財布がすごくパンパンだったんですけれど、平成29年のガソリンのレシートなどが出てきたりしました。親に対する意識付けの意味でも、こういう棚を置いています。

整理したレシートは月に1回、スキャンスナップという機械を使って、スマホにデータを送っています。日付や金額が自動で入力されるため、ミスの削減や時間の節約ができます。

スマホにデータを送るので、今日、ここに来る途中だったり、雨の日だったり、空いた時間で仕訳作業をしています。ミスの原因は基本的に(手入力です)。ミスの原因を極力減らしていくことで、入力ミスや入力もれを防いでいきたいなと思っています。

次に、こうだったらいいなということについてです。細かいところはおいておいて、いろいろな外部サービスとの連携を強化してほしいなと思っています。普段の業務をしていく上で、あらゆることが、この2つのサービス上で、すぐにできるようになればいいなと思っています。

まず、クラウドサービス。これから、いろんなものが出てくると思いますので、便利なサービスとは連携してもらって、極力、僕ら生産者が農作業だけに集中できるような環境になればいいなと思っております。

データもいろいろ蓄積されると思いますので、公開できるものがあれば公開していただいて、新しく農業の分野に入ってくる方々が活用できたらいいなと思っています。

すごくコアな100人のファンを30ヶ国に作りたい

そして、空いた時間を使って何をするかというところについてです。最後に2点だけ、その空いた時間を使って、かわばた園では何をしようとしているかについてです。1つ目は、「日本すげー!」ということがやりたいんです。もともと、鉄鋼メーカーに入ったのは、日本のすごい物づくりを世界に届けたいという気持ちがあったからです。日本の良い部分を発信する側になりたいと、今も思っています。扱うものが鉄からお茶に変わっただけで、そのための第一歩として、今は輸出の準備をしています。

先日、少し大きめの輸出に関する展示会があったんですけれども、そこに参加して、商談を進めていき、イギリスやドイツの会社にサンプルを送りました。今後、どうなるかなというところではありますが、今はその準備をしています。

ただし、お茶は嗜好品です。この中にも、コーヒーしか飲まないよという方や、ワインが大好きだよという方もいらっしゃると思います。急須でお茶を飲む方は、かなり少ないと思いますので、僕の目標は、すごくコアな100人のファンを30ヶ国に作りたいなというところです。今も直売の形をとっていますので、消費者の方々と直接つながるおもしろさは、国が変わっても変らないんだろうなと思っています。

孫の代まで仕事を残すために選んだ、自然と共生できる無農薬栽培

また、今のこの仕事を孫の代やその先まで残したいなと考えています。AIの進歩は人の仕事を奪っていくだとか、2050年に人口が100億人に迫るなどと言われています。自分の今の仕事が(将来も)あるだろうかということはけっこう不安なんですけれども、だからこそ、僕らの世代は、きちんと仕事を残さないといけないなと思っています。

孫の代まで仕事を残すということを考えたときに、今、自分の売り上げを最大化しようと考えると、(孫の代まで)農業を続ける環境が残せない思っています。農薬を使った方が除草は絶対に楽ですし、来年の収穫も増えると思うのです。しかし、仕事をする環境を残すという意味では、自然と共生できる無農薬の栽培が一番良いと思い、この栽培方法を続けてきたいと思っています。

ただし、環境に優しいだけでは仕事にならないので、しっかり稼げて、やりがいもあって、むちゃくちゃかっこいい農業をするために、こうしたバックオフィスをサポートしてくださる方々と一緒に頑張って、空きの時間を作って自分の農産物のすごさ、日本のすごさを世界に発信していきたいなと思っています。

(会場拍手)

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