途上国ほど一気にハイテク化が進むのはなぜか?
アフリカや東南アジアの「リープフロッグ現象」

ブロックチェーンで何が変わる? #3/6

SOCIAL INNOVATION FORUM
に開催

日本財団「SOCIAL INNOVATION FORUM」と、渋谷区で開催された複合カンファレンスイベント「DIVE DIVERSITY SUMMIT SHIBUYA」の連携によって開催された、都市回遊型イベント「SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA」。今回は「ブロックチェーンで何が変わる?」と題し、Next Commons Labの林篤志氏、ICT4D.JP 代表の竹内知成氏、株式会社スマートバリューの深山周作氏が登壇。モデレーターに佐々木俊尚氏を迎えて、ブロックチェーンと社会課題をテーマにしたトークセッションが行われました。本パートでは、途上国でブロックチェーン技術などが普及している背景について解説しました。

そもそもブロックチェーンとはどういうものか

佐々木俊尚氏(以下、佐々木):ありがとうございます。非常に興味深い話でした。ここでもう1回、ブロックチェーンってそもそもどういうものなのかおさらいしておくと。例えば、具体的には銀行通帳関連のイメージです。

銀行通帳というのは、みずほ銀行が大改修して話題になっていますけれど、銀行という巨大なシステムの中で管理されていて、巨大コンピューターが置いてあって、そこで全部管理していると。お金もかかるよねと。これをブロックチェーンにするのはどういうイメージなのかというと、まずは銀行のシステムが壊れても大丈夫なようにします。

どうしたらできるかと言うと、今みなさんがご自分の通帳だけを持っていて、ほかの人の通帳はもちろん持っていないですよね。でも、例えばみずほ銀行に1,000万人登録するとしたら、口座を持っている人全員が1,000万人分の通帳を持つということです。そうすると何が良いかと言うと、改ざんできない。

改ざんしようと思ったら、今だったらみずほ銀行のコンピュータールームに侵入して、こっそり変えることができるんだけど、1,000万人が全員同じ通帳を持っていたら、全員の通帳を改ざんしなきゃいけない。この改ざんしにくい問題というのが1つ。

あともう1つは、巨大なシステムの中に収めておかないといけないから、すごくお金がかかるんだけど、全員がもっと簡易なコピーのようなものを一斉に持っていれば、たいしてコストがかからない。おまけにすごくシンプルにできるという、これが2つ目。

もう1つは、例えば大地震が起きて、銀行のコンピューターがぶっ壊れたらどうなるか。もちろん、若干多重化して、データセンター何ヶ所かに置いていると思うんだけど、ひょっとしたら壊れちゃうかもしれない。

3.11のとき、東日本大震災でありましたように、津波が病院を押し流してしまって、病院の中に保管されていた紙のカルテが全部流されてなくなってしまったので、その病院に通っていた人は、投薬、薬の処方箋の記録がなくなってしまい、次にどうやって薬をもらっていいかわからなくなってしまいました。

改ざんしにくく、シンプルで安く、可用性が高いのがブロックチェーンの特徴

佐々木:これはすごい問題なんです。だから、たくさんのデータをあちこちに分散しておけばいい。今の1,000万人が全員お互いに全員の通帳を持っている仕組みにしておけば、1個や2個なくなっても、ほかにいっぱいあるから全然大丈夫。

つまり、改ざんされにくく、シンプルに安くつく。もう1つは、多少壊れてもほかにコピーがあるから大丈夫というもの。これはコンピューター用語で可用性って言うんですけど、この高可用性。この3つが、基本的にブロックチェーンの良いところなんです。

今の竹内さんの話で言うと、難民の話が1番わかりやすいです。例えば、シリアという国から難民が大量に発生して、ヨーロッパに渡りました。もちろんシリアの政府はあるんだけど、もはや政府は機能していない。

その状況の中でシリア人は、住民票、あるいは戸籍票みたいなものはシリアにあったかもしれないけれども、地中海を渡った時点で、そんな戸籍なんかどこにあるかもはやわからない。そうすると、自分のことを証明するものは何もないわけです。

かと言って、もはや難民なので、国の保証の下にないわけだから、シリア政府から住民票を取り寄せられるかどうかも難しいよね、というときに、もう1回国連なり難民機関なりが、全員に住民票を発行しましょう、と。でも、住民票を発行しましょうと言ったって、どこかの国民じゃないんだから、その国の国民として発行するわけにはいかないよね、というときにブロックチェーンを使う。

しかもさっきの生体認証です。虹彩とか、あるいは指紋とかいろいろあると思うんだけど、そういうものでも、本人のアカウントを作らせてしまえば、国の管理を超えたところで全員の(データ)を共有できる。国が管理していなくても、シリア人のアカウントがブロックチェーンになっていると、いろいろな都市に分散して置かれている。

ある技術が普及した国では、次の技術は広まりにくい

佐々木:そうすると、例えば、難民を引き受けたイタリア政府が「もういりません、難民は出ていけ」としたとしても、そのデータはほかの国にまだ残ってるという。

あちこちに分散されている状態なので、そうやって国のシステムから弾かれたりしても、自分のIDやアイデンティティを保ちやすいというのが、たぶんブロックチェーンのメリットとしてすごく大きいんじゃないかなと。言ってみれば、システムの外側にある人のほうがメリットが大きい。

我々は日本に住んでいて、日本というシステムは非常に歴史も長くて堅固ですから、我々の国が持っている戸籍や住民票はそう簡単には壊れてなくならないよねと。そういうところに、わざわざ住民票をこれからブロックチェーンにしましょうというのは、実はあんまりメリットがないかもしれない。

でも、そういうシステムの外側にいる人。はじき出された人にとっては、ブロックチェーンみたいな民主的でコストの安い、壊れにくい仕組みというのは使いやすいよね、という話だと思うんです。だから、主にアフリカで使われているんじゃないのかなという。

ここから少し竹内さんに聞いていきたいんですけど、ITの分野でリープフロッグ(Leap frog)という言葉があって、リープ(Leap)は飛ぶです。跳躍する。フロッグ(frog)は蛙。つまり、蛙跳びという意味なんです。これは何なのかと言うと、ある技術が普及してしまった国では、次の技術は普及しにくい。

例えば日本では、2000年代前半に、ITの分野では光ファイバーがものすごく普及しました。光ファイバーが普及しすぎて、どこの家族にも何十メガとかでバンバン使えるようになったから、ワイヤレスがあんまり普及しなかったんです。いまだに日本はWi-Fiが使えるところが少ないですよね。

一方で、東南アジアなどに行きますと、そこまで技術が進んでいなかったから、光ファイバーは全然普及していません。なので2010年ぐらいになって、一気にワイヤレスが普及したんです。

途上国とブロックチェーンの相性がいい理由

佐々木:つまり技術が遅れているところのほうが、一足跳びで次の技術が入りやすい。これを蛙飛び現象、リープフロッグ現象というんです。そういう意味では、アフリカは今、まさしくそういう状況です。

よく言われているのが、例えば、道路インフラがちゃんとしていない。雨季になると、雨で道路が水没したりします。だから、ドローン輸送が早く普及するんじゃないかという話が出てきています。それも典型的なリープフロッグなんですけど。そういった意味で、アフリカってやっぱり、そういう新しい技術が入りやすい土壌にはあるんですよね。

竹内知成氏(以下、竹内):はい。そう思いますね。ドローンの話だと、ルワンダという国ではドローン専用の空港ができて、輸血やエイズ検査の検体を運ぶサービスも始まっていたりします。

ブロックチェーンの話でいくと、今日は出さなかったんですけど、エチオピア。私のいるエチオピアは、コーヒーがすごく有名な国なんですよね。ただ、コーヒーってやっぱりどこの産地かで、価値が全然変わってくるんです。ああいう国なので、「これはどこどこ産だ」と言うと「ホントか?」みたいなところがあるじゃないですか。

(会場笑)

竹内:なので、エチオピアの政府がしていることは、ブロックチェーンのトレーサビリティ。記録をきちんと残す。改ざんされないというところを使って、そのコーヒーのブランド化をやろうとしています。

佐々木:なるほど。国が管理、政府が管理します。でも、政府の役人が汚職してたり、賄賂を渡していたら、改ざんしちゃう可能性があるけど、ブロックチェーンだとそれを汚職で改ざんされる心配はないんだよね。

竹内:そうですね。そういう取り組みも始まっています。日本みたいに誰もが信頼できるとか、きちんとした裏付けがあったり、ということをしない国だからこそ、逆に発展していったり、必要とされている技術になった気がします。

テクノロジーは、直観的に理解できないと浸透しない

佐々木:なるほど。もう1個聞きたいんですけど、今日のセッションの隠れたテーマとして、ブロックチェーンみたいな先端のIT・情報通信技術をもっともっと使っていけばいいと思うんだけど、日本人はやたらとそういうものに弱いよね、という話があるんです。とくに、社会貢献分野の人はITに弱いんじゃないですか、という隠れたテーマがあったりするんです。そういう面は確かにあるかもしれません。

アフリカって現状、そういうブロックチェーンやAIなどもそうですが、すごく抽象的なテクノロジーじゃないですか。わかりやすくない。スマホだったら、こうやって目に見えて、この画面上に地図がないんですと言えば誰でもわかるんだけど、ブロックチェーンと言ったって直感的に理解しにくいよね。そういうものがちゃんと受け入れられる土壌は、今現在アフリカではどうなってるんですか。

竹内:私は、まだないとは思います。経済的にもここまで爆発的に普及したのは、わかりやすいのが1番かなと。あとはかっこいい。絶対それはあると思います。なので、ブロックチェーンが、もうちょっとローカルに使われていくためには、やっぱりもっと簡単にならなきゃいけないんだろうなと。

今は、ここに関心を持ってきてくれている方々の中にも「いやー、俺もうバリバリに(ブロックチェーンを)理解してる」という人は、たぶん1人もいないと思うんですよね。もっと誰でも簡単に使えるものにならないと、ここまでは(普及して)いかないですよね。そういう気がしますね。

佐々木:モバイル決済なんかもそうですよ。日本でモバイル決済するときって、やたらとわかりにくいじゃないですか。要するにモバイル決済ってスマホでお金を払うというものですけれども。例えば、最近のiPhoneなどはSuicaも内蔵できたり、クレジットカードに登録できたり。やってみるとよくわからないという人がたくさんいて、みんな混乱しているんです。でも、アフリカのモバイル決済は、超簡単ですよね。

ケニアで爆発的な人気を誇ったM-Pesa(エムペサ)の失敗

竹内:そうですね。そういう簡単な選択肢しかないような仕組みになってるとか。

佐々木:電話番号がアカウント名になっていて、電話番号に対してお金を振り込めば、それはもう相手の電話番号にすぐ入金されると。それだけなんですよね。

竹内:ちょっと仲買いとして町のキオスクみたいに、小売店みたいなところを通す必要があって、現金化するには(そこに)行かなきゃいけないんですけど、基本的にはその通りですね。

「M-Pesa(エムペサ)」の話をすると、あれがケニアで爆発的に人気が出て、あの(サービスを開発した)会社は、Safaricomという会社ですけど、ケニアでやったときには、ものすごくシンプルなシステムだったんですね。ユーザーサイドとして選択肢があんまりないような(もの)。

それをちょっと高度化して手数料の価格帯も何通りも作って、ユーザーのために良かれと思って作って、タンザニアなどのほかの国に普及させようとしたんだけれども、逆に難しすぎてうまくいかなかったんです。

佐々木:あー、そういう問題が起きちゃったんですね(笑)。やっぱり、いかに簡単にするかが大事という。ブロックチェーンはある意味、さっきも移民の人が国とのあいだで、例えばエチオピア人の奥さんがエチオピアに送金するときに、ものすごく簡単にできるようになっている裏側で、ブロックチェーンが動いているということなのかもしれないです。

竹内:はい。

佐々木:ありがとうございます。

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