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グローバルへの挑戦。最先端のAI活用と今後の技術革新。(全2記事)

GAFAの技術を凌ぐ、日本の音声認識の精度 AIを活用したグローバルの巨人との戦い方

2018年12月13日、虎ノ門ヒルズフォーラムにて「iNTERFACE SHIFT 2018」が開催されました。AI・ブロックチェーン・XRといった、新たに生まれたテクノロジーによって起こるインターフェース・シフト。この次なる産業革命が幕を開けようとしているなか、「失われた20年」を生きてきたミレニアル世代のトップランナーたちは、なにを見据えているのか。本記事では“AI”をテーマに行われたセッション「グローバルへの挑戦。最先端のAI活用と今後の技術革新」の模様を2回にわけて公開。前半となる今回は、GAFAを始めとしたグローバルの巨人とどう戦っていくかについて語ったパートを中心にお送りします。

AI活用と技術革新で挑戦するグローバルビジネス

平野未来氏(以下、平野):みなさん、こんにちは。本日はお集まりいただきまして、ありがとうございます。

今日は「グローバルへの挑戦。最先端のAI活用と今後の技術革新」、こんなお題目で日本をぶち上げていきたいと思っています。

では、まず最初に、登壇者の自己紹介から始めます。ABEJAの岡田さん、お願いできますか?

岡田陽介氏(以下、岡田):はい、ありがとうございます。初めまして。株式会社ABEJAの岡田と申します。

私はABEJAの代表取締役と一般社団法人日本ディープラーニング協会という、松尾豊先生が理事長をされている団体の理事も務めさせていただいております。

あと、一応最近では、GoogleとNVIDIAから資金調達をしている唯一の日本のベンチャー企業になっておりまして、かなりグローバルな展開をしております。そのあたりをお話できればうれしいです。

本日はよろしくお願いします。

(会場拍手)

平野:よろしくお願いします。では、次はオルツの米倉さんにお願いします。

米倉千貴氏(以下、米倉):初めまして。オルツの米倉と申します。

インターネットがあればスタッフはいらないと思い、25歳のときに起業しましたが、今はAIがあれば社長はいらないと思いながらこの会社をやっています。

本人のクローンをつくるということをまじめにやっている会社でして、今、現状では世界で5ヶ国のスタッフ、オフィスを構えて、おもに研究開発をやっている会社になります。よろしくお願いします。

(会場拍手)

平野:よろしくお願いします。では、次に楽天の森さんにお願いします。

森正弥氏(以下、森):みなさん、こんにちは。楽天の森正弥と申します。

楽天ではおもに楽天技術研究所という組織を統括しておりまして、ディープラーニングを中心とした研究開発を行っています。

また、公職では企業情報化協会という公益社団法人の常任幹事をしており、AI&ロボティクス研究会の委員長も務めています。日本全国のさまざまな企業さんのAIやロボティクスに関わる事例やソリューションを集めて、それらをさまざまな団体や業界、他の企業さんにご紹介していくような活動もしています。

本日はよろしくお願いします。

(会場拍手)

平野:よろしくお願いします。私は、本日モデレーターを務めさせていただきますシナモンの平野と申します。弊社も人工知能会社でして、ホワイトカラーの生産性向上といったことを掲げております。

文章を読み取ることができるエンジンを提供させていただいておりまして、金融機関さんや保険会社さんに使っていただいております。

とくにうちのユニークなところは、AIエンジニアがたくさんいるということでして、現在60名ぐらいおりますが、そのほとんどが外国人であるような会社を経営しています。

AI技術者・研究者層の厚いインド

平野:それではまず、一番最初のセッションに行きたいと思います。本日お越しの方々は、みなさん本当にキラキラしていて、海外で事業を展開されていらっしゃいます。

実際に海外展開をしてみてどのように感じるのかということについてお答えいただきたく、森さんからお願いできますでしょうか。

:はい。私が見ている楽天技術研究所は、現在世界において1ヶ国増えまして、5ヶ国に7つの拠点があります。東京、ニューヨーク、ボストン、シリコンバレー、パリ、シンガポール、そして先週、インドのベンガルールに研究所を立ち上げました。

世界全体で150名ほどの研究者がおりまして、そのうちのほとんどがコンピュータサイエンスのPhDです。

5ヶ国多拠点ということから、世界中で人材を採用しております。やはりAI技術者・研究者も各国による色の違いのようなものがありまして、最近インドで採用していてよく思うのは、やはりインドは非常に層が厚いということ。

先週、インドでの研究所を立ち上げるとともに、ディープラーニングチャレンジというイベントを開催しました。日本料理の画像を分類してもらうというタスクを、いろいろな研究者にチャレンジして解いてもらうという内容です。

例えば日本人であれば、一目見て牛丼だとわかる画像も、彼らはこれはいったいなんなのかわからないとなります。「この画像なんかまったくわかりませんよね」と研究者がプレゼンで紹介している画像が牛丼で、「それ、日本なら誰でもわかるけど」というような状態なんです。

要するに、そうしたドメイン知識がない中で、かつ料理のジャンルがさまざまに偏っていたり、画像がバラバラでも、ほとんどの人たちがData Augmentation の Auto Augmentationのテクニックを使っていたり、Transfer Learningをみんながして精度の高いソリューションを提案していたりする。

みんながみんな、今どきの手法を使っているという層の厚さにびっくりして、なかなかほかの国ではこういうことにはなりませんから、インドは非常にレベルが高いということを思いながらやっています。

つまり、そうした各国の研究者や技術者の違いのようなところをいろいろと感じながら、どのようにグローバルで仲間を集めてやっていこうかということを常に考えています。

ヨーロッパ→シンガポール→インドと移り変わるグローバルで戦う仲間

平野:ちなみに、割合でいうとどこの国が多いんですか?

:もともとはヨーロッパ系が多かったんです。というのは、やっぱり日本という国に対する憧れが、ヨーロッパの方々はすごく強くて、とくに日本の漫画文化への愛着が強く、このすばらしい漫画文化を生んだ日本で働きたいというようなところがあったんです。

ですから、我々が外国人研究者をとくに採用するようになったのは2010年からでしたが、初期はそのような感じでヨーロッパ系の方が多かったのです。

しかし、今はさまざまなグローバルコンペティションの流れが非常に激しく、日本以外の各国は、AI研究者の給料がすごく跳ね上がってきているというところで、上澄み層は日本になかなか来てくれなくなり、ヨーロッパからシンガポールにシフトしてきて、今はインドにシフトしています。

インドもトップ層というか、シニアから上は日本の研究者よりもはるかに高い給料をもらいます。しかし、インドはレンジがすごく幅広いんです。底も広いし上も広いというような感じのなかなので、今はインドの方が多いですね。

NVIDIAやGoogleには、投資担当者が日本にいない

平野:ありがとうございます。では、岡田さん。

岡田:そうですね。海外展開という観点であれば、もともと私はシリコンバレーに行ったことがきっかけで起業しようと思ったのですが、シリコンバレーで起業すると見事にビザ問題にひっかかってしまうのです。それで「日本で起業するしかないか」と日本に戻ってきて起業しちゃったという感じなので、そもそも日本で起業するということが私のなかでは特殊だったというところからスタートしています。

それで日本で実際に起業してみて、いろんな会社とコミュニケーションをしていくなかで、日本市場はかなり特殊だということがわかったのです。

日本の中だけで閉じこもって事業をしていると、やっぱりUSをはじめとしたグローバル向けのプロダクトをつくるのは難しいとなっていたなかで、一応2014年の12月にSalesforceさんから出資をいただきました。

Salesforceさんの場合は日本に拠点があったので比較的進めやすかったのですが、が、NVIDIAやGoogleからの出資については直接US本社とやり取りする必要があり、かなり大変でした。ちなみに今日、起業家の方はどのぐらいいらっしゃるんですか?

(会場挙手)

意外と少ないですね。ほかは、どちらかというとベンチャー企業の経営をしている経営者、取締役、執行役員といった方はどれぐらいいらっしゃいますか? 

(会場挙手)

それぐらいなんですね。ありがとうございます。

そういう方が、おそらく裏話などを聞きたいというところがあると思うので、可能な限りでお話できればと思っていますが、まさにNVIDIAやGoogleには、日本にいわゆる投資担当者がいないんです。

そうすると、基本的にはNVIDIAだったらサンタクララ、Googleであればマウンテンビューといったかたちで、あちらの担当者と直でやり取りをしなければいけない。当然、イングリッシュコミュニケーションなんです。

国土が広すぎて対面コミュニケーションのしにくいアメリカ

日本でやっていると、やっぱりそうした課題点も見えてくるなかで、ようやく我々はシンガポールに法人格をつくり、グローバル展開をさせていただいています。あとは実際にUSでそういったNVIDIAやGoogleと連携しながら事業展開もさせていただいておりまして、まさに森さんがおっしゃったテクニカルな面、なんでこのデータは違うんだっけというような、日本でつくったモデルが全然USに適用できないといったことが逆にあったりもします。

そのなかで、USのエンジニア、もともと私がいたときに仲が良かったエンジニアが、「日本にいるのは逆におもしろくてうらやましいよね」ということをあるタイミングから言うようになったんです。

これがかなり特殊だと思っていまして、どうしてかというと、USでやっていると国土が広すぎて全然コミュニケーションによる対面ができないのですが、日本では基本東京なんですよね。あと名古屋や大阪も新幹線で1時間ぐらいで行けちゃうので、非常にエリアが狭いなかでいろんな人とコミュニケーションがとれるから、いろんな産業によるユースケースにめちゃくちゃ触れることができるという、かなり特殊な状況下にあり、それがすごくいいということに、逆に日本にいて気付き始めたという感じです。

ですから、たぶん日本のいいところ悪いところ、海外でやることのいいところ悪いところというのを見極めながら進めていけると、すごくおもしろいだろうと思っています。

資金調達で活躍したファイナンスチームの役割

平野:どうしても私は起業家なので、資金調達のところがすごく気になるところなのですが、やっぱりアメリカまで行ってお話をしないといけませんよね。

資金調達にはかなり時間がかかるじゃないですか。その間、ずっと向こうに行かれていたんですか?

岡田:私も含めて、基本的にはファイナンス担当が張り付いていました。基本行ったり来たりしてもらっていたというかたちです。

ただ、やっぱりなかなか厳しいところとしては、テクニカルな話とビジネス的な話に加えてファイナンスやリーガルのような話まで、広く網羅している必要がある点ですね。そうすると全部のラインを一人でドライブするのは無理ですから、やっぱりファイナンスのチームとしての役割はすごく大きいと思っています。

そこはまさに我々であれば加藤(財務責任者)や外木(取締役)がガッツリやってくれていたので、そういった信頼のおけるメンバーがいるということがすごく重要だと思っています。

働く場所を問わず、スケールさせやすいワークスタイル

平野:ありがとうございました。では米倉さん、お願いします。

米倉:僕はすごくローカルなところから起業しているんです。25歳で起業したときは、名古屋でした。理由は、自宅が名古屋だったので、そのまま自分の好きなことをやって起業し始めたという感じのスタートです。

そこから10年ぐらい会社を経営しまして、かなり大きくなったのですが、非常に労働集約的なビジネスをやってきたので、もう売りどきかと思いすべての事業を売却して、株式会社オルツをつくりました。

オルツをつくるタイミングでは、最初はどこにつくろうかということに関して、かなり自由に考えていました。実はサンフランシスコも候補だったのです。

サンフランシスコに当時知り合いの方がいらっしゃったので、有名なVCさんなどにもいろいろご提案させてはいただきました。しかし、もうサンフランシスコのなかでのコミュニティというのがしっかりでき上がっていまして、そこのなかでやりやすいかやりにくいかというところで判断したほうが、スタートはしやすいのではないかと感じました。

結局スタートしたのは東京でも交通の便が悪いお台場でした。海がきれいだという理由なんですが(笑)。

そこからスタートしたので、非常に難解なものをやっていますから、会社に出社して研究開発ができる研究者だけでものをつくっていこうというのはなかなか難しいと思っていたので、場所は完全に問わないというところからスタートしています。

ですから、現在、当社は本社が浅草橋にありますが、研究開発スタッフに関しては、浅草橋には3、4人しか人がいないという状態で、研究開発スタッフはほとんどが自宅勤務です。

月に1回だけ、CSOやCROといったトップエンジニアだけが集まって行う会議が東京であります。しかし、ほかはほとんど自宅でやってくださいというスタンスです。

このスタイルが非常にスケールしやすいと思っている点と、あとは1ヶ所に集めないとセキュリティ面でなかなかビジネスが進まない、人が採用できないという会社とは違ったスタンスでやっています。

平野:おもしろいですね。ありがとうございます。

GAFAとガチンコ勝負はせず、住み分けながらともに戦う

平野:では、次の質問にまいりたいと思います。GAFAなど、海外の巨人たちとの戦い方を教えてください。それでは、今回は岡田さんがトップバッターでお願いいたします。

岡田:そうですね。我々はどちらかというと、海外の巨人たちと仲良くするという戦略をとらせていただいています。まさにGoogle、Salesforce、NVIDIAは資本業務提携というかたちで連携をしていますし、SAP Jaとも業務提携をさせていただいていたり、AWSさんともAWS ML Compitencyに採択いただくかたちで連携をさせていただいているので。基本的にガチンコ勝負はつらいんですよね。

ガチンコ勝負を挑まずに、どうやって隙間にいくのかという話もあるのですが、我々は逆に隙間には行きたくないと思っていて、基本はメインのストリームラインを取りにいきたかったので、彼らと仲良くしまくって、一緒に市場を攻めにいっているかたちが今の状況になっています。

結局のところ、やっぱり彼らも1社だけで完結するとは思っていなくて、基本的にはいろんなプロセスがめちゃくちゃあるので、分業ではありませんが、自分たちが得意なところをやっていこうという感じにしているんですよね。

ですから、そこに関してはかなりいいかたちで住み分けができていると、すごく強く感じています。

GAFAに勝る優れた現場感覚が強み

岡田:あと、GAFAは確かに相当すごいパワーを持っているのだけど、実際に現場感覚でやっていると、こちらのほうが知っていることも多いといったことは、正直あるわけです。

結局、リアルフィールドにいけばいくほど、現場の感覚が絶対に重要となって来るなかで、現場とのギャップ感を埋めるのは、大手さんではなかなか難しい。そこをたぶんベンチャーの小回りを使って、まさに実装していくというのが一番、我々がやっているリアルビジネスの観点では一番の狙いどころなのだと思っています。

そうしたかたちでコラボレーションしながらも差別化しつつ、そのバランスを取って攻めているというのが、我々の今一番大きな状況だと思っています。

平野:なるほど。海外の投資家の方々もいらっしゃるそうですが、日本の投資家の方々との違いはありますでしょうか?

岡田:そこまではありませんね。基本的にはまず1つ、言語が違うということが大きくあって、いわゆる取締役会を何語でやるかというような部分もある一方で、基本的には見ているKPIは一緒だったりします。

その日本市場とグローバル市場の違いを踏まえた上で、いいアドバイスをたくさんくれていますから、そこまでの大差はないと思います。

あと弊社では、もともと海外でVCをやっていました、海外とジョイントでVCをやっていましたというような方々に株主や社外取締役に入っていただいているので、完全に日本のドメスティックカンパニーになる気は1ミリもありませんということを、最初に宣言して入れていただいています。そこはかなりご理解をしていただいているので、かなりグローバルで自由な事業展開をさせていただいていると考えていますね。

巨人と渡り合うために選んだ「中央集権型にしない」というスタンス

平野:ありがとうございます。では米倉さん。

米倉:はい。今日はAIというテーマですけれども、AIで儲かっているという話はあまり聞かないと実は思っています。自分は事業開発経験がかなり長いので、どこでビジネスをしていくかということを考えるのですが、当社の場合、今狙っているのはPDS(Personal data store)と演算処理です。

AIからは離れるかもしれませんが、ブロックチェーンの技術と分散ファイルシステムの仕組みを使って、新しいPDSのようなものをつくっています。あとは分散コンピューティングの力を使って、「emeth」というのですが、演算処理パワーを分散で集めてくる仕組みをつくりました。

これらに関してはかなりニーズが高いはずだと思っていまして、ここですとAIとはまた違った市場規模とスピード感があるので、そういったかたちでの戦い方があると思っています。

この海外の巨人たちとの戦い方の違いに関しては、我々は本当に分散型にしていくというかたちで、中央集権型にしないスタンスをとることで、GAFAが個人情報を占有している問題やマイデータ(個人情報)は本来誰のものかという問題であったりを解決する手段を提示するというかたちでの戦い方があるんじゃないかと思っています。

平野:ちなみに、どういったお客さまが多いんですか?

米倉:やっぱり、チップをつくられている会社さんや、あとはサーバーやデータを大量に持たれている会社さんなど、そういったところになってきますね。

平野:最近だとPOCばっかりのような話も聞きますが、いかがですか?

米倉:僕らは基本的にもともとからのスタンスとして、toCのビジネスをするということをテーマにやってきています。

今、現状ではPOCに関してのニーズがありますし、POCバブルだと思いますので、そこに関してはいろいろな取り組みをさせていただいております。しかし、最終的にやはりtoCでやろうというのが当社の考えですから、そこはもとからあまり考えていないところに入って来ていると思っています。

日本の商品にまつわる音声認識の精度は、GAFAに勝っている

平野:ありがとうございます。では、森さん。

:はい。岡田さんがお話されたことはまさに本当にそのとおりだと思っていて、戦っても勝てないので、どのように一緒にやっていくかというのは、ビジネスにおいて非常に重要なポイントだと思うんですね。

ですから、ビジネスにおいてはまさにそういうものを選んでいくというので、我々もそうした意味では、実際にビジネスモデルというか目指しているところで、ガチンコでぶつかっていくことも少ないので、実はプラットフォームを使わせていただいたりすることはいっぱいあるんです。

ただ、研究所という話、あるいは研究や技術開発という話でいくと、研究者は世界初のものや、世界トップの研究をしたいわけじゃないですか。だから基本的には戦わざるを得ないというか、Facebook AI ResearchやGoogle Brainの論文などを見て、では自分はなんの研究をするんだという話にどうしてもなっちゃうんです。

例えばそういうところで、楽天しか持っていないようなデータ、あるいは楽天じゃないと取り組まないような課題を見つけ、それに挑んでいく。例えば日本語の商品検索の音声認識の精度では、GAFAには勝ってるんです。

トップにもほぼ迫っている音声認識を持っているのですが、それはなぜかというと、例えば日本酒に「白瀧上善如水(じょうぜんみずのごとし)純米吟醸」というものがあるんですが、これを正しく認識するということに、そもそもGAFAさんはそんなに興味がないと思うんですよ(笑)。

ただ、日本でECをやっている限りは、それらを正しく認識できないとお客さんのニーズに応えられない。商売にならないんですね。だから、例えばそういうものがある。

データ量ではなく、種類が重要なディープラーニングの研究

:あと、韓国ドラマと中国ドラマに限っては、機械翻訳のレベルがBLEUスコアでも世界トップクラスの精度を誇っているんです。かなりズバ抜けた精度を持っている。これにはいろいろな理由があって、我々は韓国ドラマと中国ドラマの字幕データを膨大に200言語以上もの種類で持っているんですよ。

それはGAFAさんも持っていない、すごいハイクオリティなセンテンスペアなんです。それをベースにして、そうした非常に高精度な翻訳技術がつくれるといった話がある。

例えば、そうしてドメインやデータを絞ったりするというところでは戦えるのです。ただ、去年の年末から今年にかけてずっと進行してきた新しいディープラーニング回りの研究では、データ量がすべてではないという話になってきましたよね。

さまざまなアテンションのテクニックを使ったり、あるいはちょっとメタ的な言い方をすると、AIネットワークを戦わせることによって精度を上げていくという手法に今は切り替わっていて、データ量じゃないという話になってきているんです。

そうなってきたときに、実はデータ量ではなくてさまざまなデータの種類を持っているほうが有利であるという話になってきています。例えばそれはTransfer Learningになるなど、いろいろなのですが、そこで楽天は70以上のビジネスを持っています。非常に多種多彩なビジネスデータを持っているんです。

それをベースに、例えば我々は高度な潜在顧客を発見するというマーケティングソリューションを持っているんですが、それは国内においてはGAFAのコンバージョンの4倍ぐらいのパフォーマンスを叩き出したりします。国内では、ほぼ敵なしのソリューションです。

さらにそれを、Pre-training Model のセットをつくって海外に展開していくということを始めようとしていて、それをやってどれぐらい海外のマーケットにおいてもGAFAさんと戦えるかということはやってみようという感じです。

平野:ちなみに補足させていただきますと、Augmentation というものがありまして、これはデータを疑似増幅させるということです。

2、3年前でいうと非常にデータ量が大事だということがあったと思いますが、今、森さんがおっしゃっていたデータのバラエティが大事だということはすごくインサイトフルだと思います。ぜひみなさん、言ってまわると「ああ、この人はAIに詳しいな」となるんじゃないかと思います。

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