芸術が「気持ちよさ至上主義」に陥ることの危険性
観光ビジネス×アートが生むシェアリングエコノミー

アートとシェア #2/2

SHARING DAY SHIBUYA 2018
に開催

2018年9月8日、渋谷キャストにて「SHARING DAY SHIBUYA 2018」が開催されました。“シェアリングエコノミーから生まれる新しい文化”をテーマに、渋谷区のシェアに関わるさまざまな取り組みと2018年にスタートした渋谷区独自の民泊条例の狙い、そして多くの外国人観光客が集う渋谷ならではの民泊体験・ナイトタイムの過ごし方など、その魅力と可能性について語るセッションが繰り広げられました。本パートでは、共感のシェアを生み出すアートの可能性が語られたセッション「アートとシェア」の模様を2回に分けてお送りします(2/2)。

全国的な流行の兆しを見せる芸術祭

司会者:今回は「SHARING DAY SHIBUYA 2018」ということで、“共感をすること”をテーマとして挙げています。アートを見て共感する人、または参加することでアートに興味を持つ人を拡大していくために、今後どのようなことに注力していかれるのか。今後の取り組みや展望について、ぜひお聞きしてまいりたいと思います。大高さん、お願いいたします。

大高健志氏(以下、大高):今後の展望(笑)。難しいですね。あまりクラウドファンディングと関係ないですけれども、国際芸術祭のキュレーターとして僕が関わることになりました。

今まではWebサイトのプラットフォーマーとして「どうやったら共感を募れるか?」という話で、いろんなアーティストとやり取りをします。しかし今度は、芸術祭のキュレーターとして「どういうふうに作家性を広げていくのか?」「価値を見ていくのか?」「伝えていくのか?」というフェーズに関わることになります。それについて、緊張しているというか、がんばらなきゃなという感じで、今はいっぱいいっぱいです。

和多利浩一氏(以下、和多利):そういう意味でも、アートのシェアリングは1つの流行りがあります。芸術祭は、たぶん、将来的には各47都道府県の全部で行われるくらい流行ってきているんです。それも、アートをホワイトキューブというただ白い空間の中で見ていくのではなくて、自分たちがいる外で見られる楽しさがある。

観光も一緒にできて、食べ物もおいしく食べられると。つまり観光として、地方行政がお金を出して芸術祭をやるんですけれども、そこには問題点が1つあって。「気持ち良ければいいじゃないか」というものだけが、横行してしまうんですよね。コミュニケーションで温かくほんわか、ほっこりするものだけが、どうしても尊ばれてしまうんですけれども、やっぱりアートのおもしろさはそれだけではなくて。

「Reborn-Art Festival」開催のきっかけ

和多利:例えば、怖いものや汚いものがあったり、いろんな価値観や多様性の表出がアートのおもしろいところなので、すべて一方向になると、とてもつまらないものになってしまうんです。

それと、キュレーターと呼ばれる人たちが、地元の人とうまくいくためだけを追って、アーティストに質を問わないというか。最近は「まあ、このへんでいいんじゃない?」というものが非常に多く出てきています。そうならないように「やる側は注意しなくてはいけない」というのが、今の状況じゃないですか?

大高:わかります。「地元の人にヒアリングした結果、これができました」というような、プロセスを価値としすぎている作品もありますよね。

和多利:実は僕も、2017年に宮城県の石巻で「Reborn-Art Festival」をやったんです。音楽家の小林武史さんと一緒に「音楽とアートと食でやりましょうよ」ということでやったんですけれども。2013年くらいから僕はずっと被災地へ通っていたんですが、「こんななにもないようなところで、アートなんて本当に必要なの?」という問いかけから、少しずつ入っていきました。

自分にとってもかなり高いハードルだったんですけれども、去年やっと開催できて、他の芸術祭とは違った、なにかその向こう側に希望があるというものになったと思っています。

アートとブロックチェーンの関係性

司会者:大高さんには先ほど「まだ取り組み中で、発表できないこともある」とお話はうかがいましたけれども、もう少しお話しいただける範囲で、今後の展望なんかについても……?

大高:あ、じゃあぜんぜん関係ない話でも。

司会者:はい、お願いいいたします。

大高:僕が和多利さんに個人的に聞きたい質問になるんですけれども。クラウドファンディングはシェアという部分だけで言うと、制作時点で作家と後援する人たちでその体験をシェアする感じですけれども、最近ではブロックチェーンの話がよく出始めていますよね。

要は、「ブロックチェーンを使えば作品自体をすぐに共有できる」とか、もしくは「コレクターの歴史の変遷がわかるから、その価値付けをしやすい」みたいな。そういう意味での、ある種のシェアが話題になっていますけれども、それについての和多利さんのお考えを知りたいです。

和多利:僕は、履歴に関してはまったく意味がないと思っています。

大高:コレクターの履歴ですか?

和多利:というか、ブロックチェーンを使わないでも履歴は出るから。

大高:ああ、そっかそっか。なるほどなるほど。

和多利:普通のオークションでは、「誰が持っていました」という履歴が全部出ないと良い作品にはならないです。それは「ブロックチェーンだから」とはあまり意味がなくて。共同で持つことに関してはチャレンジャブルであると思うので、やってみてもいいんじゃないかなと思います。そもそも、美術館とはそういうものだから。

大高:なるほど。もう展示していればいい?

和多利:うん。すごく面白くて「やっぱりいいな」と感じているのは、ニューヨークの近代美術館でマティスの絵の前に立っている警備員が「マイマティス」だと思っていることで。

(会場笑)

アートは美的感覚を鍛える材料ではない

和多利:警備員にとって、眼の前の絵が「もう自分のマティスだ」と思えるくらいに好きでその仕事をやっているところもそうだし、観客たちもみんな「自分の街にあるマティス」だと思えるところが誇りなわけですよ。そういうものがアートのおもしろさですよね。

合法的に100億円で買い取って、「自分が死んだらお棺に入れて一緒に燃やしてください」という人もいたんだけれど、そういうものだけではなくいろんな人と価値感をシェアしていくのはとても大事だし、今々のことです。

もっと言うと僕は、美術や美術館は、チャンスがあれば果敢に外へ出ていくべきだなと思っていて。「なるべく大変な状況にアーティストや作品を置いて、それでも機能するかどうか?」とか、それでも人が良いと思えてくれるかどうかを、厳しい立場でやっていきたいと思います。

司会者:ありがとうございます、では、そろそろお時間となりますので、最後にこれからのアートの役割と、これからシェアしていくことについて、お聞きできればと思います。大高さん、お願いいたします。

大高:さっき和多利さんがおっしゃったように多様性というか、それをみんなで考えるきっかけとして、ながらえていけばいいなというのが個人的な感想です。最近では「ビジネスマンもアートを勉強すべき」という話があるんですけれども、僕はミスリードかなと思っています。

アートを学ぶことで、なにか仕事に役立つとか、パフォーマンスが上がるという考え方はミスリードと言うか、そういうために存在しているわけではないので。そもそもアートは美的感覚を鍛えるためのものでもないし、あまりにみんながそっちへ走ってしまうと「なんだ、なにも役に立たないじゃん」となって、またアート離れになってしまうのが嫌です。そこの文脈は無視して、あまり役に立たないものとして真面目に向き合うくらいの感じで、広まるといいなという感じです。

変化が求められる従来のアートの価値観

司会者:ありがとうございます。和多利さん、お願いいたします。

和多利:海外のアートコレクターはファーストシードではないけど、「俺、この作品をいくらで買ったぜ」「それが3年で100倍になったぜ、だから自分は目利きだ」という感覚が実はすごく強くて。高くなったら売る、そのお金で若い人をまたサポートする、というシステムがうらやましいなと思ったりするんです。

大高:むしろ「みんなでこれをやろう」ということですよね。

和多利:僕はそれでもぜんぜんいい。「目利きだから」「この会社を一番いける」といった、ストックマーケットと同じような感じというのは十分にあることだと思うし。それに、アートの価値観はどんどん変わっていかないといけない。

うちなんかがやっているのは、街中を農場にしましょうというアートで、青山通りにかぼちゃを作るとか。種を全部植えていく感じで(笑)。そういうものもアートになりうる時代になってきているので、作品というよりは体験としてシェアをすることもできると思います。

大高:それもワタリウムでされているんですか?

和多利:ワタリウムだけではなくて、やっぱり各地を回っていきます。「なんで新国立競技場だけでやるの?」といったところを、アゲインストしてくるような仕掛けを今考えています。

司会者:ありがとうございました。お話も尽きないところですが、そろそろお時間となりますので、このあたりで締めさせていただきたいと思います。ぜひみなさまも、これからのアートにつきまして、ますますの期待をお持ちいただければと思います。

本日は大変貴重なお話をお聞かせいただきまして、誠にありがとうございました。和多利浩一さん、大高健志さんです。ありがとうございました。

(会場拍手)

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