ブロックチェーンと国際協力、途上国の開発について
佐々木俊尚氏(以下、佐々木):では竹内さん、自己紹介を踏まえつつ、よろしくお願いいたします。
竹内知成氏(以下、竹内):みなさん、こんにちは。竹内知成と申します。今、私はアビームコンサルティングという会社で働いているんですけれども、主に途上国でICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)を活用したプロジェクトをやっています。
転職したのはつい最近で、一昨年末まではJICA国際協力機構というところで10年近く働いていました。
私の話は林(篤志)さんの話ほど壮大ではないんですけど、今日はブロックチェーンを使って、途上国でどうやって国際協力ができるのか、という話をさせていただこうと思っています。
簡単にICTと途上国開発をやっていこうと思ったきっかけをお話しします。2003年から2年間、青年海外協力隊というやつでエチオピアに行って、田舎の高校でITの先生をやっていました。
そのときに、エチオピアの政府が遠隔教育を導入して、スライドにあるように液晶テレビのようなものが教室にバーンと入って、そこから衛星通信を使って授業を始めました。
実際は問題が山積みだったんですけど、ICTで途上国開発というのは、可能性としてはおもしろいんじゃないかと思ったんです。それからこの分野をずっと追っかけ続けてきています。本業とは別に、「ICT for development」という情報発信をブログなどでやらせてもらっています。
今日の本題なんですけれども、ブロックチェーンの話をする前に、(みなさんに)途上国についてのイメージがなかったりするのかなとも思い、まずそもそも途上国でICTが使われ(てい)るのかというところから話していきたいと思います。
「途上国」と一言で言っても、いろいろなイメージがあるんですけれども、私はエチオピアに4年間住んでいまして、そのあとガーナに3年間(住んでいました)。トータルで7年間アフリカに住んでいたので、私が話すイメージというのは、なんとなくアフリカのことだと思ってください。
こういう写真のような、まさに途上国というところも田舎に行けばもちろんあります。
でも、都会のほうに行くと、こんな感じです。これは、エチオピアの首都のアディスアベバやガーナの首都アクラなどです。
2000年以降に、途上国に携帯電話が一気に普及
竹内:あと、この写真はシエラレオネというところの写真です。シエラレオネなんて途上中の途上国という感じで、かなり発展レベルは低いんですけれども。それでも、これは2年前に撮った写真です。携帯電話などがけっこう普及しています。
「ICT普及してるの?」というところで、一番有名なのは、きっと携帯だろうなということです。このグラフに表しているのは、世界銀行のレポートから(持ってきたデータ)なんですけれども、2000年過ぎて、携帯電話が途上国でもガラッと普及してきました。端的に言うと、安全な水や電気にアクセスするよりも、いまは携帯のほうが活用しやすいと言われています。
そういう状況で、途上国ならではのサービスなども出てきています。ケニアではモバイル送金サービス「M-Pesa(エムペサ)」というものがあって、銀行口座がなくても携帯さえあればみんなお金を自由に送金できます。
あと、携帯電話が独自の発展をしています。これは携帯電話なんですけど、懐中電灯が付いているんですよね(笑)。このあいだトーゴ(共和国)で買ったんですけれども、こういうおもしろいものなども出てきています。
(会場笑)
竹内:もう1個、これはガーナで2~3年前に撮った写真で、「Drop THAT YAM!」という看板です。「YAM」は何だと言うと「ヤムイモ」を指しています。
じゃあ「ヤムイモ」って何だろうと言うと、実はガーナではこういうガラケーのことを「YAM」と呼んでいます。ダサいってことです。「ダサいガラケーは捨ててスマホを持とうよ」という看板。これは3年ぐらい前に、ガーナではけっこう立っているのを見かけました。
ということで、(アフリカでも携帯電話が)けっこう使われているんだね、というイメージが湧いたかと思います。
マイニングで得られた仮想通貨を寄付できるユニセフの取り組み
竹内:「ブロックチェーンはどんなふうに使われているの?」というところなんですが、だいたい2013年ぐらいから、ブロックチェーンを「Social Impact」と呼ばれる分野に使っていこうという動きが出ています。
スタンフォード大学が最近出したレポートで、190個ぐらいの事例を調査しています。事例が山ほどありすぎて、何を紹介していいのかなということではあるんですけど、わかりやすく3つに分けて話したいと思います。