「遊び心」を入社前にチェックする

ジェームス・ライニー氏(以下、ジェームス):オーディエンスからの質問も受け取りたいなと思っています。なにか質問があれば手を上げてください。こういうとき緊張しますよね。勇気ある人、どうぞ。

質問者1:みなさんからのお話で、どういった人が自社に合うかはすごくうかがえたんですけど、それぞれの会社からみて、この人は優秀だな、活躍できるな、というところをどうやって見極めているのかをうかがいたいです。

宮田昇始氏(以下、宮田):SmartHRの宮田です。さっき、カルチャー、価値観に関しては本人にチェックしてもらう話をしたんですが、こっちからチェックしている項目もあります。推進力、専門性、転職の目的がうちの会社が提供できるものとマッチしているかどうか。

あと、人柄はこっちのほうでも見ているんですね。「うちの会社らしい人」という項目があります。それでいうと、「自律駆動」。自分を律して駆動して駆け出すという意味なんですけど、自分で会社の問題を見つけて解いていけそうか。「裁量をもって働きたい」「仕事が好き」「率直」「フランク」。

ここでひっかかる人が多いんですが、「遊び心があるかどうか」というのをチェックしています。カルチャーって、どっちでもいいものなんだけれど、それでも選んでいった、あえてそっちを選んだというものの総和がカルチャーだと思っているんですよね。

「遊び心」は別にあってもなくても、ビジネスにそんな関係ないと思っているんですけど、うちの会社は「遊び心」を重要視する会社なので、そこはけっこうチェックしています。

ジェームス:素敵ですね。

性善説カルチャーにフィットするか

青柳直樹氏(以下、青柳):明確に会社のバリュー、あとはあまり明確にバリューとして語られてはいないのですが、メルカリのグループ自体が「性善説」を会社の中で大事にしていて、会社の性善説カルチャーというところにフィットするかというところは、極めて重要視しています。

あとは、職種別に、ジョブディスクリプションをなるべく細かく明確にしています。候補者の方とか、エージェントさんとかがいらっしゃるんですが、期待値のズレみたいなものが起きにくいようにしようと心がけています。

ジェームス:ありがとうございます。

中川貴史氏(以下、中川):私がよくやっているのは、「最近僕こういうことで悩んでいるんですけど、どう思いますかね」と聞いていますね。

それが、入った時のリアルなケース問題になっていて、そういった時に一緒に問題解決というかディスカッションをしながら、課題を深掘りしていきながら、方向性を作っていけるのかをハードスキルではみています。1回の質問じゃなくて、何度も何度も掘り下げていって、ディスカッションするみたいなことを、私はよくやっていたりしますね。

ジョーダン・フィッシャー氏(以下、ジョーダン):掘り下げはかなり重要だと思います。やはり、急にやることが変わる可能性はあるので、やることが変わっても問題解決に向けて、一緒に問題を解決しにいける人なのかが見たいです。

嫌なことや問題に向き合うのは楽しい作業ではないですけど、興味を持って解決に向けて、いいディスカッションができるのは、いいことだと思いますね。

正直、やってみなきゃわからないところも少しあると思っています。なので、採用の時点である程度フィルターをかけて、こういうカルチャーのバリューです、と伝える。Zehitomoのカルチャーに合わせた質問をしたり、たくさんの人と会ってもらったりして、できるだけフィルターをかけます。

繰り返しになりますが、フィルターをかけてもやっぱり働いてみなきゃわからないところもあると思っています。なので、入社時に試用期間を用意してそれが問題なくいい感じだったら、Zehitomoで働いてみるとか考えてもらいたいです。

Zehitomoに一度参加してもらうことで、自分もモチベーション高くこの場所でやりたいのか、会社としてもこの人とこれからも一緒にやっていきたいのかもわかってもらえると思うので、そういう考えもあります。

ジェームス:ありがとうございます。他はご質問ある方いますか。あ、どうぞ。

マネージャーが半年後の組織図を書く

質問者2:主に青柳さんに質問なんですけども、途中からマネージャーとか全社的に採用にコミットメントしてもらっている、という話があったと思います。マネージャー層などに求めている人材の要件や緊急度の共有をどうやっていますか? それをマネージャーに本当に委任して、お任せしている状態なんですか?

青柳:マネージャー自らに、自分が作りたいチームの半年後の組織図というものを書いてもらっています。それぞれのポジションのジョブディスクリプションを書いてくださいと、徹底してお願いしています。あくまで主体はマネージャーというかたちにしていますし、採用のイベントとか自体の発案もHRだけじゃなくて、ヘッドマネージャーという役割を担ってもらい、オーナーシップを明確にしてます。

メルカリが大きくなっていく過程で、採用チームは強力でそこがドライブして拡大をしていきました。けれども、もう一段大きくするために、マネージャーにヘッドをやってもらっています。もちろん各個人のOKRにも入れています。最終的にはそうでないと、各チーム自体がハッピーにならないというところまで向き合い、HRのいろいろな人たちがとことん食らいついていく、という形で採用をやっています。

HRの人たちは逆にそれに合意してから、パートナーさんとか世の中に発信していくとか、候補者さんを適切な期間で、きちんとオファー承諾というところまで導くというかたちで、わかりやすくそれぞれの役割というのを分けています。

最後はそれで「All for One」ということで、HRチームの人がマネージャーと一緒に、「こういうオファーにしましょう」「こういう評価にしましょう」ということをやって、「早くオファー承認をくれと」、私自身ををつっつくという。

役割をとにかく明確にしていくようにしています。そこはかなりシステマチックにやらないと。月に10人採用するのであれば、気合でいけるんですが、今、月に30人採用するとかそういうことをやっているので、そうするとかなり仕組みによって解決しないと実現しないな、ということでやっています。お答えになっていますか。もし参考になれば。

ジェームス:なるほどですね。ありがとうございます! 他、いかがですか。

社長は仕事がはかどる環境を作るべき

質問者3:カルチャーフィットを大事にされるというところなんですが、カルチャーを維持する、強くし続けるために、何を一番大事に、どんな取り組みをされているのかなというところをおうかがいしたいです。

ジョーダン:やれるところはたくさんあるんですけれど、まずは最初から共同設立者やマネージメントチームが、同じバリューやビジョン、ミッション、そういうものに共感していることです。

スタートアップでよくあるケースは、みんな違う価値観を持ったままにしていることでカルチャーがぐちゃぐちゃになることです あとは、会社が大きくなると、どれだけみんながそれを共有して、共感している価値になるかというところが重要です。Zehitomoでは評価制度と就業規則をこだわって作りました。仕事がはかどる環境を作ることは社長の仕事だと思います。

就業規則は、日本では大体50〜60枚くらいの長さが普通だけど、長いものだと読みづらいので、みんながすぐ読める1枚の長さにして、社員それぞれがチームや上司とうまく解釈して仕事のパフォーマンスを出しやすい環境を作るためのものにしています。

社員みんながグロース・マインドセットで、どうやってよりサジェストできるかという考えを持っている。フィードバックをもらって改善していくカルチャーは、やるべきことをより明確にすればするほど、四半期のKRの設定にも、四半期360度のフィードバックにも、自分のレギュレーションにも関わってくるパフォーマンスを出すためにも結果につながっていきます。

青柳:メルカリ、そしてメルペイはバリューの浸透や度合いが非常に高いなと思っています。やっぱり社内の人たちが日頃から同じバリューを元に考え、判断の軸にして、会話で自然に使っているかが大事ですね。

会社のバリューが3つあって、これはよく発信しているので、社外の人でも知っているくらいになっているんですが、社内で自然に使われています。日々の意思決定とかの中で、「じゃあ、これAll for Oneでやろうね」とかもあるし、ちょっと置きにいった意思決定とか戦略を考えすぎている意思決定があるときに、「それちょっとGo Boldじゃないよね」みたいな。逆にやりすぎると「ちょっとToo Boldだよね」みたいな。

(会場笑)

そういったことが日々の会話に出てくるようになるまで、ミッションとかバリューを昇華させるのがすごく重要です。会社によっては、そういうマネージャーの心得17みたいなのがあったりするんですけど、たくさんありすぎても覚えられないし、日常会話で出てくるようになるまで浸透しなければ、それはそのバリューとして意味を成していかないんです。

会社のバリューとは逆に行かないようにコントロールする

中川:うちの会社で大事にしていること、例えば、ちょっとわかりやすい一例でいいますと、KAKEHASHIは医療の会社なので、医療をよりよくしていこうみたいなところって、自分が死ぬほどきつくて働いている状況だと、社会のためによりよいことを考えられなくなっちゃうと思うんですね。

家庭だったり、自分がイキイキと働ける私生活を両立できるような働き方をすることを、ひとつ大事な価値観に置いています。

例えばこういう価値観だと、スタートアップに来る人ってみんなモチベーションが高いですし、成長したい意欲が強いので、ついつい長時間労働になっちゃったりするんですよね。

誰かがめちゃくちゃ働いて成果を出していると、それが他の人も「あ、僕もがんばんなきゃ」みたいになって、どんどん長時間労働になってっちゃう。

例えば、そういうピアプレッシャーみたいなものをどう断ち切るのかが大事だったりします。そういった場合だと、例えば「このミーティング、もうなくてもいいんじゃないの?」みたいな話をしたり、「もっと短時間でできる方法あるんじゃないの?」と、ディスカッションを想起させたりだとか。

そういったかたちで、暗黙知のうちに会社のバリューと違う方向に進んでいってしまう人間の傾向を、経営陣がかなり意識して止めにかかることをしていますね。

ジェームス:なるほどです。ありがとうございます! 他、ご質問ある方いますか?

社内部活がカルチャー醸成に一役買う

質問者4:従業員の方の中で流行っていることとか、なにか会社のカルチャーに影響を与えているようなことってありますか?

青柳:すごく部活が多いです。Slackでたくさんいろいろな部活が立ち上がっていて、会社がそれを積極的に支援しています。

会社が鹿島アントラーズさんのスポンサーをやっているんですが、アントラーズさんのホームスタジアムで東京・仙台・福岡のメンバーが集まって運動会をやったり、僕も再来週くらいにゴルフ部とかの集まりに行ったりします。麻雀部とか、辛い火鍋部とか、ウイスキー部とかいろいろな部があります。そういうところを奨励するというのを、やっています。

ジェームス:火鍋部、ぜひ参加させてください。

青柳:はい。一緒に行きましょう。超辛いですよ(笑)。

ジェームス:大丈夫です。

宮田:言われちゃったんですけど、うちも部活ですね。80人なんですけど、40部活くらいありまして。

(会場笑)

キャンプ部とか登山部みたいな、まじめな部もあるんですよ。

ジェームス:キャンプは多いイメージですよね。それ宮田さんだけ?

宮田:いや、そんなことない。

ジェームス:そんなことない。

宮田:あと変わった部活だと、マグロ部とかウナギ部とかラーメン部とか、いっぱいあります。それ以外だと、Slackがコミュニケーションの中心になってるんですけど、カスタム絵文字といって、会社オリジナルの絵文字を作れるんですよね。

勝手にみんなが作っているんです。びっくりしたんですけど、オリジナルのだけで1,600絵文字登録されていました。というくらい、みんながSlackで遊ぶことを止めないですし、推奨しています。

あと、我々は個人情報を扱っている会社なので、最近「セキュリティ意識を高めましょう」みたいな課題があったんですよね。会社の中でメンバー主導で2つのことが始まりました。1つはまじめなやつで、セキュア手当を作ったんですよね。ワンパスワードとか、パスワードを管理するツールを使う費用を会社が持つことがメンバー主導で始まりました。

もう1個もメンバー主導で始まったんですけど、パソコンをロックせずに席から離れている人のパソコンのSlackに、いたずらしていいというのがあります。例えば、僕がロックかけ忘れてトイレに行っちゃったりすると、「ヤッホー、社長だよ。みんな元気?」みたいのを書かれちゃったりするんですよね。

「セキュリティアウト」という絵文字がつけられて、そういう絵文字が作られたら、特定のチャンネル、ログが残っていくという。まじめな制度も作りつつ、遊び心で習慣をつけていこうみたいなのは、けっこうあります。

結果、僕は自宅でもパソコンを開いてトイレに行くときに「あ、ロックし忘れた」となりました。遊び心で課題解決みたいなのをよくやる会社ですかね。

ジェームス:へえ、わかりやすい。いいですね。

場所が離れてもカジュアルに楽しめるか

中川:確かにうちの会社もけっこうリモートワークの方が多くて、小豆島に住んでいるエンジニアがいたり、山梨に住んでいる薬剤師が働いていたりする環境なんで、Slack上でいろいろやりとりするんですね。

うちのSlackは、けっこうおもしろくて、昨日10月1日だったんで「天一(天下一品)の日」といって、天一が安くなる日だったんで、「みんなで行こうぜ」とかいって、東京の各種いろいろなところでみんなラーメンを食べた画像が上がりまくって、すごい盛り上がるみたいな、そういうのありますね。

やはり、いかにオンライン上だったとしても、場所が離れてもカジュアルにお互いに楽しみ合えるか、みたいなところはけっこう重視しているかなと。

ジョーダン:Zehitomoはまだ人数が少ないので、部活というかたちではありませんが、筋トレ好きが集まってゴールドジムに何人かで行ったりしています(笑)。あとは、メンバーが増えるたびに、Slackで使うスタンプを人数分増やしてくれるメンバーがいたりします。

勤務時間での工夫は、ウォーキングミーティングを増やそうとしているんですね。会議は、たまに画面を見てやらないといけないときもあるんですけど、そうじゃない場合は天気が許すときは外で歩きながらすることもあります。

他には会社の福利厚生として、Zehitomoのサービスが月1万円分使えます。パーソナルトレーナーを頼んだり、ヨガの先生を頼んだりできます。

ジェームス:僕もウォーキングミーティング派ですね。他に質問ありますか?

チャレンジャー精神を常にキープするには?

質問者5:やはり、スタートアップというと、仮説、検証、トライアンドエラーをくり返してどんどん大きくなっていくと思います。大きくなるにつれて、保守的になるところもあると思うんですけど、チャレンジャー精神を常にキープする、もしくは育む方法というのは、どう取り組んでいますか。

ジョーダン:一番重要だと思うのは、ハングリー精神がもともとあるかどうか。スタートアップの最初のステージで入社する場合、9時から5時まで言われたことをしながら働きたい人とは、ちょっとマッチしにくいと思います。最初のほうは給料は決して高いわけではありませんが、会社が大きくなるとともにもっともらえるようなります。

ですが、最初は安い値段で会社の株がもらえるので、会社が100倍とか1,000倍とかスケールしたときには、給料が関係なくなるくらいの大きな数字になる可能性があります。仕事のやりがい以外にも、そういったモチベーションを与えることで、みんなの会社へのオーナーシップをより高めるようにしています。

また、四半期ごとに、日々の仕事のプロセスに対して徹底的なフィードバックをすることで、モチベーション高く取り組める環境を作ることが重要だなと考えています。

宮田:まず、評価制度のなかに、「ワイルドサイドを歩こう」という大胆な行動に応じて評価するものがあります。あと、失敗したことをどうするかはけっこう難しいと思っているんですよね。

うちの会社だと、毎週1回全社ミーティングみたいなものがあるんですけど、そこで大失敗みたいなやつは、みんなで共有して「ナイストライ」みたいなやつをやっています。失敗すると盛り上がる。

もう1個、半分くらいの社員には言ったんですけど、再来週から、私がオフィスを飛び出してワンルームマンションを借りて、新規事業を作るというのをやりにいきます。

ジェームス:ちなみにこれは、株主総会のたぶん1時間後になんか……。

宮田:ああ、そう。先週の木曜日に話してて、「いつまでに新規事業作るの?」「あ、考えます」と言って、その1時間後に「ワンルームマンション借りて、再来週から行きます」と言いました。

ジェームス:スピード感がすごいなと思います。

宮田:昨日、内見に行ってきました。渋谷駅徒歩12分、3階エレベータなし、というのを社長がやるぞとなると、多少アグレッシブな背中を見せられるなと思っています。経営陣も「事業が伸びてきた、安心」じゃなくて、「忘れてないよ、そういうこと」というのを、やっていきたいなと思っています。

ジェームス:じゃあ、そろそろ時間だと思いますので、以上でパネルディスカッションを終了とします。ありがとうございました。

(会場拍手)