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「楽しさ重視」「超自由」なのにヒットを生み出す、サイボウズ式編集部のチームワーク術(全2記事)

2019.01.16

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「サイボウズ式」は少人数で、メンバー全員兼任状態——藤村編集長が語る、逆境のチームビルディング

提供:サイボウズ株式会社

2018年11月7〜8日、幕張メッセにて「Cybozu Days 2018 Tokyo」が開催されました。サイボウズ株式会社が毎年開催している本イベント。今年はテーマを「楽しいは正義」とし、全国4会場にて豪華ゲストによるトークイベントやセッション、展示などが行われました。本パートでは、サイボウズ式編集長・藤村氏と、新潟で週2日のリモートワークをする竹内氏が登壇。老舗オウンドメディアとして有名な「サイボウズ式」の試行錯誤のチームづくりについて語りました。

「サイボウズ式」編集長の藤村氏が登壇

藤村能光氏(以下、藤村): みなさま、こんにちは。今日は「『楽しさ重視』『超自由』なのにヒットを生み出すサイボウズ式編集部のチームワーク術」というかたちで、40分講演をさせていただこうと思います。(スライドを指して)こちらは、Cybozudays全体のハッシュタグの「#cybozudays」。あと、「#サイボウズ式」というハッシュタグもございます。

これまでいろいろイベントをやってきましたが、もしよろしければこういったハッシュタグをつけて、今日お気づきになったことやご感想などを投稿していただけるとうれしいです。なお、こちらのスライド・講演内容は、すべて写真撮影オーケーです。なにか気になる点があれば、ぜひ写真も収めていただけるとうれしいです。

自己紹介です。私は藤村と申します。サイボウズ式の編集長をしておりまして、編集長に就任してから4年になります。仕事としましては、会社のブランディングをする、会社の価値を伝えていく仕事を4年ほどやっております。その前にはサイボウズで、サイボウズLiveという無料グループウェアのマーケティングをしていました。

サイボウズに転職してくる前は、メディアの編集記者をやっておりました。ですので、働き始めてからずっと、コンテンツやメディアを通じて、会社やサービスの価値を伝える仕事をしているわけです。本業はサイボウズ式編集長なんですけれども、複業をやっております。

サイボウズは、個人がどんどん自立して会社に囚われずに仕事をしていく、生きていくことを目指して、複業自体をオーケーにしています。私もこういったメディア運営のアドバイザーや、イベント登壇、コミュニティ活動などをやらせていただいております。では、今日一緒に登壇していただく、竹内から自己紹介をさせていただきます。

本業は新潟のNPO法人、複業はサイボウズ式の編集者

竹内義晴氏(以下、竹内):みなさま、こんにちは。竹内でございます。いま、藤村から本業と複業という話がございましたが、本業は新潟でNPO法人「しごとのみらい」というものを経営しています。

サイボウズでは、複業として週2日間、新潟からリモートワークで働いています。コーポレートブランディング部には2017年5月から(在籍していて)、サイボウズの複業採用が始まったのが去年の1月ですから、いまちょうど1年半くらいになります。

今日は藤村と一緒に、サイボウズ式の編集部の中、そしてチームビルディングがどうなっているのか、どういうふうにツールを使っているのか、という辺りをみなさまと共有していきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

藤村:こちらがサイボウズ式(のWebサイト)です。唐突に聞いてみたいんですけれども、みなさまの中で、サイボウズ式を一度は読んだことがあるという方は、どれくらいいらっしゃいますか? 

(会場挙手)

あ、すごい。ありがとうございます。すごく勇気づけられました。

竹内:うれしいですね(笑)。

藤村:はははは(笑)。よかったです。サイボウズ式は、2012年5月にサイボウズが始めたオウンドメディアです。「新しい価値を生み出すチームのための、コラボレーションとITの情報サイト」。これがサイボウズ式の存在理由になっています。

サイボウズ自体が、チームワークあふれる社会を創る、チームワークあふれる会社を創ることを、ビジネスの理念にして企業活動をしています。そういったビジョンに向かっていろいろな価値を伝えていくために、サイボウズ式を立ち上げました。

実際、オウンドメディアの運営は7年目になっております。サイボウズ自体が(創業してから)20年、21年の会社なので、実はそのうちの3分の1くらい、このメディアを運営しています。なので、オウンドメディアの業界では、ちょっとした老舗になっている感じです。

チームワークや働き方がメインテーマのオウンドメディア

藤村:先ほどのビジョンにもあったように、チームワークや働き方をメインテーマにしておりまして、サイボウズの製品情報はほぼ出てこない。そういったちょっと特殊なタイプのメディアになっています。その記事本数が800本くらいありまして、もうすぐ1,000本に到達するかなという感じです。月間15万人の読者の方に読んでいただけるサイトになってきました。

最近ですと、サイボウズが20周年のタイミングで、働き方改革に対して一石を投じるようなメッセージをアニメ動画と共に出しました。こちらの「働き方改革、楽しくないのはなぜだろう。」というアニメ動画の裏側ですとか、このメッセージはなにを伝えたいのかを、さまざまな識者の方に取材させていただいて、それを記事として展開する。

そういった取り組みもやっておりました。あと、やはりサイボウズの社長である青野(慶久)の考え方がけっこうおもしろいなと。

私も中の人なんですけれども、そのバイアスを外してみても、青野の考え方や価値観はおもしろいなと思うので、彼にいろいろな人と討論・お話をしてもらって、それを記事にするといった取り組みもやっております。

その中から生まれて、すごく大ヒットした記事が、「大事な商談の日なのに、保育園に預けられない──両親の代わりに営業チームで子守をした話」です。実は弊社の営業部の者が、どうしても自分が行きたい商談があるんだけれども、お子さまが病気になってしまって預けなければいけないと。

自分はどうしてもお客さまにしっかりとした提案をしたいということで、提案に行っている間に、そのチームの上司と新入社員の部下が1時間、お子さまの子守をする。そういった、チームで営業活動・仕事をするといったところを取り上げた記事になっていて、こちらが数万ページビュー見ていただけました。

こういったかたちで、サイボウズが大事にしているチームや働き方を取り上げて、それを記事にしていくという流れです。結果として、売上や採用にも長年かけて貢献するようなメディアになってきたなと思っています。サイボウズ式をご覧になった方が、サイボウズのクラウドサービスの導入を決めてくださったり。

楽しく、自立した状態で、自由に働けるチームを作る

藤村:あと、採用にすごく貢献するんです。新入社員で入ってこられる学生の方や、中途採用で来られる方が、サイボウズ式を事前に読んでくださっていて、サイボウズの価値観・ビジョン・考え方といったものをしっかりと自分の中で解釈した上で面接に臨む。

こういった動きが起こっていて、受かった人はすべからくサイボウズ式を読んでくれている。そういった状態が作り出せるようになってきました。

そういうサイボウズ式なんですけれども、今日は「楽しさ重視」「超自由」なのに、ヒットを生み出す編集部のチームワーク術についてお届けしてみようと思います。

実は「自由だから成果が出るーサイボウズ式編集長に聞く、『楽しさ重視』のメディア運営術」という記事がすでにWebには上がっておりまして、こちらの内容をもとにした話になっております。

ソフトウェアの会社なのに、サイボウズ式というメディアを運営する。ぜんぜんやったことがないチーム・事業・仕事で、どういうふうにチームを作っていけばいいのかと考えた時に、僕はこの辺りが大事だなとすごく思ったんですよね。

今回のCybozuDaysのメッセージにもある「楽しさ」。楽しさを重視した仕事をしていこう、チームを作っていこう。こういうふうに思いました。そういったチームには、みなさまが集まっています。チームの人、個人、みんなが多様です。1人として同じ人はいません。違う人です。

そういった人たちが自立をしながら、自由に自分らしい発想で仕事をしていく、企画を作っていく。こういったものがメディアの価値を高めることに繋がるんじゃないかと思いました。「楽しく、自立した状態で、自由に」。この3つを担保するための真逆にあるものは、管理です。

やっぱり管理って、ぜんぜん自由がないですし、仕事をしていて楽しくないですよね。私も一応編集長なので、チームを見る側なんですけれども、管理するほうはすごく嫌です。人を管理して楽しい仕事ができることはまったくないです。そして、僕がメンバーとして働いていたときも、管理されるのはものすごく嫌でした。

管理された瞬間になんだか窮屈な気持ちになってしまって、「自由な発想ができないな」なんて思っていたんです。そういったところから、管理をしないようにしようと考えました。

そして、後ほど竹内から働き方の紹介がありますが、働く時間も場所も、ぜんぜんバラバラな人が集まって、チームを作っています。そういった中で、時間や場所に囚われずに成果を出せるチーム作りが必要になるのではないかなと思っていました。

サイボウズの「多様過ぎるワークスタイル」

藤村:ただ、ここに至るまではけっこう、自分自身もチームを作るのにも紆余曲折・試行錯誤があったなと思っています。まさに、ソフトウェアの会社で編集部という、ぜんぜん作ったことのない新しいチームを作るので、もう本当に苦労の連続だったなと思います。とくに、少人数のチームなんです。

かつ、僕たちはコーポレートブランディングという部署にいるんですけれども、それぞれのメンバーが広報活動をしていたり、NPO支援をしていたり、はたまたアニメ制作・動画制作などをしていたりと、みんながみんな、メディア専任でやるわけではないんです。

むしろ、チームのメンバー全員が兼任状態で、メディア経験も少ない。そういったチームをどういうふうにして価値が出せるようにするか、と考え続ける日々でした。

あとは、「100人100通りの働き方」です。今日の基調講演でもあったと思いますが、サイボウズ自体は100人いれば100人違う。みんなが多様です。そういった中で、個人個人の働き方を主張して、共感していただき、チームの中で成果を出す。そういった取り組みが必要になってくる。

だから、いよいよ働き方も時間もバラバラ。かけるリソースもバラバラ。そういった人たちが集まるチームになってきた中で、成果を出すためにどうするかを考え続ける日々でした。

これがまさに僕たちの部署のみんなの働き方なんです。「多様過ぎるある日のワークスタイル」ということで。私はけっこう朝型なので、「朝の7時から在宅で仕事をして16時には終わります」という者もいれば、竹内のように新潟で在宅勤務をしていて、「週に2日だけリモートで働きます」といった者もいます。

編集部の明石(悠佳)は複業もしていますので、「午前中は在宅で勤務をして、午後から出社するんですけれども、途中複業で抜けます」とか。こういったメンバーもいたりするチームです。まさに100人100通りですよね。そういったことを考えながら、チームを作っていきました。

チームの生産性を高める「心理的安全性」とは何か

今日は、主にこの2つのお話をします。チームの風土を作り、ツールによってチームを変えていく。これが、今回みなさまにお伝えしたいことです。自立した個人が集まって、楽しさ重視なんだけれども、結果として成果が出ている。こういった風土を作る。そして、時間や場所に囚われない働き方をする。そういったチームが成果を出す。

こういうふうに、チームをどんどん変えていくことを考えています。風土を変えただけですと、チームはなかなか変わりません。その風土を支えるツール、ITの仕組み(が必要)です。これを使って、どんどんチームが良くなっていく。

そういう試行錯誤をしていました。なので、楽しく雑談や相談ができる場づくりなどをツールでやりたいなと思っていて、その辺りのお話をしようと思います。

これが風土作りに大切なことです。僕が1つだけポイントを挙げるとすれば、「心理的安全性」です。実はGoogleさんが研究をして発表した、チームの生産性を高める唯一の方法は、チームの中で心理的安全性を作り出すことだと言っております。

心理的安全性がなにかと言うと、そこにいる社員一人ひとりが、会社で本来の自分をさらけ出せること。そして、さらけ出した自分を受け入れられるチームがあること。この2つが担保されることによって、チームの心理的安全性が作られ、それによりチームの生産性が高まるという研究結果なんです。

自由と成果を両立するための3つのポイント

藤村:この心理的安全性のポイントは3つです。チーム内でほかのメンバーに対する心遣いをしっかりと持つこと。そして、自立した個人が集まって仕事をしている。個人というものはバラバラかもしれません。多様とも言えます。そういった人たちの働き方や発言一つひとつに共感すること。

そして、多様な人がいれば、その多様な考え方には背景があります。それを考えるに至った経緯があります。そういったものをしっかりと理解してあげる。この3つが、心理的安全性を保つと言われているんです。

もしみなさまのチームにこの3つがあれば、チームメンバー同士が信頼しあって、「僕がそこにいて、自由に振る舞ってもいいんだ」と思える。安心・安全(な状態)になれる。その結果、失敗を恐れずに勇気を持って自分の能力を最大限に発揮できる。こういったものが実行されるんじゃないかというのが心理的安全性です。

私もこのサイボウズ式編集部を作るときは、心理的安全性を担保した状態で、チームで成果を出すにはどうすればいいかを、ずっと考え続けてきました。

そういう感じでチームの風土を作ってきたんですけれども、本当に「自由と成果」は両立できるのかは、けっこう疑問をもたれているかと思います。「プレゼンなんて、どうせいいことばっかり言ってるんでしょ」とか。そういうふうに思っている方もいらっしゃるかもしれません。

ですので、今回は時間と場所に囚われずに、自立して自由な働き方をしている竹内が、実際、チームをどういうふうに感じるかの本音を聞いてみたいと思います。竹内さん、ぜひ、本音でよろしくお願いいたします。

サイボウズ初の「複業採用」で入社した竹内氏の不安

竹内:はい、わかりました。藤村から(お話が)あったように、いままでのお話をお聞きになって、「それはサイボウズだから」「多様な働き方だから」ということをお感じになっている方もいらっしゃるかもしれません。

一方で、私も週2回働くという、かなり特殊な働き方をしたからこそ、ここ1年くらい不安や悩みを感じながら仕事をしてきました。ですから、その一端でもなにか持ち帰っていただければいいなと思っています。

では、改めまして私の働き方についてご紹介いたします。新潟が拠点で、昨日新潟からまいりました。週2日勤務で、9時から18時まで働いておりまして、完全にリモートワーク。月1回だけ東京に出勤して、必要な時はテレビ会議をするようなかたちで働いています。働き方の特徴としては、物理的に離れておりますので、基本的には業務や時間はそれほど管理されておらず、裁量で働いております。

私自身、複業採用ということで、去年の5月から働き始めたのですけれども、実際にこのような働き方をしているのは、弊社では私が初めてでした。そもそも複業採用とはどういった働き方なのか、あるいは新潟という離れている環境で働くことが、実際可能なのかもわからないまま申し込んだ、という経緯があります。

当然、初めて入るチームですから、仕事のやり方もわかりませんし、サイボウズの製品自体もほぼ使ったことがないという環境で、すべて初めて尽くし。最初の課題として、入る前、あるいは入った直後も感じていたのは、遠隔地でコミュニケーションができるのかどうか。

あとは、初めての環境でまともに仕事ができるのかどうか。最後に、週2日でどれだけの仕事ができるのか。この3つに最初の課題として取り組んだわけです。

これらを解決するために、最初からいきなり「離れて働いてください」と言われてもなにもわからないので、最初の2ヶ月間は人間関係の構築や業務の進め方の把握、そしてツールの使い方の習得をするために、出張というかたちで週2回東京に来て、2ヶ月間過ごすことになります。

すべてのやり取りをオンラインで行う理由

竹内:サイボウズで働き出して、すぐに驚いたことがございました。いくつかありますが、最も驚いたのは、基本のやり取りはすべてオンラインなんです。極端なことを言うと、隣に座っている人ともオンライン。あと、紙にメモを取らないんです。だからといって、まったくメモを取らないのではなくて、いつもパソコンを持ち歩いてカタカタ打っているような働き方。

3つ目が、社員が(会社に)いない。サイボウズ自体、働き方が自由なので、「今日は在宅で働きます」ということが自由にできます。最もひどかったのが、私がわざわざ新潟から来ているのに、ほかの社員が全員在宅で、「なんだこれ」という時もありました。こういう環境の中で始まった私の複業生活はどうなるのかという感じがしました。

サイボウズには「チームワークあふれる社会を創る」という理念がありますが、「そもそもコミュニケーションが少なすぎるんじゃないか」とか、あとは直接話したほうが早いんじゃないの? 隣の人と会話しようよ」とか。あとは「社員がいないと仕事を教えてもらえないよ」といった不安を抱えながら私の仕事が始まりました。

ただ、なぜこういったスタイルが行われているのかに気づくのに、それほど時間はかからなかったんです。すべてオンラインで行われるのには理由がありました。その理由を一言で言ってしまえば、場所の制約をなくすということです。

物理的に離れた環境で働く上での工夫

例えば、メモを取らずにすべてをパソコンで記録しているのは、オンライン上で共有するためです。仕事(に必要な情報)は、すべてオンライン上にあります。ですから、東京のオフィスにいても、新潟で働いていても、仕事の情報やツールには、まったく変化がありません。

あとは、働く場所に限らず、情報やノウハウが常に共有されているので、気持ちの上でも、「本当は東京ではこんなことが行われているんじゃないか」といった不安がまったくなかった。コミュニケーションの取り方が基本的にオンライン上なので、新潟にいても東京にいても同じということです。

ですから、こういうものもけっこう理にかなっているのかなと思うことができて、不安感が徐々に薄れていくことになりました。

ただ、やはり物理的に離れておりますので、働く(上で必要な)工夫はあります。離れているからこそ、なにをしているのかわからない。だからこそ、見せる努力は意識的に行っております。日報や日々の業務のちょっとしたことや、成果物などは、常日頃オンライン上に上げるとか。

あとは離れておりますので、時間的に働きすぎるおそれもあります。そういったものも自己管理ではありますけれども、「今日はちょっと長く働きました。その代わり明日ちょっと短めにします」というのをオンラインで共有するなど、私もチームも格差が少なくなる努力をしています。

このような働き方をはじめて、2ヶ月過ぎたころには、「これだったら、たぶん新潟でもいけるな」という感覚を掴むことができました。

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