ブルーライトの悪影響を解説

ハンク・グリーン氏:想像してください。あなたは料理番組『グレート・ブリティッシュ・ベイクオフ』の最新シーズンを一気見しています。

ところが時計を見ると、突如すでに夜中の1時であることに気がつきます。本来なら2時間前には寝ていなくてはならないところですが、まったく眠くありません。

みなさんは、パソコンのスクリーンなどから照射される「ブルーライト」という人工光源が、体内時計を狂わせることを聞いたことがあるでしょう。しかし、夜にスクリーンを見ると、本当に眠れなくなるのでしょうか。単に、ポール・ハリウッド(注:同番組の出場者)の目が、青く美しいからではないのでしょうか。

もし、スマホやパソコンをベッドに持ち込んで、寝る前にもう一本だけ『グレート・ブリティッシュ・ベイクオフ』を視聴しようとすれば、本当に夜の良質な睡眠がとれなくなるのでしょうか。

さて、この2つの質問の答えは、どうやら「イエス」であるようです。さらに、この問題を回避することは、たいへん難しいようです。

体内時計、もしくは「概日リズム」は、目の中にある神経の一種、網膜神経節細胞により調整されています。

この細胞は、薄暗くなるとメラトニンというホルモンを放出し、人体に睡眠を促します。メラトニンは、ほかにも代謝を低下させ、体温も下げるなどの働きも行います。

さて、この網膜神経節細胞は、とある色に強く反応します。昼の光に多く含まれる、波長482ナノメートルのターコイズブルーです。

スクリーンもまた青い光を照射するため、これを受け取った網膜神経節細胞は、今は昼だと勘違いし、眠る時間ではないと判断してしまうのです。

研究によれば、人が眠る前に青い光を浴びてしまうと、トータルの睡眠時間が短くなり、夜中に頻繁に起きてしまうようです。こうなってしまうと、朝に一杯コーヒーを飲んだくらいでは修正できません。また、概日リズムが長期間にわたって狂うと、うつ病やガンの発症など、健康へのさまざまな悪影響があるという研究結果も出ています。

ところで、ここで注意すべきなのは、ブルーライトについての研究はすべて、観察研究であることです。つまり、研究するにあたっては経過を観察するのみであり、光の強さを調整するなどして睡眠への悪影響を調べることはしていないのです。さらに、研究の多くは小規模だったり、被検体が人間ではなく、動物だったりしています。

つまり、毎晩画面をスクロールしていても、それが実際に睡眠障害や健康被害につながるという確証は得られていないのです。ただ、関連性があることはわかっています。

現実問題として、日が落ちてからスマホやパソコンを使わないことは無理な話で、むしろよく使う時間帯であるといえます。そこで、日が暮れるとブルーライトを軽減させるソフトウェアを使う、ブルーライトを遮断する色付きの眼鏡をかけるなどといった選択肢が考えられます。

残念なことに、現在の研究では、こういったソフトウェアや眼鏡に効果があることを、矛盾無く立証できていません。ブルーライトを遮断することに、まったく効果がないわけではありませんが、現段階では、このようなアプローチの効果を立証するには、不備が多すぎるのです。

もうおわかりでしょうが、ブルーライトの悪影響とその対処法については、まだまだ研究は途上です。しかし、ステイシー(注:同番組の出場者)が降板するか否かがどんなに気になったとしても、テレビの見過ぎをもう少し早めに切り上げることは、身体には良いことは間違いありません。きっと、身体はあなたに感謝することでしょう。