2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
OKRを事業成長と紐づけるために(全1記事)
提供:パーソル プロセス&テクノロジー株式会社
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西村晃氏(以下、西村):改めまして、Sansan株式会社の西村と申します。どうぞよろしくお願いします。
(会場拍手)
ちなみに、(メルカリの)矢野(駿)くんは元から友人で、( HITO-Linkの)伊藤さんは高校の予備校の同級生です。今日は、そういう素敵なご縁から登壇させていただくことになりました。簡単に自己紹介をさせていただきます。35歳、アラフォーになりました。Sansanには3年前に入りましたが、それまでは個人事業で人事コンサルなどをやっていました。
僕の個人的な(キャリアという)観点にいくと、人事で入って個人向け名刺アプリ「Eight」の新規事業の責任者をしていました。(会場には)人事の方も多いと思いますが、「Eight Carrer Design」というサービスが1月にローンチされますので、ぜひご利用ください。
(会場笑)
また(2018年の)7月から人事部に帰任して、いまは(採用全体と)ハイクラスの採用を統括しています。あとは個人的に、プロボノとしてコーチングや他社さまの人事コンサルティングにも入らせていただいています。
みなさま、Sansanはご存知でしょうか? 頷いていただいてありがとうございます。一昨々日にまた30億円の調達を発表させていただいて、いまは450名ぐらいの規模になってきています。
私が入った3年前が150名でしたので、この3年で3倍ぐらいになっています。さっき聞いたら(メルカリは)1,300人ぐらいいるらしいので、ぜんぜん比べものにならないんですけども、規模としては一気に拡大をしている会社でございます。
(スライドを指して)サービスはこんな感じで、テレビCMを見ていただいた方もいらっしゃるかなと思っています。
西村:OKRという観点でいくと、これはみなさまもご存知だと思うのですが、「どれぐらい熱いOを設定できるか」という勝負だと思っています。みなさまと前提をすり合わせたいと思いますが、せっかくなので、撮影禁止で、実際の当社のOKRを一部マスキングしてお見せしようと思っています。
CompanyのOKRが「突破」。すごくないですか? これは社員は全員わかるんですけど、僕らは「突破しきれ」というようなところで言うと、「グローバルに行くぞ」というのがミッションだったりします。
これはCompanyのOKRなので、Oはかなりエモい感じになっています。(Sansanは)インドなどにも展開しているので、(OKRを)全部英語にしています。Breakthroughというのが僕らの大きな目標だったり、新たな価値の創出というようなかたちで、新しいサービスを立ち上げていきましょう、というOを掲げています。
Divisionに落としてくるとかなり生々しいので、数字はマスキングしています。例えば法人向けのSansan事業部が、どんなOKRでやっているかと言うと、「世界に挑めるように」と書いたりしています。
OKRの前提のところで、さっき矢野くんから運用のディテールの話はあったので、僕らはOKRに込めている思いというか、なぜこれを導入したのかというところをお話しします。僕らの会社は、みんなが「ミッションドリブンだ」と言えるくらい、ミッションを大事にしている会社なんです。
西村:なぜかと言うと、みなさまの会社もいろいろなサービスをされていらっしゃると思います。名刺管理については、僕らは実際のシェアなどを鑑みてもナンバーワンだと断言できると思っていて。要は世の中に学ぶべきプラクティスが多くないんです。
「僕らがどういう世界を作りたいのか」というミッションが明確でなければ、事業のグロースのスピードは、そのミッションの定義により変わってしまう。それぐらい、僕らはミッションを大事にしていますということが大前提になっています。まずここが曖昧なままだと、OKRでの運用として、いろいろな手法を取り入れてもあまり意味がないのかなと個人的には思っています。
僕らのミッションの前提をご案内すると、「風を起こす側に行きたいよね」と(いうことです)。(スライドを指して)この図はなにを表しているかと言うと、スマホ市場に参入するのではなくて、スマホ自体を作って市場を作る。これが僕らにとっての事業という定義になっているので、風を起こす側でありたいと思っています。
ですので、多くの企業さまが、組織があって、事業があって、ミッション(がある)という図かと思うんですけれども、(Sansanは)逆になっています。僕らは最初にミッションがあって、事業があって、組織があります。このミッション達成のために、適切なプラクティスをOKRでやろうということで、OKRを導入しています。
OKRとはぜんぜん関係ないなと思いつつも、ミッションはすごく重要なのであえて申し上げると、上にある(旧)が僕らのもともとのミッションでした。「ビジネスの出会いを資産に変え、働き方を革新する」という(旧)ミッションから、いまは「出会いからイノベーションを生み出す」というミッションに変わったんです。
この過程で、「カタチ議論」(というものをやりました)。「Sansanのカタチ」というカードがありまして、これは本当に全社員でやります。全社員をチームに分けて、4フェーズの中で、各フェーズで1時間の議論を3回して、飲み会にもメンバーで行くというのをやるんです。本当に多くのリソースをかけて、ミッションを見直しているんです。
そういう意味では、そもそもミッションがみんなでグリップできているものじゃないのに、「Howでなんとかしよう」ということは、僕は人事としては無理だと思っています。超大企業さんだと難しいかもしれないんですけども、1,500名ぐらいの規模までは、こういったミッションをきちっと固めるところからスタートするのかなと思っているところでございます。
西村:Sansanは、OKRを2015年12月から導入したので3年目です。私は2015年11月に入ったので、最初の11月~12月だけはミニMBO(Management By Objective:目標管理制度)をやっていますが、その後の目標設定は全部OKRというのを、Sansanで経験しています。かなり紆余曲折がありましたので、これはパネルで詳しく話せるかと思うんですけれども、最初は生々しくスプレッドシートでやっていました。
結果、スプレッドシート数がすごい数になりまして。「これは無理だ」ということで……実はSansan出身の方が「Resily(リシリー)」というOKRのツールで起業していまして、基本的に当社はそのツールで運用をしています。 HITO-Linkさんのド競合なのですが……。
(会場笑)
そういう経緯もあるので、「Resily」を使っています。それでなにが変わったかというところが重要かと思います。(スライドを指して)これはSansan事業部(のケース)で、左側がビフォーで右側がアフターです。
最初は、OKRの序盤と比べていまはなにが変わったかというふうに捉えていただきたいと思います。要するに「3ヶ月でOKRを見直すぞ!」という手法にとらわれまくって、中長期で(目標を)描けないという、わりとしんどい時期が長く続いたと聞いています。かつ、部門も多くありますので、部門横断で足並みが揃わなかったのが序盤の悩みでした。
そこで、中長期での目標設定ができるように意思決定をしました。評価に微妙に紐付いているため、どれだけ紐付けないかという取り組みをしたり。ですので、3ヶ月ごとに全体での優先事項のすり合わせを細かくして、徐々に、より大きな「突破」のような目標達成のアクションプランを調整できるようになってきていると思います。これがSansan事業部(のケース)です。
私が新規事業の責任者をしていた「Eight」では、200万人のユーザーがいるんですけど、ユーザーのグロースとマネタイズをする施策が同時に走っていて、OKRを入れたものの場当たり的な部分も多かったのが真実です。
このなかに新規事業でOKRを回されている方がいたら、「目標設定が難しい!」と思うでしょうね。Oが毎週変わることだってあり得ます。その前提でもいいから、「OKRをもとにしてビジョンを描こう」とみんなで意思決定をしました。チーフプロダクトオフィサーといった方に入ってきていただいたり、ビジネスサイドとエンジニアサイドで、OKRを共通言語として議論をしようという文化ができています。
西村:僕が個人的にOKRに触れてきたこの3年間で、自分は新規事業の責任者と採用の責任者をどちらも経験させてもらったんですけれども、事業から見た場合のOKRの肝をあえて言うと、(スライド「状態変化を目的にする」「定量を追いすぎない」を指して)この2つかなと思っています。
定量や目標数値を追いすぎると、ぜんぜんエモくないしワクワクしない。追うことは構わないんですけども、OKR全体としては、どういう状態になるといいのかを目指すべきかなと。例えばSansan事業部であれば、グローバルのSaaSベンダー50位に入るというもの(目標)を持って、どういう状態になりたいのかというところ。そういうことは、みんなで合言葉のように確認しようと思っています。
メンバーによっては目標達成の意欲がすごく強いので、定量をめっちゃ追いますよね。それはそれとして、みんなの志向を否定しないものの、この2つは事業側から見ると重要かなと思っています。
最後に。私もいま人事ですので、人事から見たOKRとしては、「あくまで参考情報としてOKRを評価に活かしましょう」ということを、経営陣を巻き込んである程度意思決定することは重要かなと思っています。
どうしても評価の段階において、大きなOに対して大きなインパクトを与えた方を評価したい。それは評価すべきなんですけど、そうすると「OKRそのものが評価に紐付いている」という現場の理解にもなる。
なにが起きるかと言うと、ちょうど部署と部署の間に落ちているようなミッション、日々の業務を、OKRの評価には関係ないのであまりやりたがらない、ということが起きてしまうと思っています。
なので、あくまで参考情報としてみなさまにOKRを持ってもらって、評価においては客観性を保って、OKRはあくまで参考情報として評価することが重要なんじゃないかとは考えています。
ということで、こんなSansanですけど、正直これからOKRを導入される方は、苦難の道が待っていると思うんです。
(会場笑)
西村:(OKRは)ぜんぜん魔法の杖じゃないので、めっちゃしんどいです。新しいものを入れるときは常にそうだと思うんですけれども、「なぜこんな評価にしたんですか」(という意見が出てくる)とか。そこに向き合ってやるということだと思うんです。
ただ、めちゃくちゃ楽しくなってきます。さっき「ムーンショット」とおっしゃっていただきましたけど、みんなで世界を変えられるような、革命を起こせるような目標を置けるので。部活でも(やれ)ないじゃないですか。高校の野球のチームが「メジャーリーグに行くぞ」とは言えないんですけど、仕事はやっていいですよね。
僕はOKRについて、仕事では「俺らもメジャーリーガーになろうぜ」と言っていいという、すごく楽しい目標設定だと捉えています。みなさまと一緒に茨の道を歩めればと思っていますので、ぜひ今後ともよろしくお願いします。以上です。
(会場拍手)
なにか質問があればお願いします。
質問者1:(評価する際に)どんなふうに客観性を保っていますか?
西村:それは2つあると思っています。1つは、評価は常に1on1で伝えているので、「なぜこの評価になったのか」をかなり明確に言えるようにしておく必要があります。
なにも準備しないまま1on1に入ると、そういうところでわりと「めっちゃOKRに引っ張られていません?」ということがあるので、評価される人の納得感があるように、マネージャーに準備をしてもらうことが1つ。
もう1つは、どうしても定量(的)になるんです。客観性って、けっこう定量側の情報じゃないですか。だけど、僕らは「Values」という7つのバリューがあるので、定量だけじゃなくて、7つの各項目に対してみんなが自分の四半期の活動を振り返ります。
そこにマネージャーのフィードバックが入るので、定量だけに引っ張られずに、自己申告で「こういう行動をしました」「こういうバリューを活かしました」「こういうバリューを大事にしました」という定性の情報を組み合わせて評価するということが1つあります。
質問者1:1on1は義務化していますか?
西村:義務化しています。1on1というのは、評価1on1です。目標設定の1on1と、目標の達成について被評価者が上長にプレゼンテーションをしてもらう1on1と、評価を伝える1on1の3本をやるので、この時期、マネージャー以上の面接はほぼ取れなくなったりします。かなりきついですけど……例えば取締役は30分刻みで全部予定が入っていたりします。そういう意味では、評価の1on1は義務化しています。通常の1on1は、みなさまの任意ということでやっています。
質問者1:結果、ふたを開けると、Oに対する貢献度で評価順は並んでいく(ということですか)。
西村:O自体も、みんなそれぞれ個人のOKRは自分で設定するので、難しいかな……どうだろう。ただ、ビッグOに対して大きなインパクトを与えた人の評価が高くなるのはどうしてもしょうがないと思います。
人事部だとどうしても、定量の目標を持っている人の評価が上振れたりすることはあるかもしれません。例えば、僕はいまハイクラス採用をやっているんですけど、ハイクラスでは(採用を)やっていなかったんです。やっていて初めて、「めっちゃいい人が採れました」となると、やっぱりどうしても評価としては上振れることはあるだろうとは思います。客観性と言いながら、もしかしたら、納得感という言葉に言い換えられるかもしれないですね。他はいかがですか?
質問者2:Company OKRがだいぶ抽象的ですけれども、振り返ったときにそれが達成できた・できないというところをどんなかたちでやっているのか。それから、四半期で回すというよりは中長期ビジョンのような感じなので、どう回しているのかが気になっています。
西村:ありがとうございます。Company OKRを達成したらとんでもないことになるので、「ずっと達成できないかも」というものかなと思っています。役員も、あえてチャレンジングな言葉を使っていると話をしていて、まだ振り返れていません。
「突破する」というのも、代表の寺田(親弘)の感覚値だったりする部分はあって。だから「それでいい」と僕らはある程度納得しています。全部が全部、KRが100パーセントを達成することもあり得ないと感じるのと、ある程度それは「掲げてくれてありがとう」ぐらいの感じです。
(代表が)そんなに野心的な目標を掲げてくれることに対して、僕らはすごくポジティブな感情を抱いています。2つ目は、中長期で大丈夫なのかという質問でしたね。
質問者2:ああ、そうです。
西村:グローバルについては、僕も入社からずっとOにあります。「グローバルの道筋をつける」「グローバルに先鞭をつける」。とにかく、ずっとOに(グローバルということが)あり続けることも、それはそれで会社のメッセージかなと思っていて、「絶対にグローバルに行く」と(思っています)。
僕は入社して3年なので、Oに「グローバル」を置いているものを12回見ています。「これは苦戦しているな」と思うし、「本気でなんとかしたいんだろうな」と思うと、採用マンとしては、そこを突破できる人を採ってやろうかと火が点くので、それはそれで1つのメッセージかなと思っています。
質問者2:事業部のところから個人に落ちてきたときには、もう少し具体的に振り返りをするんですか?
西村:かなり具体的になってきて、定量も入りますし。さっき矢野くんも言っていましたように、KRがビビッドじゃないと評価がしづらいので、そこはマネージャーやリーダーがかなり意識して指導しています。
質問者2:ありがとうございます。
西村:ありがとうございます。
(会場拍手)
パーソル プロセス&テクノロジー株式会社
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