2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
1on1の効果を最大化するためのOS(全1記事)
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司会者: 続きまして、後半パートに移りたいと思います。後半パートは、21世紀学び研究所の代表、熊平から共有させていただきます。
熊平美香氏(以下、熊平):21世紀学び研究所の熊平と申します。よろしくお願いいたします。小金さん、本当に素敵なプレゼンテーションありがとうございました。
実は21世紀学び研究所は2016年から、ヤフーさんのリーダーシップ育成や1on1をお手伝いするかたちでご一緒させていただいています。その関係で今日のイベントに、小金さんにお越しいただきました。
3年前から「本日のようなイベントでご一緒したい」とお願いしていたんですけど、なかなか「ヤフーもまだまだですよ」といったことを言われて(笑)。この日をずっと待っておりましたので、みなさまもきっとたくさん学ばれたと思いますが、私も改めて1on1について学んだな、といま感じております。
簡単にちょっと自己紹介をさせていただきます。21世紀学び研究所というのはなんなんだ、という話も含めて、お話をさせていただきたいと思います。
もともと私は、30代の頭に経営に関わっていました。そのときにリーダーになる羽目になりまして(笑)。リーダーになったときに、「人を変えられない・人を育てられないリーダーは、こんなに悲しいの?」という……なにも自分ではできないということですよね。
人が動いてくれないとできないことをやるときに、人を変えられない。こんなの悲しすぎる、という経験をしています。
それ以来ずっと、どうすれば人が育ったり、会社や人が変わることを実現できるのかということが、人生のテーマになってしまいました。15年ほど前に、GEという会社がジャック・ウェルチを中心に、「学習する組織のリーダーを開発する」というプログラムを作りました。
クロトンビルというリーダーシップ研究所で、リーダーシップの開発を管理職に対してやるというプログラムを、日本でライセンスをもらって展開する機会をいただいたんです。そのときに「これはすごい、私が欲しかった答えが全部そこにある」、と思いまして、「日本の企業に紹介しなきゃ!」とすごく張り切って(笑)。それで、複数の大手の会社さんにご紹介し、展開を始めました。
(今でも)忘れもしないのが、フィードバックというワークショップがあったんですが、みなさまできなかったんですね。観察していなくて、テーマがない。「えーっ、ちょっと待ってください」という感じでした(笑)。
結局外国のプログラムですから、(日本とは)前提が違うんですね。フィードバックをやるのは当たり前、その質を上げるためにどうするか、といったことが紹介されているんですが、そもそもフィードバックの前提になる観察がない。
これは難しいということで、いったんそのプログラムを広めるのを諦めた、という経緯があります。今回ヤフーさんで使っていただいているのは、そのときのいろいろな失敗を含め、それをもとに作ったプログラムです。
なぜ21世紀学び研究所を始めたかと言いますと、私は10年くらい前から、未来教育会議といった企業横断プロジェクトをはじめ、いろいろな教育に関する活動を始めております。教育が変わらないと日本が行き詰まる、と思ったからなんです。
エリートのみなさまと研修でご一緒するなかで、いろいろな素晴らしい知識をお持ちで素晴らしいご意見をおっしゃるんですけれども、「それで、あなたはどうしたいんですか?」と聞いたら、みんながフリーズするということが頻繁に起きたんですね。「これはまずい」「主体性の教育が必要だ」と強く思ったんです。それで、教育や人材育成、組織づくりに関することをやっています。
そうしましたら、世界中の教育が大改革の時代に入りました。2002年に世界中で、教育を変えていくという流れが増えたんですが、その中で、今日の小金さんの話の中にもある「内省」、「リフレクション」というものが、義務教育で卒業するまでに子どもたちが身につけなければならない最も重要なことだ、というふうになっていったんですよ。
それを聞きまして、かつオランダに行ったときに4歳児がそれを実践している姿を見て、「これはまずい」とまた思いました。教育を変えるためには大人がそういうことを理解して実践できないと、子どもに届けられないので、大人からだなと感じました。一度は教育に入ったんですが、もう一度大人の世界に戻って、大人と一緒に学びの力を上げていくことに入れ込んで、21世紀学び研究所となっております。
スライドの真ん中にちょっと書かせていただいていますが、「経済と教育は双子である」というのが、未来教育会議でシステム思考を使って、いろいろなシステムを見ていったなかで結論として置いたものです。
主体性がない、そして画一的な教育(がされている)という話が、教育の問題だと思いましたが、もはやいまの経済界がその画一性の虜になっている。経済界が変わらないと教育も変わらない。そんなところで、いま21世紀学び研究所としては、企業に新しい学び方を広めることを一生懸命やっています。
その中でもヤフーさんとの出会いは、本当に私たちにとってありがたくて。ちょうどヤフーさんがビジョン「UPDATE JAPAN」を完成されたときに、ぜひヤフーさんでやっていただきたい、ということで2016年からスタートしました。だいたい2日間のプログラムで、マネジメント層にリーダーシップと学ぶ力の両方を学んでいただくというプログラムです。自ら考えて行動して、自律的に組織を作るマネジメントを強めていくということをやっています。
実際になにを評価されているかということに関して、代表的な例を2つ挙げさせていただきます。人材開発部部長の池田さんは、「ビジョンを自分ごと化する」ためにどうすればよいかという課題をもたれていたので、「個人が自分の価値観とビジョンをつなげていく」という私たちのプログラムの手法をお伝えしました。「そこがいいね」とおっしゃっていただけました。
もう1人の広告部門の部長の浅野さんは、「1on1によって対話を深めていくときに、価値観レベルで相手の話を聞くという方法が使える」と言っていただけました。一人ひとりのメンバーに対して、個性を理解した上でどうしていこうか、という話がすごくやりやすくなったというご意見をいただいています。
特徴としては5つの「学ぶ力」を土台にしています。中心に認知があります。
『学習する組織』を知っていらっしゃる方は、メンタルモデルのことです。それから動機の源、リフレクション、多様性、対話。この5つの力がまず絶対に必要だということで、ここは部長のみなさまに学んでいただいて、そしてそれを広めていただくというようなことをやっています。
『学習する組織』が元になっていますので、当然ですが、自律的学習者を育てることを命題にしています。その人を育てるということだけではなくて、その人が自律的に育っていくということをすごく重要視しています。
指示・命令型の組織や管理職では絶対にできないので、自律的学習型でいってくださいということでリフレクションやビジョンを共有するとか、動機の源をしっかりと活かすとか、部下が自分で考えることを促進しています。
上司は、「フィードバックをしっかりしてください」とか、「フィードバックがきついので、ちょっと褒めてください」とか、「上下ではなくてフラットな関係で話してください」といった従来とは少し違うことをお願いしていますが、結果的にヤフーさんはすでにそういう文化ができていましたね(笑)。私たちが苦労することはまったくありません。非常に親和性があって、すごくありがたいという感じです。
そのプログラムのニックネームを「OS21」と言わせていただいてます。オペレーティングシステム、OSの部分を変えていかないと、アプリケーションをいくら載せてもダメだよね、ということで「OS」と名付けました。しかも「21世紀のOS」というふうに言っています。
その中核になるのが認知の枠なんですが、これを「認知の枠の4点セット」と呼んでおります。メンタルモデルのお話です。意見を持つときに、その背景に経験と価値観があるとメンタルモデルは言っていますが、私たちはそこに感情も添えています。
意見を経験・価値観・感情と結びつけて、客観的に捉えるというフレームワークを用意して、これをいつでも使ってくれ、と言っています。これは自分の意見の背景を認識する上でも大事ですし、他者・部下の考えを価値観レベルで深く理解する上でも非常に重要なことなので、これを使っていただいています。
例えば、犬が好きな人もいれば嫌いな人もいる。犬が好きな人は当然ですが、犬を飼ったことがあって、犬がかわいくて、楽しい思い出がたくさんあります。「犬は心を癒してくれるし、かわいいよね」ということを考えています。
ですが、犬が嫌いな人は、犬に噛まれたとか吠えられたという怖い経験があって、「犬に近づきたくないな」と思っている。そういうふうに、認知の枠の4点セットというものはみなさまが意識していてもいなくても、誰もが使っています。それを言語化するということです。
メンタルモデルの感情を紐づけるところがけっこう重要です。なぜかと言うと、人が変われない理由が感情にあるからです。良い経験、悪い経験、いずれにしても心に強く残った経験に感情が紐づいて、その感情、例えば「犬が怖い」という気持ちを手放すことができない。
変化を作っていく上で、自分の感情を認識する、客観視するということが非常に重要だということがわかったので、4点セットにしています。
今回は練習を省かせていただきますが、例えばみなさまが今日の小金さんのお話を聞いて「これを持って帰りたいな」と思った背景にも、当然ですが、「過去にこういう経験があって、こういうことがわからなかったんだよな。それに対してこうすればいいのか」という答えが自分の一番大事にしてることに紐づいてる、ということがあります。そんなことが認知の枠の4点セットで分析するとわかります。
実はそれを使って1on1をやっていただいているんです。ですので、対話のアプローチがより深くなっていきます。
繰り返しますが、人は意見を持つときに、経験とそのときに味わった感情から作られた価値観を使っています。私たちは価値観を語る習慣があまりないので、価値観に対して無自覚でいます。しかし、価値観は判断や行動の基準になって、意見も価値観から生まれています。
人の意見を聞くだけでは、実はその人なに何を考えているかはわからないということですね。その人の考えを本当に理解する1on1をしていただくためには、経験・価値観・感情の部分もしっかり聞き取る、ということをやっていただいています。
それはまさに対話の基本のかたちになります。対話は自己内省、リフレクションで、自分に対して経験・価値観・感情を振り返って、自分の考えの背景を自覚するということです。他者についても同様に共感する、ということがポイントになります。これを実践していくことになります。
自分がまずこの認知の枠の4点セットでふつうに考えられる、発言できる状態にならないと、なかなか面談で相手のことが聞きにくい、といったことになるので、ここに馴染んでいただくというのを、我々は突き詰めています。
みなさまもどうでしょうか。こんな聞き方をしていませんか、という質問です。部下の意見を聞いているんだけど、実は自分の経験に当てはめて聞いている。もし意見しか聞いていなければ、そうなっているわけですよ。解釈を一生懸命しているわけです。こんなことを言っているのかな、という前提は自分の経験で、部下の経験ではないということです。
このレベル感で話を聞いていると、正直部下の経験学習を活かして、才能と情熱を解き放つという1on1はなかなか難しい。ということで、ここが一番、我々のプログラムについて「いいね」と言っていただいたところです。
ヤフーさんで部下の話を聞くときには、自分の経験に基づく評価・判断を保留にして、部下の意見とその背景を聞いてみる。聞いてみることによって、部下が何を大事にしているのか、何を欲しているのかが深いレベルで理解できる。より効率的に情報収集をできるようになります。
次に、ビジョンですね。会社は「ビジョンで人を動かしたい」という願望がありますが、ビジョンというのは動かすものではなくて、自ら動きたくなるものです。自発的動機、内発的動機が絶対に必要になるわけです。私たちのプログラムで言っている「動機の源」とビジョンとを結びつけるということが、役に立つということになります。
我々は21世紀型を目指しているので、指示・命令で動く組織は目指していません。ですから、そういう会社とうちはすごく親和性がないんです(笑)。ヤフーさんのように「自らの意思を持って動こう」という感覚がある企業とは、すごく親和性があります。
自分が大事にしていることがなにで、自分がどんな存在でいたいかを考えていて、なにを実現したいからそこにいて、自分というものと、会社から落ちてくる目標とを結びつけることができて初めて、主体的にそこに立っていることになります。そういう状況を作っていくことを上司はやっていかなきゃいけないし、部下もそれを目指していくことが前提になります。
そのために、「動機の源」を大事にしていただいています。動機の源を見つけるのも実は、先ほどの「認知の枠の4点セット」を使っていただければ簡単にできる、ということになります。
自分の「動機の源」とビジョンを結びつけ、現状とありたい姿のギャップを「埋めたい」と思うことが「ビジョンを持っている」ということです。ギャップを埋めたいという気持ちを湧き上がらせるのが、1on1の役割の1つかと思います。
『学習する組織』では、この学びの欲求を「クリエイティブテンション」と呼んでいます。ゴムが伸びたら縮まりたいと思うように、この現状とありたい姿のギャップを埋めたい、と思う心は、実は誰も持っているんです。それを体験させていく機会を、1on1で作ってやっていただいています。それも、とても評価していただいた点かと思います。
ビジョンは伝えていくものではなくて、それを自分ごとにする対話がすごく重要だということですね。
最後に、リフレクション。まだまだほかにもありますが、今日は時間の関係でこれを最後にさせていただきます。
先ほどから、小金さんのお話でも「経験学習が大事」とおっしゃっていただいていますが、その経験学習にはリフレクションが当然取り込まれていることになります。ここに書いてあるのは、実はOECDが提唱している初等・中等教育で子どもたちが身に付けなきゃいけないと言われているリフレクションの定義です。
前例を踏襲するということ、つまり状況に直面したときに慣習的なやり方や方法を規定通りに適用するということではなくて、変化に応じて経験から学び、批判的なスタンスで考えて動いていくために必要な力。これがリフレクションということになります。
このリフレクションを我々のプログラムではすごく大事にしており、経験学習サイクルを回していく中にこのリフレクション要素をどう取り込んでいくか、ということを考えています。
リフレクションにもいろいろなレベルがあります。結果のリフレクションはみなさまもわりとすると思うんですが、結果のリフレクションをしていても学習は起きません。もちろん必要なんですが、それだけでは起きないということですね。
また、他者や環境をリフレクションしていても、結果は変わらないということになります。最終的にはやはり自分のリフレクション(をしなければなりません)。自分の行動のリフレクションをしている方はけっこういるかなと思いますが、我々が重視しているのはその上のレベル。自己の内面のリフレクションです。
これがけっこう重要です。先ほどの経験学習サイクルの行動を起こす前に、どのようなゴールを持っていて、そのゴールに対する仮説を持っているかどうか。つまり、どういうことをやればそのゴールを達成できるのか、という仮説を持ってるかということが、主体性がどれだけあるかにつながっています。
そこを認知の枠の4点セットでしっかりと可視化する。自分はなにを知っていて、だからこれをやったらうまくいくはずだ、という仮説をもつ。実際にやってみるとその通りになることもあるし、そうじゃないときもある。そうするとそこから学んだり、自分の知らないことに気づくこともあります。
ですから経験を通すと、新たな認知の枠の4点セットが生まれてくるわけです。そのレベル感で経験を内面的に振り返っていくと、結果的に行動がどんどん変わっていくということです。このレベルの高いリフレクションも、1on1でやっていただいているとても重要なことだと思っています。
こういったかたちで、私たちのプログラムは1on1を支援します。2日間のプログラムなので、これ以外にもまだまだあるんです。リーダーとして必要なことを学んでいただくようなプログラムになっています。
プログラム全体としては、進化し続ける人と組織のOSを磨いていただくことになると思います。変化に適応して、自ら進化し続けることに必要な「ツールを渡す」と我々は考えています。
研修の重要な役割の1つがツールを渡すことなんだな、というのはGEで私が見て教わったことでした。会社がやってほしいことを前提に研修が作られていて、その研修で渡されたツールを使っているかどうかが評価につながるという仕組みをつくると、研修が役に立つんですね。
研修が独立したものではなくて、会社や上司がやって欲しいことをやるという流れがあるからです。そのためのツールを渡すという考え方で、プログラムをやっています。
プログラムもいろいろございますが、すべてこの5つの学ぶ力が前提になっています。これがないと変化と成長が作れないと考えていますので、それを使っていただいて、自律的な学習者を育てます。これはヤフーさんでやっていただいているようなことです。それから自己成長、ビジョン型組織、それからもちろん企業変革や、多様性を活かすチームといったものも得意としています。
安心・安全な環境づくりというのも、この認知の枠の4点セットが非常に重要です。安心・安全というのは、自分の気持ちや心をオープンにしても安全ということですから、カルチャーの話に絡んできます。ですのでこの部分もやっています。
それから、イノベーションや複雑な問題の解決にも役立つものになっています。複雑な問題は1人では解決できないので、コラボレーションが必要になります。コラボレーションの最低限の力として、対話の力が必要になります。対話の力を複雑な問題解決に活かすというアプローチもあります。そういったこともやっています。
こんなプログラムを提供しております、ということもちょっとご紹介させていただきたいと思います。
簡単ではございますが、ヤフーさんでいま我々がやっていること。どういうふうに1on1をお助けできるかということでやらせていただいております。そのへんのご紹介をさせていただきました。
一方的な話をしているだけなので、どんなものなんだろうな、もうちょっと知りたいな、という方がいらっしゃるかなと思います。そうした方に向けて、10月26日に1on1の体験ワークショップを企画させていただいております。25名くらいの方に限定させていただきたいと思っておりますので、もしご興味のある方がいらしたら、ぜひご参加いただければと思います。
動機の源の話や、対話の話、ビジョンの話をだいたい一通りご説明できると思っています。
続いて10月31日にも、幸福学で有名な慶応大学の前野先生に、「システムデザイン・マネジメントという分野と人のOSがどう関わっているのか」というテーマでイベントをやっていこうと考えております。こちらもご興味があるようでしたら、ぜひご参加いただきたいと思います。
最後になりますが、21世紀学び研究所は大人の教育が変わることを狙っております。そういう意味では「企業から始まる教育エコシステム」と我々は考えてやっています。
リフレクションのようなものは子どもたちにも届けたいんですが、子どもたちに届けるすべがなかなかありません。まず、企業で管理職やマネージャーのみなさまが部下に育成を実践していただき、管理職やマネージャーのみなさまは、ご家庭ではお父さん・お母さんですので、家庭でも子育てに使える、と考えています。
家庭でそういう変化が広がりますと、いよいよ学校が変わるんじゃないか、と思っています。学校をいきなり変えるというのは、なかなか難しいという現実があります。企業から変わっていって、しかもそれが企業にとってもメリットがあるということであるなら良いんじゃないでしょうか。
企業から始まるエコシステムを狙って活動させていただいています。みなさま、こちらの考えにもご賛同いただけましたら、ぜひ一緒に取り組んでいけるとうれしいです。よろしくお願いいたします。
私からのお話は以上です。どうもありがとうございました。
司会者:ありがとうございました。
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