SmartHR宮田昇始氏の講演がスタート

宮田昇始氏:みなさま、こんにちは。株式会社SmartHRの代表取締役の宮田と申します。本日は、「1万6千社がはじめている『生産性向上』に本当に必要なこと」というテーマで、30分から40分ほど、お話をさせていただければと思います。

このセッションの内容は撮影OKです。Twitter、Facebook、Instagramなど、SNSに載せていただいても大丈夫です。本日残念ながらご来場できなかったみなさまのためにもぜひ、積極的にシェアしていただければと思っております。

ということで、本題に入っていきたいと思います。改めまして自己紹介なんですが、私は大学卒業後、IT系のベンチャーに入社しまして、Webディレクターという名前の職種でやってきました。ですので、どちらかというと開発者の立場に近い職種の人間でございます。

しかし、今から約3年前のとある出来事をきっかけに、この人事の世界に興味を持ちまして、SmartHRを発案し、今に至ります。そのお話は後ほど、詳しくご紹介できればと思っております。

日本とアメリカ、その生産性にはどれくらい差があるのか

まずは、このセッションのタイトルにもある「生産性」についてです。生産性の向上とよく言われているかと思いますが、そもそも、我々日本人の生産性は本当に低いのでしょうか?また、低いとすれば、どれくらい低いのでしょうか?

みなさまに調査結果を一つ、ご紹介させてください。(スライドを指して)これは日米の生産性の差についての調査結果です。結論として、日本の生産性は米国の30パーセントから40パーセントぐらいしかないという結果が出ております。

とはいえ、日本のほうが安心・安全だったり、きめ細やかなおもてなしができて接客がいいなど、そういったサービスの質に違いはあるかもしれません。ですが、その質の違いを考慮しても、日本の生産性は米国と比較してわずか50パーセント。そういう調査結果が出ています。

私自身この結果を見て、そんなに差があるんだと驚きました。単純に同じ人が働くだけでも、アメリカのほうでは2倍の成果が出ていて、日本ではその半分しか出ていない。そういった現状があります。

この状況を改善しようと政府が推進しているのが、ご存知の「働き方改革」です。しかし「働き方改革」と一口に言っても、ぼんやりとしてなかなかつかみどころがない話だと思っています。

労働時間を削減しても、現行制度では評価されないというジレンマ

我々は、「働き方改革」をもう少し具体的に、3つの要素に分けて認識しております。我々SmartHRが考える「働き方改革」の定義をご紹介します。

今後10年間で日本の労働人口は43パーセントと、おおよそ半減する見通しがあります。これから人の確保がますます難しくなっていくなか、労働時間を23パーセントも削減していかなければいけません。我々日本人は残業が多いので、23パーセント、だいたい4分の1くらいは落としていく必要がございます。

さらに、AI化やRPAといった新しいテクノロジーに職業が代替されないためにも、従業員へのキャリア形成サポートが必要になってきます。これらの3つの難しい問題を同時に解決していくのが「働き方改革」であると、我々SmartHRは明示しております。

1つを解決するだけでも、ものすごく難易度が高いです。なのに、その難易度が高い問題を3つ同時にやっていかなければいけません。すごく大変だと思います。

まず、労働時間の23パーセント削減。これを具体例を交えてお話ししたいと思います。みなさまが社内で、早く仕事を終わらせて帰りましょうということを推進して、仮に23パーセントの労働時間削減に成功したとします。「やった! 働き方改革成功だ」と。実はそうではないんです。

例えば、テキパキ働くAさんとダラダラ働いてあまり生産性のよくないBさんの2人の社員がいたとします。

Aさんのほうが仕事を早く終わらせることができます。Aさんは仕事をテキパキ終わらせた結果、残業がなくなり定時で帰るようになりました。一方、Bさんはダラダラ働きますので、残業時間はそのままです。

そして、この2人によくある評価制度や給与制度を当てはめると、なんとAさんの給与は下がってしまい、ダラダラ働いたBさんの給与は変わらないという、非常にちぐはぐな状態になってしまいます。こういった状況は、多くの会社で見受けられると思っています。

Twitterの投稿なんかを見ていると、うちの会社では生産性を上げろって言われるけれど、上げた結果、浮いた時間で新しい仕事を詰め込まれるから、真面目に働くのがバカらしい。そういったツイートもよく出回ったりしています。これは実際によくある話だと思っております。

残業が多く、数多くの仕事を兼務している人事担当者の負担

じゃあ、この問題を解消するために制度を見直せばいいじゃないかと。私自身も経営者なんですが、人事の評価制度やいろいろな制度を見直す立場にあります。これは非常に大変なんですよね。

(スライドを指して)この赤くなっているのは、評価制度を変えるための手順ですが、見るからにやることが多いですよね。先ほどのような賃金とか、就業時間のルールを変えようとすると、就業規則の見直しが必要になります。「そもそも今、残業時間どれだけあるんだっけ?」といったことも、なんとなくデータはとれているんだけど、なかなかその実態はわかっていないというのが現状だと思います。

働き方改革を通じて生産性向上を推進しようとすると、それ以外でたくさんのやるべきことが出てきます。これは先ほど申し上げたように、就業時間を23パーセント削減するだけなんですけど、それだけでも大変です。

それを一体誰が推進していくのでしょうか? 企業の人事労務担当者のみなさまです。しかし、人事労務担当者のみなさまは非常に多忙です。(スライドを指して)これはエン・ジャパンさんが調査した、人事労務担当者さんがどんな業務をやっているか、ということについてのデータになります。

左側の棒グラフが彼らが担当している業務。ほとんどの方が採用に関与しています。労務も半分以上の人が担当し、社会保険や年末調整にも約4割の方が携わっています。右側のグラフが、その兼務の状況を表したグラフです。かなりの方がたくさんの業務を兼務されていることが見てとれるかと思います。

そう、とにかく人事(担当者)の多くは忙しいです。2つ以上業務を兼務している方が8割以上、3つ以上兼務が6割、6つ以上兼務というのも3割となっています。また、残業時間も非常に多い職種です。業種によっては、半数以上の方が月30時間以上の残業を行っているという、そんな状況にあります。

「人事労務の業務負荷を下げる」という働き方改革からスタート

このような状況で人事が「働き方改革」を推進していくのは、非常に難しいと我々は感じております。皮肉にも、人事労務担当者の業務負荷を下げること、まずこれが「働き方改革」の最初の一歩になると考えております。

では、どこから手をつけていけばいいのか? こちらは先ほどご紹介したグラフの左側です。いま緑のマークをつけたのが、採用であったり、評価であったり、人事企画といった、本来しっかりと時間をかけるべき仕事です。ここに時間をかけるのは非常に良いことだと思っております。

青いマークをつけたのが、給与計算ソフトや勤怠管理ソフトなどによって、何十年も前からすでにソリューションが存在していて、テクノロジーの効率化が始まっている場所です。

そして、赤いマークをつけた箇所は最も効率化が遅れているジャンルです。労務、社会保険、年末調整。こういったところは未だに紙の業務が非常に多く、従業員さんに手書きで書いてもらって集めて、間違いがあったら差し戻しして、役所に持っていったりするジャンルの仕事です。

わかりやすくまとめると、社会保険・雇用保険の手続き、年末調整、そのほか諸々を含む労務業務。この3つが、未だにソリューションがなく、人事労務の効率化を大きく妨げている箇所になります。