モバイルファクトリーがブロックチェーンビジネスに参入
竹田匡宏氏(以下、竹田):この前に大阪でもモデレーターとして参加させていただいていて、けっこう(モデレーターの)仕事をさせていただいています。
最初にUniqysの深井さんからよろしくお願いします。
深井未来生氏(以下、深井):はい。今日はありがとうございます。モバイルファクトリーの深井と申します。自己紹介代わりに、今当社で取り組んでいることを簡単に説明したいと思います。
モバイルファクトリーは、去年の3月に東証マザーズから東証一部に上場した会社で、世間的には位置情報ゲームの会社として見られがちなのですが、今年から「ブロックチェーン業界に参入しよう」ということになりました。
ブロックチェーンでなにをするかというと、この通りで、DApps(Decentralized Applications:非中央集権の分散型アプリケーション)です。ここにいる方々には、DAppsのことは説明しなくてもよさそうですね。ブロックチェーンを使ったものを、今後世の中に広めていくためのツールやユーザーへのタッチポイントを提供したいということです。だいたいこの3つのフェーズで考えております。
まず1つ目が、対ユーザー向けのサービスでQurageというものです。クラゲと読みます。これは、簡単に言うとDAppsブラウザです。ユーザーさん視点ではDAppsはまだまだハードルが高いのですが、このQurageを使えば、手軽に簡単に遊んでいただくことができます。これはGoogleプレイとiOSでリリースされていますので、ぜひみなさまダウンロードしてください。
次が、「Uniqys Kit」と我々が呼んでいるものです。先ほどのアプリはユーザーさん向けでしたが、Uniqys Kitというブランドは開発者・デベロッパーさん向けです。デベロッパーさんがDAppsを開発するにあたってまだまだ難しい部分がありますが、一般的なウェブアプリを開発するのとほぼ同じように開発することが可能になっています。
あとはみなさまがDAppsを作るときに、Gas(ガス=手数料)の問題がどうしてもあります。我々のUniqys Kitキットを使えば、トランザクションの手数料を無料や定額など自由に設定できます。これはGitHubでプレビュー版で公開しておりまして、のちほどお伝えしますが、CryptOsushiというものを現在準備しておりますので、よろしくお願いします。
これらのUniqys Kit、Qurageというブランドでそれぞれ展開もしておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。自己紹介代わりに会社の説明でした。以上です。
竹田:ありがとうございます。続いて平野さん、自己紹介よろしくお願いします。
ブロックチェーン業界で幅広く活躍する平野氏・中村氏
平野淳也氏(以下、平野):初めまして、平野です。ブロックチェーン業界で主に3つくらいの活動をしています。まず1つはHashHubというブロックチェーンスタジオを作っています。
東大の近くの本郷に、ブロックチェーン業界で働く人のためのコワーキングスペースと、自社プロダクトを作っています。どのようなプロダクトを作っているかは、今日はまだ詳細の発表ができませんが、ライトニングネットワーク管理などもやっています。
これが活動の1つ目で、2つ目は「d10n lab」というものです。これは、業界のリサーチレポートなどを配信する有料コンテンツです。おそらく国内ではトップレベルの品質の内容を配信しているんじゃないかなと思うので、ご興味のある方はよろしくお願いします。
3つ目は、投資活動をしています。国内外のブロックチェーンプロジェクトに出資や投資をさせていただいております。以上です。今日はよろしくお願いします。
竹田:ありがとうございます。続いて中村さん、お願いします。
中村昂平氏(以下、中村):初めまして。中村と申します。こちらにあるtokenPocketと呼ばれているDAppsブラウザとイーサリアムのウォレットアプリを開発しています。
(スライドを指して)このようなウォレットアプリです。日本初のDAppsブラウザとしてリリースさせていただいておりまして、2万種類以上のERC20/223/721(イーサリアムのトークンの規格)を管理できます。日本語のサポートが万全だということが売りなので、ぜひご利用いただければと思います。
DAppsブラウザはブロックチェーンとユーザーをつなぐものなので、今後みなさまも使うことになるということだけ覚えておいていただければいいかなと思います。
もう1つプロジェクトをやっております。CryptoCrystalという名前のDAppsを運営しています。どういうDAppsかというと、イーサリアムのパブリックチェーン上で宝石を発行して、それを掘るゲームのようなDAppsを作っています。
特徴としては、スマート・コントラクトで希少性を全部管理できることと、誰でも運営者と同じアプリケーションを使えることを目指して運営しています。そのような感じで、DAppsとDAppsブラウザの両方に携わっている人間と思っていただければと思います。よろしくお願いします。
ブロックチェーン事業者として、今なにがおもしろいか?
竹田:よろしくお願いします。少し歯切れが悪くなってしまっていると思いますけれど(笑)。僕らはトークで巻き返していこうと思います。
スライドのランキング投票と席順が違うので、席替えをお願いします。平野さんと深井さんが逆になっていますね。申し訳ありません。
平野:いえいえ。これはランキングで勝ってもインセンティブはないと聞いていますが。
竹田:そうなんです(笑)。
深井:あまりモチベーションにはならなさそうですね(笑)。
竹田:痛いところを突いた方が点数が上がりそうな気もするので、どういう感じでいけばいいか難しいです(笑)。でも、僕は点数はあまり気にせずやろうと思っています。今回は論点が3つあります。タイトルが「日本は世界に勝てるのか?」なので、日本の現状などを最初に議論していこうと思います。
2つ目に、MicrosoftやFacebook、その他もろもろのインターネット時代を牽引してきた事業が、今後どのようにブロックチェーンに関わるのかという未来的なお話を聞きたいと思います。
3つ目は、これからブロックチェーンに関して、仮想通貨を事業にするときに、どのように関わっていけばいいのかを悩んでいる人もすごく多いと思います。その関わり方を事業者として携わっているお三方に聞きたいと思います。
まず1つ目のお話を聞いていこうと思います。
2017年は投機的な動きがすごく目立っていて、値段が上がるか下がるかの論点がすごく多かったと思います。今は価格もだんだん落ちてきて変化もゆるくなっていますので、事業者側は価格がどうこうというところは正直もう見ていないと思います。
そこで、事業者側は関わり方が違う部分が多いだろうなと思いましたので、現在注目しているプロジェクトや、事業者としておもしろいと感じるところを、平野さんから順番にお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。
日本でも海外でも、マネタイズできるブロックチェーン事業が増えている
平野:なるほど、事業者として今なにがおもしろいか。
竹田:そうですね。
平野:まず、マネタイズできる事業がブロックチェーン業界で増えてきていることがおもしろいなと思っています。一昨年から去年まで、ビットコイン業界・ブロックチェーン業界には、Exchangeとマイニングしかつくれないじゃないかと思われていたけれど、今マネタイズできる事業はだいぶ多くなっています。
具体的にいくつか言っていくと、スマート・コントラクトの監査やホワイトペーパーを検索する事業などがあります。マネタイズできる事業領域が大きくなっていて、そこでポジションをとれる企業がこれからまだ出てくる。事業機会が増えていることはおもしろいと思います。
竹田:日本でそういう動きは出ていますか? 海外の動きでしょうか?
平野:グローバル全体ですね。日本からも出てきていますし、今言ったスマート・コントラクトの監査という文脈でしたら、DAppsも参加されていますし、あとはクオントスタンプや、日本のイーサリアムもありますし。
あと、本当にマネタイズできる事業というと、CoinMarketCapがありますよね。あれはすごくトラフィックを持っています。
どれくらいかというと、AmazonのAlexaでアクセスされているランキングサイトの世界トップ500の中で、現時点300位くらい。今年の1月頃だと130位くらいでした。そのくらいのトラフィックを取っているということは、マネタイズが多少できています。
今、機関投資家や事業者向けの有料APIを発行したり、いろいろな事業がたくさん出てきているところがおもしろいですね。
竹田:その中で深井さん自身、視点が違うところがあると思いますが、現状どういうところがおもしろいなと感じますか? 教えてください。
インターネット企業がDAppsに移行するメリット
深井:そうですね。少しポジショントークのようになってしまいますが、当社の場合はDAppsの領域でやっていこうと決めましたので、答えとしてはDAppsかなと思います。
なぜ当社がDAppsの領域にいこうと考えたかというと、今世の中に出ているDApps、ブロックチェーンは、実際にユーザーが触れる部分としては、どうしてもゲームが派手なので目立ちます。しかし、ゲームなどの流れに乗ってDAppsを取り込みたくなるのは、インターネットの次世代であると思っているからです。
例えばFacebookやGoogleなど、中央集権系の会社がある程度インターネットを牛耳っていると思いますが、そのうちの半分とは言わないまでも、30パーセント、あるいは2割。少なくともそのくらいはDAppsに移行するのではないかと思います。
そうなった場合、今はどの企業もホームページを持っているのと同じように、まったく同じ文脈で、どの企業もDAppsのようなものを開発するのではないかと思っています。そうなってくると、マネタイズポイントはいろいろなところに生まれてきますし、我々もそこにチャンスがあると思っています。
竹田:インターネット企業がDAppsに移行することによって、どのようなメリットがあるのでしょうか。まだみなさまも僕もあまり理解できていないので、ぜひおうかがいしたいです。
深井:一番わかりやすいのは、ブロックチェーンの仕組みそのものが、デジタルアセットの所有権を持たせられることです。そこから発生して、今までのインターネットよりもユーザー同士がアクションしやすくなるのではないかと考えています。
竹田:わかりました。中村さん、同じくDAppsの部分で注目しているところを教えてください。
中村:僕が注目したのは、イーサリアムのレイヤーツー(ブロックチェーン上に記載されないオフチェーン)です。というのも、そのあたりが整ってこないと、DAppsは本当に使いづらく「ぜんぜんおもしろくもないじゃん」と思うところがあります。
毎日論文が出たり、毎週ぜんぜん違うことを始めていたりするので、その速度が楽しいなと思いますね。
竹田:中村さんが最終的にウォレットを作られたのはなぜですか? ウォレットもスマホのアプリが続々出てきていると思うのですが、ウォレットに最初に目をつけた理由はなんでしょうか?
中村:最初にウォレット自体に目をつけたのは、「みんなが使うようになるのではないか」と思ったこともあります。ブロックチェーンを使ったアプリケーションを作るときには、なんらかのかたちで秘密鍵を管理しなければいけない。その管理をする方法として、ウォレットやDAppsなどが必ず必要になってくるので、そこが大事だと思ったからです。
世界でブロックチェーン業界が盛り上がっている国はどこか
竹田:平野さんが一番グローバルな視点で、日本やこの業界を見ていると思いますが、まず「国としてどこが一番盛り上がっているのか」という分析をお聞きしたいです。
それから、海外でも、それこそ昨日はBitGoでカストディ(有価証券投資の際に、証券の保管・管理を行う業務)が認められ、さまざまな金融的な動きが盛んですが、そこはどういうふうに捉えられているのかをお聞きしたいです。
平野:いくつかまとめて質問していただいたので、「おもしろい国はどこか」と「金融的なこと」の2つについて答えます。
まず、「おもしろい国・盛り上がっている国はどこか」に関しては、シリコンバレーエリア、シンガポール、ドイツのベルリンですね。この3つだと思います。
シリコンバレーエリアに関しては、昨年前半頃まではそんなに盛り上がっている印象はなかったのですが、昨年後半頃から、ブロックチェーンプロジェクトが出ているところの約半分はシリコンバレーからです。
その中でもCoinbase(コインベース)、Union Square Ventures(ユニオン・スクウェア・ベンチャーズ)、Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)。この3つがすごく力を持って、ブロックチェーン業界のヒエラルキーのトップ層になっています。
USVとAndreessenに関しては、CoinbaseとRippleに最初に投資して利益が1,000億円くらい出ているので、ブロックチェーンに投資する余力があり、いろいろなプロジェクトに投資しています。そこで、今言ったアンサンブルができあがっているのが、この業界の大事なところですね。
ドイツのベルリンに関しては、開発者にけっこうはまっています。たとえばイーサリアム系のプロジェクトですと、GnosisやCosmos Networkなど。これらも、コワーキングスペースやビットコイン向けだと、ライトニングネットワークなどの開発者もいて、すごくクオリティの高い開発がされています。
アジアではシンガポールです。中華系の方が作っていて、Vitalik Buterin(ヴィタリック・ブテリン:イーサリアムの開発者)も、一時期すごかったですね。これらが盛り上がっている国です。
金融業界に関しては、ビットコインとブロックチェーンという項目で、既存の金融に(はあって)ブロックチェーン・暗号通貨の世界にはないものは、これから全部1つずつ成立させていくんです。
ASOBIもそうですし、eTAもそうですし、GameFlipで言ったらFLPもそうですし、そういった指標ですね。既存の金融で成り立っているビジネスは、暗号通貨業界で全部一つひとつ整備されていく。今はそういう過程にありますね。
もちろん、整備されていくなかで規制緩和もありますし、これから時間をかけてそういったものをやっていくのかなと思っています。自分で予想していたよりも、今のアメリカの流れはすごく速いです。
巨大IT企業はブロックチェーン業界にどのように進出してくるか
竹田:速いですね。では、その次の話にもつながってくるのですが、FacebookやApple、Google、Microsoft、Amazon。その辺りがインターネットの業界で大成功したことは、みなさまも知っていると思います。
ニュースを見ていると、ブロックチェーンに関わろうという動きで、少しGoogleが遅れを取っているイメージがありますが、「彼らがどのようにこの業界に入ってくるか」というお話を聞きたいと思います。中村さんから、いかがですか?
中村:僕はtokenPocketというアプリケーションを運営しているのですが、ものすごくレビューが厳しいです。仮想通貨を送金できる部分や、ERC721を購入する場面はほとんど通らないです。そのやりとりがすごく面倒くさいので、アプリ開発をするにあたってAppleはとても嫌いです(笑)。
iPadを使っていると、個人的に「Appleはいいなー」と感じますが、事業者としては、Web3という領域においてはAppleの権力が強いので、我々は別のものに進んでいかないといけないのかなと。
竹田:Appleの審査基準は開示されているのですか?
中村:一応開示されているのですが、レビューに出しますよね。返ってくる内容が毎回全部違って、「単純にこれは時間を伸ばしているだけだろう!」と思って、1回やめるんです。1回すべて消してから、もう1回(レビューに)出すと通ったりする。そこは謎すぎると思いました。
竹田:(笑)。そうですね、わかりました。深井さんはそのあたりはどうですか?
深井:同じ質問ですか?
竹田:はい。
深井:そうですね、Appleに関してはほぼ同じです。悩んでいることの1つなのですが、やはり彼らなりにブロックチェーンには注目していると思いますし、やらないという選択肢はおそらくない。
ただ、ブロックチェーンには、彼らの巨大なビジネスをディスラプションさせる要因があるので、彼らはそのまま我々がやりたいようにはやってこないだろうと思います。
あとは中央集権的なものを残しつつ、彼ら自身を阻害しないかたちで、ブロックチェーンの仕組みだけを端のほうでやるというのが、最初に入ってくる領域なんじゃないかなと思っています。
竹田:ありがとうございます。平野さんはその辺をけっこう考えられていると思うんですけれども、いかがでしょうか。
中央集権的な世界での制裁金とブロックチェーンの参入コスト
平野:それぞれのブロックチェーンの形態というか、もし大きくなるのであれば、彼らは当然、手を出してくると思います。
今のようなグローバルな流れだと、GDPR(EU一般データ保護規則:欧州連合における個人データの取り扱いを規制する条例が施行された)みたいな流れがあるんです。わけのわからない制裁金をGoogleに課しているわけですが、あれは当然、Googleにとってはコストです。
Googleの利益は兆で出ているので、1年の利益のうちの1桁、数パーセントくらいだとは思います。それでも、この風潮がどんどん強くなっていって、彼らが中央集権で情報を保管するコストが、ブロックチェーンの参入コストよりも大きくなったら、効率性が出るわけです。
竹田:たしかに。
平野:あとは世界全体の流れで見ていくと、僕たちはGoogleやFacebookなどのサービスを無料で使っているわけですが、検索エンジンや検索アプリでいろいろな情報を入手し、Facebookなどに入力して、無料で情報をあげています。それだけでも、かなり便利なサービスを無料で提供されていますよね。
けれど、そういう世界をやめたら、そんなに便利なサービスを無料で享受することはできないと思います。そこはいい具合に折り合いがつくようになるのではないかと思いますね。(情報の)掲載権を選べるような感覚です。
竹田:わかりました。ありがとうございます。次の流れで、これからの5年・10年、暗号通貨やブロックチェーンが社会に浸透していくまで、どれだけの時間がかかるのか。
僕としては、浸透してほしいという立場でお話を聞いていきますが、そのなかでどのくらい、どう変化していくのかを議論したいと思います。
社会に浸透するまで2~3年という人もいれば、5年はかかる、10年かかるなど、さまざまな人がいると思いますが、どちらにしても浸透はしていくのだろうなとすごく思っています。そこの見解を含め、どのような世界が生まれているのかをお聞きしたくて。
取材を重ねていると、人間と人間ではなく、ウォレットだけでお金の支払いが進んでいくというような話も耳にすることがあります。自分の頭のなかには、「そういう世界がくるんだ!」という感覚がありますが、そこはお三方を通してお聞きしたいと思います。平野さんから順番にお願いします。
ブロックチェーンが浸透することでどんな未来が実現するか
平野:そうですね。時間軸の話でいうと、ここまでの話は(私の予想では)外しています。
竹田:そうなんですね(笑)。
平野:2013年くらいからこの業界にいますが、時間軸は全部外していますね。ビットコインの価格がこんなに早く上がるなんて思わなかったですし。
竹田:へえー。いい意味で予想外でしたね。
平野:そうですね。みんながブロックチェーンを使えるような世界(になるに)は、かなり時間がかかるのではないかと思います。
よく言われるスケーラビリティについては、PlasmaやCasperなどの開発者たちは「イーサリアムがあと1~2年で解決する」と言っていますが、毎年そう言っているわけです。
竹田:(笑)。
平野:それがしっかり実装されて、ちゃんとエンドユーザーが使えるレベルのUI、UXになるところまでは相当時間がかかります。そこも含めて1年、2年、3年はかかります。
では、「ビットコインなどが支払いに使われる世界がくるか?」というと、それもこないと思います。ビットコインも貨幣として使用するには、だいぶ欠陥があるので。金融商品としてはまだまだこれから伸びていくと思いますけれど、2年、3年という時間軸で、けっこうかかるんじゃないですかね。
竹田:ありがとうございます。深井さんはどうでしょうか。
深井:時間軸の話ですか?
竹田:ゲームの事業をしていると、たぶん見えやすいと思います。やはり事業をしていると情報がすごく入ってくると思いますので。
深井:宣伝みたいになってしまうのですが、私の視点からすると、鍵は「開発者さん・デベロッパーさんをいかに巻き込めるか」「おもしろいユースケースを提供できるか」だと思います。
例えば、我々が、開発者さんを巻き込むために、DAppsの開発キットのUniqys Kitを作っているとお伝えしましたが、そのUniqys Kitのソースコードを公開して、サンプルのDAppsを作りました。
「みなさま、そのサンプルのDAppsをぜひ見てください」ということをしています。CryptOsushiという名前です。Mediumなどで検索していただくと見つけられます。そこに開発の際のソースコードスキルの解説記事も載せています。
あとはユースケースでいうと、我々、本当はゲーム会社なのですが(笑)。来週、サービスが終了するゲームが1本あるんです。「レキシトコネクト」という位置情報ゲームです。
ゲームが終わってしまうときのみなさまの悩みというのは、「せっかく育てたり課金したりしたキャラクターが未来永劫なくなってしまう」ということです。我々もそれはつらいです。
そこで、これをブロックチェーンで解決するというのはいかがですか、というサービスを開始します。ブロックチェーンのERC721などを使って、自分が育てたキャラクターや固有に持っている情報を提供します。
サービスは終了してしまいますが、「こういう使い方はどうですか?」ということで、まもなくHL-Reportという名前のアプリがリリースされます。例えば、このように「開発者さんやデベロッパーさんをどう巻き込むか」と「ユースケースを伝えること」だと思いますね。
竹田:中村さんはどうでしょうか。
大量のくだらないもののなかから生まれるもの
中村:そうですね。iPhoneが発売されてから、2009年から2011年頃に、Appleの個人開発者の方たちが、作りおきのゲームやよくわからない電卓などをたくさん作った時代がありました。
当時、くだらないゲームがたくさん出ました。そのなかで、500万件だとか1,000万件、ダウンロードされるようなアプリが出たりして、「おおー!」と思っていました。
DAppsもそれに近いと思っていて、今Crypto CrystalというDAppsを作っていますが、Web3に画像を置いているだけなので、月に600円くらいしかかからない。オンラインでなんらかの処理が走って、誰かと誰かをステート管理した上でなにかするとなると、サーバーを立てなければならず、サーバーの保守代などにものすごくお金をかかっていたと思います。
くだらないものが大量に作られるなかでおもしろいものが出てくると、その費用を安くできる方法が広がっていくのかなと僕は思います。そのときに開発者が入ってこなければどうしようもないので、そこをちゃんと整えていきたいというのは同じ意見です。
もう1つあります。いわゆるWeb2.0世界で、一通りのユーザーたちが持っている課題を解決するサービスを作っていると思います。
例えば、法に触れるようなサービスは、今まで提供できませんでしたが、「コントラクトだけを誰かがデプロイして勝手に動く」というようなことが起きてくると、代わりに探偵を雇ったりするというサービスが入る可能性もあると思います。
なので、今までは法律的にできませんでしたが、そういうことを誰かがやったりするのかなと思います。
海外の人とチャットでつながりながらサービスを作っていく
竹田:そうですね。さまざまな部分で世界観のお話や関わり方の部分を共有していただきました。
最後のテーマです。それぞれ事業やなにかをしていく上で、暗号通貨やブロックチェーン業界にどのような考え方を持って関わればいいのか、なにをすればよいのか、開発者になるべきなのか。僕も実際そうですが、(この業界への)関わり方に悩んでいる人が多いと思います。
この業界の中でどこが一番関わりやすいか、関わるといいのか。それは、お三方とももしかしたら違うかもしれないし、同じかもしれません。そのあたりの意見もメディアの記事に出ると思うので、どんどん発信していただいて、こちらの業界に巻き込めればいいなと思います。
自分自身もまだ業界に人が少なすぎると感じていて、いくら有識な人が1人いても、やはりマンパワーは重要だと思うので、どんどん巻き込んでいきたいなと強く思っています。
ぜひお三方の力もお借りしながら、こちらの業界に来てほしいなと思います。勧誘活動を今からできればと思いますが、どうでしょうか? では、中村さんからお願いします。
中村:僕が今、tokenPocketとCryptoCrystalをやっていておもしろいなと思うところは、世界で一番使われているであろうERC721のマーケットプレイスのOpenSeaで、これは3人くらいで運営しています。最近、Binanceに買われたTrustwalletは「世界で一番使われているイーサリアムウォレット」とありましたが、あれも4人で、しかも全員リモートワークで運営しています。
Telegramを送ると普通に返ってきて、「君たちどんな感じ?」というような議論ができる状況になっています。まだDApps業界は下がぜんぜん固まっておらず、上に人がいないのかもしれませんが、トップレイヤーの人たちが2人とか3人で小さく運営しているケースはけっこうあって、いろいろなサービスの人たちとTelegramで情報交換ができます。
「君たちのアプリに載せたいんだけど!」と言ったら、「いいよ! 載せようぜ!」「このあとはどんな感じでやっていく?」といった話が進みやすいです。
日本で海外の人とすぐ組んで運営するという発想はあまりありませんでしたが、チャットサービスだけでつながれる世界が広がっています。そういうことは今までになかったので、すごくおもしろいと思います。
そこで、どこから始めればいいのかということですが、やはり作れた方がいいと思います。どんなものでも簡単に作れる時代ですから、すこし勉強して作り始めた方がいいと思います。その時に海外の人と連絡を取りながらだと、おもしろいものを作れるのではないかなという気はします。
竹田:海外の人とのコミュニケーションというのは、Telegramが多いのですか?
中村:僕はTelegramが多いですね。日本とは時差があるので、深夜3時とか4時に連絡がくるのでなかなか眠れない。「俺、もう寝るから」というメッセージが昼の3時に届いて、「あ、そうか時差があったのか」という感じになります。
竹田:わかりました。では、深井さんお願いします。
法律も会計も決まっていないことが多すぎる
深井:そうですね、なにから始めたらいいか。今やっていて思うことは、我々が新しいことを始めようとするときは、国の金融庁におうかがいを立てに行かなければいけません。
金融庁はいろいろ批判をされていたりもしますが、僕はそう(悪く)は思っていません。彼らも日本からなにかを生み出すことにすごく熱心で、なんとかルール作りを急いで、世界に遅れを取るまいとがんばっているんです。
ただ、「まだそのルールができていない」というところもあります。それに、我々は上場会社なので監査法人がついていますが、彼らと話すと、相手は正直まだぜんぜんわからないなかで、それでもなにかをやる以上は、それについて彼らなりに会計基準を決めていかなければいけない。
法律の部分も会計の部分も、ぜんぜん決まっていないことが多すぎるんです。逆に言うと、それはとてもおもしろいところ。インターネット自体が自由なところと言われていましたが、ブロックチェーンに関してはそれが如実に表れているようで、この世界は本当にワクワクします。
なにから始めたらいいかという話は、どこから始めてもいいと思いますが、さっきおっしゃっていただいたとおり、なにかを作るユニットが起点になる以上、エンジニアのコミュニティのようなものは、日本でも海外でも非常に盛り上がると思います。まずは、そのあたりから企画していただくのがおもしろそうかなと思います。
竹田:今だとなにを作るべきですか?
深井:なんでも作れるのではないですか。ただ、違法なことだけはもちろんしてはいけないので、日本であれしようとかだとそのあたりは厳しそうな雰囲気はあって、避けていただく必要はあるのかもしれません。逆に言うと、それ以外はなんでもできるような世界になると思います。
竹田:今なにが一番売れそう、というとビジネス的に変かもしれないですけれど。ウォレットがかなり売れていますよね。大きい資本のようなところが買っている印象がありますが、なにか作ったら対価はもらいたいですよね。その中でなにが一番ビジネス的に売れそうですか?
深井:ウォレットはビジネス視点ですよね。ユーザーへのタッチポイントがあった方がいいので、ウォレットなのでしょうけれど、発想自体をもっと自由にできると思います。だって別にメッセンジャーでもいいじゃないですか。
竹田:わかりました。ありがとうございます。最後に平野さん、お願いします。
流れが速く、広範な知識が求められるブロックチェーン業界
平野:なにから始めればいいか。結論としては、なんでもいいんじゃないかなと思うんですけど。
(一同笑)
竹田:平野さんらしい(笑)。
平野:だってそうじゃないですか。
竹田:答えがほしいのに(笑)。
平野:というのも、ブロックチェーン業界のポジションが余りまくっているので、仕事はなんでもあります。開発者も不足しているし、リサーチャーも不足しているし、仕事はなんでもあります。もしかしたら、この業界でいきなりフルコミットは難しいかもしれないですけど。
この業界は基本的に先進的な業界なので、パートタイムで働いている人もたくさんいるし、これは業界特有なのですが、バウンティプログラム的な働き方があります。
世の中にはしょうもないブロックチェーンプロジェクトもたくさんありますけど(笑)、いろいろなリベラルグループに行くと、「このプロジェクトの翻訳案件ないの?」とか言っている変な人たちがたくさんいるわけですよ。
そんな感じでパートタイムの単発仕事がたくさん転がっている業界なので、仕事をしようと思えば、パートタイムで記事を書くこともできるし、誰でも仕事をつくることはできます。
ただ一方で、この業界はすごく流れが速く、広範的な知識や金融的・技術的・リーダー的な側面が必要なので、本気でやっていくにはフルタイムじゃないと。フルタイムでやっている人間には絶対に勝てないです。
広範な知識がすべてに必要なので、開発者も金融規制の視点を持つ必要があるし、ビジネスの人も開発者の視点を持つ必要があるのが、この業界の少し難しいところだと思います。
本当に踏み込んでいくのなら、そういうことも考えなければいけないかな、というのが自分の意見です。
金融の知識と英語力がないとやっていけない
竹田:はい。本当におっしゃるとおりで、僕もこの業界に入ってから金融的な知識も絶対に必要だと感じましたし、業界でやっていけない状態なので英語を勉強せざるを得ない。すごく追い込まれます。
平野:毎日Facebookで英語の勉強録を更新していますよね(笑)。
竹田:やっています、やっています(笑)。
平野:努力家だなーと思って。すごいですよね。
竹田:いやいや、本当にああいうふうにやらないと、僕は続けられないので。あんな感じで勉強をしていますが、業界に入るといいことがすごく多いです。
まだまだプレイヤーも少ないので、メディアの人間がそんなことを言っていいのかとも思いますが、メディアを通すよりも直接話をして、やはり一対一の会話のなかから一番いい情報が出ると思います。
今からこの業界に入ると人との関わりはすごくできると思います。自分でなにかを作ったら、SNSを使えば広告費もかからないですし、作ったものをどんどん外に出していけばいいと思います。
あと3分くらいあるので、1人2人、質問を受け付けようと思いますが、いかがですか? たぶんTwitterなどで質問してもみなさま答えてくれないので、ここで直接聞いた方がいいと思います。
これって無理やり当ててもいいのかな……いらっしゃいますか?
(会場挙手)
竹田:どうぞ、ありがとうございます。悪口だけはやめてくださいね(笑)。ちゃんと質問してくださいね。
質問者:みなさまはDAppsに関わられているということで、海外の情報が多いと思うのですが、今の日本の開発者の現状をどう捉えられているのか、採用や開発面で困ることはありますか?
DAppsの開発者コミュニティやエンジニア採用をどうされているのか、DAppsだから困ることなどがあればお聞きしたいです。
ブロックチェーン業界のエンジニアの採用事情とは
深井:エンジニアの採用ですが、とくに「DApps作ろうぜ」的な採用をかけているわけではなくて、既存の優秀なエンジニアが集まって、新しい世界を一緒に作ろうという感じです。
世の中にDAppsが得意なエンジニアはまだいないので、一緒にそうなっていきましょうというメッセージで我々が採用活動をしています。つらいですし、ご多分に漏れず苦労もしますけれど、なんとか優秀な新卒を採用しています。
竹田:どうですか? 中村さんは、考えこまれていますけれど。
中村:内部に優秀な人材がいたので、結果的に採用はしていないのですが。メッセージ的にもあれなんですけど、フロントエンドの採用はそんなに今まで技術の延長線上にいなかったので、必要かなと思っています。
コントラクト周りはもっと、今まで組み込み系などを作っていた人が入ってこないといけないのかなと思います。そういう人たちの方が、もしかしたら向いている領域なのかもしれません。バックがあったらいいや、という感じではないので。
竹田:平野さんはどうですか。最後の1分、平野さんの点数が一番高いので喋ってください。これがインセンティブです。平野タイム。宣伝タイムでもいいですよ(笑)。
平野:宣伝タイムですね(笑)。宣伝ではないですが、今、Twitterでハッシュタグのエゴサーチをしていました。
先ほど自分が、事業モデルでマネタイズできるものが増えてきているという話をしました。いろいろリストにすればたくさんあるけれど、そのときにパッと説明したのがスマート・コントラクトの監査やホワイトペーパーの構造形成コンサルといった、トップファンドのような会社がやっている例しか出さなかったので、「その会社しか儲からないじゃないか」というツッコミをされました。
今日はたまたまそのような例しか出せませんでしたが、それは完全に間違いです。BitpayやペイメントプロセスのBitwayなど、利益はまだ黒字化していませんが、売上は出てきています。
Coinbaseが始めたカストディなどの売上を1回計算しましたが、カストディだけで相当の売上が出ているので、ぜんぜんそんなことはないです。たぶんこれから、ほかにもビジネスになるところは出てきます。
ここですこし宣伝もさせていただくと、こういうレコードなどをたくさん書いているのがd10n labです。ぜひ利用してください。
竹田:はい、ありがとうございました。僕も入っているので、いつも見ています。ありがとうございます。では、以上で大丈夫ですか? ありがとうございました。
(会場拍手)