2024.12.24
ビジネスが急速に変化する現代は「OODAサイクル」と親和性が高い 流通卸売業界を取り巻く5つの課題と打開策
株式会社星野リゾート(全1記事)
提供:サイボウズ株式会社
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伊佐:最後の方をお呼びしたいと思います。kintone hive東京から、関東地区を代表して選ばれました、星野リゾートの前田さんにお願いしたいと思います。では前田さん、お願いします。
(動画が流れる)
動画音声:少数精鋭の、星野リゾートの情シスへ殺到するITへの追加要求。とうとうリーダーは火だるま。
「星野リゾート歴15年ぐらいになるんですけれども、一番やばかったと思います」。
そこへ送り込まれた1人の担当者。
「若干ちょっと不器用感みたいなのは感じていて、『まあいっか』みたいな」。
炎上する現場の、炎上するプロジェクトに飛び込んできた、不器用な担当者の顛末はいかに。
(動画が終わる)
前田文子氏(以下、前田):本日は、弊社の事例を紹介させていただく機会をいただきまして、ありがとうございます。いまからお話をさせていただこうと思います。よろしくお願いいたします。
私が勤めている星野リゾートは、宿泊施設・リゾートの運営会社をやってます。現在国内35拠点、国外2拠点の施設を運営しています。
少しだけ私の自己紹介をさせてください。私は、2013年に星野リゾートに入社いたしました。京都の嵐山にある「星のや京都」に配属されまして、そこで3年間接客業務に携わりました。いま着ているのは、その接客の時に着ていた制服です。接客業務に携わって4年目になる2017年12月に異動希望を出しまして、情報システムに異動となりました。
星野リゾートとkintoneの関わりについて、少しお話をさせていただきます。星野リゾートでは、現在628個のアプリを業務に活用しております。活用領域といたしましては、生産性を上げるための業務改善領域。それから「フラットな組織」という文化を維持するため、競争力を維持するために全社員の手に情報を届かせる「情報共有」という領域。
それから、「俊敏な基盤」と書いてあるんですが、これは基幹業務の1つである宿泊・予約システムの一部にkintoneを活用することで、高速な開発、高速なPDCAを回して、システムをアップデートしていくことを目的として、アプリを活用しています。本日は、この俊敏な基盤についての事例紹介をさせていただきたいと思います。
星野リゾートの宿泊予約をするためのビジネスモデルは、このようになっております。弊社が運営をしている施設の予約は、左側にあるWebサイトから取れるようになっております。
このWebサイトは、いくつかあるんですが、左側一番上に「自社」と書いてあるのが、私たちが開発し、運営を行っているサイトです。利用率がとても高くて、約6割のお客さまがこのサイトを経由して予約してくださっています。6割を超えるお客さまが利用してくださっている、弊社の獲得戦略上、すごく重要な位置づけになっている販売ツールなんですね。
獲得力を上げるために、この予約サイトに対して機能を追加したり、UIを改修したり(といったように)、予約サイトをアップデートしていきたいという要望が、マーケティング部門から常にたくさん寄せられています。我々情報システムといたしましても、会社の競争力にコミットをするための要望については迅速に対応しようと、日々がんばっています。
ただ、実は私が異動した2017年12月当時、こういった要望に対して、すぐに対応できないという問題に直面していました。というのも、私が異動した当時は、情報システムはたった5人の部署でした。5人で社内のほぼすべてのシステムとネットワークをカバーしようとしておりまして。
この時期、新しい施設がどんどん立ち上がっていたんですが、その施設のためのPCのキッティング、インフラの設計、それから日々追われるITヘルプという、運用しているシステムについてのサポートの依頼がどんどん来ていて、それをなんとか5人で対応しようとしていたんですが、しきれない状態。つまり、圧倒的な人手不足に直面していたんです。
いま振り返ると、企業の成長スピードがものすごく高まっていた時だったんですが、そこに対して組織の人員追加・人員計画が、ちょっと追いついていなかった時期なんじゃないかなと、振り返って思っています。
そういった時に、ある事件が我々の部署に起こりました。「やるやる詐欺」と言われてしまった事件です。当時、いろいろな依頼が情報システムにやって来るんですが、こういう会話がよく繰り広げられていました。
「予約サイトにこういった機能を入れられますか?」「はい、(開発工数は)3ヶ月ぐらいです。いつから着手できるかはわからないんですけどね」「いまから3ヶ月でできるんだ?」。という会話ですね。これが、工数を答えたのにスケジュールだと思われてしまうという「情報システムあるある」だなと思っているんですが。
こういう会話がたくさん繰り広げられていたので、情報システムとしては、「人がいまはいないが、いつかやるつもりで計画表の中に入れているから、もう少し待っていてほしい」という気持ちだったんですが、マーケティング担当者と認識の齟齬が生まれてしまっていたので、「いつまで経っても予約システムはアップデートされないな」「まだかな」というような不安みたいなものが募っていたんですね。
そういったマーケティング部署の不安が、とうとう弊社の代表の耳にも入りまして。とある会議で弊社の星野(佳路)代表から、上司が強く指摘を受ける事件が起こりました。「やるって言ったのに、どうしてできてないの?」「みんな待ってるんだけど、いつできるの?」と、ちょっと強く指摘を受ける事態になってしまいました。
全社的に、獲得力にコミットできていないという問題に直面したことを受けて、この後に情報システム内で緊急会議を行いまして、なんとかリソースを集中してこの課題に取り組んで、「やるやる詐欺」と言われてしまった、この風評被害を払拭したいということになりました。そして、当時異動してきて数ヶ月経ったところだったんですが、私にこの案件の依頼が回ってきました。
「予約サイトにこの機能を3ヶ月で入れてください」。先ほどマーケティング担当者と上司との間で交わされていたやり取りなんですが、これは本当にあった案件の話でして、これが代表からの大雷を受けて、いまから3ヶ月でやらなければいけない状況になってしまいました。
それはどういう案件かと申しますと、予約サイトに銀行振込で事前決済する機能を追加するというものでした。海外の代理店向けの予約サイトを運用していて、いまキャッシュレスなど、いろいろなことが言われているんですが、実は海外には小さな規模の代理店さまが多いこともあって、まだまだアナログの銀行振込へのニーズがとても高いんです。
そのために、この銀行振込機能を入れてほしいという、海外の代理店さんからの依頼が強くあったこともあって、海外に対して認知度を上げたいと考えている星野リゾートとしても、重要な販売戦略の1つだという判断が下されました。それを受けて、私のほうで開発を始めることになったんですが、その時にまずは開発会社に見積もりをお願いいたしました。
当時、予約サイトの運用・保守をやってくださっていたベンダーさんに、「銀行振込をやりたいです」とお伝えしたところ、なんと「12人月かかります」とお返事をいただいてしまいました。「あれ? 上司は3ヶ月でできると言っていたんですが、どうしたのかな」という感じで、ちょっとびっくりしたんですが、これには理由がありました。
この図は、当初上司がイメージしていたシステムの全体図になります。予約サイトのシステムですね。また、マネーフォワードさまが提供されているクラウドサービスを、APIで直接連携する構想のシステムでした。このシステムの図だと、APIを使ってシステム間をつなげるだけなので、すごく簡単にできてしまうような気がしますよね。
実際にすごく簡単にできるだろうということで、3ヶ月という見積もりがされていたんですが、実はこの予約システムは、機能がくっついているようなつくりになっていて、ある部分を切り出してAPIと連携させることが難しかったことがわかったんですね。これも「情報システムあるある」なんですが、イメージの中の設計で「イケる」と確信してしまったのが裏目に出てしまった不運にも見舞われました。
とは言え、なんとか3ヶ月でやらないと、全社に対して「やれます」と言ってしまったこともあるので、なんとかしないといけないということで頭をひねった結果、このセリフにあるとおり、上司が「kintoneの役割を増やしてみてはどうかな」と言ったんですね。
これを受けて、いまから全体図を変えるのが不安だったんですが、私が上司を尊敬する理由はいくつかあって。一番すごいなと思っているのは、どんな状況でも前向きであることです。上司が「僕たちならできる」と言ったこともあって、この構成をこういうふうに変えるようにしました。
kintoneの役割をとっても大きくして、予約システムとMFクラウドをつなぐ仲立ちとして活用することにしました。AWSのLambdaの上にプログラムを置いていて、そのプログラムがkintoneの情報を定期的に見に行って、MFクラウドのAPIと連携する、というつくりですね。
ただ、kintoneの占める割合が大きかったので、3ヶ月で開発できるかなとすごく不安だったんですが、こちらについては、以前よりお仕事をお願いしておりました、ジョイゾーの山下さんにしっかりと相談をしまして、山下さんが「大丈夫だと思われます」と頼もしいお返事をくださって。また、クローバの門屋(亮)さんという、とても強力な助っ人をお呼びいただいて、しっかりと開発体制を組んでくださいました。
この間、山下さんはアメリカへお仕事に行かれたりしたんですが、時差がある中、必要な時はSkypeを使って3人で会議をし、約3ヶ月で無事に完成・リリースに持っていくことができました。よかったです。
この時につくったアプリの画面は、こんな感じです。たくさんフィールドがあるんですが、手で入力する場所はほぼありません。そして、予約システムからほとんどの情報が自動で書き込まれて、その情報が定期的にマネーフォワードに流れるようになっています。
この構成でしばらく運用を続けていたんですが、いくつかフィードバックが来まして。経理と、それから代理店からリクエストを受けたマーケティングから、修正のリクエストが来ました。「請求書をもう少しわかりやすいレイアウトにして使いたい」「銀行振込における入金消込の精度を上げたいので、少しなにか仕組みを入れられないか」という依頼でした。
これを受けて、kintoneの下に子どものkintoneを2つつくるという構成に変えました。こちらもジョイゾーさんにお願いをして、1ヶ月でリリースいたしました。リリースの1ヶ月後、予約数の伸び率がたいへん増えまして。
「詐欺だ詐欺だ」と風評被害を受けていた我々だったんですが、これには代表に「すごいね。がんばったね」と言っていただきまして、もう「やるやる詐欺」とは言わせない状態になりました。
今回この案件に携わったことで、私がみなさんにお伝えしたいことが3つあります。まず1つは、短期間でシステムを作るには「kintoneファースト」。もう1つが、要件が不確定な案件には「kintoneファースト」。3つ目は、ユーザー自身がシステム開発に参加できる「kintoneファースト」です。
これは、約3ヶ月という短い期間で、いままで挑戦したことがなかった海外市場向けの機能を予約サイトに追加し、機能拡張をする制約のもと、システム同士をAPIで連携させるという、複雑なアーキテクチャにしました。この作りにしたことで、この業務についての深い理解が必要になってくるという課題がありました。
業務知識がある私がアプリ作成に携われたことで、結果として手戻りのない開発を実現できたことが、3ヶ月でアプリを開発し、1ヶ月でアプリを拡張し、予約数を劇的に伸ばすことができた、一番の理由だったと思っています。
ちなみに、この「kintoneファースト」という考え方で課題に対してアプローチできるため、例えば頼りにしていたクラウドサービスが、サービスを終了するようなことになったとしても、乗り切れるようになりました。
実は、2018年現在、MFクラウドさまの請求書と消込のサービスは終了していまして、それに伴って一時的にMFクラウドから弊社の経理が気合いでがんばるというアーキテクチャに変わっています。
いま、経理が非常にがんばっているんですけど、これについては、SMBCさまからご提供いただく銀行APIとkintoneを直接つなげるという構想のもと、来年度にはこれを実現させていこうと準備しています。
このようなかたちで、システムの歩み、開発期間を並べてみました。約1年と少しの間ですが、雷が落ち、「やるやる詐欺」と言われながらシステムを開発・リリースし、PDCAサイクルを回し、ちょっと事件に見舞われながらもピンチを乗り越えて、いままで一度もサービスを停止せずに継続できているのはすごいことだと思っております。
これからも、この「kintoneファースト」という考え方を胸に、がんばっていきたいと思います。みなさまもぜひ、短期で解決しなければいけない課題ですとか、いままで挑戦されたことのない市場にチャレンジをされたい時には、この「kintoneファースト」という考えのもと、kintoneとともにぜひ臨んでみてはいかがでしょうか。
星野リゾートはこれからも、kintoneを核にしたシステムの開発をがんばっていきたいと考えております。パートナーさま、エンジニアさまも大募集しております。
長くなりましたが、本日はどうもありがとうございました。ご清聴ありがとうございます。
伊佐:素晴らしかったです。ありがとうございました。
前田:ありがとうございました。
伊佐:お疲れさまでした。「やるやる詐欺事件」は、もうたいへんでしたね。
前田:そうですね。
伊佐:後ろで聞いていたんですけど、マーケの方も大変ですよね。予約受付ができないと、売上が上がらないだけじゃなくて、そもそも業務が回らないので、たぶんみんな必死だったと思うんですよ。
前田:そうなんですよね。本当にあの頃はみんな必死だったみたいで、上司の周りにマーケティングの方の列がどんどん並んで、問い合わせをしにきているような状態でした。
伊佐:それを乗り越えて、さらなる苦難も乗り越え、いまに至ると。
前田:そうですね。
伊佐:みなさん、タフですよね。
前田:そうですね。けっこうメンタルも、みんなで強くなった感じがしますね。
伊佐:ヒヤヒヤしながら聞いていましたけどね。でも、これからもちょっとずついろいろなことが(あると思います)。変化が激しいですね。ホテルもどんどん展開を広げていますし、その中でうまく使っていただければ幸いです、と思いました。
前田:ありがとうございます。
伊佐:これからも利用シーンを一緒に広げていけるように、僕らもがんばっていきます。ありがとうございました。
前田:どうもありがとうございました。
伊佐:みなさん、ありがとうございました。
(会場拍手)
サイボウズ株式会社
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