Mission / Vision / Value策定に「言葉のプロ」は必要か

三浦崇宏氏(以下、三浦):次の渡邊さんはSmartHRですが、さっきのプレゼンで言わなかったことも、今日このあと言ってもらえるんですか?

渡邊順子氏(以下、渡邊):Mission / Vision / Valueのところはお伝えさせていただきます。

三浦:じゃあもうぜひ一発目で。

渡邊:Mission / Valueをちょうど今、絶賛変えているところでして。

三浦:今ちょうど変えているところなんですね。

渡邊:そうなんです。プロのコピーライターさんにお願いして。

三浦:僕もプロですよ。

渡邊:あっ……。

(会場笑)

三浦:冗談冗談(笑)。

渡邊:最初のMission / Vision / Valueができたのは今から2年半前、創業のときだったので、最初は外の方にお願いするのはすごく抵抗がありました。

三浦:そのときの社員数は何人くらいだったんですか?

渡邊:社長と副社長と、その後に入社予定の4人で作ったものですね。そのMission / Vision / Valueに惹かれて入る社員も多くて、みんなが2年半そういう思いでやってきたものを、いきなり外からやってきたライターさんに何がわかるんだろう、というふうに思っていて。

三浦:「コピーライターがなんぼのもんじゃい」というような。

渡邊:すみません、そうですね(苦笑)。

三浦:僕らはそういうところから入っているんですよ。

渡邊:コピーライターさんにお願いしたかったことは、言葉尻や繊細な表現が外にどう思われるかなど、言葉の磨き方はやっぱりプロの方に頼るべきところかな、と思いながら、今やっているところですね。

非効率に思えるやり方にも意外なメリットがある

三浦:(コピーライターは)言われてパッと(言葉が)出るというふうに、けっこう誤解されてしまうんですが、みなさんの話を聞いて、さっき佐渡島さんと話していたように、ある種の触媒みたいな機能になるんじゃないかなと思っていて。ちなみに、渡邊さんのSmartHRでは最終的にまだ決まっていないという状況なんですか?

渡邊:まだ決まっていなくて、9月の中頃に完成している予定です。

三浦:じゃあ今はまだ準備中ということですね。今日の議論が何か少しでも役に立てばと思います。CRAZYさんとfreeeさんは、社内で全部内製されたんですよね?

小守由希子氏(以下、小守)・辻本祐佳氏(以下、辻本):(頷き)

三浦:SmartHRのみ、我々のようなプロのクリエイティブの人間に外注してやった、というところで。自社でやることを意思決定した理由はなんだったんですか?

小守:決めた理由としては、今回は、もともと経営者だった森山の言葉、森山のビジョンだったものを、全員のビジョンにする、というのを意思決定しているので、社員全員の言葉を集めて、抽出して、抽象度を上げて作っていく。そういう作り方で意思決定しました。

三浦:大変でした?

小守:すごく非効率な方法をとったんです(笑)。

三浦:でも、非効率であることが大事だったりするんですが……どのへんが大変だったんですか?

小守:まず「90名全員のビジョンを聞く」ということで、社長の時間を相当投下したんですね。具体的に言うと10名、5名1セットで、2時間という時間の中でちょっとご飯を食べたり、気持ちのいい場所に行ったりして、みんなで話し合いをする時間を、9日間作ったんですよ。9日間そこに拘束されるところと、みんなの思いを集めていく作業は、かなり難易度が高くて、時間を使っていましたね。

三浦:でも、僕らが会社を作っているなかで言うと、そういう非効率なことが意外と大事だと思うときはないですか?

佐渡島庸平氏(以下、佐渡島):そうですね。非効率というよりも、そっちのほうが逆に効率がいいというか。結局1on1のほうが情報が伝わりやすかったりするから。

まずアウトプットしてから考えて改善していく

三浦:儀式というか、こういったある種のイベントがないと本気で考えないというか。その一見非効率に見える時間が、ものすごくロイヤリティや熱狂を生むこともあると思っていて。社内でやってもいいし、外部の方にお願いすることも、ある種、その豊かな時間に投資している部分もあると思うんですよね。実際、社内の反響としては、freeeの辻本ジャーマネはどうでしたか? 

辻本:うちの場合は、最後にちょっとコピーライターさんにお願いもしたんですけれども……。

三浦:そうだよね。freeeの佐々木社長は、もともと博報堂の出身ですよね。

辻本:そうなんです。社長が最初に入った会社が博報堂さんなんです。我々の場合は、いろいろ議論して、最後にコピーライターさんに、「こういう感じのエッセンスを込めた言葉にしたいです」というところで入っていただいたので、それが伝わる温度感が難しかったですね。

三浦:難しかった。途中まで社内で集めてきた熱意をプロのコピーライターに説明したり、真空包装してお渡しするのが難しいときはありますよね。

辻本:そうなんですよね。なので、むしろ最初から入っていただいたほうが良かったのかもしれません。それこそ触媒のようなかたちで、「こういうのはどうですか」「こうですか」「でも、これは違うな」というときに、なぜそれが違うのかという(ことを考える)ので、我々の考えがより深まる。そういうことで、最終的に言葉を決めていったんです。

最初から(コピーライターさんを)入れなかったのは、最初はみんなで「必要だね。すぐ作り始めよう」となったからです。うちの会社のもともとの価値基準のなかに、アウトプット→思考というのがあって。

それは単なるアウトプット思考とはちょっと違っています。まずアウトプットしてから考えて改善していこう、というものなんですね。それがもともとある価値基準でもあるのでけっこう浸透していて、「ちょっと作ってみよう」ということで動き出したときには、まだコピーライターさんを入れるという話にはならなかったという。

Mission / Vision / Valueを「とにかく早く変えたかった」

三浦:なるほど。ちょうど、(小守氏が)100%内製型、(辻本氏が)折衷型、(渡邊氏が)外注型みたいな(笑)。外注型の意思決定をした理由はなんだったんですか? 

渡邊:まず一人ひとりの思いを反映させたい、という思いはあったんですけれども、やっぱりCRAZYさんがすごいなと思ったのは、そのヒアリングに割く時間がとてつもなく大変だなと思っていて。

今は、スタートアップならではと思うのですが、直面している課題を優先したかったのと、例えば私がみんなの意見を整理するとして、私の思いが影響してしまわないかとか。そういったこともすべてお任せしようと思ったのと、事業が成長して合わなくなってきて、とにかく早く変えたかったんです……。

三浦:とにかく早く変えたかった(笑)。

渡邊:そうなんです。早く、ちゃっちゃとやってくれるプロ……(笑)。

三浦:とにかく早く変えたかったというのは……割とこういうのは時間をかけて作ったほうがいい部分があると思っていて。いわゆる「頼まれて作る側の人間」から言うと、「最初から最後までだいたいできたので、最後の言葉にする部分だけお願いします」と言われたら、たぶんうちの会社だったら受けないんですよ。

たぶん、作る側としては、最初から最後までやる、というふうにやりたい気持ちがあって。その「急に作りたかった」というのは、どういうことなんですか?

渡邊:そもそものきっかけとなったのは、サービスのスローガンがなかったんですね。そこで私がやりたいと言って、同じ時期に社長が「価値観もそろそろ変えたい」というところで、全部コピーライターさんにお願いする形をとりました。

三浦:なるほど。実際、渡邊さんが今その作業の対面にやっているという。

渡邊:そうですね。

三浦:楽しいですか?

渡邊:楽しいです。

三浦:なにが大変?

渡邊:大変なことはそんなにないですね。ただ、今従業員が60人くらいになったことから、ヒアリングの日程調整マシンみたいになっているので、そこだけです。コピーライターさんのヒアリングを経て、結果だけ聞くんですけど、みんなの思いや目指しているところが同じで何だかうれしいですね。

外部からプロのクリエイターを入れるときの選び方

三浦:そうか、ヒアリングとか。これは僕の個人的な興味なんですが、freeeさんとSmartHRさんはプロを選ばれるときに、どういう基準でその方を選んだんですか?

渡邊:正直、明確に「ここがいい」という基準はそんなになくて、いくつか会社さんにお話を聞いて、やり方をおうかがいしたんですけれども、型がほとんど同じだったんですね。

佐渡島:どんな感じの型なんですか?

渡邊:まずヒアリングをして、グループワークをして、マネージャー以上のメンバーで揉んで、ブラッシュアップするフローがほとんど一緒でした。メンバーも言葉にはかなりこだわるので、揉むところをしっかりやれば、結果は同じかなと思って。そんなにこだわりはないです(笑)。

三浦:そんなに気を遣わなくていいですよ。どこでも一緒だなと思ったんですよね。

渡邊:速いところに。

三浦:速さと価格。牛丼じゃねえかよ(笑)。

(一同笑)

渡邊:Valueの中に「速いほうがカッコイイ」というのがあるので大事にしました(笑)。

三浦:なるほど。「速いほうがカッコイイ」。これは良い言葉ですね。freeeの(場合は、どういう基準でコピーライターを選んだんですか)……。

辻本:そうですね……。

三浦:社長の知り合い? 博報堂時代の同期?

辻本:広報の人間の知り合い。

三浦:(笑)。なるほど。やっぱり「誰がいい」というふうにはあんまり選ばれない部分があるんですね。

辻本:そこはそうですね。ずっと並走してくれる人がいたらいいとは思いますが、もともと見つけられているわけではないので、そのとき、「じゃあどうする?」となると難しいなとは感じましたね。