人の生き死にの「怖さ」にどう向き合うか

西田陽光氏(以下、西田):今朝、2時ごろ起きられた方、いらっしゃいます? 3時、4時。あ、4時が2人いらっしゃいますね。ちょっと立ってくださいます? 

(会場笑)

お嬢さん、すみません。そこの4時に起きた後ろの方とじゃんけんしてください。じゃんけんぽい、あいこでしょ。あら、仲が良いわね。もう一度。じゃんけんぽい。はい、勝った方は質問権があります。

(会場笑)

なにか聞いておきたいことを聞いてみてください。このかわいいお嬢さんに、マイクを回してくださいますか。思い付きですみません、段取りはないですから、何が起きるかわからない。

質問者:福井県から来ました。在宅医療を中心にやっているクリニックで保育士をしております。難病の子どもたちだったり、重度の障害がある子どもたちのおうちに遊びに行ったり、子どもたちを集めて保育園みたいなところをやっています。

今、働き始めて3年目なんですけど、この3年間に何人もお別れをしてきた子どもたちがいます。その子たちとお別れをするたびに、なんというか、生きることと死ぬことというのを、すごく考えるきっかけになってて。

私の中で、生きることと死ぬことは、どちらもすごく怖いことで、どちらも未来のことで、わからないことなんですけど。死ぬことと同じくらい生きることも怖いことだとすごく思っていて、生きることに対しての考え方をぜひ、お聞きしたいです。

西田:はい、ありがとうございます。その前に、大胡田さんが新しい本を持ってきて、先ほどもあったと思うんですけど、『全盲の僕が弁護士になった理由』、ネットで買えます。

全盲の僕が弁護士になった理由

それから高橋さんが一番、最初に出した本が『毎日が冒険』。それから高橋さんをよーく知る身近な方がまとめて出された『自由人の脳みそ』。考え方ですね。

新装版 毎日が冒険

ぜひ、おすすめです。理屈・屁理屈の「べき論」よりも本当にやっちゃってる人が書いている本って、すごく元気をもらえるんですね。そこはリアルだし、私自身も18年前に読んだときは40半ばでしたけど、ものすごく元気がもらえたんです。

地球の歴史を考えれば、人生は一瞬で終わるもの

西田:ですから、年齢に関係なく生きる元気を与える上で、リアルにちゃんと自分の感情や事実に向き合ったことを書いている人の本は、すごくいいと思います。ぜひ、福井から来た彼女も機会があったら。

新品もいいんですけど、意外といいなあと思って買った本を読まずに、またリリースをしちゃう人がいるんです。ですから、ネットの中古でも、新品同様のものが安く買えますから。

(会場笑)

大胡田さんの新しい本は新品で買ってください。前の(本)も新品で買ってください。でもそんな方法もあります、ということがありまして。

生きる元気(を持つうえ)で大事にしていらっしゃることを、一言ずついただきましょうか。じゃあ、わざわざ福井から来てくれた彼女に竹井さんからいきましょう。

竹井智宏氏(以下、竹井):勇気を出していただいてありがとう。素晴らしいご質問だなと思いました。私自身、前に研究者をやってまして、地球の研究とかやってたんです。そうすると、地球は46億年の歴史があって、人間が生まれたのは本当に最近なんですね。

だから、私たち(研究者)は、46億年のタイムスケールで見ちゃうので、自分たちが生きられるのは本当に一瞬だなと思います。

例えると、川が流れてきて、そこに泡がぽっと生まれてぽっと消えていく。あれは自分なんだと思ってまして。そういった意味では、すぐに終わってしまうこの人生を、「せっかくだから楽しく生きないともったいないな」って(いう気持ちが)強いです。

そういった意味では、ディズニーランドに入って閉演時間まで、いろいろ乗り尽くしてやろうというつもりで思ってまして。中には、「めちゃめちゃ楽しかったね」というのもあれば、「いやー、乗ったら気持ち悪くなって相当ひどかったです」というものがあったり。

私の場合、ひどいほうがヘビーで2回ぐらいありましたけど、それはそれである種、やっぱり人生なんだなっていう。いい時も悪い時もあっての人生。それで濃密な人生を歩めれば良いなと思っています。

ぜんぜん話の趣旨からずれてしまっているかもしれないですけど、身近な人が2人亡くなると、魂の存在みたいなものをすごく信じたり、感じたりするようになりました。そういった意味では、亡くなった人ともまたどこかで会えるし、最期を看取ってあげたことも、すごく大事なことなんじゃないかと思います。

良いことも悪いこともすべての人に同じくらい起こっている

西田:では高橋さんお願いします。

高橋歩氏(以下、高橋):なにを聞かれたんだろう……。話は聞いてましたよ。聞いてたけど……。

(会場笑)

西田:じゃあ、もう一度(質問を)お願いします。

質問者1:私の中で生きることと死ぬことは、どちらもものすごく怖いことだという認識ががあるんですけど、生きることと死ぬことに対して、(登壇している方々は)どう感じているのか。「怖い」なのか、どちらも「楽しい」なのか、すごく気になります。

高橋:どう感じているか。パッと思いついたのは、インドのバラナシというところで学校をやっているんですが、そこにはインドの多くの人が信じているヒンドゥー教の聖地である、ガンジス川が流れています。

(体験したことを)簡単に言うと、ヒンドゥー教では亡くなったあと、自分の灰がガンジス川に流れると、もう1回輪廻転生できるという宗教観があるので、(ガンジス川に)死にに来ている人もいます。毎日300体から400体くらいが火葬されています。火葬と言っても、隠されてはいなくて、人間の丸焼きです。焚火の上で人間がボッと(燃やされていて)。

俺はその様子を3時間見ました。おばあちゃんが1人亡くなって、最初に髪の毛が燃えて、爪先がぎゅーとなって。3時間で本当に人間が灰になるのを見た時に、もちろん頭では誰でも人生の終わりが来るというのは知っていたけど、自分の人生の終わりを初めて感じました。

しかも、ちょっと話したことがあったおばあちゃんが、まったく隠されずに、目の前から肉の(燃える)臭いがするような距離で(火葬されて)。そういう光景を見た時に、「ああ俺も死ぬんだな」と感じました。

でも、その時に、あっちの言葉で「死を思え」という意味で、「メメント・モリ」という言葉がありますが、俺は(死ぬことを)怖いとはまったく思っていないし、生きることも怖いとは正直まったく思っていなくて。

本を書くモチベーションもそうだけど、「そりゃ(生きていれば)つらいことはあるじゃない」という大前提がありますが、それに注目して、人生の中で(つらいことを)拾っていっても仕方がないわけで。すべての人に良いことも悪いことも、同じくらい起きていると思っています。今日あまり言うつもりはないんですが、それに似たようなことは俺の人生にもありました。

だけど、どれだけ幸せかや自由や平和というものは、頭で考えてなるものじゃなくて感じるものです。そういう考えが自分の中のど真ん中にあって、なるべく生きている間に「幸せだな」「人っていいな」ということを、たくさん感じられたらいいなと思って、毎日を過ごしています。

もちろん怖いと思うこともありますが、いろいろ考えたって仕方なくて。なるべく「楽しかったなぁ」「あいつマジで良いやつ」「奥さん美人だな」とか、そういうことで体の中をいっぱいにしていって、どこかで亡くなる。「そういう毎日になるべくしていこう、イエイ!」 みたいな思考回路です(笑)。

頭で「俺幸せ」って言い聞かせてるけど、なんか心がブルーなのは1番痛いから。残りの時間がどのくらいあるのかはわからないですけど、なるべくそういう感覚で(人生を)埋め尽くしていこうと思ってます。答えになってるかな(笑)。

西田:ありがとうございます。大胡田さん、お願いします。

迷ったときは、心が「あたたかい」と感じる方を選ぶ

大胡田誠氏(以下、大胡田):僕も高橋さんと同じように、死ぬこと、あるいは生きることに対して、あまり恐怖心というものを持ってないんですよね。それは鈍感だからなのかもしれませんが。頭でいろいろ考えたことになってしまうんですけど、母が亡くなったということが大きくて。僕の中では亡くなってから、さらに母の存在というのが大きくなったんです。

ちょっと話が長くなっちゃうんですけど、僕が4回目の司法試験で不合格になった時に、「もうだめだ」と思ったんです。正直パニックになっちゃって、どうすればいいのかわからなくなって、頭の中が真っ白になりました。

それが20代の半ばで、これから一体どうすればいいんだろうと思ってた時に、母に相談したら、「迷った時には、自分の心があたたかいと感じる方を選びなさい」と言ってくれて。

自分の心に問いかけてみたら、やっぱり弁護士になって、困ってる誰かのために働くということを想像すると、まだワクワクするような思いがあったんです。もう1回がんばってみようと思って、司法試験に5回目で合格することができたんです。

その母の生きてる時の言葉って、今も僕の支えになっているんですよね。今も悩んだ時は、「どっちを想像すると心があたたかいのかな」ということを必ず指針にしています。そういう意味では、生きている時の言葉よりもむしろ、僕の中では死んでからの(言葉の)方が重みを持っている。

死後の世界があるかはわかりませんが、僕が死んだあとも、僕の存在は僕の周りのみんなの中に残っていくのかなという思いもあって、別に死ぬことはそんなに怖くはないんです。

生きていくことの怖さを感じる時もあるのかな。そうしたらたぶん、僕も高橋さんと同じですね。例えば、「今日飲んだお茶が美味しかった」「お笑いを見てたら、ちょっと笑えた」とか、そういった自分の身近な良いものに注目すればいいと思います。

人生って意外と100パーセント悪いことばかりじゃなくて、どこかしらに良いことは必ずあります。ぶっちゃけ、そこさえ見ていればいいんじゃないですか。嫌なことなんて見なくていいんじゃないですか? 楽しいことだけ見てれば、そのうち人生が終わるわけで。「そういう人生っていいな」と。とくに高橋さんの話を聞いたあとではよく思います(笑)。

(会場笑)

生きづらさは人生のスパイス

西田:ありがとうございます。じゃあ、今日の参加者で中学生の方、手を挙げてください。自己申告でいいです、見た目で判断しますので。

(会場笑)

どう見ても中学生じゃないだろうみたいなね。中学生いますか?

(会場挙手)

ありがとうございます。(この話の)感想を聞きたくて。「大人が勝手なことを言ってるよ」とか、中学生から見てどうでした? 校長先生に告げ口しないから。

(会場笑)

「生きづらさ」って感じたことある?

質問者2:(感じたことは)あまりないかもしれないです。

西田:ああ、本当に。(生きづらさは)これから待ってるから楽しみにしてて。

(会場笑)

高橋:そんなリアクションいらなくないですか(笑)。

西田:いやいや、生きづらさを感じるから、生きがいも感じられる。世の中のことは陰と陽、どっちも必要で。困難とか汗かいた時の方が、お水もおいしいですよね。家で食べるとまずい焼きそばも、外で食べると美味しいとか。

(会場笑)

人生を深く味わうためには生きづらさとか、「え?」と思うようなことが、とてもスパイスになって楽しくなるから(必要なんです)。恵まれた環境にいると、ひどい高校に行った時に、「なんだお前ら、そんな創造性のない教育やってんのかよ」と不満に思ったりする。だから、困難の中で生きてきた人の方が、いつもハッピーでいられたりもします。どんな感想でも(いいので)、一言だけお願いします。

質問者2:どうですかね。僕、本当になにも知らないで来たので。誰が来るのかもわからないし、「とりあえず行ってこい」と(言われて)。

西田:それが大事よ。

質問者3:来たんですけど……。

西田:(登壇者を指して)この人たちもね、なんにも知らずに来いって言われて来たのよ。

(会場笑)

日にち以外、なんの打ち合わせもないの。世の中ってそんなものよ。

(会場笑)

たくさんのものと出会い、引き出しを増やす大切さ

質問者2:みんないろんな思いで、いろんな生き方をしていて、すごく参考になりました。

西田:えらい回答をするわねぇ……。でも、いろんな生き方とか、いろんな人とか、それは全部が自分のお手本にならなくても、違うものを知るということがすごく(大事で)。5年後か10年後、30年後かもしれないけど、たくさんのものと出会って、引き出しをたくさん持つのはすごく大事だから。

あなたの通っている中学校時代でもいろんな人と遭遇しますし、どちらかというと成功者が行きがちですよね。今、経産省も、いい結果を出しているところばかり狙ったり、自分のしたいようにしたがる大人の世界もあるの。でも、そうじゃなくって……。

(会場笑)

知りすぎてる人は笑わないでください。高橋さんも「社会を変える」とおっしゃっていましたが、自分で結果さえ出せば、「昔から知ってたよ」とか言って、みんなが取りに来ます。それから、行政の事例は、自分たちがやったことではなくて、ほとんど現場でやっている良いところをパクって、「うちが推進してます」と言っています。この(主催の日本)財団もちょっとそういうところあるよね。

(会場笑)

そういう要素も強いんだけど、「良い活動をする」「いい発案をする」という自信をもって、一人ひとりがやってくことが、世の中を明るくしたりおもしろくするんです。大きいところでコンテンツはないの。そういう良いところを探して、どんどんおもしろい実験をしてくださいね。

では、みなさまの中で、自分が1番年上だと思う方は手を上げてください。「70歳を越えてます」という方、います?

(会場挙手)

あ、お父さん。何歳ですか? 

質問者3:72歳です。

西田:お若く見えますね。

質問者3:(若く)見えないです。

西田:そう? そりゃ、みんな忖度だから。

(会場笑)

質問ではなくて、短い感想をいろいろもらっていきたいと思います。アンケートにも(感想を)たっぷり書いてください。参考にしたいと思います。

強みは世間の良し悪しの物差しだけでは測れない

質問者3:僕も先ほどの中学生の子じゃないですけど、(講演に)題名だけで来ちゃっていて、(登壇者の)名前と顔は見たことあるなという感じなんですけど。挫折ということで、今日出席されている方に比べれば、小さな挫折を何回も経験していると思います。

例えば、中学の時に結核になって、入院しないで自宅療養を1年間して、留年したとか。あとは高校受験を全部失敗して、最後の3次試験にたった2人しか受験生がいない。拾ってくれた高校に行って、そこで勉強して青山学院大学に入ったとか。

西田:いい時代があったんですね。

質問者3:ぜんぜん勉強をしていなかったけど、高校に入ってから勉強して浪人しないで大学に入りました。会社も1発で行きたいところに内定したら、2ヶ月くらいしてから血圧がちょっと高かったので……。

西田:72年分はちょっと長いかもしれないから、簡潔な感想を。

(会場笑)

質問者3:ああ! やっぱり、なにがあっても諦めないで、困難もあるけど希望を持って生きるということです。私はそういうふうに心掛けています。

西田:お元気そうですもんね。困難を克服をした人の方が明るくなったり、困難があったほうが、幸せを感じやすいという。恵まれすぎている人って、(自分を)不幸に思ったりしがちなんです。

(この講演と)同じ時間帯に、自分の選択や社会の状況に関係なく、自分で決めることが難しいような障害をお持ちの方の企画もあるんですけど、私も参加したかったです。(障害を持っている方は)本当に自分の強みをお持ちですよね。

元気が良いとか、あまり社会の仕組みにこだわらないとか、声が大きいとか、走りが速いとか。いろんな特徴とか強みを、自分の大事な特質であるにもかかわらず、世の中が良いということに合わせようとするんですよね。人生でその人が感じていることや、なんとかしたいと思うこと、ウィークポイントなどが、実は自分の長所かもしれないことに気付いていただきたいなと思います。

お時間が残り10分ということで、今日の素敵なゲストから、一言ずつ、「これだけは伝えたいな」というのを端的にお願いします。

心があたたかくなる方向へ

大胡田:一言だと難しいですけど、さっきもお伝えした母の言葉を、私はみなさんにお伝えしたいと思います。なにかに迷った時に、たぶん自分が向いている道は自分にしかわからなくて、逆に「自分はちゃんとわかっているのかな」と感じるんです。そのことを母は「心があたたかくなる方を選ぶんだよ」と言ってくれたと思います。

母が生きている間に、この言葉の意味を2人で話すきっかけはなかったんですが、今思うと迷っている私に対して、なにかに迷った時は、損か得かとか、人からどう思われるかとか、そんなことじゃなくて「自分の心がなにを求めているのか」。そのことだけに素直に生きればいいんだよと。それが答えだと言いたかったのかなと思います。

人生にはいろんな困難があって、いろんな生きづらさを抱えている人がいると思います。でも、「自分がなにをしたいのか」「どんなことに向いているのか」というのは、自分が一番わかっているはずです。

心を静かにしてそのことを考えると、あたたかい感じがするとか、優しい気持ちになれるとか、楽しい感じがするとか、そういったことを見つけられれば、こんな大変な世の中だけれども、自分だけは楽しく生きていけるのかなという気がしています。

ですから、どうかみなさんも楽しい人生を歩んで、この世の中を一緒に生き延びましょう、というのが私のメッセージです。

(会場拍手)

西田:打ち合わせはしなかったんですが、一言メッセージを書いてくださいとお願いしてまして、(色紙を掲げながら)「心があたたかくなる方向へ」というのを書いていただきました。抽選で、あげません。

(会場笑)

高橋さん、お願いします。

高橋:俺が先に喋ればよかったなあ……。

(会場笑)

「鳥肌」は絶対にウソをつかない

高橋:今までいろんなところで、1,000回以上トークライブをしてきました。講演と言うとダサいので、トークライブと言ってるんですが。俺は夢を叶えたりして、本当に幸せに生きています。みんなに向けてと言われた時に、パッと思いつくのは、人生の中で親とか、多くの人から「大切なことほどよく考えなさい」「よく調べて、自分で判断しなさい」と、ずっと言われていて。

考えてはいたけど、よくわからないなといつも思っていました。調べれば調べるほど、余計にわからない。今インターネットとかで、なにかを調べても、絶対良い悪いの意見が半々ずつ返ってきます。

人生の大事なことを頭で考えるとか、インターネットで調べるとか、そういうことによって判断するというのが、ピンと来てなくて。先ほど言った、20歳で自分の夢に初めてチャレンジしたのをきっかけに、ハートだよと。鳥肌が立つとか、感動して涙が出るとか、ゾクゾクするとか。いわゆる「believe your 鳥肌」と言ってますけど。

(会場笑)

鳥肌って絶対にウソをつかないと思うんです。たまに「3、2、1 鳥肌!」とか言ってるダサいやつもいるけど、そういう奴は置いといて(笑)。基本、涙とか鳥肌は出ちゃうわけで。それほど最高のサインはないだろうと、まじめに考えています。

全員が違う感覚を親からもらって、今まで出会ったすべての人の影響を受けて、それぞれの感性みたいなものがあるんです。それが強く反応することは、「絶対ゴーだろう」という。はっきり言えば、胸のときめきが来たらゴーなんだよという感じで、人生でやることを決めたので、すっきりしてました。

そのあとに、どうやっていくかというところで、初めて頭を使います。心が先で、次に頭を使う。そこを割り切って、そうやって生きるという「マイ人生ルール」みたいにしちゃっています。

人に説明する時には、「いや、脳みそがスパークしちゃって」とか言ってて。「もうちょっとわかりやすく言ってもらっていいですか」みたいな感じになるんだけど(笑)。大人はすぐに理由を聞きたがりますよね。その行動にどういう理由があるのか。「行動するのに理由なんかいらないんだよ」と心から思ってます。かっこいいとか、ワクワクするとかで十分じゃないですか。

自分の心の声は、聴こうとしないと聴こえなくなる

高橋:そこらへんは、正しいか正しくないかが自分ではわからないから、自分の人生のルールを決めて、そうしたら自分がすっきりして。さっき大胡田さんから、「心のあたたかい方を」という言葉があったじゃないですか。

(自分の感覚を)チェックしてないと、その温度差がわからないはずなんです。「温かいと感じると言われても……」みたいな。だけど、自分がどう感じてるのかを日々チェックしていると、「これはあったかいな」「これはそうでもないな」とかが、わかるようになってきます。

逆に危ないのは、自分の心の声を聴かなくなってくると、どんどん聴こえなくなります。「すげぇ超楽しそう!」と感じてやってみると、シンクロニシティみたいな、偶然にもラッキーなことがどんどん起こったりします。自分がいい感じだと思うことをやる時、いきなり3,000万の借金をしたりする(笑)。だけど結果として、上手くいくようになっていく。

「みんなそう生きるべきだ」と言うつもりは一切ありませんが、74億分の1の人間である俺としては、「かなり馬鹿じゃね」というくらいの感覚です。「きた! これヤバイ、超ワクワクする!」となったら、神様でもなんでもいいけど、どっか上の人たちからの、「高橋歩、それゴーだよ」という強烈なサインだと受け取って、それで人生の方向を決めます。

すごく頭が悪そうだけど、一応それで幸せに生きられていて。それで最近開発した技があります。社会の人に説明する時に、「脳みそスパーク」「鳥肌を信じよう」と言っても誰も聞かない。だけど、「直感」って言葉を使うとみんな信じます。

(会場笑)

「直感に正直に」と言うと、「うん、わかる」とか言うわけ。

(会場笑)

それって「脳みそスパーク」と同じ意味だから(笑)。大人に説明する時は「直感」という言葉を、便利なので使って、みんな心のままに楽しく生きていきましょう。今日はどうもありがとうございました。

(会場拍手)

勝てない試合も「ヒューマンシップ」でやり抜く

西田:ちなみに高橋さんの心に残る一言は、「サヤカ、ラブ」。ですから、みなさんも心のメッセージ、「これが本質だ」というような言葉を見つけてください。じゃあ、竹井さんお願いします。

竹井:高橋さんのお話は聞いていると気持ちいいですよね(笑)。私の方は現在進行形の悲劇なので、そこまで歯切れは良くないですけど。

(会場笑)

竹井:私は1年前の事故があるまでは、絵に描いたようなハッピーな家族だったんです。妹の悲劇から立ち直って、うちの両親まで含めて、本当に幸せだったんですけど、1日でそれが崩れてしまうということを経験しました。それまでは、(幸せな状況は)だんだん悪くなるんだろうと思ってたんです。でも、1日で天国から地獄へと悪くなるんだという感じでした。

妻は私以上にショックが大きいので、毎日泣いています。今朝も妻を抱きしめて、慰めてから来ました。そんな中で、私が色紙に書いたのは「ヒューマンシップ」という言葉です。「スポーツマンシップ」ならぬ「「ヒューマンシップ」。

私はサッカーが好きで、試合で負けることもありますけど、例えばどんなに大差がついてても、全力で最後までやることがすごく大事なんです。試合中にちょっと捻挫しても、がんばってやりにいくような選手が、熱く情熱を燃やしてる姿を見るのが大好きで。ゴン中山とか、そういうタイプの人。

(会場笑)

岡崎(慎司)とか、そういうタイプの選手がすごく大好きで、自分もそういうふうにプレイしたいなと思って、試合をしたりするんですけど。人生においても、そういうスポーツマンシップじゃないけど、「ヒューマンシップ」で、大差がついていて絶対に勝てないと思っても、最後まで全力で走り抜くということです。

人生をおもしろくするのは「偶然の出会い」

竹井:私自身の人生には、もう完全勝利というのはない状態なんです。身内……ある種、大切なチームメイトが亡くなってしまった状態で、サッカーの試合に勝っても、それは涙の勝利にしかならないという感じで。完全勝利にはならないんですけど、最後の笛が吹かれるまでは、全力で走り抜こうと思ってます。

振り返ってみると、実はそういう立場や環境の人がたくさんいるんだなということに、(自分が)経験してから気付きました。うちの家の隣には、気仙沼から引っ越してきた方がいます。まだ詳しくは聞いてないんですけど、たぶん身内の方を東日本大震災で亡くされてるんじゃないかなと。

街を朗らかに歩いている人の中にも、すごくつらい経験とかをして、抱えて生きてる人もたくさんいるんだということを改めて感じたので、「力強く生きていきましょう」という(想いを込めました)。

西田:(色紙を掲げて)「ヒューマンシップ」といただきました。ということで、お時間が参りました。私からのメッセージは、「いつも出会いに感謝」です。今日も、ゲストの方はもちろん、会場に来てくださった方に、より強く感謝したいと思います。

私は本を読んだり、いろんな活動でこちらのゲストを知っていたので、こういう素敵な方を(みなさんに)紹介したいなと思って、今日来ていただきました。ですから、ゲストのみなさん、来ていただいて本当にありがとうございます。

これで終わりたいと思うんですが、もっと聞きたいと絶対に思われると思います。それから、お隣の方もしくは後ろの方、それはお好みに任せますけど、名刺交換などをしていただきたいです。効率的な考えではなくて、偶然出会ったというところが、意外と人生をおもしろくします。今日は最後までご清聴いただき、ありがとうございました。

(会場拍手)