冷たいシャワーが健康に良いって……本当?

もしあなたが、生活の生産性を謳う教祖のような人をフォローしていたとしたら、その人から「朝に冷たいシャワーを浴びるといい」と聞いたことがあるかもしれません。

すぐに目がさめるだけではなく、数え切れないほど健康への良い影響があるというのです。みんなそういった健康のライフハックを聞くのは好きでしょうから。しかし、冷たいシャワーにそのような効果があるのかについて、実際はよくわかっていないのです。

私のようにフロリダで生まれ、モンタナに住む人にとっては、住む場所により「冷たいシャワー」がなにを意味するのか異なると思います。ですから、恐ろしい冷たいシャワーに飛び込む前に、ちょっとリサーチをしてみましょう。

研究はまだ十分ではない現状

冷たいシャワーについての研究で一番問題になるのは◯◯です……と言い切りたいところですが、実際そのような研究は十分になされていません。この効果の主な根拠とされているのが、冷たい水や空気を使って体調を整える「寒冷療法」や、冷たい水で何度も泳ぐ人たちの研究結果です。

しかし、「寒冷療法」は慎重にコントロールされたなかで行われますし、寒中水泳をする人たちは通常1時間以上水の中にいることがよくあります。ですから、その状態が出勤前に軽く浴びるシャワーに当てはまるのか、はっきりと言えません。

それでも、冷たいシャワーの効用に全く根拠がないのかと言えば、そうではありません。根拠はあるのですが、あまり強い根拠ではないのです。

冷たいシャワーを浴びるとエネルギーが湧いてくる?

例えば、冷たいシャワーを浴びる人たちは、それにより免疫システムが向上すると言います。2016年に「プロス・ワン誌」で発表された論文では、朝に冷たいシャワーをさっと浴びることにより、仕事で病欠する日数が減るかどうか研究されました。

30日間連続で2300人以上の被験者たちが、温かいシャワーだけ、または温かいシャワーを浴びた後、最後に水を冷たくして30秒間、60秒間、または90秒間冷たいシャワーを浴びるという実験が行われました。平均して冷たいシャワーを浴びた三つのグループの被験者たちは、温かいシャワーを浴びたグループの人たちと比べて29%病欠が少なくなったのです。大雑把に言って一ヶ月に一日病欠が少なくなったのです。

しかしその理由ははっきりわかっていません。なぜなら研究者たちはその実験において何らかの生物学的標識を計ることをしていなかったからです。多くの被験者たちは冷たいシャワーを浴びるとエネルギーが湧いてくる感じがすると言って、実験が終わってからも冷たいシャワーを浴び続けました。しかしそれだけでは解決しません。もしかしたら彼らの白血球の量が冷たいシャワーを浴びたことにより増加したのかもしれません。

それは寒中水泳をする人たちに見られる現象です。それでも90秒ほど冷たい水を浴びることは、1時間寒中水泳をするのとは状況が大きく異なります。

効果があるかは、根拠を明らかにしてからにしませんか

また多くの人は、冷たいシャワーは気分を高揚させる作用があると言います。しかしその根拠はもっと弱いかもしれません。「Medical Hypothesis誌」の2008年度のある研究結果は、冷たいシャワーには抗うつの作用があるということでよく引用されますが、それでもちょっと信憑性に欠ける点があります。

その仮説では、冷たいシャワーは交感神経系を活発にすることができるというのです。交感神経系は、心拍数を上げ、エンドルフィンの放出を促進したりするので、それにより、気分が高揚するのは確かです。しかし、これにはたった3つしかデータ点がなく、一つは論文の著者ですし、被験者の中にうつ病患者がいた訳でもありません。

それに、研究により変更すると思われていた生物学的標識も一度も測られることはありませんでしたから、基準となるものがあるわけでもありません。論文の著者も、自己の論文の中でそれを認めています。

しかし、その論文に確証があるわけでもないのに、悲しいかな、ブロゴスフィアの中では未だに冷たいシャワーが抗うつの働きをすると信じている人が多くいます。一つ言えるのは、冷たいシャワーにプラシーボ効果はないということでしょう。冷たいシャワーは浴びればわかりますから。ですから、冷たいシャワーの効果は、現存する証拠により多くの賞賛を受けていると言えるでしょう。

ちょっと浴びるくらいで有害なことはないかもしれませんが、現実と身体についてなにかを主張するのなら、根拠を明らかにしてからにしませんか。