働かなくてもいい時代の「仕事選び」

小谷俊介氏(以下、小谷):またここで、政治的な話ではないのですが、やはりこのアウトプットの大切さというところで、(『結局、人生はアウトプットで決まる 自分の価値を最大化する武器としての勉強術』の)77ページに行きたいと思います。ベーシックインカムが導入されたら何をするのか。

結局、人生はアウトプットで決まる 自分の価値を最大化する武器としての勉強術

やはり今回(参加された方々)の中でも、アウトプットに興味あるけれど何をしたらいいのかわからない、という人たちも多いのかなと思います。強制的にではないですけれども、実現可能性の高いベーシックインカムというものの中で、それぞれ何を考えているかが非常に大切ですよね。意外と考えていない方が多いのかな、と思うのですがどうでしょうか。

中島聡氏(以下、中島):まあ、そもそもベーシックインカムが何かを知らない人もいっぱいいます。

小谷:そうですね。

中島:知っている人の中でも、そんなものを導入するはずがないと思っている人もいます。「ベーシックインカムが導入されたらどうしよう」と真剣に考えている人はまだ少ないと思うけど、例え話というか考えるベースとして、ベーシックインカムみたいに働かなくても誰でも食えるという状況になったときに何をしますか? という話です。

もうちょっと付け加えると、働かなくてもいい時代になったときに、あなたはなにを、どの仕事を選びますか? なんですよ。別に、「遊ぶ」という人もいてもいいんだけど、なんとなく僕は、それは違うような気がしています。働かなくてもいい、別に給料のために働くのではない中で、何をして働きますか? もしくは、何をして世の中に役に立ちますか? でもいいけれど。

小谷:貢献する。

中島:そういう考え方をしていくと、自分にとって大事なものが見えてくると思いますよ。僕の場合のそれは、明らかにプログラムを書くことなんですね。儲かる儲からないは関係ないんです。そういうものに出会えて、しかもそれで食べていけたら最高じゃないですか。

(会場頷く)

ベーシックインカムは、お金のための労働から人を解放するか

中島:僕はね、食える食えないは別にして、これで生きていきたいとか、これだったら勝負できるとか、これだったら世の中の役に立つみたいなものを芯に持っておくと、そこがこう、なんていうのかな……。

小谷:自信にもなりますし。

中島:自信というか、自分の芯みたいなもの。なんていうのかな、支えというか、自分の実体かな? 実体とやっていることがずれていると、難しい。不幸せだから、じゃあその実体と合わせるにはどうしたらいいかって考える。例えば、本当に音楽とかが好きで、音楽で食えばよかったのに、なぜか親に説得されて音楽じゃない道を選んでしまったというような人はいっぱいいるわけですよ。

小谷:多いと思います。

中島:でも、こうやって突き詰めて考えると、もし、食うのを心配しなかったら俺は音楽やりたかった、という人は、そこにちょっと不幸せがあるわけじゃないですか。そこで本当にやりたいことと、食うためにする仕事をどうやって一致させていくかということに考えが及びますよね。

小谷:そうなんですよね、擦り合わせをしないといけないなどということがありますね。

中島:ひょっとしたら、そういう人は転職によって解決するかもしれない。あまりにもずれているのに、それで食うためだけに働くというのはなんだかもったいないと思いますよ。それもあって、僕はベーシックインカムみたいなものは(必要性が)ある、と思う。

小谷:あったほうがいいと思うんですね。

中島:でもあまり日本の政治家がやると、批判されるし(笑)。

小谷:(笑)。

中島:霞が関は仕事が減るからね。まあ、彼らに使ってもいいかもしれないですね。

小谷:参加されている方の中で、先ほど中島さんがおっしゃったように、自分の中に本当に好きな仕事とか趣味とか、自信となるものを持っておられる方は、どれくらいいらっしゃいますか?

(会場挙手)

「大学時代は楽しかったなあ」の裏側

小谷:やっぱり少ないですよね。では、本当にこの仕事で食っていくとか、食っていくためじゃない、楽しんでやっている、みたいな方はどうでしょうか。もう一回手を挙げていただいていいですか?

(会場挙手)

小谷:少ないですよね。日本人はなかなか、欧米と比べるものではないと思いますが、やっぱり好きを仕事にしているというか、ハマっている人は少ないなと思います。親のあれではないですが、レールに乗るとか食べるためにとか考えてしまいますよね。

中島:大学を出て2年くらい経ったときに、もう1回大学の連中が集まったときに、全員口を揃えて「大学時代は楽しかったなあ」と言うんですよ(笑)。

小谷:早いですよね。まあまあ、ありますよね(笑)。

中島:僕はそのときすごく仕事が楽しかったから、本当はけっこうショックでした。マイクロソフトに移っていたし、なにも言えなかったというのもあるんですけれど(笑)。

(会場笑)

でもなんだかみんな、「大学時代は楽しかったよなー」と言っているんですよ。

小谷:あーーー。

中島:僕はちょっと、それを見て悲しかったですね。

小谷:それがずっと続いていく気がしますよね。居酒屋の愚痴じゃないですけれど。そういう、仕事終わってからが本当の自分みたいな感じ。

中島:ひょっとしたら、新卒一括採用みたいなものが(原因かもしれない)、そこで一発勝負で決めないといけないから。

小谷:確かにそうですね。

中島:日本の場合は厳しいのかもしれない。

小谷:転職があまり良しとされていないのも、未だにあったりしますからね。生え抜きということがアドバンテージみたいな感じがありますよね。

中島:別にアメリカ人だって、学校を出たときに何をしたいか知っているということはないんですよ。アメリカ人でも、就職してみたら違うから辞めた、みたいなことはあります。それでもう1回学校に戻って、というのがけっこうあるんです。

小谷:あ、戻れるんだ。

アメリカでは50代でも学校で学び直して再就職する

中島:アメリカの場合は、別に30になろうが40になろうが学校に戻って、もう1回やり直して、そこから就職ができるから。やり直しがきくんです。

小谷:転職のさらに先で学校に行って学び直す。そしてまた再就職というのが普通にできる。本質的でいいですね。

中島:僕の息子のお嫁さんのお母さんだから、だいたい僕と同じぐらいの年だけど、3年くらい前に学校に戻ったかな。

小谷:3年くらい。

中島:そこで資格を取って、それで仕事を見つけてみたいなことをやっています。それを普通にアメリカ人はやっていますよ。それをしにくいのが日本ですね。

小谷:しにくいというか、できないというか、認められないという感覚ですよね。まあ、実際できたとしても、もう……。社会人大学のようなもので共に一緒に学んで、というようなイメージを持っていますが、地元で1回中座して大学に戻って、いかにそれが実学的なものであっても、聞いたことがないですもんね。

中島:それはダメだといって諦めちゃうと、何も起こらないから。

小谷:本当にそうですね。

中島:それはやっぱり、もしかしたらいくかも知れない。

小谷:改めて思いましたね。あとはやっぱり中島さんの活動で。これはまだ知らない方もいらっしゃると思いますが、エンジニアとしてアプリもいろいろと開発されていたと思います。最近のもので、みなさんに紹介したいアプリなどはありますか? 

また話は飛びますが、アウトプットという意味から、アプリづくりのススメなどはありますか?

最適なルートを見つけてくれるアプリ『バス2.0』

中島:そうですね。最近もプロジェクトがいくつかありました。1つはiPhoneアプリです。まだまったく宣伝もしていませんが。『バス2.0』というアプリ。

小谷:『バス2.0』、乗り物の「バス」ですね。

中島:乗り合いバスのシュミレーションです。一般の人がダウンロードして面白いものではありませんが、ものすごく真剣に作りました。

小谷:どういったアプリなんですか?

中島:地図上でお客さんが、僕はここからここまで行きたい、私はここからここまで行きたいといったように、それぞれが乗る地点と行き先を指定すると、町中を走っている乗り合いバスが迎えに来てくれます。乗り合いも含めているので、3人乗りであれば3人を拾って、それぞれの目的地に届けてくれる。要は、最適化ルートを見つけてくれるんです。

この問題というのは、これから10年20年後ぐらいに、自動運転車が実現されたときに必ず必要になるわけです。たぶんそれが実現されると、今あるタクシー、バスだけではなくて、電車や乗用車も全部入れ替えられるくらいかもしれない。誰も自分では運転しないし、車も持たないし、電車とバスもいらなくなる。それを全部やるという世界が来るんですよ。

そこで10年後20年後に、ものすごく重要になるアルゴリズムを作ろうと始めたのが『バス2.0』というソフト。取りあえずうちはまだ乗り合いバス会社を運営しているわけではないのだけど、そのアルゴリズムは誰かが解決しなきゃいけないので、僕がやろうと始めました。それはもうぜんぜん、うちの嫁さんには「なんでそんなことやってるの」と。

(会場笑)

だいたい、今やっても儲からないわけですよ。だけど誰かが解決しなければいけないから始めたのがその『バス2.0』というソフトです。それは伝えたいことですね。

いつかはSlackに勝とう

Slackという仕事用のチャットアプリのサービスがあるのですが、すごくよくできている。僕も使っています。それはSlack用のアカウントを作って、ワークグループというグループを作って、そこにみんなが入ってディスカッションをするといった仕組みなのですが。

もうちょっと軽いものがほしいと思ったので、Slackよりも軽いアプリを作りました。それは未完成なのですが。Slackというのは、IT業界ではよく知られているアプリなんです。

「ユニコーン」という企業価値1千億以上でありながら未上場という会社が、たぶんほとんどがシリコンバレーにあるんですけど、そこの1つと平気で戦うソフトを僕と友達2人で創って、「いつかはSlackに勝とう」というようなこともやっています。

それも、うちの嫁さんに言わせれば「あなた勝つ見込みゼロじゃん」。

小谷:いや、良いですよね。ちなみに、この本(をつくるときも)もSlackを使ってグループでやっていたのですが。GoogleやLINEを使ってグループワークをしている方もいらっしゃると思います。もしご存知ない方がいらっしゃったら、グループワークにすごく便利なSlackというものがあります。

さらにその上を行くカジュアルなものを中島さんは作っていらっしゃるということですね。何という名前のアプリですか?

中島:『Chat to go』です。

小谷:これから公開された際には、ぜひご紹介ください。