SmartHR内藤氏とBizteX袖山氏が登壇

河井保博氏(以下、河井):日経BP総研の河井と申します。よろしくお願いいたします。CTO(Chief Technical Officer、Chief Technology Officer:最高技術責任者)のお二人にお話しいただくチャンスはなかなかないので、ちょっとうれしいです。

今日は「自動化がもたらす経営の未来」ということで、これから先にどういう未来が開けていくのかというお話になっていけばいいのかなと思っています。まず最初に、SmartHRの内藤さんから、自己紹介をお願いいたします。

内藤研介氏(以下、内藤):株式会社SmartHRの内藤と申します。「CTO対談」とあるんですが、実際は私はCPOという役割でやっていまして、プロダクトの責任者をやっています。

私自身の役割はけっこう会社のフェーズごとに変わってきています。プロダクトをリリースした初期の頃は人員もいなかったので、サービスの企画や設計、開発、ユーザーサポート、あとはセキュリティ面や法務を見たりと、けっこう幅広くやっていました。

幸い最近は優秀なメンバーが増えてきたので、その辺りは任せて、私は新規のプロダクトの設計などをやっております。

弊社のサービス「SmartHR」は、企業の人事や労務の方々向けのサービスを展開しております。クラウド型のサービスで、社会保険や雇用保険をはじめとする従業員の方々の労務手続きを自動化するサービスを提供しております。本日はよろしくお願いします。

河井:ありがとうございます。では、袖山さん、お願いします。

袖山剛氏(以下、袖山):BizteX株式会社の袖山と申します。取締役CTOをやっております。私が嶋田と出会ったのは2017年の2月ぐらいですね。その時に酒を飲みながらいろいろ語り合ったりして。最初はジョインする気はなかったんですけど、やはり熱量と人柄にものすごく惹かれていきまして。

あとは、プロダクトのロードマップというか絵を、弊社に投資いただいている投資家の田島さんなどと、すごく密にやりとりしていて。その時に「単なる勢いだけじゃないな」という印象を持ち、ジョインした経緯があります。

弊社のプロダクトはクラウドRPAなんですけれども、特徴としては、「誰にでも簡単に使えるようにする」。これが弊社のプロダクトを立ち上げるときの肝です。今までですと「簡単に」ではなくて、どちらかというと情報システムの方やSEの方が使うようなツールだったんですが、それを簡単にするのがこのプロダクトの一番の肝で、ゼロ(からの)開発・運営をしております。

デジタルテクノロジーで新しい価値を生み出す

河井:それは値段的なところも含めてということですよね。

袖山:そうですね。値段的にもぜんぜん(抑えることができます)。今までと比べて、数分の1から10分の1ぐらいに収まっています。

河井:ここから対談に入っていきます。まず最初に、日本の成長戦略のような大きな話ですけど(笑)。

みなさまもお感じになっていると思いますが、日本の経済はやはりかなり行き詰まってる感があるんじゃないかなと思うんですね。だからこそ政府も一生懸命日本の成長戦略を描いて、最先端の技術やいろいろなものを使って「Society 5.0」という話までしています。

「『Society 5.0』っていったいなにを指すものなのかな?」ということもちょっとよくわからないところはあるんですけど、必要なときに、必要なものを、必要なだけ使えるような環境が、「Society 5.0」の定義の中に入っています。それを支えるのがやはりデジタルテクノロジーなのかなと思います。

今、日本はこれからどんどん人口が減っていきますよね。人が足りません。みなさまも現場で感じられているところがたくさんあるんじゃないかと思います。

その中で新しい価値を生みだしていかなければならない。新しい価値を生んで成長していかないと、新しくお金をいただくことはできないと思うんですよ。それは日本の国内でもそうだし、海外でもそうだと思うんですね。

今のデジタルテクノロジーがすごくおもしろいのは、「Society 5.0」だからというよりは、今までにないような新しい価値を感じられるものができあがる。それがすごく意味があるというか、おもしろいものだと思うんですね。

人口減少社会に必要なサービス

河井:ものがいいんじゃなくて、やはりそこで得られる価値・新しい体験がすばらしい。だから、みんなそれが欲しいと思うし、そのサービスを受けたいと思う。そういう流れになってくるんだと思うんです。

それを人口が減っていくなかで、きちんとやっていかなきゃいけないと思うと、どうしても効率化もしなきゃいけませんし、スピード感をもって新しいものを次々に生み出していく流れも、どうしても必要になっていくということですね。

そういう社会を作っていこうと動かれているのが、SmartHRさんとBizteXさんなのかなと。もちろん2社だけではないですけど、この両社は少なくともそこを狙って、いろいろなことをやろうとしていらっしゃると思います。

今日は「その先にどういう未来が描けるか」というお話をいただきたいと思っています。まずは、そういう意味で「こういうふうに社会を作っていきたい」といったところを、SmartHR・内藤さんからお話しいただきたいなと思います。

内藤:SmartHRの取り組みとしては、まずバックオフィスの業務を効率化するという部分は顕在ニーズも高く非常にわかりやすい部分で、いま現在提供している価値だと思っています。

この中にバックオフィスの方がいらっしゃるかもしれないんですけれども、そうでない方々のためにご紹介させていただくと、例えば、新入社員を雇われたときに、社会保険や雇用保険の手続きをするのは非常に面倒です。

手書きで何枚も同じような情報を書かなければいけなかったり、書いた紙を役所の窓口に持っていって、忙しいときは役所で何時間か待たされることがあって、非常に無駄が多いです。

手書きで書く作業の前にも「従業員から情報を集める」という非常に難解なミッションがあって。従業員の方に「年金手帳って何?」「マイナンバーってどこで見れるの?」といった基礎知識がなければ、そのへんのレクチャーをしなければいけなかったり。1人を雇うだけでも、バックオフィスの業務は非常にたくさんのやらなければならないことがあるんですね。

バックオフィスの非効率な業務

内藤:そういったなかで、私たちが提供するクラウド型のソフトウェアを使っていただくと、業務を定型化できる部分があります。さらに、手書きがなくなることで人による誤入力もなくなります。さらには電子申請がありますので、わざわざ役所に行って待つ必要もなく、ブラウザ上からポチッと押すだけで申請できるようになります。

こういった業務を標準化・デジタル化することによって、非常に効率化することができます。

付け加えてご紹介させていただきますと、最近だとみなさまもしかしたら年末調整などをされているかもしれないんですけれども、このへんも非常に大変でして。自身の紙を書くだけならいいんですけれども、労務担当者の方の仕事を想像されたことがありますでしょうか?

まず従業員に紙を配らなきゃいけないんですね。「こうやって書くんですよ」というお知らせを毎年しなきゃいけない。従業員の方が紙を書いて、提出してもらうと、それをチェックしなきゃいけなかったり、こちらも非常にたくさんの作業があります。

こちらもクラウド型のソフトウェアを使うことによって、業務を標準化して効率化できるような仕事がまだまだたくさん残っております。こういった業務以外にも、まだまだたくさんバックオフィスの業務は無駄なことが残っていたり、非効率な部分が残っております。私たちはこれらをうまく解決していきたいなと考えております。

河井:どうもありがとうございます。途中で、「人を雇っても」というお話をされましたけど、人を1人余計に雇うと、その人を教育するのって、逆に負荷がかかってしまうようなところもありますよね。そこを効率化できるといいのは、すごくよくわかる話だと思います。

今、人事系のところでやっていらっしゃるんですけど、ミッションに「社会の非合理を、ハックする。」とありますよね。社会の非合理はいろいろなところにあると思うんですけど、どうして人事のところにいったんでしょう?

尖った技術であることよりも、使い方を考えることが大切

内藤:そうですね、正直申し上げて、私たちの創業者がすごくそこに明るかったわけではないんですね。ただ、世の中の困っていることをヒアリングしていくと、人事や労務の分野はまだまだデジタル化がされていないことがわかったんですね。

例えば、ちょっと近しい分野では、会計などの分野は昔からソフトウェアがあって、わりと効率化されてた部分はあるんですね。ただ、人事・労務の分野はなぜか後手に回っていた面があって、ここは費用対効果が高そうだという……提供できる価値が大きいなと気づいた面があります。

河井:その背景にはやはり、ご自分の体感などもあったんでしょうか?

内藤:そうですね。共同創業者の宮田(昇始)の奥様が産休を取る時に、たくさんの産休の書類を手書きしないといけなかったそうです。本当は会社が用意しなきゃいけない書類なんですけれども、なぜか従業員が書かされたり、会社が忙しいと後回しにされる面があったりして、非合理を感じる部分はあったなと。

河井:やはり、気がつくところがどこかにあるわけですよね。そうは言っても、御社のサービスは、そんなにすごく特別なテクノロジーを使っているわけではないんですよね。

内藤:そうですね。めちゃくちゃ尖った技術を使っているわけではないですね。どちらかというと、枯れた技術を当たり前のように使うことを意識していますね。

ただ、それだけでも、先ほど申し上げたように、IT化が遅れている部分は非常に費用対効果がいいんですね。そういった部分はまだまだたくさんあると思うので、今後もそのあたりをハックしていきたいなと思っております。

河井:本当に技術は使い方ですもんね。僕らもすごくよく言うんですけど、「いい技術が広がるとは限らない」と。その使い方を本当に考える人がいて、「こういうふうに役に立ったよ」とならないとなかなか使われないので、そういう意味では上手に使っている例なのかなと思います。

じゃあ続きまして、(「どういうふうに会社をつくっていきたいか」を)BizteX・袖山さんから。