2024.10.10
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CTOが語る!自動化がもたらす経営の未来(全1記事)
提供:BizteX株式会社
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河井保博氏(以下、河井):日経BP総研の河井と申します。よろしくお願いいたします。CTO(Chief Technical Officer、Chief Technology Officer:最高技術責任者)のお二人にお話しいただくチャンスはなかなかないので、ちょっとうれしいです。
今日は「自動化がもたらす経営の未来」ということで、これから先にどういう未来が開けていくのかというお話になっていけばいいのかなと思っています。まず最初に、SmartHRの内藤さんから、自己紹介をお願いいたします。
内藤研介氏(以下、内藤):株式会社SmartHRの内藤と申します。「CTO対談」とあるんですが、実際は私はCPOという役割でやっていまして、プロダクトの責任者をやっています。
私自身の役割はけっこう会社のフェーズごとに変わってきています。プロダクトをリリースした初期の頃は人員もいなかったので、サービスの企画や設計、開発、ユーザーサポート、あとはセキュリティ面や法務を見たりと、けっこう幅広くやっていました。
幸い最近は優秀なメンバーが増えてきたので、その辺りは任せて、私は新規のプロダクトの設計などをやっております。
弊社のサービス「SmartHR」は、企業の人事や労務の方々向けのサービスを展開しております。クラウド型のサービスで、社会保険や雇用保険をはじめとする従業員の方々の労務手続きを自動化するサービスを提供しております。本日はよろしくお願いします。
河井:ありがとうございます。では、袖山さん、お願いします。
袖山剛氏(以下、袖山):BizteX株式会社の袖山と申します。取締役CTOをやっております。私が嶋田と出会ったのは2017年の2月ぐらいですね。その時に酒を飲みながらいろいろ語り合ったりして。最初はジョインする気はなかったんですけど、やはり熱量と人柄にものすごく惹かれていきまして。
あとは、プロダクトのロードマップというか絵を、弊社に投資いただいている投資家の田島さんなどと、すごく密にやりとりしていて。その時に「単なる勢いだけじゃないな」という印象を持ち、ジョインした経緯があります。
弊社のプロダクトはクラウドRPAなんですけれども、特徴としては、「誰にでも簡単に使えるようにする」。これが弊社のプロダクトを立ち上げるときの肝です。今までですと「簡単に」ではなくて、どちらかというと情報システムの方やSEの方が使うようなツールだったんですが、それを簡単にするのがこのプロダクトの一番の肝で、ゼロ(からの)開発・運営をしております。
河井:それは値段的なところも含めてということですよね。
袖山:そうですね。値段的にもぜんぜん(抑えることができます)。今までと比べて、数分の1から10分の1ぐらいに収まっています。
河井:ここから対談に入っていきます。まず最初に、日本の成長戦略のような大きな話ですけど(笑)。
みなさまもお感じになっていると思いますが、日本の経済はやはりかなり行き詰まってる感があるんじゃないかなと思うんですね。だからこそ政府も一生懸命日本の成長戦略を描いて、最先端の技術やいろいろなものを使って「Society 5.0」という話までしています。
「『Society 5.0』っていったいなにを指すものなのかな?」ということもちょっとよくわからないところはあるんですけど、必要なときに、必要なものを、必要なだけ使えるような環境が、「Society 5.0」の定義の中に入っています。それを支えるのがやはりデジタルテクノロジーなのかなと思います。
今、日本はこれからどんどん人口が減っていきますよね。人が足りません。みなさまも現場で感じられているところがたくさんあるんじゃないかと思います。
その中で新しい価値を生みだしていかなければならない。新しい価値を生んで成長していかないと、新しくお金をいただくことはできないと思うんですよ。それは日本の国内でもそうだし、海外でもそうだと思うんですね。
今のデジタルテクノロジーがすごくおもしろいのは、「Society 5.0」だからというよりは、今までにないような新しい価値を感じられるものができあがる。それがすごく意味があるというか、おもしろいものだと思うんですね。
河井:ものがいいんじゃなくて、やはりそこで得られる価値・新しい体験がすばらしい。だから、みんなそれが欲しいと思うし、そのサービスを受けたいと思う。そういう流れになってくるんだと思うんです。
それを人口が減っていくなかで、きちんとやっていかなきゃいけないと思うと、どうしても効率化もしなきゃいけませんし、スピード感をもって新しいものを次々に生み出していく流れも、どうしても必要になっていくということですね。
そういう社会を作っていこうと動かれているのが、SmartHRさんとBizteXさんなのかなと。もちろん2社だけではないですけど、この両社は少なくともそこを狙って、いろいろなことをやろうとしていらっしゃると思います。
今日は「その先にどういう未来が描けるか」というお話をいただきたいと思っています。まずは、そういう意味で「こういうふうに社会を作っていきたい」といったところを、SmartHR・内藤さんからお話しいただきたいなと思います。
内藤:SmartHRの取り組みとしては、まずバックオフィスの業務を効率化するという部分は顕在ニーズも高く非常にわかりやすい部分で、いま現在提供している価値だと思っています。
この中にバックオフィスの方がいらっしゃるかもしれないんですけれども、そうでない方々のためにご紹介させていただくと、例えば、新入社員を雇われたときに、社会保険や雇用保険の手続きをするのは非常に面倒です。
手書きで何枚も同じような情報を書かなければいけなかったり、書いた紙を役所の窓口に持っていって、忙しいときは役所で何時間か待たされることがあって、非常に無駄が多いです。
手書きで書く作業の前にも「従業員から情報を集める」という非常に難解なミッションがあって。従業員の方に「年金手帳って何?」「マイナンバーってどこで見れるの?」といった基礎知識がなければ、そのへんのレクチャーをしなければいけなかったり。1人を雇うだけでも、バックオフィスの業務は非常にたくさんのやらなければならないことがあるんですね。
内藤:そういったなかで、私たちが提供するクラウド型のソフトウェアを使っていただくと、業務を定型化できる部分があります。さらに、手書きがなくなることで人による誤入力もなくなります。さらには電子申請がありますので、わざわざ役所に行って待つ必要もなく、ブラウザ上からポチッと押すだけで申請できるようになります。
こういった業務を標準化・デジタル化することによって、非常に効率化することができます。
付け加えてご紹介させていただきますと、最近だとみなさまもしかしたら年末調整などをされているかもしれないんですけれども、このへんも非常に大変でして。自身の紙を書くだけならいいんですけれども、労務担当者の方の仕事を想像されたことがありますでしょうか?
まず従業員に紙を配らなきゃいけないんですね。「こうやって書くんですよ」というお知らせを毎年しなきゃいけない。従業員の方が紙を書いて、提出してもらうと、それをチェックしなきゃいけなかったり、こちらも非常にたくさんの作業があります。
こちらもクラウド型のソフトウェアを使うことによって、業務を標準化して効率化できるような仕事がまだまだたくさん残っております。こういった業務以外にも、まだまだたくさんバックオフィスの業務は無駄なことが残っていたり、非効率な部分が残っております。私たちはこれらをうまく解決していきたいなと考えております。
河井:どうもありがとうございます。途中で、「人を雇っても」というお話をされましたけど、人を1人余計に雇うと、その人を教育するのって、逆に負荷がかかってしまうようなところもありますよね。そこを効率化できるといいのは、すごくよくわかる話だと思います。
今、人事系のところでやっていらっしゃるんですけど、ミッションに「社会の非合理を、ハックする。」とありますよね。社会の非合理はいろいろなところにあると思うんですけど、どうして人事のところにいったんでしょう?
内藤:そうですね、正直申し上げて、私たちの創業者がすごくそこに明るかったわけではないんですね。ただ、世の中の困っていることをヒアリングしていくと、人事や労務の分野はまだまだデジタル化がされていないことがわかったんですね。
例えば、ちょっと近しい分野では、会計などの分野は昔からソフトウェアがあって、わりと効率化されてた部分はあるんですね。ただ、人事・労務の分野はなぜか後手に回っていた面があって、ここは費用対効果が高そうだという……提供できる価値が大きいなと気づいた面があります。
河井:その背景にはやはり、ご自分の体感などもあったんでしょうか?
内藤:そうですね。共同創業者の宮田(昇始)の奥様が産休を取る時に、たくさんの産休の書類を手書きしないといけなかったそうです。本当は会社が用意しなきゃいけない書類なんですけれども、なぜか従業員が書かされたり、会社が忙しいと後回しにされる面があったりして、非合理を感じる部分はあったなと。
河井:やはり、気がつくところがどこかにあるわけですよね。そうは言っても、御社のサービスは、そんなにすごく特別なテクノロジーを使っているわけではないんですよね。
内藤:そうですね。めちゃくちゃ尖った技術を使っているわけではないですね。どちらかというと、枯れた技術を当たり前のように使うことを意識していますね。
ただ、それだけでも、先ほど申し上げたように、IT化が遅れている部分は非常に費用対効果がいいんですね。そういった部分はまだまだたくさんあると思うので、今後もそのあたりをハックしていきたいなと思っております。
河井:本当に技術は使い方ですもんね。僕らもすごくよく言うんですけど、「いい技術が広がるとは限らない」と。その使い方を本当に考える人がいて、「こういうふうに役に立ったよ」とならないとなかなか使われないので、そういう意味では上手に使っている例なのかなと思います。
じゃあ続きまして、(「どういうふうに会社をつくっていきたいか」を)BizteX・袖山さんから。
袖山:2つぐらいあるかなと思っております。1つが会社のROI(Return On Investment:投資利益率)を上げることですね。
例えば、従業員1人あたりの効率を上げるのもROIだと思っています。嶋田の話にもあったんですけど、効率を上げるというのは、単純作業をいかに速く効率よくやるか。その人がやるのではなくて、うちだったらRPA(ロボットによる業務自動化)を使ってやるのだと思っています。単純作業をどのようにやるかが重要なんですね。
RPAは入れたら終わりではなくて、運用が非常に大事です。運用するときの設計がより重要になってきます。エンジニアリングの世界ではけっこう当たり前なんですけど、運用というのは実際の効果の測定をやっていくんですね。どの程度の効果が出ているかを短いスパンで測っていきます。(効果が)出ていなかったら、その改善を繰り返す。
例えばトヨタなどでもいろいろやってるんですけど、まず最初に改善の仕方を設計することが非常に重要です。
RPAの場合ですと、最初にロボットを作って、人の作業を「1週間あたり10時間削減できました」というのを測定していって、実際にそれを徐々に増やしていくんですね。1個作ったら終わりではなくて、どんどん改善する点を増やしていく。
なので、最初のROIは低いかもしれないですけど、そういう改善サイクルをどんどん回すことによって、効果を蓄積していけるようになります。これはまさにエンジニアリングですよね。
河井:それって、業務プロセス自体を徐々に変えていくようなイメージですか?
袖山:そうですね。理想はそうなります。最初はどうしても(効率化したい)業務に合わせてロボットを作っていくんですけど、いきなり変えるのは難しいので、1回作ります。1回作ってしまえば、徐々に変えるのは簡単なんですね。
その業務プロセスで、「ここは人がやってるんだけど、人のやり方もちょっとずつ変えていこう」「こうしたほうがよりロボットにいい。より効率化できる」ということができるようになってくるかなと思っています。
河井:あとの事例でまたちょっとお話しいただくんですけど、RPAを入れたことで、実際に人が動くプロセス自体が変わった例もあるんですか?
袖山:そうですね。実際にRPAを入れていくなかで、例えば「ロボットをより効率的に作っていこう」「より人間の作業を変えていこう」といった動きがあります。
河井:おもしろいですね。それが変わっていくと、本当に「ワークスタイルが変わったな」という感じになってきますよね。
袖山:そうですね。もう1つありまして、その1つが本命かなと思っています。日本は、先ほどおっしゃられたように、少子高齢化+人口減少があるんですけど、これは経済的にはけっこう危機と言われてますよね。これは危機なんですけど、逆にチャンスだと思っていまして。危機からイノベーションが生まれて、新しい発明で新しいテクノロジーを使った事業が出てくると思っています。
実際に人口が減るのであれば、それを補うような労働力が出てくればいい。私はこれは「RPAだな」と思ってまして。RPAが人の代わりにある程度働けるようになれば、いわゆる日本の労働力は減らずに、逆にどんどん増やすことができると。これを日本が世界に先駆けてやって、輸出していくスタイルができるのではないかと思っています。
河井:RPAそのものを輸出していくというよりは、RPAを入れた中で、先ほどおっしゃっていた運用全体を変えていくモデルケースを輸出していくということですね。
袖山:そうですね。どちらかというと(RPAの)運用のほうを輸出していくというところですね。
河井:おもしろいですね。それって本当にうまくできるといいですよね。日本が海外に輸出できるものや自慢できるものは、例えば鉄道などの運用のところまで含めて、「こういうふうにやるときちんと動くよ」というものです。
海外で「鉄道がぜんぜん時間どおり来ないよ」という話がよくありますよね。日本ができているのは、運用やダイヤの作り方ももちろんあるんですけど、そういうものを含めた仕組み全体だと思うんですよ。
そういう意味では、本当にそういった運用の仕方を海外に輸出できるといいのかなと。これは「日本人らしさ」というところも、きっとあるんだと思うんですけどね。袖山さん、もう1つ質問です。なぜRPAだったんですか?
袖山:これは、もともと代表の嶋田(光敏)が実際に前職で体験したことがきっかけです。社員が単純作業をやっていると効率も悪いし、その人のモチベーションも下げてしまう。モチベーションを下げてしまうと、当然その後の生産性もどんどん下がってしまう。そういう意味で、いま現在のワークスタイルに合っていないんじゃないかという仮説ですね。
加えて、誰にでも簡単に作れるようになれば、より効果を出せるんじゃないかというところからですね。
河井:そういう意味で言うと、分野は違うんですけど、両社とも狙いが少し似てるところはやはりあるのかなと思うんです。無駄な作業はあまりしないようにするという話で。
(スライドを指して)ここにもちょっとありますけど、「一人ひとりが生み出す付加価値を引き上げていく」というところなんですけど、例えば、少し違う言い方では、お客さんにどうなってもらったらいいなと思っていらっしゃいますか?
内藤:そうですね。弊社の場合だと、やはり付加価値を上げていく部分につながるんですけれども、定型作業は機械に任せて、お客様はクリエイティブな仕事や、価値を上げる仕事に時間をあてていただきたいという思いが当初からありますね。
河井:袖山さんは?
袖山:やはり単純作業をなくして、かつ、できればいろいろな人に広めてほしいなと思っています。弊社の売上が上がるという意味だけじゃなくて、より効率的に改善を増すのは、1つの部門だけではなくて、ほかの部門に波及することによって相乗効果でどんどん効果が高まっていきますので、そのへんはぜひやっていきたいなと思っています。
河井:そうすると例えば、みんながあまり思ってなかったような、「こういうところにも使えるんじゃないの?」ということや、RPAなりSmartHRなりを使って、「ほかにこういうことができたよ」という話になってくるといいと思いますよね。
袖山:そうですね。
河井:そういう狙いで両社が提供しているサービスで、実際にどういうふうに使われているか、どういう効果があったかというお話を少しいただきたいなと思っています。まず、SmartHRの内藤さんから事例を少しご紹介いただけますか?
内藤:弊社のお客様の事例です。従業員が約100名規模のお客様の事例なんですけれども、その方々は月に7日程度労務管理の手続きでかかっていたという事実があります。弊社のサービスを導入していただくと、それが月に2日になったと。3分の1程度になったという効果(があったということ)を聞いております。
これによって数百万の経費が削減できたんですけれども、それ以上に大切だなと思っていたのが、その空いた時間を使って、よりクリエイティブな人事制度の設計をされたということです。
例えば、リモートワークの導入やフレックス制度、副業の解禁などの人事制度の設計に充てることによって、結果的に従業員の方々の生産性が約6割上がった、とうかがっております。
経費の削減は非常に見えやすい効果なんですけれども、それよりも、空いた時間を使ってよりクリエイティブな仕事、より生産性の高い仕事をされたのが非常にいいポイントなのかなと考えております。
河井:例えばリモートワークなど。
内藤:フレックスタイム制の導入であるとか。
河井:もう少し具体的に「こういうふうにつながっていった」というところはありますか?
内藤:具体的な事例で言いますと、リモートワークを導入することによって、エンジニアの生産性が上がったり、副業の自由化といった話を聞いておりますね。
河井:例えばそういうクラウドのサービスを使う、いわゆるSaaS(Software as a Service:クラウドで提供されるソフトウェア)を使われることでリモートワークができると、会社に行かなくてもどこからでも仕事ができますよという。
内藤:そうですね。自宅で働くことができるようになるのはエンジニアの方がよく希望されるんですけれども、通勤時間で疲弊してしまう。でも、リモートワークなら、自宅でリラックスした状態でクリエイティブなコードを書ける。そういった部分で生産性が上がったとうかがっております。
河井:例えば、人事制度を少し変えていく発想になったのも、クリエイティブな仕事ができたからなんでしょうね。
内藤:そうですね。人事部門の方々は、やはり時間がないと、手続きをしたり、勤怠を締め切ったり、経費精算をしたりという、日々の仕事に追われてしまうんですけれども、時間があることによって、より生産性を上げる施策を打てたということがあります。
河井:もしかすると、「新しい仕組みにしてみようか」と思ったときに、もちろん考えることやディスカッションすることも必要になると思うんですけど、それを試す時間も必要じゃないですか。
それを試すための準備や、普段だったら先にこっちの数字をやらなきゃいけないというのはあるけど、時間が少しできたから、「この準備をして、1回試しにこれをやってみようか」というトライアルもきっとやりやすくなりますよね。
内藤:そうですね。重要度は高いけれど、緊急度は低い部分にはなかなか手をつけづらいんですけれども、そこにようやく着手できる、試せるような時間が生まれたのかなと思いますね。
河井:そういうのはいいですよね。人事の方ももちろんそうですし、できればいろいろな部署の方がそうなるといいなと思います。いわゆるクリエイティブな仕事だと思われていない部署の方がそういうことに取り組めるようになるとすごくいいのかなと。
内藤:そうですね。とくに人事部門は会社全体にその影響を与える部門だと思いますので、ちょっとした効果が最終的なアウトプットに大きくつながると思います。
河井:今日は、BizteXの嶋田社長が最初のプレゼンテーションでも、自律分散型の組織のような話もちらっとされてたんですよね。
これからの会社の組織は、従来どおり「この部署に何人」というふうに固定的にやるんじゃなくて、あるプロジェクトがあったときに、そこにいろいろなスキルを持った人が集まってというかたちになる。そういうものがアドホックにできてきて、解散してまたやる。
しかも、その中に特定のしっかりしたリーダーがいなくても(仕事が)回っていくのがたぶん自律的な組織だと思うんですけど、そういうことをやろうと思うと、きっと人事まわりはできることがきっといろいろありますよね。
内藤:そうですね。
河井:BizteXさんの事例を聞かせてください。
袖山:船舶代理店をやられている、ちょっと珍しいお客さんなんですけれども、週1回、だいたい4時間弱ぐらい、深夜までやる業務があったんですね。それを自動化することによって、ほぼその4時間が、だいたいアウトプットからの作業で5分ぐらいに短くなりまして。率で言うと95パーセントぐらい簡単になったんですね。
ほとんど残業せずに終えられたので、まずは作業自体の削減と、あとは実際に回せる回数も増やせまして、アウトプットの質が向上しました。また、人ですと間違いもありますが、そういったミスもなくなったことで大変喜ばれています。
河井:その方たちは従来、深夜業務は1人の方だけでやってたんですか?
袖山:そうですね。1人でやられていました。
河井:なんだか1人だけ、自分だけが貧乏くじ引いたような。
袖山:そうですね。本当に毎週毎週。おそらく終電までいかないかもしれないですけど、かなりの時間、深夜業務をやられていたということです。
河井:例えば「人を増やして、なにかもうちょっと分散処理して、もっと早くやろう」という考え方があるじゃないですか。そういうことはあんまりやっていらっしゃらなかったんですか?
袖山:たぶん、実際に人を雇うのがけっこう大変だというところで。その会社は社員数が数十名規模ぐらいの会社で、人を1人雇うにしては、業務量としては少ないですと。例えば、人を雇うときは見えないコストがあるじゃないですか。採用コストを考えて、費用対効果が悪かったため弊社を採用いただいています。
河井:あと、RPAがいいよねという話なんですけど、そこは選択肢として御社のサービスでないものも当然あるわけで、(お客様は)なにか検討されていたんでしょうか。
袖山:実際、オンプレミスのRPAと検討していただいたんですけど、やはり一番の決め手は、現場の方が直接作れるところですね。
オンプレミスで検討されていたプロダクトですと、いわゆるフロー図を書かないといけなくて、そのフロー図はけっこうプログラミングなんですね。プログラミングでいうところの繰り返しや条件分岐をそのままプログラミングの用語で作る仕組みでした。
弊社の場合は、フローも視覚的で、グラフィカルな感じで直感的に作ることができますので、そこが違いとして大きかったです。
河井:やはりオンプレミスのRPAだと、それなりにプログラミングに近い知識を持った方がいないとなかなか作れないということですか。
袖山:そうですね。作れないですし、運用フェーズでなにかあったときに修正もできない。通常、SIの方に依頼すると、修正だけで100万くらいすぐかかってしまいますので。
河井:そういう意味だと、クラウドで自分で設定をして、「今度は、ここ調子悪いから、ここを変えてみようか」ということが自在にできると。
袖山:そうですね。
河井:それを(お客様が)体感するまでは、少し信用してもらえないこともあるのかなと思うんですけど、意外と簡単にいきました?
袖山:まず、弊社の場合、ある程度その業務を回せるようなかたちで、トライアル期間を設けています。そこで信頼していただいています。
河井:その上、コストもほかのオンプレミスに比べると安くあがります、ということですよね。
袖山:はい。
内藤:BizteXさんがすばらしいなと思っているところがあって。先ほどの話にもあったように労働力がどんどん減り、労働単価がすごく高くなっている。その中で、さらにエンジニアの単価は今すごく高いんですね。エンジニアを使わなくても労働力をより効率化できるのは、非常にすばらしいなと感じました。
河井:ということは、採用という意味でもなにか効果が出てくるということですか?
袖山:そうですね。いや、まずは、(お褒めいただいて)ありがとうございます。
袖山:まず、エンジニアのコストは本当に高くなっていまして。弊社もエンジニアの採用をやっているんですけど、かなり(価格が)高騰しています。実際、社内にエンジニアがいない会社が外部に発注するときも、当然管理費等が上乗せされてますので、非常に高くなっているというところですね。そこでやはり弊社のもともとのコンセプトである、「エンジニアリングを誰でも簡単にする」という(ことが効いてきます)。
河井:理想的ですよね。こういうテクノロジーやツールを入れるときに、「専業の人がいないとできません」というと、なかなか入っていきにくいと思うんです。そういう意味だと、業務を知っていればなにか操作できるところはすごくいいなと思います。
内藤さんたちのサービスも似たような感覚で受け入れられるところはあるんじゃないかと思うんですけど。
内藤:そうですね。専門知識がなくてもできるということは最初から意識しているところではありますね。新しく入った労務担当者でも、そのままサービスの画面に従って使うと、迷わず手続きができる部分は意識しています。
河井:そういう意味だと、ユーザーインターフェースのようなものは、やはり相当工夫されるというか。
内藤:工夫はだいぶ必要ですね。toBのサービスはけっこう味気ないものが多かったりはするんですけれども、なるべく親しみやすいようなUIにしたり、迷うことが少ないUIにすることは意識していますね。
河井:袖山さんは、「RPAの操作をするときに、こういう操作の仕方だったらもっとわかりやすいよね」というようなこともやってるんですよね?
袖山:そうですね。実際β版を出す前ぐらいに、嶋田と一緒にお客様のところに行っていろいろ話を聞きました。最初のプロトタイプから使いにくいところを洗い出しして。
例えば、極端な話、文言ですね。今でもちょっとわかりにくいんですけど、その文言一つをとっても直感的にわかるような文言にしようとか、ボタンの位置や大きさ、色などでも、使いやすさはぜんぜん変わってきますので、そのへんはいまだに悩ましいところです。
河井:だからそこは、テクノロジーをいかに使えるようにするかが意外に肝なのかなと思うんですよね。
今、本当によく「デジタルテクノロジー」と言いますけど、アナログの世界にそれをつないであげるところはどうしてもギャップがあるので、そのギャップをうまく埋めてあげることがすごく大事というか。そこがうまくできた人たちが、事業もうまくいくような感じがしています。
次にいきますね。今そういうサービスをやっていらして、こういうユーザーさんたちもいますと。では、「この先どういうふうになっていきますか?」ということで、事業展開もそうなんですけど、「こういう未来を作りたいな」ということは、内藤さんはどうお考えですか?
内藤:今は、社会保険や雇用保険といった部分を中心に事業を展開しております。そういった中で、私たちのサービスに従業員情報がどんどん集まってくるんですね。社会保険はリアルタイムで正確な情報が必要ですので、手続きが発生するたびに情報が更新されます。
将来的には、働く人のプラットフォームになりたいなと思っています。集まった従業員情報を使って無駄を省くよりは、攻めのサービスを提供したいなと思っております。
人材に関わることって、求人や採用管理、労務や人材管理など、洗い出すとけっこうたくさんあるんですよ。そういったところをどんどん攻めていきたいなと考えています。
河井:「攻める」というのがいい言葉だなと思うんですけど、例えばどういうところですか?
内藤:例えば、コスト削減というよりは、効率的な人材配置などです。あとは採用もそうですね。会社にマッチした人を採ったり、効率よく採るといった部分はけっこう考えられるかなと。
河井:採用でも人材配置でも、その人がどういうスキルを持っていて、「この人ってどういう行動をとるタイプの人なのかな?」など、いろいろな知りたいことがあるじゃないですか。そういう情報を吸い上げてくるところがけっこう難しいのかなと思って。
内藤:難しいと思いますね。
河井:それって「こんなふうにしたらできないかな?」「こういうサービスや情報が世の中にあるじゃん」「これを組み合わせたらこんなことできないかな」というようなことで、なにかざくっと思っていらっしゃることがあったりします?
内藤:1つのアイデアではあるんですけれども、例えばスキルの情報は、今現在あるサービスで言うと、例えばLinkedInでは、信頼できる方が、その方のスキルを評価する仕組みがあります。
そういったスキルは、1つのサービスに閉じるのではなくて、いろいろなサービスと連携できると思うんですね。信頼できる方からのスキルの評価がいろいろな会社で共有されるという未来は1個考えられるかなと思っております。
河井:LinkedInとつながっている人たちであれば、こういうことをしたい、そこにコントリビューターになれる人たちが集まってくるというか、そういう場を作れるということですよね。
内藤:その方をよく知っている方からの評価や、その業界で有名な方からの評価が可視化されて、いろいろなところで共有できるのかなと思います。
河井:そういう組織づくりのようになっていくと、本当に「こういうことやってきました」という、ちょっと実績みたいなものもあるといいですよね。
内藤:あると思います。例えば「過去こういうプロジェクトに関わっていた」というようなものですね。他者からの評価やお墨付きは、今後大切にされる指標になるんじゃないかなと考えております。
河井:なかなか会社はそういうふうに動かないんですけど(笑)。ちょっとずつそういうサービスを使っていくと、もしかすると変わってくるのかなという気がしますね。
内藤:そうですね。
河井:すごくそういうものが欲しいなと思っているところです(笑)。袖山さん、御社のほうは未来というとどういうことを考えていますか?
袖山:弊社の場合は、やはりSaaSの未来に直結してるかなと思っています。SaaSの市場は2018年度に、グローバルで数百億ドルぐらいと言われていまして、年率19パーセントぐらい伸びているんですね。
今オンプレミスとSaaSの割合でいうと、だいたいオンプレが7で、SaaSが3です。これがどんどん逆転してくるかなと。たぶん、あと数年ぐらいで逆転するかなと思ってまして。そうすると、BizteXの場合ですと、そのSaaSをつなげる役割ができると思っています。
SaaSを大別すると、いわゆる水平型のSaaSと垂直型のSaaSがあります。水平型のSaaSは、例えばSmartHRさんやSalesforceさんなど。垂直型のSaaSは、建築業や製薬業などの特定の業界に特化しています。そういうSaaSが欧米ではもうけっこう出始めていまして、日本にもどんどん来ています。
BizteXも、業界に特化したロボットというかたちで応援していこうと考えています。ですので、垂直型をいかにつなげていくかに注力していきたいなと思っていますね。
河井:垂直型ってとてもわかりやすいんですけど、マーケットとして「この業界」となるとそこにしかいけないので、従来は意外と嫌がられた感じがあると思うんですよ。でも、御社でこういうサービスをやっていくと、それなりに市場としては(あるんですか)。
袖山:そうですね。実は、水平型と垂直型でマーケットシェアの獲り方が違いまして。いわゆる水平型ですと、SalesforceはもうすでにNo.1なんですけど、実はシェアで言うと20パーセント台ぐらいなんですね。
垂直型は、実はシェアはものすごく取れまして。製薬業向けのある米国のSaaSがたぶん50パーセント超えてるかな。もっといってるかもしれないですけど、ものすごいシェアを取れるんですよね。トータルの市場でいうと、市場をある程度取ってしまうと、売上の規模としてはかなり大きくなります。
河井:しかもそのシェアを取ると、なかなかそこからお客さんが動いていかないところもありますよね。
袖山:そうですね。
河井:それは、いろいろな業界に向けて垂直型を打ち出していくというものですか。
袖山:そうなります。弊社の場合はそれをいろいろ作っていくという(かたちです)。
河井:でも、それって、それぞれの業種の垂直型に対応するためのノウハウを持っている方が必要ですよね。
袖山:そうですね。そこはかなり重要になりますね。実際にお客様の声を聞きながらいろいろ作っていくことになります。
河井:「ここらへんの業界はありうるな」というのはどこですか?
袖山:広告代理店系や人材系、不動産系の会社は考えています。
河井:そこに水平型のSaaSを組み合わせていくと。
袖山:はい。
河井:僕はあんまりイメージできないんですけど、垂直型と水平型をつなぎ合わせるのは難しいんですか?
袖山:そうですね。それをやるのがある意味でRPAなんです。今までですと、そこはSIを入れて直接つなぎ合わせていました。ETLツール(Extract Transform Load)という、Data SpiderやASTERIA(WARP)を使って、より簡単にやれるものがあったんですけど、それでも難しいと。それをより簡単にやるのが、ある意味RPAなのかなと考えていますね。
河井:でも、それがつながっていくと、やはり当然、垂直型・水平型をつなぐところはBizteXさんでやるんだけど、それぞれのSaaS自体を御社が全部やるわけにはいかない。
袖山:それはないですね。
河井:ですよね。ある意味、そのエコシステム的なパートナーさんで一連のサービスになるよ、という仕組みですね。
袖山:はい。
河井:なるほどね。RPAをつなぐのは、僕はあまり想像してなかったです。おもしろいですね。内藤さん、そういうものをRPAでつないでもらうと、「もうちょっとこういう展開できるな」と思われることはありますか?
内藤:そうですね。私もわりと前提はなくて、もともとエンジニア出身ということもあって、「APIを公開して各社開発してくれればいいや」という発想があったんですよ。でも、お話をうかがっているうちに、やはりエンジニアコストがかかるので、RPAでやるのが現実的な解なのかなと感じましたね。
河井:もう1つ、RPAは今のSaaSの垂直型・水平型の組み合わせというのもあるし、1つの会社の中でいろいろな業務のところにRPAを使っていきますということがありますよね。それをつなぎ合わせていくなどと考えると、RPA自体はフェーズがいくつかあるんだろうと思うんですけど、例えばこんなフェーズだとか、今どのあたりかというのはありますか?
袖山:RPAは、だいたい4つのフェーズがあると言われています。1段階目が過去の話で、それがいわゆるエクセルのマクロや、本当に昔からある技術で自動化する。
2段階目がその単純作業を自動化する。例えば弊社ですと、Webの操作を自動化したり、Windowsの操作を自動化したり。今はこのフェーズです。
次が第3段階フェーズと言われていまして、これはいわゆるAI。人間がディープラーニングなどを使ったパターン認識を学習させることによって、ロボットがより人間の判断に近いことをできるようにする。
第4段階は、それをさらに進化して、人間が学習させるのではなくて、ロボット自身が学習していく。こうなるとおそらくもう人にかなり近い。たぶん人の代わりになるかなというぐらい、いわゆるシンギュラリティと言われている時代になるかと。
河井:それはどのくらい先の未来なんですか?
袖山:たぶん本当に20数年あればいけるかなと思ってまして。というのも、ここ最近の科学技術は、すごく一気に進んだような感覚がないですか? 僕はちょっと思ってまして。僕が大学生ぐらいの時は、未来はちょっと停滞してると(思われていた)。「知の細分化」と言われていて、いろいろな領域が細分化されすぎて、これ以上進歩しにくいんじゃないかと言われていた時代がありました。
例えば子どもの頃は、今ぐらいだったら、車は空を飛んでるし、ビルの間も屋上のほうはつながっているような未来があったんですけど、そうはなっていない。ただ最近、例えばディープラーニングで(AIが)たった数年で囲碁の世界チャンピオンに勝ったり。一番驚いたのが、量子コンピュータがある程度現実的に出てきたというのが、たったここ数年……まぁ、顕在化してきたという話ではあるんですけど。
なので、たぶんスピードってぜんぜんまだ落ちていなくて、おそらくあと20数年あったら、今のディープラーニングの延長ではなくて、いわゆるバイオ的なテクノロジーなども含めて進歩していくんじゃないか。人間に近いもの、もしくは超えるものが出てくるんじゃないかなとは思っています。
河井:人間を超えるとどこまでいけるんですかね? ……というのがこういう話なんですけど(笑)。
正直、AIがSaaSに入って、それをいろいろ組み合わせて勝手に動かしてくれるような、人間がやりたいことをあんまり指示しなくてもつなぎ合わせてやってくれるような世界観は、すごく便利でいいなと思うんですけどね。ただ、これは「どこまでいけるのかな?」というものはちょっとわからないところがあって。
内藤さんは、御社のサービスに、例えば「AIをくっつけてこんなことができるのかな?」と、なにかイメージされていることありますか?
内藤:そうですね。先ほども少しお話ししたんですけど、AIが得意なのはパターンマッチなんですね。なので、わかりやすい例でいうと、採用ですね。例えば、その会社で活躍している人の特徴を見分けて、候補者の方を見て「この人は活躍できそうか?」、あとは逆に退職しそうな人を見つけたり。そういったことはAIが非常に得意な分野ですね。
河井:もう1つ思ったんですけど、RPAが人の代わりにその作業をやってくれますと。ただ、人によっていろいろ癖があったり、「この人は今までこういう判断をしてきてるから、ここではこういう判断するかもね」というのは、やはり個人差があるじゃないですか。そういう個人差を吸収して便利に使えるサービスになっていく可能性もあるのかな、とちょっと思ったりするんですよ。
例えば、環境もそうです。「今日暑いから・寒いから」ということもあり得るのかなと思うんですけど、袖山さんどうですか?
袖山:そうですね。それができるのがまさにSaaSでして。SaaSは、ユーザーがやった操作を逐一データ化できるんですね。例えば天気と組み合わせたり、その人の以前の行動と組み合わせたり。そういう解析ができますので、それをもとに学習させていくことは可能かなと思います。
河井:仮にそういう世界が広がっていったら、組織や働き方はどうなるか。内藤さんは、どんなイメージをされますか?
内藤:今回のテーマでもあるんですけれども、「仕事のための仕事」がなくなってほしいなと思ってまして、実際なくなるのかなと思っています。より人々がクリエイティブな仕事をして生産性を上げていく未来は近いのかなと考えております。
河井:袖山さんは?
袖山:実際、もう人間が仕事をするのはかなり短くなっていると思っています。弊社が考える理想的なワークスタイルは、それこそ1日1時間ぐらい働いて、あとはRPAやロボティクスに任せるというもの。極端な話、ミッション、ビジョンを作っておいて、あとは全部よろしくという世界観です。これは本当に究極的な未来にはできるんじゃないかなと思います。
河井:そうすると、僕らはなにをしたらいいんですかね?
袖山:そこはやはりクリエイティブなことをしたり。まぁ、そういう場合は遊んだほうがいいと思いますね(笑)。
河井:たぶん「間違えることって人にしかできないよね」という話もあって。もちろんAIも最初は間違えるんですけど、わりと意図的に間違えてみることはなかなかできない。そういう意味でのクリエイティビティは、もしかするとあるのかもわからないですけどね。
でも、本当に自律的な組織や、すごく働きやすい組織やワークスタイルができるとすごくおもしろいなと思います。
ということで、お二人にお話をいただきました。お二人とも、どうもありがとうございます。
(会場拍手)
BizteX株式会社
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