日本人は世界一好奇心が低い民族

ピョートル・フェリクス・グジバチ氏(以下、ピョートル):みなさん、こんにちは。今日は簡単にOKRについて話しますけれども、なぜOKRを導入するべきかを、まずみなさんに少しマクロレベルでお話ししたいと思います。

今日は2つのお願いがあります。まず、好奇心を持っていただきたいんです。とある研究のデータによると、日本人はなんと世界で一番好奇心が低い民族だそうです。例えば、20歳の日本人はスウェーデン人の65歳と同じ好奇心レベルを持っていらっしゃるんですね。今日はぜひそれを破っていただきたいと思います。

あと、集中していただきたいんです。(来場されているのは)人事の方が多いと思うんですけれども、日本人は逆に集中しすぎている傾向があります。いろいろな大手企業のオフィスに入ると、もう便秘状態の顔をしているサラリーマンがパソコンに向かって座っています。今日はとりあえず好奇心を持って、集中して、少しリラックスしながらお聞きになっていただきたいんですね。

ご存じとは思うんですけれども、僕が日本に来たのは18年前です。その間で一番長く働いていた2社はMorgan StanleyとGoogleです。両社は違う業界の会社なんですけれども、共通点がいくつかあります。

まず、「グローバル化」ということです。どのオフィスにいっても、同じデスク、同じパソコン、同じ言語です。(言語は)英語ですね。もう1つは「スピード」。スピード重視・アウトプット重視という社風です。最後は「働きがい」。両社とも日本の働きがいのある会社のトップ1に何回も選ばれていたんですね。

それをぜひ考えていただきたいんです。個人を育む環境であることは、両社の職場づくりの土台です。GoogleはOKR(Objective and Key Result:目標と主な成果)を導入しているんですが、Morgan Stanleyがしていないのは大きな違いですね。

“クビ”になる準備はできたのか?

僕は、Googleで人材育成と組織開発のアジアパシフィックとグローバルなラーニング・ストラテジーを統括してから、2015年に独立しました。まず作ったのはプロノイア・グループという未来創造事業です。経営・組織のコンサルティングをしながら、パートナー企業と一緒に未来に向けて新しいビジネスモデルの仕組みや土台となる組織作りをしております。

その次に、そこにいるドリーと一緒に、モティファイというワークフォーステクノロジーの会社を作ったんですけれども、のちほど少しお話ししてもらいます。あと、最近は女子大生が社長の「TimeLeap」という教育事業にも力を入れてるんです。弊社のチームは本当に多様なんです!

3社をかけ合わせて、みなさんに新しい価値をできるだけ提供したいんですけれども、それだけじゃなくて、新しい知恵や新しい方向のみなさんの気づきになるようなメディアや本を出しています。まだ読まれてない方は、ぜひ僕の講演を無視していただいて、Amazon.co.jpで「ピョートル」で検索していただければ幸いですね。

今日は少し挑発的な講演にしたいんですね。(「ARE YOU READY TO GET FIRED?(クビになる準備ができたのか?)」と書いてあるスライドを指して)この質問の意味、ご存じですか? ご存じの方、手を挙げていただいていいですか? 「知ってます」って。

(会場挙手)

少ないですね。So, I’ll switch to English now.(じゃあ、英語に切り替えます)。冗談ですけれども(笑)、ぜひ今日お帰りになったあとで、中学校の英語の教科書を探しておいてください。それで勉強し始めようということですね。あ! 最近リラックスイングリッシュ(KADOKAWA)という英語本も出版したので、ぜひご拝読ください!

リラックスイングリッシュ

あと、もう1つ、この事例を通じてぜひみなさんに考えていただきたいのは、これからのビジネスの領域やみなさんの業界、みなさんの会社は、どういうふうに変わっていくか、どんな人たちが競合になるかを考えていただきたいんですね。

世界の260社のユニコーン企業のうち日本は1社だけ

例えば、ハイアット。ご存じだと思うんですけれども、数年前まで一番大きいホテル会社だったんですね。ハイアット(の従業員数)はなんと10万人に近いんですけれども、彼らが気づかなかった事実があります。

2008年にAirbnbという会社が創立されて、今は3,000人に近い(従業員がいる)会社なんですけれども、なんとAirbnbはハイアットを3年前に時価総額で上回ったんですね。いま現在は3倍です。

ハイアットというどでかいホテル業界の会社を、Airbnbという、1台もベッドを持っていない小さなスタートアップが上回ったんですね。「なぜそれができるか?」をぜひ考えていただきたいんです。

まず、これから伸びていく会社は、ものづくりやサービスの提供ではなくて、テクノロジーに力を入れるんですね。グローバルですぐ提供できる、テクノロジーを使えば、まずそれができるんですけれども。

もう1つの理由は、社風ですね。個人個人が、自発的に会社のミッションに向かって動ける社風づくりは、2つ目のヒントですね。今日はそのヒントについて、OKRを通じても少し掘り下げて話をしたいと思います。

ここで、ぜひもう1つの視点からAirbnbを解釈したいのですが、Airbnbはユニコーンと言われる会社ですね。ご存じと思うんですけれども、すでに10億ドルの時価総額を上回っている未上場のスタートアップですね。ユニコーンはなんと世界中に260社あるのですが、日本に何社あると思います?

半分はアメリカですね。その次に、中国、インドがあるんですけれども、日本には1社しかないんですよね。

ちなみに、一時的に今年2社あったんですけれども、1つ目のユニコーンがなんと上場しました。メルカリさんですね。もう1つの会社は、Preferred NetworksというAIのスタートアップなんですけれども、おそらくご存じではない方もいらっしゃるんですよね。あんまりメディアに出ない会社ですけれども、事実として、10億ドルの時価総額になりました。

ユニコーン企業の5つの共通点

彼ら(ユニコーン企業)は、5つの共通点を持っています。まず1つは、一見愚かなアイデアをビジネスにすること。例えばAirbnbは、ベッドも持っていないのに、ホテル業界に入れる。要はCtoC、Customer to Customerのプラットフォームを作れば、(ユーザーの)みなさんがそのプラットフォームを作ってくれるんですね。

2つ目はとても大事です。彼らはまずマネタイズをしません。マネタイズをしないで、膨大なユーザーのコミュニティを作るんですね。なぜそのコミュニティを作るかというと、(これが3つ目で)彼らは新しい行動パターンをビジネスにするんです。

Airbnbはまさに……よく考えれば、他人の部屋でホテルのように1泊2泊で泊まるというのは愚かなアイデアだったんですけれども、今はサービスの導入がどんどん増えています。

Facebookもそうだったんです。みなさんがおそらくいま見ていらっしゃるかもしれないんですけれども、Facebookも結局、自分たちの写真や個人情報をシェアしていくというアイデアでビジネスを立ち上げたときに、それは愚かだと僕も思ったんです。今、Facebookと戦う気がないんですね。

ちなみに(4つ目は競争が激しい飽和市場に参入していることですが)、ぜひ次の共通点を通じて、Facebookは「どこの領域の会社なんだろう?」「どの業界の会社なんだろう?」と考えていただきたいんです。

SNSではないんです。そもそもSNSのプラットフォームを作って、いろいろな人たちのコミュニティを作ったんですけれども、結局入った領域はメディアですね。(Facebookは)世界中で一番大きいメディアカンパニーですね。例えば、テレビ局やラジオ局、新聞社と競合しているんですけれども、時にはピョートルとも競合しています。

いまFacebookを見ていらっしゃる方、いらっしゃいませんか? ぜひ見ておいてください。あと、今日の写真も、今日のスライドもパシャっと撮っていただいて、FacebookやTwitterにアップしても構わないので、下のピョートルのFacebookとTwitterのアカウントもぜひフォローしてください。

最後(の5つ目)は、経験がない創業者ばかりということですよね。(彼らが)他業界から新しい領域に入っていることは事実です。ここで、ぜひみなさんにマクロレベルのビジネス領域がどういうふうに変わっていくかを少し考えていただきたいんです。

これから伸びていく会社と終わりゆく会社の比較

新しい学習をする、新しい知識を身につけていくことはとても大事なんですけど、これから生き残るため、成功するためには「学びほぐす(時代遅れのやり方を忘れる)」ことのほうが大事です。従来のビジネスと今のビジネスの成功者を少し比較したいと思います。

従来のビジネスは、モノづくりやサービスでしたが、これはもう終わりですね。今がんばっている会社は、ほとんどが仕組みづくりに力を入れています。それは、IoT化かネットか、コミュニティづくりかパートナーシップか、いろいろなかたちがあるんですけれども、ビジネスモデルとして、サービスやモノだけじゃなくて、コトをつなげていくということですね。

あと、強欲も終わりです。お金儲けだけを考えるんじゃなくて、社会の問題や人のためになるものをいかにサービスや商品にしていくか。例えば「SDGs」という言葉が最近流行っているんですけれども、世界で一番大きい問題をビジネスを通じてどういうふうに解決していくかということは、いま実際に成長している会社もみんな一緒ですね。

あとは、クローズド型の自前主義の会社も終わりです。よく見れば、イケてる会社(が持っているの)は枠ではなく、軸ですよね。非常に強いミッションに、よいプロダクト、強い文化を持っているんです。

そのプロダクト、ミッションや文化に近づきたい人たちは、コミュニティのメンバーになるか、例えばユーザーになるか、副業で入るか、社員になるかはあまり違わないんです。その会社のファンであることが重要です。

あと、今日のテーマに非常に関係があるのは、トップダウンのゴール設定ではなく、ボトムアップの目標設定をしていること。これはすべての成功している企業に共通する鍵です。

あと、ぜひ社畜(長時間労働)優遇は終わりだということをわかっていただきたいんですね。みなさんがもしピラミッド構造の会社の中で働くとしたら、ピラミッドはお墓だということを、自分の肌で気づいていると思います。(スライドの図の)下には現場で死んでいる骨状態の遺体ばかりですね。現場が動けないのは事実です。

現場の組織は、エンプロイー・エクスペリエンス(従業員の経験価値)を通じて動くんですよね。organic、要は木々のような組織で働いているんですね。それで、ぜひ今日のOKRのテーマで、自分らしく働いていくことがとても大事だと気づいていただきたいんです。

イノベーションを起こせる職場かどうかを5段階で自己評価

あと、計画主義も終わりですね。例えば、5年計画・10年計画で動いている会社は、おそらく生き残る可能性は低いんですね。学習主義というのが今のビジネスの常識ですね。走りながら考えていくのが常識です。

Googleも、とりあえず1年に(一度は)今年の方向性を決めるんですけれども、実際には、四半期ごとに変わります。8万人の会社の方針や方向性が、四半期ごとに変わっているんです。

あと、プレイングマネージャーも終わりですね。隣の方と同じ仕事をしていくんじゃなくて、いかにポートフォリオの考え方で問題を解決していくかがマネジメントです。

例えば「人を通じて解決するか、テクノロジーで解決するか」はあまり変わらないし、「社内のリソースを使うか、社外のリソースを使うか」ということもあります。マネージャーに自由を与えるのは、組織づくりの1つのポイントですね。

あと、ぜひ鵜飼の世界を終わりにしましょう。みなさんの会社のマネージャーを羊飼いにして、現場の個人個人を育んで、強いチームを作って、みなさんがやりたい仕事で力を発揮する場作りができる人をマネージャーにしましょう。

ここで、ぜひこれからの成功の鍵を、みなさんにペアで考えていただきたいんですね。

従来のビジネスでは機動力や自立性・自発性が求められていたんですけど、これからのみなさんの会社の生き残りのために、イノベーションが必要不可欠です。新規事業部とイノベーション推進部もやめましょう。ほとんどの社員が現場でイノベーションを起こせるような組織づくりにしていただきたいんです。

ここで、ぜひ「イノベーションの芽を育てよう!」というメッセージでみなさんに少し振り返りしていただきたいと思います。みなさんは、みなさんの職場でどんなことを感じていますか? それをぜひ5段階で自己評価してください。

「自分の青臭い夢を職場で語れるかどうか」ということを、まず考えていただきたいんですね。語れるなら5、語れないんだったら1というかたちで、ぜひぜひ自分で素直な数字をつけてください。

次に「ジャストアイデアで発言ができるかどうか?」ということですね。その次に、「上司や同僚と1対1で定期的なコミュニケーションがとれるかどうか?」。

最後になりますが、「社外のコミュニティや交流会に参加することが推奨されているのかどうか」ということです。

そもそもOKRとは何なのか

自己開示しなくていいんですけれども、ここでぜひ、「自分がこれがもっと欲しい」ということを考えていただいて、隣の方と少し話していただきたいんです。「これがもっとあれば、自社でイノベーションが増える」ということを2〜3人で話してみてください。1分ぐらいです。よろしいですか? はい、どうぞ。

(参加者で話し合い)

では、みなさん、次のテーマですけれども、今の話を土台にして、「発想の生産をいかにマネジメントすればいいのか?」をお話ししていただきたいんです。「みなさんの会社が、発想の豊富な環境になるにはどうすればいいか?」という話です。難しいですよ。人事の仕事は難しいはずです。はい、どうぞ。1分です。

(参加者で話し合い)

では、次にいきたいと思います。土台(になるもの)は、もうすでに集めたと思うんですけれども、私からも少しみなさんにヒントをお伝えします。

ぜひ従来の組織の考え方を振り返っていただきたいんです。組織起点で、組織のオーダーで働くマネジメントは、ほとんどがカスケードです。本社や会社からマネージャー陣に情報を与えて、マネージャーが下の人たちを管理していきます。会社の上から下までゴールが落ちてくるんですね。

これからの組織は、個人起点で一人ひとりのオーダーを尊重するマネジメントが重視されます。個人が会社のミッションやビジョンにどういうふうに貢献したいか、どういうふうに動いていくかを決めるようなマネジメントが、今の会社の成功の鍵です。

ここでやっとOKRの話をしたいんですけれども、「そもそもOKRってなんでしょう?」ということを考えていただきたいんですね。

「Objective & Key Results」という英語があるんですけれども、Oは「なにをしたい?」ということです。「どういう成果を出す?」「どこに行く?」「どこに向かってる?」ということですよね。KRは、Key Resultsです。成功した状態を指標に、どういうふうに表していくか。例えばどういう数値化していくかを、まず定義として考えていただきたいんです。

OKRとKPIの目的は真逆

ここでOKRとKPIの違いについてお話しします。まず、両方とも定量測定ができるということは一緒ですね。OKRもKPIも測定が可能ですが、目的は真逆です。

OKRの目的は、ゴール設定です。目標に向けて、いかに進行を評価していくかということです。あと、行動結果を振り返るようなツールになります。KPIは真逆で、個人のツールではなく、会社のツールですね。パフォーマンス測定ツールというものを表しています。目標達成に必要な測定や、KPIに応じた行動を求める指標です。

あと、その難しさをぜひみなさんに考えていただきたいんですね。KPIはそもそも達成度は100点が理想ですが、OKRはそうではないんです。OKRはストレッチゴール、チャレンジゴールです。なので、達成度は7割がちょうどいいです。個人が自分でやりたいことの7割をがんばってできれば、それがちょうどいいということなんですね。

あとは、示すものも少し考えていただきたいんですね。KPIは既存ビジネスの進行や既存ビジネスの貢献ですけれども、OKRは新しい範囲のビジョンや変化です。まったく違うんです。

ここで、ぜひみなさんに会社と自己実現のつながりを考えていただきたいんですね。社員がやりたいこと、要は、自分が達成したい夢をOKRにすれば、会社とつなげることができるんです。

ここで、ぜひ個人のOKRがどういうふうに会社の成功の戦略になるかを考えていただければ幸いです。個人個人が会社に貢献できることを自分で約束するという仕組みになります。

OKR導入のためには1on1が必要不可欠

ここには課題も出ています。意外と難しいところがあるんですけれども、人事評価とOKRの結びつきは、みなさん次第です。OKRを人事評価にするか・しないかは会社によります。例えば、GoogleはOKRと人事評価をつなげています。弊社プロノイア・グループでは人事評価はないので、ペア制度のプロジェクト評価にOKRを繋げています。

ここをぜひ、もう少し深く掘り下げて、組織開発や組織の意味のフィロソフィを考えていただきたいんです。例えば、性悪説で考えるか性善説で考えるかによって、人事評価をするか・しないかはかなり変わってきます。

最近は、人事評価をなくしている会社も増えているんですけれども、もしなくしたい場合は、OKRを導入するのがおすすめです。

ここで(OKRを)「どんな会社が使っているんだろう?」ということを考えて見てください。Googleだからこそできるというのはあるんですけれども、もちろんAirbnbもOKRを使っています。

ただ、日本の会社も使っている事例があります。さっき述べたメルカリや、僕が関わっているモティファイとプロノイアもやっているし、なんとSansanもやっていて、あと最近 for Startupsも始めたそうです。

ここで、珍しい事例ですが、108年の歴史のある岡山県の小橋工業もOKRを導入中です。だから、みなさんの会社で導入できない理由はほとんどないんですね。あと、今日の主催社のBizteXは導入する予定です。

次に、OKRの実施のために必要不可欠なもう1つのツール。1on1ですね。たぶんお聞きになっていると思うんですけれども、OKRは自発的に個人が決めるゴールなので、マネージャーのサポートは必要不可欠です。コーチングが必要不可欠ですね。

例えば個人の夢を聞き出すこと、なりたい自分の姿を聞き出すこと、チャレンジしたいこと、野望を持ってがんばりたいことを、ちゃんと1対1で話す必要があります。

OKRを策定する際の3つの大事なルール

あとは、大事なルールを3つご紹介したいんですけれども、達成度は7〜8割でいいんです。アンダーパフォーマーではなく、オーバーパフォーマーをいかにつくるかです。自分ががんばろうとしていることは普通にできるというゴール設定ではなく、自分がストレッチされる、チャレンジしようとするゴール設定にしないと、OKRの意味がなくなるんですね。

あとは、見える化が必要不可欠です。また、OKRを頻繁に見直すのは常識です。KPIは1回決まったら変わらないんですけれども、OKRは個人のレベルの目標設定なので、変わる可能性は非常に高いんですね。なくすこともできるし、軌道修正もできます。

もう1つ大切なことなんですけど、オーナーは自分自身です。上司ではございません。KPIはボスから降りる目標設定なんですけど、OKRは自分で決めるものです。なので、1on1とコーチングが必要不可欠になると思います。

あとは、ベクトルを合わせることはとても大事ですよね。要は、部署はそれぞれのOKRを持って、違う方向に向いているわけではなくて、会社のミッション、ビジョンや方向性とOKRをいかに合わせていくかがポイントです。

もちろん、個人だけのOKRも設定できます。例えば、20パーセントルールでやりたいことをいかに仕事していくかを考えれば、それは別に会社の今の方向性につながらなくてもいいんです。ただ、会社のためになるかどうかがポイントですね。

ここで、1つの事例をみなさんにわかりやすくお伝えしたいと思います。例えば、「リテールの会社が店舗数を20パーセント増やす」ということは、Objectiveですね。「今年は2割を増やす」と。

例えば「3月までに新しいフランチャイズ、新たなフランチャイズ店舗を40店舗決める」ということは1つのKey Resultですね。そして「12月までに20店舗をオープンさせる」ということは、2つ目のKey Resultです。要は数字で表せることはとても大事です。

ここでOKRの運営のイメージを少し見ていただきたいので、弊社の星野にステージに上がっていただきます。どうぞ。

モティファイでのOKRの運用・管理の実例

星野珠枝氏(以下、星野):みなさん、こんにちは。星野です。今まで「OKRってなに?」というところを見ていただいたんですけど、具体的にどういうふうに運用していくのか、どうやって管理するのかを、私たちが今使っているシステムをご覧いただいて、イメージを持っていただきたいなと思います。

私たちと一緒にやっている、モティファイという会社のほうでこういったサービスを使っています。(スライドを指して)こういったかたちで、実際にここを開くと私のOKRが見えるようになっています。また、ObjectiveとKey Resultsが具体的な数字として見えるようになっています。

実際に私自身が入力をしています。これはダミーですが、「今年度の売上1億円」という、すごくストレッチな目標をまず立ててみます。

これに対する具体的な指標として、「新規のコンサル案件を10件受注しますよ」「既存のお客様を訪問30件まで持っていきます」「現状はここまでいっています」というところを、自分の今の感覚値や、あるいは、本当に具体的な定量的に設定できるものに関して、数字で入れていくかたちになります。

実際に自分でこうやって動かしながら、これが周りの人からも同じように見えるようになっています。「星野はこれだけやってる。43パーセントいってるんだ。まだまだちょっとがんばってもらわなきゃいけない」というかたちで見えるようになります。

これを例えばチーム全体として見てみると、こういうセールスだったら(スライドを指して)こういうかたちになります。あるいは、同じチームのメンバーで「ドリーはなにをやってるのかな?」と開いて見ると、ドリーはこうやってがんばっているんだというところが見えるようになります。

私がこういったコメントを入力することによって、「もうちょっとがんばれ」「こういったことを工夫してみたらいいんじゃないか」ということがドリーに伝わるかたちになります。

こういった画面を見せながらお伝えしたかったのは、まずメンバー同士がどんな目標設定をして、どこまで進捗しているのかが常に見えるようになっているということ。それにあわせて、コミュニケーションの機能がついているということになります。

今までKPIというかたちで、会社のオーダーに従って自分で目標を達成していくというかたちから、自分自身で目標を設定して、それに対してどんな施策をやるか、どんな具体的な行動に移していくのかが見えるようになると。それを、コミュニケーションを通して管理したり、マネジメントを支援できるようになります。

Googleはエンプロイー・エクスペリエンスの達人

ピョートル:ありがとうございます。もしご興味があれば、さっきの緑の(服を着た)外人にお声がけをしていただければ幸いですけれども。

みなさんに、これからもう少しペアで話していただきたいと思います。今日のプレゼンの内容や刺激(を受けたこと)を踏まえて、これを「シェアしたい」や「これをもっと深く押してほしい」という、聞きたいことを2〜3人で少し話していただきたいんですね。

1分間以内で、「これを学んだ」「これをもっと知りたい」ということを2~3人で決めておいてください。

(参加者で話し合い)

では、そろそろ質疑応答に移りたいと思います。後ろにマイクランナーがいます。ぜひシェアしたい、議論したい、聞きたいことがあれば、手を挙げていただければ幸いです。あっ、ここ。なんと(笑)。後ろの方。たぶん、ジョギングしすぎると大変だと思うんですね。では、お願いします。

質問者1:ありがとうございました。最初に、今までの企業とこれからの企業が違うところとして8つぐらいのことと、エンプロイー・エクスペリエンスと、ポートフォリオ・マネージャーが出てきたと思います。そこについて、もうちょっと具体的な例や、そうするために今どういうことができるのかを、ふだんお仕事されている中で(なにか事例が)あれば、教えていただきたいです。

ピョートル:ここでは、2社の事例をご紹介したいと思います。まず、G社。Googleですね(笑)。エンプロイー・エクスペリエンスの達人だと思うんですけれども、オフィスに行かれたことありますか? ちょうど昨日もGoogleとコラボしてイベントをやったんですけれども、入ると非常にわかりやすいですね。すごくかわいい環境なんですね。要は、刺激を与える環境はまずいんです。

個人的にどんな仕事をしたいかに合わせて、例えば1人で入れるブースもあるし、2人~3人ですぐに立ち話ができるテーブルもあるし、仮眠室もあるし、ゲームができる部屋もあるし、なんとカラオケルームもあるし、新しく渋谷に移転するオフィスにはジムもあります。まず環境づくりが大事ですね。

個人の日常の体験を重視した環境と働き方

ピョートル:あと、働き方を考えれば、フレックスタイムですよね。いつ入っても出てもおかしくない。例えば、荷物を持って14時ぐらいに外に出る社員の姿もおかしくないし、荷物を持って夕方の17時に出社する姿もおかしくない。あと、無料の食事です。カフェテリアもあります。ほかにもプラスアルファの豊富な福利厚生があるんですけれども。

働き方を見ると、まず1on1。マネージャーと1on1をやっているんですね。マネージャーの1on1は、部下の(ための)時間です。上司が話したいことじゃなくて、自分が上司に相談したいこと、コーチングされたいこと、議論したいことをアジェンダにするんです。プラスアルファもあるんですね。

要は、個人を重視している。個人の日常の体験を重視している環境と働き方です。

弊社プロノイア・グループの行動指針は3つです。PIO。Pは「Play work」です。遊ぶように働くんですね。Iは「Implement first」、前例を作ること。Oは「Offer unexpected」。予期せぬことを提供していく。それに沿って、みなさんが行動しています。

毎週、自分たちのPIOをレビューします。「今週なにが楽しかったのか?」「どんなチャレンジをしたのか?」「これからどんな困難を乗り越えたいのか?」という議論をしますし、本当に、ワクワクしながら仕事をするんですね。

金曜日には、Googleと同じように、「TPIF」(Thank Pronoia it's Friday)という日があります。Googleは「TGIF」ですね。例えば、社員が飲みながら社長の話を聞く。fireside chatという話を聞くか、会社の戦略について議論していくかなんですけれども。

弊社は、「Thank Pronoia it's Friday」という手法で、毎週金曜日の夕方に飲みながら、一緒にチームビルディングをしながら議論するんです。それは社員たちが自分たちで決めていく。自分たちが欲しいことを自分たちで手に入れていく環境ですね。よろしいですか。

OKRは、なぜ7割の目標達成を理想としているのか

いろいろな手法ができると思うんですけれども、やっぱり個人個人が(物事を)決められるようなボトムアップの社風にならないと、エンプロイー・エクスペリエンスにはならないということです。

極端な事例ですと、孫泰蔵さんのMistletoeという会社があるのですが、最近オフィスをなくしたんです。別に社員がオフィスにいる必要はないんですね。例えば、コワーキングスペースで働けばいいし、自宅で働けばいいし、会いたいときにカフェで会えばいいということですね。要は「会社=建物」ではなく、「会社=体験」という考え方です。

ありがとうございます。ここで、(ご質問は)いかがですか?

質問者2:2つあります。先ほどの例を見ると、会社のゴールから個人のビジネス上の数字を設定されているように見えたんですけれども、個人の自己啓発というところのゴールはどこまで入れていいか、というのが1点目です。

2点目は、先ほどのスライドで7割達成が理想ということだったんですけれども、逆にそこが「7割でいいや」というハードルになってしまう可能性があると思うんですけど、どうクリアすればいいでしょうか。

ピョートル:いい指摘ですね。まず、OKRはそもそも開発者の組織でできあがったものですけれども、Googleは全社で導入するから、営業の組織を見ると非常におもしろいんです。

要は、営業としてとりあえずクォーターがある、ノルマがあるということもあるんですけれども、そのノルマをどれぐらい達成していくか、どう達成していくかは、OKRのボトムアップの設定です。

とある採用・人材紹介の会社の例ですけれども、つい最近、自分のノルマを自分で決めるという部署がありました。例えば、「今期はこれぐらいの売上を出したい」。その売上によって、ボーナスが欲しいか、それとも、今期はもうちょっとゆっくりしたいかを自分で決めて実行していく例もあるんですね。

あと、7割の設定というのは曖昧に聞こえるかもしれないんですけれども、実際のイメージとして、130パーセント、150パーセントというのがOKRの設定です。「個人ができる150パーセントのキャパはどこか?」というものをマネージャーと一緒にディスカッションしながら決めて、成果を出すのは7割という考え方で実施すればいいと思います。

あとはいかがでしょう? 後ろの男性の方どうぞ。

従来の慣習にとらわれている企業にOKRを導入するコツ

質問者3:実際にOKRを導入していくときに、大企業でも、わりと新しい価値観でやっているスタートアップでも、今までの日本の考え方や慣習でできていた背景からすると、けっこうジャンプするケースが必要なんだろうなと思います。

そんなときに、一番大事にしなければいけないことというか、なかなか苦しい中で進めていかなきゃいけないようなときに、どんなことがコツなのかなと。

ピョートル:ありがとうございます。今は時間あんまりないんですけれども、2つ述べます。この2つは、実際に日系企業に非常に足りていないものです。

まず、コミュニケーションです。さっき1on1の話をしたんですけれども、個人が違う個人としっかり話す時間があることです。例えば自分の部下・上司というのもあるんですけれど、隣(の人など)、要は縦割りを超えた1on1は非常に大事ですね。

もう1つは、マネジメントスキルです。よく見ると、日系の大手企業のマネジメントのスキルレベルは……挑発的に言いますけれども、ほとんどが低いです。例えば、きちんとチームづくりをしているか、きちんとチームの目標設定をしているのか、きちんと個人個人を育んでコーチングしているのかを考えれば、「ノー」という答えが多いのが事実です。

なので、もしOKRを導入するんだったら、コミュニケーションの仕組みとマネジメントスキルを高めることをおすすめしています。

これでもう終わりにしたいと思うんですけれども、そのあとお話しなさりたい方があれば、とりあえずまだ少しいます。ご質問でもご意見でもいただければ幸いです。

では、ぜひみなさんに、明日からいかにゴール設定を考えていくのかを振り返っていただければと思います。OKRにするか、違うことにするかもあるんですけれども、会社の中でしっかりコミュニケーションが発生して、マネージャーと部下の会話ができれば、それでもう大丈夫と思います。今日の内容の中で、1つか2つぐらいのアクションを考えていただいて、明日から一緒に会社を元気にして、誰もが自己実現できる社会を創造しましょう!

今日はどうもありがとうございます。

(会場拍手)