テクノロジーで新しい価値を提供する

河井保博氏(以下、河井):日経BP総研の河井と申します。よろしくお願いいたします。今日は「テクノロジーが変える、経営とワークスタイルの未来」という話で、今テクノロジーというと、だいたいデジタルテクノロジーという話になるんだと思うんですね。みなさんもご存じだと思いますが、最近、「デジタル変革」や「デジタルトランスフォーメーション」の話はすごくたくさんあると思います。

なにがおもしろいかというと、たぶん、それでいろいろな業務の効率化ができるということはもちろんあるんですけど、単純にそこだけというよりは、そこで新しい価値観をみなさんに提供できるのが、すごくおもしろいところだと思ってるんですよ。

先ほど嶋田社長が「お客さんがすごく喜んで(業務効率化のためのロボットを)作ってるよ」というお話をされていたと思うんですけど、そういう気持ちですよね。例えば、僕らがiPhoneやiPadを最初に触ったときの感動って、「これ便利だな」ということじゃなくて、やっぱり単純に「使いたいなぁ」と思わせるところがすごくあったと思うんです。

そういう新しい価値は、デジタルテクノロジーだけではないです。例えば、電気や車など、新しいものが出てきた時は全部そうだったと思います。今はデジタルテクノロジーによって新しいものができる、新しい価値が生まれるところがすごくおもしろいのかなと思っています。

今日は、そういった新しい価値を提供していこうと強く思われて会社を経営なさっている、ユーザベースの稲垣さんと、BizteXの嶋田さんにいらしていただいています。今までの挑戦と、これから「どういうことをしていくんだろう?」といった挑戦についてお話しいただきたいなと思っています。お二人ともよろしくお願いします。

まず最初に、ユーザベース・稲垣さんに会社の概要を簡単にお話しいただければなと思っています。よろしくお願いします。

エンジニア視点で顧客に価値を提供したい

稲垣裕介氏(以下、稲垣):みなさん、はじめまして。ユーザベースで代表をしております、稲垣と申します。会社の紹介を簡単にさせていただいて、今日のワークスタイルというテーマにも絡めて、私たちがどういう変遷で事業をやってきて、どういう景色を見ているのかをお話しできればと思っています。

スライドが出る前に、少し私の紹介をさせていただきますと、私は前職でエンジニアをやっていました。会社は3名で創業しているんですけれども、残りの2名がコンサルティングファームや投資銀行のビジネスサイド出身です。私はエンジニアとして、ものづくりをずっとしてきました。

3人の視点が違うなかでいろいろ意見交換をしながら、1つのプロダクトを作り、お客様に価値を提供してきました。ですので、私自身のコアには、エンジニアとして、エンジニアリングを通して、どうお客様に価値を提供していくのかというところがあります。今日は、そのエンジニア視点も絡めてお話ができればと思っております。

共同創業者3名でどう会社を経営してきたのかというと、もうシンプルに、ミッションである「経済情報で、世界を変える」を追いかけてきたというところです。僕たちは、経済情報でお客様の働き方を変えていくことに注力してきました。

まずは日本を中心に日本のお客様に対して価値を提供することに力を入れていますけれども、ミッションに「世界を変える」と入れていますように、ニューヨーク、シンガポール、香港、上海、スリランカなど、今は北米とアジアに力点を置いています。

サービスとしては大きく6つを展開しています。経済情報は、もちろんビジネスの中で使われることが大半ではあるとは思うんですけれども、個(人)としても、ふだんのプライベートな時間を使って、例えば通勤の移動時間や、休日の自己研鑽の時間の中での経済情報(の収集)も重要になってくるんじゃないかと思っています。そのため、toCの領域での展開もしております。

ユーザベースの「SPEEDA」が目指す世界観

稲垣:メイン事業として、「SPEEDA」という製品がいわゆる企業・業界情報分析をするプラットフォームになっておりまして、今、導入企業としては1,100社を超えてきています。もう1つのメイン事業である「NewsPicks」という製品が、今、日本のお客様ではユーザー数が300万くらいになっています。

NewsPicksは北米市場への挑戦も行っています。ちょうど先ほど発表させていただいたのですが、米国版NewsPicksを、今年の7月に買収したQuartz社と完全統合することにしました。英語圏ではQuartz自体がすごくブランドが強いので、このブランドを活かして、グローバルに展開していくことを考えています。

他に新規事業としてBtoBのマーケティングプラットフォームの「FORCAS」やスタートアップデータベースの「entrepedia」、エキスパートリサーチの「MIMIR」という製品をグループでは展開しています。今後もこの経済情報領域に絞って、どんどん新しい製品を出していきたいと思っております。

今日メインでお話しさせていただくのが、この「SPEEDA」という製品で、私たちの創業事業です。

コンサルや投資銀行、事業会社の経営企画の方などが何らかの意思決定をされる際には、まず情報収集をして、その情報をもとに分析をして、企画立案し、最後の意思決定をされていますよね。

企業が意思決定をするなかで、とてつもない時間がかかっていたのが、この情報収集の領域でした。この領域をSPEEDAが代替し、お客様にSPEEDAを契約していただければ一瞬でデータが取れる、という世界観を実現しようと思ったのがSPEEDAの原体験です。

河井:ありがとうございます。ちなみに、会場にいらっしゃる方で「SPEEDAを使っています」という方って?

(会場挙手)

河井:よかった。少なかったらどうしようかと思ってたんですけど(笑)。

稲垣:切り込みましたね(笑)。うれしいです。

河井:ありがとうございます。

BizteX創業のきっかけとなった嶋田氏の原体験

河井:新しい事業を立ち上げてここまで持ってきたお二方なので、それぞれ創業にまつわるお話を少しうかがってみたいなと思っています。

まず最初、先ほどちょっと嶋田社長のプレゼンでもお話がありましたけれども、創業ストーリーというか、どんな思いで事業を始められて、どうやってここまでやってこられたのか。1年間で400ユーザーってすごい数だと思うんですけど、そこにたどり着くまでは大変なこともあったんじゃないかと思います。そのあたりをお話しいただけますか。

嶋田光敏氏(以下、嶋田):ありがとうございます。私は、冒頭に申し上げましたように、自分の原体験がけっこう強烈にありまして。やっぱり小さい頃からずっと、やりたいことがやれないような環境だったり、そういうギャップがあることに非常に自分がモヤモヤして、なにか解決したい欲求がありました。

前職ではいろいろなプロジェクトで事業を立ち上げてたんですが、やっぱりその事業ごとでいろいろな定型業務が発生していたことを、本当に生で感じていました。

とくに、ソフトバンクで電力小売事業を立ち上げた時ですかね。ご存じのとおり、孫さんがメガソーラーをたくさん作って、そこから電気がたくさん出たら、今度は「売れ」と言われて売る。そういう感じでやってたんですね。電力事業は、毎日仕入れ価格が変動するので、その仕入れ価格を調査させたり。

あと、別のプロジェクトでヤフーさんと一緒に、「ヤフーeコマース革命」と言い出したので、それを今度、孫さんに「日本で1,000回セミナーして啓蒙しろ」と言われたので、「1,000回セミナープロジェクト」などをやっていまして。

そうすると、今度はSalesforceとMAツールに案件を入力するという、二重入力が発生していたんですね。それをメンバーにやらせていたら、「そういうことはやりたくない」と、実際に泣かれたことがありまして。「こういうことを本当にやりたい人はいないんだ」と(思いました)。

これを解決していくことが、僕のもともとの原体験のギャップや、やりたいことに時間を使えることにすごくフィットすると思って、この事業に行き着いたというかたちです。

創業時にもっとも苦労したことは仲間を探すこと

河井:孫さんというと、たぶん「やります」と言って、(社内で)「やれ!」ということになったら一斉に始まるじゃないですか。そうすると、みんなで急いでやらなきゃいけなくって。そのスピード感も必要だったと思うので、残業なども相当あったと思うんですけど。

嶋田:そうですね。やっぱりこう……しかも、指示が出て、次に返す、求められるスピードが速かったので、それこそ僕も前職ではSPEEDAを使っていました(笑)。

朝9時に行って、役員から昼に打ち合わせがあるから「こういったアウトプットが欲しいので調べろ」と言われるんですね。「12時に報告しろ」と言われるんですけど、間にもう会議が2本入っているようなことが当たり前で。

そうすると、SPEEDAを見て、そのお客様の情報やマーケットの情報を見て、簡潔にまとめてすぐにアウトプットを出すという力が、僕の中ではけっこう養われましたし、SPEEDAを非常に便利に使わせていただきました。残業や膨大な量の業務を体験してきた時代だったと思います。

河井:SPEEDAを使って効率化はできているんだけど、それでも会議中に内職しなきゃいけないぐらいの勢いということですよね。

嶋田:そうですね。そういったことがもう山ほどありましたね。

河井:実際にこれを事業として立ち上げようと思われて、かなりそこは強い思いを持たれていたと思うんですけど、やっぱり創業ってそんなに簡単でもないんだろうなと思うんですよ。技術面や人寄りの面や、いろいろなハードルもあったかと思うんですけど、なにか引っかかった、「ここらへんをクリアするのが大変だった」ということは?

嶋田:そうですね。1つ目は、もともと僕は10年前ぐらいから、いつか起業したいと思っていたので、「ソフトバンクアカデミア」に行ったり、あとは経営の知識を学ぶためにGLOBISに行ったりしたんですね。その卒業したタイミングということで、3年前に起業しました。

最初につまずいたのは、僕は稲垣さんと違って、企画・営業の人間なので、「こういう事業をやりたいけど(自分で)作れない」ということなんですよね。ものを作るところで、やっぱり最初に作る仲間や創業メンバーを探すところで、非常に僕は苦労しましたね。

河井:そこで袖山さんと?

嶋田:そうですね。

河井:それは、すぐに意気投合したんですか?

嶋田:そうですね。実は彼も前職のワークスアプリケーションズをちょうど退社したタイミングで、自分でも新しいスタートアップをやりたいと思っていたことと、僕には今のクラウドRPA(Robotic Process Automation:ロボットによる業務自動化)の着想があったんです。

それで、「こういったことをやりたい」というイメージを少し話すと、彼ももともとBtoBのアプリケーション開発をやっていたので、イメージが湧いて、「これはすごくおもしろいし、一緒に世の中に提供する価値がある」と共感いただいたので、そこからすごく早かったんですね。