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テクノロジーが変える、経営とワークスタイルの未来(全1記事)

2019.01.08

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「意思決定の遅さ」が最大のリスクになる ユーザベース、BizteXの経営スピードを加速する極意

提供:BizteX株式会社

2018年11月14日、BizteX株式会社主催の「X-CONFERENCE(クロス-カンファレンス)」が開催されました。人間の代わりに仕事をするRPA(Robotic Process Automation)をクラウド上で提供する、“クラウドRPA”をメインテーマとした国内初のカンファレンスです。デジタルテクノロジーの発展によって、私たちの仕事や働き方、組織の在り方などが大きく変化しているなか、各界の専門家らがクラウドRPAや業務効率化の先にあるビジョンについて意見を交わします。本パートでは、BizteX代表の嶋田氏とユーザベース共同代表の稲垣氏が登壇し、創業時に苦労した点や、スピード感のある経営をする上での秘訣を語りました。

テクノロジーで新しい価値を提供する

河井保博氏(以下、河井):日経BP総研の河井と申します。よろしくお願いいたします。今日は「テクノロジーが変える、経営とワークスタイルの未来」という話で、今テクノロジーというと、だいたいデジタルテクノロジーという話になるんだと思うんですね。みなさんもご存じだと思いますが、最近、「デジタル変革」や「デジタルトランスフォーメーション」の話はすごくたくさんあると思います。

なにがおもしろいかというと、たぶん、それでいろいろな業務の効率化ができるということはもちろんあるんですけど、単純にそこだけというよりは、そこで新しい価値観をみなさんに提供できるのが、すごくおもしろいところだと思ってるんですよ。

先ほど嶋田社長が「お客さんがすごく喜んで(業務効率化のためのロボットを)作ってるよ」というお話をされていたと思うんですけど、そういう気持ちですよね。例えば、僕らがiPhoneやiPadを最初に触ったときの感動って、「これ便利だな」ということじゃなくて、やっぱり単純に「使いたいなぁ」と思わせるところがすごくあったと思うんです。

そういう新しい価値は、デジタルテクノロジーだけではないです。例えば、電気や車など、新しいものが出てきた時は全部そうだったと思います。今はデジタルテクノロジーによって新しいものができる、新しい価値が生まれるところがすごくおもしろいのかなと思っています。

今日は、そういった新しい価値を提供していこうと強く思われて会社を経営なさっている、ユーザベースの稲垣さんと、BizteXの嶋田さんにいらしていただいています。今までの挑戦と、これから「どういうことをしていくんだろう?」といった挑戦についてお話しいただきたいなと思っています。お二人ともよろしくお願いします。

まず最初に、ユーザベース・稲垣さんに会社の概要を簡単にお話しいただければなと思っています。よろしくお願いします。

エンジニア視点で顧客に価値を提供したい

稲垣裕介氏(以下、稲垣):みなさん、はじめまして。ユーザベースで代表をしております、稲垣と申します。会社の紹介を簡単にさせていただいて、今日のワークスタイルというテーマにも絡めて、私たちがどういう変遷で事業をやってきて、どういう景色を見ているのかをお話しできればと思っています。

スライドが出る前に、少し私の紹介をさせていただきますと、私は前職でエンジニアをやっていました。会社は3名で創業しているんですけれども、残りの2名がコンサルティングファームや投資銀行のビジネスサイド出身です。私はエンジニアとして、ものづくりをずっとしてきました。

3人の視点が違うなかでいろいろ意見交換をしながら、1つのプロダクトを作り、お客様に価値を提供してきました。ですので、私自身のコアには、エンジニアとして、エンジニアリングを通して、どうお客様に価値を提供していくのかというところがあります。今日は、そのエンジニア視点も絡めてお話ができればと思っております。

共同創業者3名でどう会社を経営してきたのかというと、もうシンプルに、ミッションである「経済情報で、世界を変える」を追いかけてきたというところです。僕たちは、経済情報でお客様の働き方を変えていくことに注力してきました。

まずは日本を中心に日本のお客様に対して価値を提供することに力を入れていますけれども、ミッションに「世界を変える」と入れていますように、ニューヨーク、シンガポール、香港、上海、スリランカなど、今は北米とアジアに力点を置いています。

サービスとしては大きく6つを展開しています。経済情報は、もちろんビジネスの中で使われることが大半ではあるとは思うんですけれども、個(人)としても、ふだんのプライベートな時間を使って、例えば通勤の移動時間や、休日の自己研鑽の時間の中での経済情報(の収集)も重要になってくるんじゃないかと思っています。そのため、toCの領域での展開もしております。

ユーザベースの「SPEEDA」が目指す世界観

稲垣:メイン事業として、「SPEEDA」という製品がいわゆる企業・業界情報分析をするプラットフォームになっておりまして、今、導入企業としては1,100社を超えてきています。もう1つのメイン事業である「NewsPicks」という製品が、今、日本のお客様ではユーザー数が300万くらいになっています。

NewsPicksは北米市場への挑戦も行っています。ちょうど先ほど発表させていただいたのですが、米国版NewsPicksを、今年の7月に買収したQuartz社と完全統合することにしました。英語圏ではQuartz自体がすごくブランドが強いので、このブランドを活かして、グローバルに展開していくことを考えています。

他に新規事業としてBtoBのマーケティングプラットフォームの「FORCAS」やスタートアップデータベースの「entrepedia」、エキスパートリサーチの「MIMIR」という製品をグループでは展開しています。今後もこの経済情報領域に絞って、どんどん新しい製品を出していきたいと思っております。

今日メインでお話しさせていただくのが、この「SPEEDA」という製品で、私たちの創業事業です。

コンサルや投資銀行、事業会社の経営企画の方などが何らかの意思決定をされる際には、まず情報収集をして、その情報をもとに分析をして、企画立案し、最後の意思決定をされていますよね。

企業が意思決定をするなかで、とてつもない時間がかかっていたのが、この情報収集の領域でした。この領域をSPEEDAが代替し、お客様にSPEEDAを契約していただければ一瞬でデータが取れる、という世界観を実現しようと思ったのがSPEEDAの原体験です。

河井:ありがとうございます。ちなみに、会場にいらっしゃる方で「SPEEDAを使っています」という方って?

(会場挙手)

河井:よかった。少なかったらどうしようかと思ってたんですけど(笑)。

稲垣:切り込みましたね(笑)。うれしいです。

河井:ありがとうございます。

BizteX創業のきっかけとなった嶋田氏の原体験

河井:新しい事業を立ち上げてここまで持ってきたお二方なので、それぞれ創業にまつわるお話を少しうかがってみたいなと思っています。

まず最初、先ほどちょっと嶋田社長のプレゼンでもお話がありましたけれども、創業ストーリーというか、どんな思いで事業を始められて、どうやってここまでやってこられたのか。1年間で400ユーザーってすごい数だと思うんですけど、そこにたどり着くまでは大変なこともあったんじゃないかと思います。そのあたりをお話しいただけますか。

嶋田光敏氏(以下、嶋田):ありがとうございます。私は、冒頭に申し上げましたように、自分の原体験がけっこう強烈にありまして。やっぱり小さい頃からずっと、やりたいことがやれないような環境だったり、そういうギャップがあることに非常に自分がモヤモヤして、なにか解決したい欲求がありました。

前職ではいろいろなプロジェクトで事業を立ち上げてたんですが、やっぱりその事業ごとでいろいろな定型業務が発生していたことを、本当に生で感じていました。

とくに、ソフトバンクで電力小売事業を立ち上げた時ですかね。ご存じのとおり、孫さんがメガソーラーをたくさん作って、そこから電気がたくさん出たら、今度は「売れ」と言われて売る。そういう感じでやってたんですね。電力事業は、毎日仕入れ価格が変動するので、その仕入れ価格を調査させたり。

あと、別のプロジェクトでヤフーさんと一緒に、「ヤフーeコマース革命」と言い出したので、それを今度、孫さんに「日本で1,000回セミナーして啓蒙しろ」と言われたので、「1,000回セミナープロジェクト」などをやっていまして。

そうすると、今度はSalesforceとMAツールに案件を入力するという、二重入力が発生していたんですね。それをメンバーにやらせていたら、「そういうことはやりたくない」と、実際に泣かれたことがありまして。「こういうことを本当にやりたい人はいないんだ」と(思いました)。

これを解決していくことが、僕のもともとの原体験のギャップや、やりたいことに時間を使えることにすごくフィットすると思って、この事業に行き着いたというかたちです。

創業時にもっとも苦労したことは仲間を探すこと

河井:孫さんというと、たぶん「やります」と言って、(社内で)「やれ!」ということになったら一斉に始まるじゃないですか。そうすると、みんなで急いでやらなきゃいけなくって。そのスピード感も必要だったと思うので、残業なども相当あったと思うんですけど。

嶋田:そうですね。やっぱりこう……しかも、指示が出て、次に返す、求められるスピードが速かったので、それこそ僕も前職ではSPEEDAを使っていました(笑)。

朝9時に行って、役員から昼に打ち合わせがあるから「こういったアウトプットが欲しいので調べろ」と言われるんですね。「12時に報告しろ」と言われるんですけど、間にもう会議が2本入っているようなことが当たり前で。

そうすると、SPEEDAを見て、そのお客様の情報やマーケットの情報を見て、簡潔にまとめてすぐにアウトプットを出すという力が、僕の中ではけっこう養われましたし、SPEEDAを非常に便利に使わせていただきました。残業や膨大な量の業務を体験してきた時代だったと思います。

河井:SPEEDAを使って効率化はできているんだけど、それでも会議中に内職しなきゃいけないぐらいの勢いということですよね。

嶋田:そうですね。そういったことがもう山ほどありましたね。

河井:実際にこれを事業として立ち上げようと思われて、かなりそこは強い思いを持たれていたと思うんですけど、やっぱり創業ってそんなに簡単でもないんだろうなと思うんですよ。技術面や人寄りの面や、いろいろなハードルもあったかと思うんですけど、なにか引っかかった、「ここらへんをクリアするのが大変だった」ということは?

嶋田:そうですね。1つ目は、もともと僕は10年前ぐらいから、いつか起業したいと思っていたので、「ソフトバンクアカデミア」に行ったり、あとは経営の知識を学ぶためにGLOBISに行ったりしたんですね。その卒業したタイミングということで、3年前に起業しました。

最初につまずいたのは、僕は稲垣さんと違って、企画・営業の人間なので、「こういう事業をやりたいけど(自分で)作れない」ということなんですよね。ものを作るところで、やっぱり最初に作る仲間や創業メンバーを探すところで、非常に僕は苦労しましたね。

河井:そこで袖山さんと?

嶋田:そうですね。

河井:それは、すぐに意気投合したんですか?

嶋田:そうですね。実は彼も前職のワークスアプリケーションズをちょうど退社したタイミングで、自分でも新しいスタートアップをやりたいと思っていたことと、僕には今のクラウドRPA(Robotic Process Automation:ロボットによる業務自動化)の着想があったんです。

それで、「こういったことをやりたい」というイメージを少し話すと、彼ももともとBtoBのアプリケーション開発をやっていたので、イメージが湧いて、「これはすごくおもしろいし、一緒に世の中に提供する価値がある」と共感いただいたので、そこからすごく早かったんですね。

「国内初のクラウドRPA」が強みになって急成長

河井:その時からサービスを始めるまでに、2年ぐらいですかね。

嶋田:そうですね。

河井:RPAってだんだんと知られてはきていますけれども、認知度としては、この1年か1年半ぐらいにググッと上がってきたぐらいだと思います。そういう認知度を上げていくようなところも大変だったんですかね。

嶋田:そうですね。私たちが去年サービスを出した時には、やっぱりこのマーケットでスタートアップで(PRAを)やっているのは私たちだけだったんですよね。

なので、最初にプレスを打ったらすごく反響はあったんですけど、そのあとはやっぱり、継続的にサービスを改善したりお客様に認知したりしてもらうために、この1年かなり努力していますね。

河井:でも、やっぱり、クラウドというのが1つ、ほか(のRPA)と違っていて、食いつきがいいところではあったと。

嶋田:やっぱり、国内初のクラウドRPAという文脈が非常にウケまして。ほかの製品とのポジショニングも変えていますし、ターゲットも変えているので、そこで非常にご興味(をもって)いただくことが多いですね。

河井:やっぱり、1つじゃなくてもいいんでしょうけど、なにか武器があったほうがいいってことでしょうね。

嶋田:はい。

河井:ありがとうございます。それから、そういう意味では、周りのプレイヤーというか、いろいろな仲間を巻き込んで作っていかなきゃいけないと思うんですけど、なにか「こういうふうに工夫しました」ということはございますか?

嶋田:僕は自分では意識していないんですけど、「巻き込み力が高いね」と言われたりするんですよね(笑)。あとは投資家や周りの人に、自分の思いや熱量を持って話すことはわりと意識もしているのですが、そうすることによって、けっこう共感してくれたり協力しようと思ってくれたりする方が増えるので。

あとはやっぱり事業のおもしろさですね。その共感性を非常に意識して、僕が話すことによって、みんなに協力していただく、巻き込むことを意識しています。

事業としてやるかやらないかを判断する「4つの条件」

河井:僕らもたびたびこういう話をするんですけど。「リーダーシップ」という言葉にしちゃうと簡単なんですけど、やっぱり巻き込む力や、「こっちのほうへいくんだぞ」という引っ張っていく力がないと、けっこう大変なのかなと思いますね。

嶋田:そうですね。僕は前職のソフトバンクで、孫さんの非常にビジョナリーでリーダーシップがあるところをけっこう間近で見ていたので。やはり、そのように大きなビジョンを持って、それを人に語ることによって、人がついてくる。そういうことを間近で見ていたので、それを自分も意識することがけっこう多かったですかね。

河井:わかりました。ありがとうございます。じゃあ稲垣さん、今度はユーザベースさんの始まりですね。(創業の)思いから、「こんなところでいろいろ工夫しました」というところをお話しいただけますか?

稲垣:私たちのミッションは、「経済情報で、世界を変える」というワードで規定していて、この中には「4つのやらない」が含まれています。

1つは、経済情報なので、エンタメやスポーツはやらない。2つ目は、経済情報という特性上、日本の情報だけで閉じていいものではないと思っています。必ずグローバルで通用するような情報でなければやらない。

3つ目が、HOW(ハウ)の領域ではあるんですけど、人とテクノロジーですね。人だけでは労働集約的になりますし、テクノロジーだけではどうしても箱になってしまうので、ちゃんと両輪でものを作っていくところ。最後は、プラットフォームビジネスであること。「この4つでなければやらない」と決めています。

なぜここに至ったかといいますと、最初の原体験は私ではなく、もう1人の共同代表の梅田のほうでして。彼は投資銀行やコンサルでまさに情報収集をして、三日三晩かけて競合リストを作ったり、市場調査をしたりしていました。

それが海外の情報になってくると、その国の言語もよくわからないですし、プレイヤーの名前もわからない。Google検索で企業名を入れればヒットするのかもしれないんですけど、検索すべき企業の名前すらわからないことも多々ありました。

徹夜して情報収集する日々を送る中で、「本来もっと高い付加価値を出さなきゃいけない仕事であるのに、情報収集に膨大な時間を費やしてていいのか?」という問題意識が生まれました。これが世の中ではGoogleが普及して、iPhoneがちょうど出てきたぐらいの時ですね。「toCの世界がこんなに発展しているのに、toBの世界はこれでいいのか?」と思ったのが彼の原体験でした。

ユーザベースが「プラットフォーム」を選んだ理由

河井:例えば「Googleで検索すれば引っぱれるじゃん?」というのも、Googleって本当に欲しい情報に当たるまでけっこう大変じゃないですか。そういうところはやっぱり相当(大変)ですよね。

稲垣:そうですね。Googleのシンプルさは1つの最適解だとは思うんですけど、経済領域の情報は、構造化されたものを見て、いち早く自分のほしい情報にたどり着けることが重要なポイントだと思っています。SPEEDAだけでなくグループのほかのサービスにしても、構造化といいますか、データがちゃんとシームレスにつながっていくところを意識してものづくりしているのがポイントです。

河井:「経済情報」とくくると簡単なんですけど、これまた幅も広いし、やっぱり企業の数だけ情報はあるわけですし。その企業だって本当に、先ほどもちょっとお話がありましたけど、知ってる会社・知らない会社。スタートしたばかりの会社も相当ありますし、例えば日本だって、名前も知らない中小企業のほうが圧倒的に数は多いわけですよね。

でも、いろいろな情報が眠っていて、そういうのが欲しいケースもきっとあると思いますし。そうした情報を「集めてこよう」という気持ちと、「こうしたらできる」というところが、どこでどういうふうに結びついたかをうかがいたいんですけれども。

稲垣:そうですね。そこがこの4つ目の「プラットフォーム」を選んだところでもあります。もちろん、自分たちができることはやっていくのですが、すでにいいコンテンツが世の中にあるのに、それをもう一度僕たちが組成する意味はあまりないと思います。そういった情報が最後にユーザーに届かないのは、検索しきれないからだと思うんですね。

データは世の中に十分にある、という前提に立つと、勝負はいかにデータと人を結びつけていく部分になってくると思っていました。そこで、まず私たちはプラットフォームを作るところに集中しました。

そうしてプロダクト開発をスタートすると、やっぱり企業データを持っていらっしゃるサプライヤーの方々は、確かにおられました。一方でそのデータを構造化して、ひと目でわかるようなプラットフォームサービスを作ることは、誰も考えていなかったようです。そこで私たちが、ユーザーが求めている企業データにアクセスできるよう、データベースプラットフォームを作っていこうと考えたのです。

ユーザーが求めている企業データが何か、どこに困っているのかという現場の課題からスタートし、必要なデータはサプライヤー様と契約して配信いただいて、世の中にないものだけを自分たちで作っていくという発想でものを作っていっています。

大量の企業データをどう構造化していくか

河井:ただ、そうは言っても、公開されている情報はたくさんありますけど、それぞれ書き方も違えば、情報の深さも違うし、それを統合していくって大変じゃないですか。そこらへんの作業というか、タグ付けのようなところは、御社の中で「こういう戦略でやっていこう」と思っていたことはありますか?

稲垣:当然ながら、みなさんのデータベースのかたちが違います。そこは、自分がデータベースエンジニアとしてやっていたので、もうひたすらデータベースをずっと見ながら「どう構造化するのか?」ということをやりました。

最近は100を超えるぐらいのデータサプライヤーさんからデータをいただいているので、一元管理して、お客様にはまったく同じフォーマットで見せていくことが重要です。

あとは、それをどう紐付けていくのかですね。データの内容によっては、かなり難易度が高いものもあるので、「この2つの情報を一区切りにしていいのか」「これとこれをくっつけていいのか?」というところは、うちのアナリストチームが実際にデータを見ながら一つひとつやっているので、まさにプロが人の手でやっています。

それを教師データとして、1個1個手でラベリングをしていって、残りの数百万レコードを機械学習で(処理し)、残りはシステムで当て込んでいます。

そのあたりが人とテクノロジーというワードになるんですけど、どうしても高付加価値な情報は今はまだ、人がやるしかないと思っています。そこは最後、人の知見が活きるところでもあると思っているんですね。人の知見とテクノロジーの両輪を組み合わせていくところが、SPEEDAという製品のコアになっています。

河井:そこは「RPAじゃないかな?」という感じですか。

稲垣:そうですね。まさにおっしゃるとおりです(笑)。

河井:なるほどね(笑)。わかりました。そうして立ち上げられた事業なんですけど、これがまたものすごい勢いで伸びているんですよね。こんな伸びですよ。ここに数字が出てますけど、ちょっとお話しいただいていいですか?

稲垣:私たちの事業目標は、売上高で年150パーセントの成長を、どう達成するのかを基本的に考えています。今の時点ではここまで達成してきているのと、今年は先ほど申し上げたQuartzという会社を買収していますので、そこの売上が大きく乗ったことでかなり伸びています。

このベースに、さらに来年1.5倍を乗せて、ようやく100億が見えてきました。来期はそこを目指してやっていきたいなと思っています。

テクノロジーとコンテンツの魅力を同居させる

稲垣:NewsPicksのユーザー数も、無料会員は300万、有料会員は8万人を突破しました。私たちとしては常にストック型のビジネスを目指してまして、一つひとつちゃんと積み上げていっています。

伸び率は2倍3倍とは簡単にいかないんですけど、ストックだからこそ、来期の収入もしっかり見えて、お客様に永続的に使ってもらえるようなビジネスモデルを組めるんじゃないかなと思っています。今後もこういったかたちのストックビジネスをちゃんとスケールさせていきたいと思っていますね。

河井:これは経済情報と言うと、やっぱり必要だという方が多くいらっしゃると思うんですけど、それにしても、これだけグッと急激に伸びているのって、どこが一番伸びていくきっかけになっていると思われますか?

稲垣:まず、テクノロジーであることは大前提だと思います。ただ、テクノロジーがあることを前提として、コンテンツも非常に大切だと考えています。この2つの文化を、ユーザベースのサービスは同居させている感覚なんです。

先ほども申し上げたように、SPEEDAの中でも、アナリストが関わっている「業界分類がちゃんとひと目でわかり、産業構造をパッとユーザーの方が理解できる」というコンテンツもそうですし、NewsPicksにおいても、コンテンツがしっかりおもしろく、短い時間でストレスなく読めるのかは、テクノロジーの力だけではなくて、コンテンツがパワーになっていると思うんですよね。

なので、ユーザーの方たちにとってちゃんと価値があるコンテンツをプロがしっかり作り込み、かつストレスなく読める。ここはかなり意識してものを作っています。

河井:僕らももともとコンテンツを作ってきたので、大変さはすごくよくわかるんですけど。でも、やっぱりコンテンツをそれなりにおもしろく作っていくって、時間がかかりますよね。

稲垣:そうですね。

河井:おもしろく作る、必要な情報はこれこれ、など。「これが抜けてます」というところもいろいろあると思うんですけど、「もっとこうしなきゃ」という思いと、そこになかなか追いつかないものとのギャップのような苦労って、なにかございましたか?

ユーザーが日々ストレスなく読めるものは何か?

稲垣:先ほど「プロ」という言い方をしましたけれども、最初は、梅田と新野が徹夜で作るようなところから始まったんですよね(笑)。

それを私が、徹夜でデータベースに入れていました。なので、まず自分たちでやってみてなんとか型を作り、走りながらだんだん見えてきたら、「スケールできる」と確信を持って、その道のプロの方を採用してきています。

ただ、経済情報に関して言うと、コンテンツだけではなく、情報が整理された状態を作るのがやはり重要だと感じています。例えばソニーの企業情報を見たときに、ちゃんと競合企業があったり、マーケットの情報がわかったりしているだけでも、かなり価値があったりするんですよね。

ですのでまず、この「情報をつなげる価値」に重きを置いてプロダクトを作ってみて、そこからどこまで付加価値でいけるのかは、その道のプロフェッショナルの方々と一緒にやって、枠を広げていくかたちがいいんじゃないかと思っています。

NewsPicksに関しても、最初はまずキュレーションのかたちでプロダクトをローンチしました。そこで「つなげる価値」の確信を持って確かめて、「これでいける」と思ったタイミングで、当時東洋経済オンラインの編集長だった佐々木(現取締役)を採用して、そこから一気にコンテンツを広げていきました。ですのでコンテンツとテクノロジーのバランスをうまく取りながら進めていったというところがあります。

河井:それって最初に「つなげる価値から始めよう」ということでやるじゃないですか。コンテンツづくりに関して、「その先、じゃあこういうステップ踏んで上がっていこうね」というのは、なにかあったんですか?

稲垣:カッコいいことを言えるといいんですけど、やっぱり実際はそこはなくて、やってみないとわからないことってたくさんあるんですよね(笑)。

なので、まずはちゃんとやってみる。ただ、世界観として描いてはいたので、「ちゃんとユーザーの方たちが日々苦痛なく読めるものは、結局なんなんだ?」と考えたときに、NewsPicksでは最初はコメントの価値や、人がつながるという価値を乗せました。

でもその後、「やっぱりコンテンツはもっと、ユーザーに求められているものを作らなきゃいけないんじゃないか」と思って、それでコンテンツを作っていったところがあります。やっぱり、やってみないとわからなかったとは思いますね。

現場に意思決定を委ねることで、スピードを加速させる

河井:たぶん、もうお二方ともそうなんですけど、スピード感がものすごい。いわゆるスタートアップやベンチャーは、スピード感を持っていないといけない、とはよく言われる話なんですけど、すごくスピード感を追求していく。

例えば、ユーザベースさんだと、「7つのルール」の中に「スピードで驚かす」というものがあったと思うんですけど、意識でスピードを速くしろ、というのはわりとできると思うんです。ただ、それを実践していくのにどうしていったらいいのかなと思うんです。例えば「目標値としてこれぐらい」など、スピードを速めるためにやっていることはあるんですか?

稲垣:まず、目線のところは、先ほど申し上げた150パーセント成長や、各事業によってKPIを持たせて経営しています。例えば営業会議でも、意思決定するチームというのは、(そこに関わる)人数を多くしすぎないことが大事だと思っています。

先ほどお見せした6つの事業がありますが、もちろん僕や梅田はグループの代表として全体の数値責任は負うんですけど、事業ごとに目標を決め、その中でどういうふうにやっていくのかは、各CEOや役員たちが意思決定していいことにしているんですね。

例えば、佐久間というCEOがやっている新規事業の「FORCAS」と「entrepedia」は、人数にして10人と20人ぐらいのチームなんですけど、そこは本当にスタートアップのスピード感で、現場の彼らが日々意思決定する世界を作っているんです。

当然、責任は最後に自分たちが負わないといけません。でも、それぐらいの意思決定できる環境をつくらないと、今グループ全体でQuartzも入れて600人ぐらいいるなかで、毎回合意形成を取ろうとすると、組織としての挑戦や成長がすごく遅くなると思うんですね。なので完全に分離して、意思決定を委ねていくことは、とても意識しています。

企業規模が小さいうちに、社内でバリューを浸透させる

河井:嶋田さん、スピード感についてはいかがですか? 

嶋田:私たちは創業3年ぐらいなので、組織も今は25〜26人なんですよね。意識していることが2つあるとしたら、まだ僕らの会社は若いので、社内システムのようなものは、自分たちで構築せず、新しいテクノロジーをどんどん入れています。

それこそクラウドベースで、会計だったらマネーフォワードやfreeeがありますし、営業管理ツールではSalesforceやMAツールがあるので、新しい良いものを自分たちでどんどん入れていくことで、身軽で動きやすくしています。

2つ目が、やはり新しいテクノロジーだけではなく、組織のかたちや文化も非常に大事かなと思っています。

今、急激に人が増えているので、実は先月、「社内のバリューを作り直そう」ということで、合宿をやりました。その中で、やっぱりスタートアップとして、企業として、競合に負けないスピードを出さなきゃいけない、と。

そこで出てきた言葉が、今ちょうど最終合意形成中なんですけど、例えば「1秒でも早くお客様に価値を届けよう」「最速でお客様に感動体験を提供しよう」という。そういう言葉にして、誰でもわかるようにして、それでみんなが動ける価値基準を、今まさしく作り上げようとしている段階ですね。

河井:おもしろいですね。みんなにそれを浸透させるというんですかね。気持ちやマインドを変えていく。まだ規模が小さいから、今のうちからしっかりやっていくと、あとで膨らんでいっても伝わってきやすいところがあると。

嶋田:そうですね。実はこのバリューの作り方で、僕らは1つ失敗しています。みなさんも経営をされる中で気をつけていただければということで言いますと、実は、1つ前のバリューは僕と袖山の2人で4月ぐらいに作り上げたんですよね。

「Challenge」や「Cooperate」、「Customer Delight」というものを作り上げたんですけど、けっこう表面的で2人で作ったので、メンバーに浸透しなかったんですよね。そういう行動でいいのかどうか、すごくあやふやだったし。

今回は、先月(の合宿で)も、それこそ全員を入れて、「みんなでイチからアイデアを出して、1つの言葉にしていこう」ということでやっています。なので、本当にみんなが腹落ちした言葉になりつつあって。そうすると、たぶん一気に僕らの組織としての行動のスピードが上がってくるんだろうなと、今感じているところです。

社員が50人を超えたら1つの言葉が伝わらなくなった

河井:稲垣さん、そういう意味だと、御社の「7つのルール」もそんなふうにして決まったんですか?

稲垣:そうですね。もともと3人の創業者のうちの新野が、創業期からずっと「必要だ、必要だ」と言い続けていて。僕と梅田は「そんなのいいじゃん?」という感じで「経営者は背中でものを語る」ぐらいの感じになっちゃってたんですけど、それは大きく間違っていてですね。

50人ぐらいを超えた時に、やっぱりみんなに1つの言葉がちゃんと伝わらなくなってしまって、会社でちょっと問題が起きると、不協和音が広がりやすい状況になってしまったんです。

ただ、「7つのルール」が明文化されていない時も、ふだんから言っている言葉としてやっぱりあったんですよね。「スピード」という言葉を使っていましたし、「ユーザーに対して徹底的にこだわってものを作る」ことや、「仲間を助ける」という話も言っていました。

「じゃあ、どうすればみんなにより伝えられるのか?」を考えた時に、やっぱり言葉で力を生むことだと思ったんです。

アイデアはみんなからも出してもらって、無理に作るのではなくて、日々自分たちがなにを言っているのかを一生懸命考えてもらって、ひねり出しました。最後の言葉の部分は、新野が一番モチベーションがあったので、彼とライターの方でブラッシュアップをして、「7つのルール」という言葉ができました。

河井:最終的には、ちょっとおしゃれな言葉づかいになっていって、という。

稲垣:そうですね。やはり、力のある言葉選びは大事だと思います。

河井:ぜひみなさんも、そういうものを作ってみてくださいね。

プラットフォーマーとしてグローバルに展開していく

河井:稲垣さん、「これから先、こういうところに向かっていこう」という、ユーザベースの事業展開をもう少しお話しいただけますか?

稲垣:この10年は、日本を中心とした市場のなかで、ちゃんとお客様の役に立つものを作ろう、とずっと言ってきていました。

創業期に梅田が持ってきた事業計画は、ちょうど2019年で100億でした。先ほど申し上げた通り、今ちょうどその数字が見え始めてきているので、「やっぱり人間、思うと叶うんだな」と(笑)。10年乗り越えてきた中で、ここから先は、次の10年を描ききるところがすごく大切なんじゃないかと思って、今、経営の中でも議論をしています。

そこで僕たちがやっていかなきゃいけないのは、もちろん今以上に日本のお客様に満足いただくことが大前提ではあるものの、やっぱりプラットフォーマーとしてグローバルでしっかりと展開していくことです。

これは、まだ日本の企業の中でもなかなか達成できていない領域だと思っていますので、まず目標をしっかり定め、挑戦していきたいと思っています。

今回、私たちは米国のクオリティ経済メディアであるQuartzをM&Aしました。この買収は、私たちの規模感でいうとかなり大きな金額であり、社運を賭けた手の1つであると認識しているので、このQuartzを最大限活用して、北米を中心としたグローバルでしっかりと展開していくつもりです。

ですがちょっと正直にお伝えしますと、「3年後、具体的にどうなっていますか?」と聞かれると、正直わからなくてですね(笑)。もちろん意志も想いはあるし、仮説も立つんですけど、そこを具体的に描くよりも、その大きなミッションとビジョンを持って、突き進んでいくのが大事だと考えています。

意思決定のスピードを失うことが最大のリスク

稲垣:それというのも、半年前には、Quartzを買収することは決まっていなかったんですよね。それぐらいのスピード感でどんどん変わっていくものだと思うので、数字や目標のイメージをもとにして、短期間の中でどんどん高速回転させて、その場で一番ベストだと思う意思決定をすることに尽きるんじゃないかなと思っています。今は、そういったかたちでの向こう10年を見ようとしています。

河井:すごいですね。半年前に買収が決まってなかったって、ちょっとびっくり。

稲垣:そうなんです(笑)。

河井:そうは言っても、そういう進み方の中で、ある意味、事業目標を作りながら進んでいかないといけないじゃないですか。かなり短期的な目標を更新しながら進んでいく、と思えばいいんですか?

稲垣:もちろん仮説としての3ヶ年(計画)は作っていますけど、やっぱり半期ぐらいに1回、大幅に変わってくるんですね。この買収が1件あっただけでも、事業の中でもかなり変えていますし。

今回Quartzの買収にあたって、SPEEDAのCEOをやっていた太田というメンバーを、PMI(Post Merger Integration:M&A成立後の統合プロセス)のために、CFOとしてニューヨークに送っているんですね。

彼からすると、今年の4月まではSPEEDA CEOとしてシンガポール、アジア戦略にコミットしようと思ってたのが、買収が決まった1日でニューヨークに行くことになったわけです(笑)。意思決定のスピードを上げるとどうしても、それぐらいの振れ幅が起きますし、そのときばかりはさすがにグループ最適を考えなきゃいけないので。

この意思決定スピードを失うことが、僕たちの一番のリスクであると思っています。常に仮説は持つし、その強度は持つんですけど、方針が変わった瞬間、ゼロベースでグループ最適でベストだと思うものをやることは、かなり徹底してやっています。

RPAを使って自社の業務効率化に取り組む

河井:ちょっと現場に入ってみないと、なんともその大変さがわからないですけど、やっぱりそこで変えていくスピード感ってすごいですね。嶋田さんはどうですか? その目標値はどういう感じで(策定されていますか)。

嶋田:僕らも、自分たちで作った5ヶ年の事業計画がありますし、この先のサービスやマーケティングの仕方、海外展開のロードマップは作っています。

僕らもスタートアップで、タイミングによって、入ってくる株主や資金調達できる金額なども、やっぱりけっこう変わっていくんですよね。そういうことによって、採用できるスピード感や事業にかける開発のリソースも変わってくるので、けっこう日々、予定していたものが変わっていますね。

株主とやりとりしながら、今の事業計画をもっと早めようと考えている。まさしく先週そのような議論をしましたし。逆にまだまだ僕らは身軽なので、その変更のスピードや振れ幅は、どんどん変えられる規模感だなと思っていたりもします。

河井:柔軟に対応していくようなところですよね。そこで、例えば御社の中で「RPAを使えているよ」という話もあるんですか?

嶋田:そうですね。実はここが僕らの反省でして。先日、合宿をやった中で「実は社内で、あんまり僕らはRPAを使えてないよね」ということも出てきて(笑)。

河井:(笑)。

嶋田:やっぱり、これまで必死で開発してきて、必死で売ってきたので、けっこう社内を振り返れてなかったんですよね。

そういったことが合宿の中で出たので、バリューを作り直して、実は社内で「cobit部」というのが立ち上がって。エンジニアをリーダーに、プログラミングは彼ら自身が書けるんですけど、そうじゃなくcobitを使って、社内のRPA化というか、業務効率を上げていこうということを、今どんどん取り組んでいます。

人事の採用系の業務やマーケティング、IR、競合の調査などで、今どんどん僕らも(RPAを)使って、生産性を上げることに取り組んでいます。

「スタートアップ ファーストクライアント宣言」

河井:わかりました。稲垣さんは、御社の中の意思決定などで「こういうツールを使って、上手にやってきてるんだよね」ということって、なにかございます?

稲垣:いろいろな事業がある中で試してみることはすごく大切なのかなと思っているので、僕たちの根幹であるコーポレート部分に入れて大丈夫か?という視点で見つつ、できるかぎり新しいシステムは試しやすくしています。

直近では、「スタートアップ ファーストクライアント宣言」(※創業1年以内のスタートアップが提供する、新サービスの最初の顧客になる)というものを発表しました。

SPEEDAをローンチしたとき、いろいろな大企業や中小も含めた方たちに、最初のお客さまとしてSPEEDAを使ってみていただいたことが、本当に突破口になったと思っています。ですので、今回ファーストクライアント宣言を発表することで、私たちもできることを業界に返していきたいという思いもあって、新しいサービスのテスト導入はかなり柔軟にできるようにしています。

ただ、最後にそれを全社展開するかは、やはり本当に強度を持っていかないと、どうしても文化として根付かない。文化として根付かないものを入れるのはすごく非効率ですし、コストとしてもったいないので、全社に入れるときは、ちゃんとオーナーシップを明確にして、誰がどういうかたちで使うのか、誰が最後まで責任を持って入れるのかは意識して会話をしていますね。

河井:スモールスタートで使っていって、本格的に入れるまでは少し時間を取るかたちですかね。

稲垣:そうですね。

河井:わかりました。ありがとうございます。ここで、ちょっと話を変えます。

働く時間を減らして、効率化や売上の向上に寄与する

河井:先ほど稲垣さんにこの先の事業の話もしていただいたんですけど、社会をどういうふうに変えていきたいか、あるいは両社にとってのお客さんたちを、どういうふうにして差し上げたいかといった思いをお話しいただきたいなと思います。嶋田さんからいかがですか?

嶋田:ありがとうございます。僕たちは、やはり新しいワークスタイルを作っていくことをミッションに掲げているので、働く時間がどんどん短くなってきていいんではないかと思っているんですよね。8時間ではなく4時間でいいと。

新しいテクノロジーが、それ以上の生産性を生み出してくれることによって、自分が使う時間が本当に変わってくるんだろうなと。それこそ家族と過ごしたり、副業したり、いろいろな多様性が持てる世界が出てくる。

そうすると、少し話が飛びますが、たぶん次に起こるのが、ベーシックインカムのような議論ですよね。自分が働かないとしたら年収が下がってしまうと。

僕らもこういったサービスを提供している会社なので、なにかの補填がある世界観を意識しながら、社会に貢献していく。そうした世の中を考えていかなきゃいけないなぁというのが、僕の1つの大きな課題やテーマだったりもしています。

河井:例えば、「こういうところがまだまだ変えられるよね」「ここをまず変えたんだよね」ということで、今思っていらっしゃることはありますか?

嶋田:直近で言うと、それこそ日本は働き方改革という文脈で、残業の制限などがあるので、僕らがサービスを提供しているお客様の働く時間を本当に変えていきたいなと。

単純に定型業務が減ってコスト削減ができただけではなく、空いた時間で売上が上がるような事例など、僕らもうまくお客様をご支援しながら価値を作っていけたらなということは、足下で非常に思っている課題でもあります。

河井:稲垣さんはいかがですか?

意思決定の手助けになる情報を提供していく

稲垣:私たちは、ミッションのとおりでもあるんですけれども、「経済情報を使って、いかにビジネスパーソンの方々の意思決定をサポートしていくのか」が本質だと思っています。この意思決定という領域は、ミッションの中でもすごく大きなウェイトを占めていると思っています。

会社として意思決定して方向性が決まった上で、実際のメンバーの方たちが目標に向かって動いていくので、その目標の精度が悪いと、どうしてもPDCAの数が多くなってしまいますし、やり直しになってしまうことも多いんじゃないかと思います。ここの情報による意思決定のスピードを上げるために、とにかくみなさまにとっていいプロダクトを作っていくことが、僕たちがやっていくポイントかなと思っています。

ある市役所の方がSPEEDAを導入してくださっているんですけど、昨日1つ、うれしかったニュースで、企業の誘致にうまく成功したというお話があるんですね。

今まではいわゆる企業リストをパーっと見て、とにかくいろいろ当たっていくという、あまり軸がないような選び方をされていたようなんですけれども、今回は明確にターゲティングをしました。

市役所の方にとって必要な企業で、かつ、企業様の課題としても、「一拠点集中になってしまっていて、もう少し拠点を増やしたい」という中で、SPEEDAの情報をもとにして分析をして、さっそく1件誘致できたというお話をいただきました。

今、日本市場がシュリンクしていく可能性が高いなかで、国内もそうですし、グローバルでも、まだ今の日本のものづくりの価値やビジネスをより広げていくチャンスは、山ほどあるんじゃないかなと思っているんですよね。

ただ、自分たちが持っているものがどういう価値であり、どういう競合がいて、グローバルで見たときにどう求められているのかは、やはりパッとはわからないと思っているので、しっかりとした情報をもとに意思決定していただくことを、僕たちがなんらかでお手伝いできればなと思っています。

誰もが使えるテクノロジーを普及させたい

河井:ありがとうございます。お二人に共通しているのは、効率化のお手伝いをすることで最終的にお客様の業績に返ってくるといいな、ということだと思います。

最後に、これからの未来を作っていく上で期待している技術について。今だとAIやブロックチェーンなどの技術そのものはいろいろあるんですけど、そういうもので「こういうところをもっと変えられるかな」ということや、その使い方、「こういうところに期待してるんだよね」というものがあれば、お話しいただきたいんですけれども。嶋田さん。

嶋田:そうですね。いろいろなテクノロジーが出てくるんですけど、逆にそれが本当に誰でも使えるような操作性やサービスになっていくことが、僕は大事だなと思っていまして。

そうしないと、それこそここにいらっしゃるみなさんが本当に使えて、本当に自分たちの働き方を変えることにはならないだろうなと思っているので、私たち自身のサービスも、クラウドRPAという文脈で、本当に誰でも使えるものにしていきたいなと。

それによって、今日の動画であったように、理系の人でなくても使えたり。私はサッカーをやっていたので体育会系なんですけど、体育会系の私でも使えるようなサービスを通して世の中を変えるために、僕らは尽力していきたいなと思ってます。

もう1つ言えば、今日は稲垣さんとご一緒に出てるので、SPEEDAに私たちのサービスを組ませていただいて、ほかのデータベースから私たちのツールを使ってSPEEDAさんに情報を与えたりして、よりお客様の価値を広げる、意思決定を支援していくものができたら。今日をそのきっかけの1つにできたらおもしろいな、ということも考えておりました。

河井:では稲垣さん。

ストレスなく経済情報を活用できる世界観を目指す

稲垣:情報の価値は先ほど申し上げたとおりです。そこにテクノロジーを乗せてどうしていきたいかというところでいきますと、私自身もともとエンジニアなので、情報を見るのはすごく泥くさいんですね。

経済情報をじっくり見ようと思っても、どう見ていいかなかなかわからなかったり、見る時間が取れない。それはやっぱり、意識して取れないところがけっこうあったんですよね。

(経済情報を)どう活用していくべきかは、実際に社長という立場でやってみて変わったところではあるんですけど。ただ、まだ多くの社長さんや、まだ経済情報にそこまで慣れてない方も実際いらっしゃるんじゃないかなと思っているので、やっぱりペルソナとしては、私のような人間がストレスなく経済情報をちゃんと活用できることを本質として、追求していきたいなと思っています。

方向性として1つは、アルゴリズムの部分。これはAIをかませた上ではあると思うんですけど、情報を見る量を減らして、質が上がっている状態にする。このアルゴリズムの追求はまだまだできると思っていますし、情報をいかにシンプルにして、その方にとってベストなものを届けていけるのかというところでは、かなり磨く余地があると思います。まず、そこをやりたいと思っています。

もう1つは、朝起きたら(必要な経済情報が)届いているような世界観ですね。調べにいくこと自体が労力になりますし、本来、自分の見たいものは、自分の一定の行動の範囲の情報からサジェストは可能だと思っているんですね。

朝起きたら、今日1日の見たかったニュースが全部届いていて、これを見れば今日の自分のビジネス活動としては正しい行動ができるような世界観を描きたいなと思っているので、今まさに、ここは開発をしていきたいなと思う領域です。また来年のどこかで、なにかしらのかたちでみなさまに発表できたらなと思っています。

河井:ありがとうございます。僕、それは大賛成です。本当に今、情報は多すぎて拾いきれない。メディアの人間でもそんなこと言っちゃうんですから、困っちゃいますよね。本当に期待したいなと思います。

今日はお二人に、今の挑戦についてお話をいただきました。お二人とも、どうもありがとうございました。

(会場拍手)

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