家事代行のマッチングプラットフォーム「タスカジ」

田中潤氏(以下、田中):社員のモチベーションを数値化する。これって、ある意味すごいデータの活用の仕方ですよね。そうやって世の中を変えようとしている。そんな会社をいまご紹介できました。

では、本日2人目(のゲストをお呼びします)。今度は働き方自体を新たに創造しようという取り組みを実際にされている、非常にユニークな会社の方に来ていただいています。お呼びしましょう、タスカジの和田さんです。よろしくお願いします。

(和田氏が登場)

ここにいるみなさんのなかには、タスカジを知っている方も、まだまだ知らない方もたくさんいると思うので、まずはぜひ会社のご紹介をしていただきたいと思います。

和田幸子氏(以下、和田):みなさん、おはようございます。タスカジの和田と申します。

まず、私の自己紹介をさせていただきたいと思います。

前職は富士通という会社で、システムエンジニアの仕事をしていました。珍しいキャリアかもしれませんが、14年間そこでエンジニアとして会社員をしたあと、5年前に起業しております。キャリアの前半はシステムエンジニア、後半はマーケティングや新規事業の立ち上げをして、「タスカジ」というサービスを立ち上げました。

最近ハウスキーパーさん・家政婦さんをテレビでよく取り上げていただいているので、もしかしたら「タスカジ」というサービスをご存じの方もいらっしゃるかもしれません。1時間1,500円という業界最安値で家事代行を利用できる、マッチングプラットフォームのサービスです。

「家事の仕事をしたい個人」と「家事の仕事をお願いしたい個人」がインターネット上で出会って取引することができる場所です。

類似のビジネスモデルで言うと、メルカリやヤフオクなどがあります。メルカリは、自分の不用品を登録しておくと、その不用品が欲しい人に売ることができるサービスです。「タスカジ」は、自分の空き時間を登録しておくと、その時間とスキルが欲しい人に売ることができるサービスです。

ですので、我々はプラットフォーマーであり、家事代行業者さんとはまた違った立ち位置でビジネスを行っています。2014年7月にサービスインして、いま5年目になるサービスです。

72パーセントの女性が「私は仕事で活躍できていない」と答える

田中:すごくおもしろいサービスだと思います。C2C(Consumer to Consumer)は、お客さま同士がお互いにマッチングできるサービスだと思いますが、和田さんご自身は富士通さんでエンジニアをやってマーケティングをやって……というキャリアで、なぜ突然マッチングサービス「タスカジ」で起業しようという感じになったのでしょうか。ぜひお聞きしたいです。

和田:私が2008年に子どもが生まれて、1年の育児休暇から復帰したところから、いろいろ始まっています。我が家は共働きになりました。そうしたら、「家事や育児の担い手が家の中にいない」という問題に直面したのです。

田中:ここにも、そういう方がけっこういるかもしれない。

和田:いらっしゃると思います。幸い、私の夫は比較的家事・育児に時間を割いてくれるタイプで、2人で分担しながらやっていたんですけれども、それでもなかなかやりきれないと。

そんななか、私自身がキャリアに対してなかなか前向きになれない。「家に帰って家事をしないといけない。エネルギーを残しておかないといけない」と思うと、会社でチャレンジできないということに直面しました。

田中:そう考える方は、けっこういそうです。

和田:そうです。実はこの問題って私だけの問題じゃなかったのです。

これは、国政モニターアンケート調査で、子どもがいる女性に「あなたは仕事で活躍できていますか?」と聞いたものです。なんと72パーセントの女性が「私は仕事で活躍できていない」って答えているのです。

田中:子どもがいる女性の72パーセントが「仕事で活躍できていない」と。

和田:そうです。毎日、朝早く来て、夜まで仕事で働いている人たちが、「私、活躍できていないんだよね」って思いながら働いているのです。

田中:その本人にとっては、すごく肩身の狭い感じなのでしょうか。

和田:そうですね。ちなみに、子どものいる男性に同じ質問をすると、なんと80パーセントの人が「活躍できている」という。

田中:「むしろ家族を支えているのは自分だ」という感じなのですかね。

和田:そういう考えもあるかもしれませんね。では「なぜ、(子どもをもつ女性が)なかなか活躍できないのか?」と聞いたら、「家事・育児が負担で、なかなか活躍できない」という回答が多いです。

田中:子どもがいると、フルタイムで働いていても、どうしても気になってしまうし、「あまり残業できないな」といったところは、確かにありますよね。

和田:そうですね。また、その皺寄せがやはり女性側に来ているのが現状なのかなと思います。

家事代行サービスのネックは「価格の高さ」

和田:「家事代行サービスを使えば共働きでも両立できるんじゃないか?」と一般的には言われているのですが、実は当時の利用率は、たったの3パーセントだったのです。

田中:確かに。私も実はそう思っていて。家事代行って、どこか「お手伝いさん」みたいなイメージがあって、「それなりに裕福な方々が使っているんじゃないかな?」という先入観があるので、普通の人が使うサービスだとは、思えなかったのです。

和田:おっしゃるとおりで、「利用しない理由ってなんですか?」と聞くと、6割以上の人が「価格が高いから」と答えています。1時間1,500円ぐらいの予算感だったら普通のサラリーマン家庭でも使えるけれど、実態は1時間3,500円からで、もっと高い企業さんだと1時間6,000円のサービスなんかもあったりします。

田中:イメージの3倍、4倍も高いってことなのですか。

和田:そうです。家事代行って「1回使って終わり」とかではなくて、日々の生活で使うものなので、毎週または隔週と頻度が高いのです。この金額だとなかなか気軽に出せる金額ではないと。

田中:確かに。「毎週この金額を払い続けてください」と言われると、やはり引いちゃいますよね。

和田:そうなのです。「もうちょっと自分でがんばってみようかな」って思って、なかなか使えないという問題があります。

そこで、私たちは「シェアリングエコノミー」というプラットフォームの仕組みを使って、個人間契約をすることによって業者の中抜きを排除し、1時間1,500円を実現しました。

誰もが家事代行を利用して、自由な人生を送れる世界を作りたいと思って、「タスカジ」を立ち上げました。

田中:これまでの経歴から、シェアリングエコノミーというのは唐突感がありますね。目のつけどころがすごいというか。タイミング的にも、こういった話はまだ日本ではそんなにされていなかった頃ではないですか?

和田:そうですね。5年前と言いますと、ちょうどAirbnbやUberが日本に入ってきたようなタイミングですね。

実はインターネットの募集サイトでハウスキーパーさんを募集して、個人契約を始めたという体験を、サービスを立ち上げる前に一度しています。

その時にいい方と巡り会えて、生活が一変して、私の夫も息子も幸せになれたという体験を通して、もっと柔軟に簡単に誰でも取引できるような、直接契約できるような仕組みを作りたいと思い、シェアリングエコノミーという仕組みを参考にしながら立ち上げました。

田中:なるほど。データの活用がすごく重要になってきそうな気がしますね。

和田:そうですね。もう「データが命」のサービスですね。

本当の意味で自由な働き方が実現できる

田中:タスカジさんの業務の中身について、もうちょっとご説明いただきたいです。

和田:では、タスカジが通常の家事代行サービスとなにが違うのかと、タスカジ社が提供したいと思っている価値について、ご紹介したいと思います。

まず、依頼者の方には「あなたにぴったりのハウスキーパーさんを探すことができる」という価値をご提供したいと思っています。

田中:確かに。家に来てもらうのですから、合う人ではないと。これはすごく重要な話ですね。

和田:業者さんに家事代行サービスをお願いすると、業者さんがサービス品質をコントロールしているので、型決めされたサービスが提供されます。しかも、「誰に来て欲しい」というのは選べません。

タスカジでは個人と個人が取引するので、誰に来て欲しいかを自分が選べる。だから、自分にぴったりな人を選ぶことができるし、また来てくれた方も型決めされたサービスをするわけじゃないので、柔軟にこちら側の要望にカスタマイズしてもらえると。そういうぴったりな人を探せるというのが1つの価値だと思っています。

我々は、登録してくれているハウスキーパーさんたちを「タスカジさん」とお呼びしています。タスカジさんはフリーランスで働いている方たちになります。育児、介護といった主婦業をしながらも、経済的自立を果たすことができる。こういったことを実現する方法をご提供したいと思っています。

田中:確かに、空いている時間でうまく仕事ができると、本当にいいですよね。

和田:そうですね。パートだとシフトがありますから、「自由に働けるよ」と言われても、なかなか自分の自由にならないという問題があります。私たちは、この二者間の出会いの場を提供することを通して、家族のかたちを再定義したいと思っています。

タスカジが考える、家族のかたちの再定義

田中:すごいですね。家族のかたちの再定義。かなり大きなお話になりますね。

和田:はい。壮大なコンセプトです。どういうことかと言いますと、家事の問題っていままで家族の中で解決しないといけないと思われてきました。でも家族のかたちが、いまどんどん多様になってきて、家事の問題が家族の中で解決しきれなくなってきています。

では、家族のかたちをちょっと変えてみようと。周りにいるタスカジさんのような家事のパートナーを家の中に招き入れて、チームを作って家族を作っていきましょう。それを私たちは「拡大家族」と呼んでいます。

田中:すごいですね。確かに、家族の考え方が大きく拡大して、本当に1つのコミュニティみたいになっています。

和田:実は、こういう家族のかたちって、昔はあったと思います。地域間のコミュニティがあって、その地域の人が困ったら助け合うという仕組みだったわけですが、核家族化、都市化というかたちで、コミュニティがどんどんなくなってきた。それがインターネット上で再現されているというのが、このタスカジの「拡大家族」の世界観かなと思っています。

こういうかたちで、依頼者とタスカジさん、両方の仕事の仕方・働き方を解決していくことで、一億総活躍社会の両輪を担うサービスにしていきたいなと思っています。