LINE、サイバーエージェント、エウレカ、メルカリのデータアナリストが登壇

備前光隆氏(以下、備前):みなさま、こんばんは。本日はData Analyst Leaders Talk! 第2回にお越しいただきまして、まことにありがとうございます。本日モデレーターを務めさせていただきます、備前と申します。

つたない進行かもしれませんが、明日からみなさまが使えるようなことを、できるかぎりパネラーのお三方から引き出せるようにがんばっていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

現在各社でデータ分析組織を統括しているお三方をお招きしまして、ちょっと大きいテーマになりますが、データアナリスト組織を語るセッションを展開していきたいと思っております。

大きく2部構成になっていまして、先ほど司会の方からもアナウンスがありましたとおり、1部はざっくばらんに我々が議論をしていくような時間になります。

第2部に関しては、本日お越しのみなさまが日々悩んでいることや、課題に感じていること、知りたいことをできる限り拾って、トークを展開していければと思っています。TwitterやSli.doをお使いいただくと、裏側で運営サイドがキャッチアップするオペレーションになっておりますので、ぜひお気軽にご活用いただければと思います。

また、本日は100名を越える方々にお越しいただいています。

倍率で言うと3倍以上になりまして、かなり注目いただいています。僕もパネラーの方々も少しだけ緊張しているかもしれませんので、ぜひ温かい目で見守っていただければ幸いでございます。

それではさっそく、パネラーの方々から自己紹介をお願いできればと思います。樫田さんからお願いいたします。

メルカリ分析チームのプレイングマネージャー

樫田光氏(以下、樫田):はじめまして。株式会社メルカリの樫田と申します。どうぞよろしくお願いします。

私は今、株式会社メルカリに入って2年半くらいで、分析チームのマネージャをやらせていただいております。

キャリアとしては、社会人の初めから分析をやっていたわけではなくて、(スライドを指して)こちらに書いてあるとおり、外資系の戦略コンサルティングファームにいたり、友達と起業したり、ニートをやったり、けっこういろいろとやっていました。

その末にたどりついた分析というキャリアを、いま満喫しているという感じです。そういった観点で、いろんなキャリアがある中での分析というキャリアについての意見とかはお話できると思います。

あとは、私は今プレイングマネージャでやっていまして、自分でも1日のうち半分くらいは実際の分析をしながら、チーム運営や採用などのマネージャー業務を兼任しているかたちになります。

ですので、そういったプレイヤーとマネージャーの違いといった観点のお話もできるかなと思っています。

(会場拍手)

備前:鉄本さん、お願いいたします。

エウレカでのデータチーム立ち上げ

鉄本環氏(以下、鉄本):よろしくお願いします。株式会社エウレカから来ました、鉄本と申します。

私はエウレカにインターンからエンジニアとして入って、そこからデータに携わるようになりました。開発言語をPHPからGolangというものに置き換えたときに、データベースも一気に刷新したんですね。

そのときにデータをすべて入れ替えるという作業をやったことから、サービスのデータをすべて把握しているというポジションで、データチームを立ち上げることになりました。

統計とかそういったところで、めちゃめちゃ専門知識があるというよりは、データをどう活かすか、サービスのデータをどう把握しているか、どう使うかといったビジネスサイドに強みを持ってやっています。

ですので、これからデータチームを立ち上げたい方に向けての話、データチームをどういうふうにつくっていくべきか、どうデータを活用するべきかといったところの話をできるかなと思っております。よろしくお願いします。

(会場拍手)

備前:牟田さん、お願いします。

日本の製造業が世界一だった時代の、統計やデータ分析方法への興味

牟田博和氏(以下、牟田):LINE株式会社の牟田と申します。よろしくお願いします。

私は現在、Data Labsという組織にいます。Data Labsというのは、LINEのなかでデータを専門的に扱う組織で、そのなかでいくつかチームがあるんですけど、Data Analysisチームという、いわゆるデータサイエンスをやっているチームのマネージャーを務めています。

経歴としては、この業界の方だとわりと珍しいほうかなと思うんですけど、6年間ぐらいSONYで半導体エンジニアとして、回路設計などをやっていました。そのときはデバイスを試作して、評価して、改善して、ということをぐるぐる回していたので、その頃からデータ分析に関わっていたということになります。

次に、監査法人トーマツにデータ分析チームがあって、その立ち上げに近いところで入らせていただいて、データ分析コンサルタントとして、いわゆるコンサルティングをやっていました。

2015年にLINEに入ったんですが、それから3年間社内でいろいろなデータ分析に関わってきて、今もこちらにおります。

私が最近興味があるのは、1980年代に日本の製造業が世界でトップを取っていた時代には、統計やデータ分析をうまく使っていろいろやっていましたよ、ということです。その辺の話って、今でも、我々が関わっている領域にも適用可能だと思っているんですよね。ですので、その辺の話もできたらいいなと思っています。よろしくお願いします。

(会場拍手)

全メディアをコンサルティングする横串組織を統括

備前:あらためまして備前です。よろしくお願いいたします。

ちょっとお三方とは毛並みが違いまして、ずっとデータ分析とかをやってきたわけではなく、2006年にサイバーエージェントに入社しました。

今でこそAmebaブログやAbemaTVなどのメディアサービスをがんばっていますけれども、当時はまだ立ち上げたばかりで、直前にライブドア・ショックが起きるというタイミングでサイバーエージェントに入社をいたしました。

もともと広告部門に10年間ぐらい在籍していて、1年半前ぐらいにメディア事業に異動し、メディアマーケティング本部という、全メディアサービスを対象にコンサルティングする横串組織の統括をしております。

例えばSEMとか運用広告の経験もありますし、エンジニアと一緒にアドテクプロダクトをつくってきた経験もありまして。広く浅くと言うと言葉は悪いんですけど、比較的いろんな経験をしてきた経緯かなと思います。

もし気になることがあれば、懇親会などでもぜひお声をおかけいただければと思います。

分析チームに求められているのは「物事の整理」

では、まず第1部。これは先ほど申しあげたとおり、ざっくばらんに話が進んでいきます。もしかしたら100名のみなさまのドンズバの話題にはならない可能性もありますから、ぜひ第2部のほうでその声をキャッチアップしたいと思います。第1部はゆるやかな感じで入っていければと思います。

テーマとしては、パネラーのみなさまが日々向き合っていること、というかたちでトークを進めていければと思います。(トーク内容が)どうなるかわからなかったので、リスクヘッジも兼ねてテーマを並べてきましたが、必ずしもこれで展開されるとは限りません。

最初はフリーダムな感じで進めていければと思います。まず、どなたでもかまいませんが、例えば今チームを統括されていると思いますけれども、各社、自分のチームになにが求められているのか、そのミッション性をファーストトークとして展開できればと思います。

ちなみに名指しはしませんので、我こそはという方がいらっしゃいましたら、マイクを奪ってお願いしたいと思います。

樫田:分析に求められるものって、サービスのフェーズとか、会社の組織のフェーズによって違うと聞いてます。

株式会社メルカリは、創業から5年ぐらいしか経っていなくて。分析チームの歴史自体も3年ぐらいと浅いので、そんなに変遷のなかで変わってきた、というのはないのかなと思っています。

今、自社の事業に一番求められているなというのは、分析や数字を出すということももちろんですが、それ以上に物事を整理していくことかなと思っています。

分析チームと一括りに言っても、けっこういろんなキャラクターがあると思うんです。僕自身がコンサルティングファームの出身というのもあって、とにかく物事を分析する前にきちんと整理して、整理した枠組みのなかで数字をつけていって、それをさらに具体的におこす、というプロセスを大事にしていて。

チームのなかに自然とそういう人間が多く集まってきているので、最近は「分析したい」「数字がどう」という話以上に、議論がとっ散らかっているから、「整理のところから入ってほしい」「物事の枠組み化するといったところで手伝ってほしい」という依頼がけっこう多いかもしれません。

そういうところから入っていって、分析に落とすというような、ある程度上流のところからの役割みたいなものが求められているかな、と感じています。

頼んだら数字を出してくれる便利なAPI的存在にならないために

備前:データ出しができると、イージーな依頼というか、「そういうのは自分で解決しろよ」というようなものが飛んでくると思います。そういった依頼については、どういなしていますか?

樫田:僕は3つあるかなと思っています。1つ目は、僕らの会社のなかでは「デモクラタイズ」と言っているもので、データ分析の力を民主化していく取り組みです。

分析を他の職種の人に教育できる仕組みを整えていって、簡単な分析やクエリは自己解決できるようにするっていうのをがんばっていまして、社内も徐々にそういう風潮になってきているかなというのは感じます。

2つめは、たぶん他社さんもそうだと思うんですが、ツールの力を借りるということをやっていて、BIツールの導入とか普及というのを本気でやっています。メルカリでは、日本ではあまり導入事例がないんですけども、Lookerというアメリカのツールを入れています。

3つめは一番簡単かつ、これがすごく大事かなと思っているんですが……簡単な分析を依頼されたら「やらない」って言うことかな、と。

(会場笑)

これはチームとしてのスタンスや、社内でのブランディングにも関わるかなと思っていて。

簡単な分析を受け続けると、数字を出してくれる便利なAPIみたいに思われてしまうという話をいろんな分析会社から聞いたので(笑)。チームのブランディングとして、「簡単な分析は自分たちで解決すべきなんだ」「難しい問題の場合はあの人たちに分析の依頼を受けてもらいたい」という感じで、ハイブランディングを目指したいなと思っています。

もちろん、それによって声をかけづらくなってしまったら、元も子もないと思うので、そこの絶妙な距離感やスタンスというのは大事にしてます。

チームの民主化と環境整備

備前:「依頼しづらい」というのはいい意味で、ですよね。人格的にイケてなくて、ただお願いしづらいとかではなくて、そういうイージーなものを飛ばしてくるんじゃないぞっていうのを、日頃からオーラとして放っておくという。

あとハイブランディングというのは、本当に大事かなと思っていまして。事業を成功に導くというところが大きなテーマとして数字を扱う部門に求められています。

一方で、さきほど樫田さんからも民主化のような話がありましたように、環境を整備して、事業がひとりでに自走していくような状況をつくりなさい、というのも1つミッションとして持っているんですね。

今日お集まりのみなさまは、自分たちでデータを出して、自分たちで見解を出して、というミッションを持っている方が比較的多いんじゃないかなと思います。そうすると、やれることというのは限られてきますから、必ず民主化や環境整備というところも、1つポイントになるんじゃないかなって。

すみません、ちょっと喋りすぎました。

樫田:いえ、とんでもないです。そういうことです。

データを意思決定につなげるというミッション

備前:その辺、鉄本さんはどうですか? ミッションの部分。会社から求められている、鉄本さんの部門のあり方というか、こういうことをやってくれっていうところ。

鉄本:さっき自己紹介でちゃんと言っていなかったんですが、うちは、「Pairs」というオンラインデーティングサービスを運営している会社です。うちの場合はけっこうデータ量が膨大だったり、個人の趣味嗜好に関するデータがあるので、そこをきちんと活用するというところはミッションとしてあります。ですので、データを意思決定につなげるところを1つミッションとして持っています。

データに関することは正直なんでも扱っていて。データを収集するところからまとめて可視化することはもちろん、ただ集計だけで見えるようなものではなくて、ユーザーの隠れた意識のようなものを、ログデータなどを洗い、データ分析を通して発見していくところまで幅広くやっています。

あとは、事業会社で、とくに1つのサービスに注力しているというのもあると思いますが、サービスだけではなくて、ファイナンスチームやマーケティングチームなどといった他の部門とのつながりのところでも架け橋となるチームになっています。

ですので、さっき言った簡単な依頼みたいなものについては、プロダクトチームだけで回せるように整理してしまって、むしろあまり関わらなくなってきていますね。

今は、簡単な分析は、例えばプロダクトマネージャーや、エンジニアなどのプロダクト側ができるように整理だけしてしまって、むしろファイナンスやマーケティングなど、データを収集したり、使ったりという大きな戦略を考えるところに協力できるようにしています。

ツールの住み分けと適性

備前:ファイナンスなど、ミッションの範囲が全部という感じになるんですかね。言ってしまうと、人事ももしかしたら、数字で社員や人物の評価ができるかもしれないですし。どのくらいのミッション範囲があるのかな? 全部?

鉄本:正直、全部なんですよね。ですので、ぜんぜん手がまわっていません。最近だと人事も手を出しはじめたところで、採用のKPIを決めて、データ収集して一次面接、二次面接の通過率だとか、どのチャネルからがいいのか、というのをちょうど整理していました。

ただ、やっぱりプロダクトありきではあるので、ベースは「プロダクトのため」というところに置いてはいます。

備前:そうですね。先ほど樫田さんがLookerを使っているという話だったんですが、エウレカさんは何を使っているんですか。

鉄本:うちはRedashを使っていて。最近はTableauも導入していて、だんだん移行したりしています。住み分けはしているんですが、基本的に定常的に見るものはTableauを見ていて、アドホックでやるものはRedashというかたちにはしていますね。

備前:なにがいいんですかね。

鉄本:Redashは無料で簡単にデータ接続できて、簡単なビジュアライズまでだったら、スッとできるので。一回書いたクエリがなくなるなんてよくあることですが、このデータ解析はどこから出したんだっけ? どうやって抽出したんだっけ? というのはクエリをRedashに残せるので、最初に気楽にデータ集計をするんだったら、Redashを導入するというのは効果があると思います。

正しく分析するために道筋を立てる

備前:うちもサービスによってはRedashを使っていますね。じゃあ、牟田さんのところはどうですか?

牟田博和氏(以下、牟田):会社に求められているものは、大きく2つあると思っています。

1つがデータを正しく分析すること。もう1つは、データを活かす仕組みづくりをするということ。大きくこの2つだと思うんです。

みなさまもご存知のとおり、データを正しく分析するというのは、けっこう難しくて。特にうちの会社はひとつひとつのデータがとても大きい。どれぐらい大きいかと言うと、LINEのユーザーはMAU(月間アクティブユーザー)が7,800万人で、DAU(デイリーアクティブユーザー)がそのうちの85.6パーセントです。

それだけデータが大きくて、サービスが数十個あるので、テーブルの数でいうとものすごい数になります。何が言いたいかと言うと、分析をする際の選択肢がとても多いということです。

それだけ選択肢が多いと、簡単には分析ができません。意識があっちへ行ったり、こっちへ行ったりしてしまうので。このような環境で正しい分析をするには、さっき樫田さんがおっしゃっていたように、整理するというのがやっぱり大事です。整理して、ちゃんと道筋を立てて分析ができるスキルが求められています。これが1つ目の分析を正しくするということです。

環境でカバーできていない領域を民主化するための「仕組み化」

仕組み化というところは、先ほどの民主化という話に繋がっていきます。全社員に、SQLがたたける環境を提供しますよという話が、民主化の1つの文脈で語られることは多いと思います。でも、そのような環境をつくっても、カバーできない領域もまだまだ大きい。

なので、民主化の話をするときに、その領域もカバー範囲に含めることがすごく大事だと思っています。そういったときに何が大事かと言うと、分析の仕組み化であると思います。

私がチームのメンバーによく言うのが「良い分析ができたら、ちゃんと仕組み化しなさい」ということ。仕組み化とはどういうことかと言うと、一番簡単な選択肢はダッシュボード化することです。そうすることで良い分析を毎日確認できる環境を作る。

あとは、例えばそのダッシュボードを使って業務フローを設計するところまで関わる必要があると思います。そういうことを通じて良い分析を仕組み化して、会社全体のレベルを上げていくことが、求められていることかなと。

フェーズの違う複数サービスを横展開するのも大事な役目

備前:そういえばLINEさんはすごくサービス範囲が広いじゃないですか。ドメインも様々で、それを管轄というか統括していく牟田さんとして、気をつけているところや、ここが難しいな、というところは、やっぱり1サービスを見るというのと、複数サービスを見るというのとで難易度はぜんぜん違うと思います。

そういうところはどうですか? 難しいものですか?

牟田:難しいけど、私はそれがすごく楽しいと思っているんです。さっき樫田さんがおっしゃったような、事業フェーズで求められているものが違うという話って、まさに私もすごく思っていて。

LINEのメッセンジャーは2011年にリリースしたサービスで、今も進化を続けていますが、LINEの様々なサービスの中では成熟しているものの一つです。スタンプ事業もそれに近い。一方で、まだ立ち上がっていない金融サービスもありますし、立ち上がって日が浅いサービスもいっぱいあります。

このように、導入期だったり、成長期の初期にあるサービスもたくさんあるなかで、一方で成熟しているサービスもある。なので、そのプロダクトライフサイクルで言うとどのフェーズにあたるのかという視点で、今やるべき分析はなにかを考えるというのが、気をつけているところですね。

もう1つ気をつけていることは、横展開するのも私の大事な役目だと思っていて。あるところでうまくいった分析は、別のところでも提供できる可能性があります。その辺は意識するようにしています。