もしも100社をエンパワーメントするとしたら?

池田紀行氏(以下、池田):じゃあここから最後の大締めなので……みなさん、こういうの嫌いだと思うんですけど、あえてやりますよ。実際に(ワークを)やってみる時間を設けたいと思うんですね。

ここからは仲山さんにバトンタッチをして。仲山さんは、いままでいろんなワークをやってきています。すごく短時間でワークをすると、頭ではわかっているのに、実際にそれを社内でやろうとするとぜんぜん使えないという。知識として頭には入ったんだけれども、消化できていなくて、また体内に摂取できていない状態だと思うんです。

今日も仲山さんと打ち合わせをしていて。この2人なので60~70分くらいしゃべり続けることはできるんですけれども。たぶんみなさんが持って帰って明日から「じゃあ」というときに、それだとまだやっぱり弱いよねと。

ワークというのはこんな大人数では絶対にやってはいけないというルールがあるわけですが(笑)。今日はそこへ果敢にチャレンジをしてみたいと思います。

みなさんはもういい大人なんですから、前や後ろや横に座っている方に恥ずかしがらず果敢に声をかけて、「一緒にやりませんか?」と言って、2〜3人のグループを作ってもらって。

それぞれ5分から7分くらい話し合って、「ああでもない」「こうでもない」「これはどうなのかな」とやりながら、2つのワークをやっていただきたいんですね。それは必ず一生消えることのないお土産として、みなさんの体内に残り続けるものになると確信しているので、ぜひ勇気を振り絞ってやってください。

じゃあここからは仲山さんに。

仲山進也氏(以下、仲山):ハードルを上げられてやりにくいんですけど。いきなりですが、お題です。最初にこのお題を作ったのは、岐阜県庁の職員さん向けの研修をやって、と言われたときです。

みなさんは、クライアント100社の担当です。自分が担当する100社をエンパワーメントする仕事です。エンパワーメントというのは、活躍してもらう、元気になってもらうための支援をするという意味です。

手元にあるのは100社のリストと、自由に使える経費は1年で100万円です。これは、「使えるお金はそんなに豊富にはありません」というくらいの意味合いでとっていただければと思います。「ネットを活用しなさい」と書いてあります。

となると、まず自分だったら何を用意して、どういう手順で何をするか。あとは、よくあるミスのパターン。ありがちなミス……あまり考えていない人が陥りがちな落とし穴はどんなことがありそうか、ということを考えてみてほしいんです。

これを同じテーブルの近所の人と「こんにちは」ってしていただいて、2〜3人くらいで雑談する感じでアイデア出しをしてほしいので。

「そういうのは絶対に無理」という人は、「俺には話しかけないで」というオーラをそこはかとなく発していただければ、たぶん周りの人も空気を読んで忖度してくださると思います。いまから5、6分くらい、ワイワイしながら進めていきたいと思います。

池田:2〜3人組でおしゃべりしてください。紙の左側にまとめてください。次に右側を使いますので、まず左側を使ってまとめてください。

(ワーク中)

キャンプの焚き火担当がやるべきことと、ありがちな失敗

仲山:はい、終了ー! ありがとうございます。だいぶ盛り上がっていますけれども、いまのを踏まえつつ、そのままあえて解説なしで次のお題にいきます。

次のお題は、こちらです。あなたはキャンプの焚き火担当になりました。手元にあるのは薪や炭100本と、自由に使える経費は1万円。あまり使えませんということですね。

何を用意して、どういう手順でやりますか? よくあるミスのパターンは、焚き火になかなか火が点かなかったり、消えちゃったりする人がやりがちなことです。はい! いまのメンバーで引き続きどうぞ。

(ワーク中)

はい、終了ー! ありがとうございます。では先に進んでいきます。焚き火の手順を分解すると、「着火」「送風」というプロセスがあります。

着火するためには(スライドの「マッチ」「ライター」「新聞紙」「着火剤」を指して)こういうものを1万円の中から買って用意をして。送風するためには、うちわなどを用意する必要があります。よくあるミスをちょっと考えてみたんですけど、いま話していた中に出ていますかね? こんな感じで。

でっかい薪をまんべんなくライターで炙り続けたり、マッチから薪に着火させようとしたり、湿った薪を一生懸命集めてきてがんばってくすぶらせたり。着火剤を「お~燃えた!」「うお~!」とか喜んでるだけで、薪をくべるのを忘れて、あっという間に終わる(笑)。薪が燃え始めたのに、また着火剤をくべる。

あとは風を送り忘れたり、逆に「風を送りすぎて火が消えてしまいました」とか。勢いよく燃える大きな薪だけえこひいきしたり。あとは、「せっかく火がついたけど、なんのために燃やしたか忘れた。企画を考えていなかった」というようなものを一応挙げてみました。

いまのを踏まえて、この焚き火の回答を最初のエンパワーメントのお題に当てはめてみてほしいんです。

このよくあるミスを仕事の話に置き換えて、「あ~、一度にすべてに着火させようとするのって、こういうシチュエーションと通じるね」というような。そんなおしゃべりをもう1回してもらってよろしいでしょうか。どうぞ。

(ワーク中)

チームビルディングと焚き火の意外な共通点

仲山:はい、終了ー! ありがとうございます。話を進めたいと思います。「熱狂」には「熱」という字が書いてありますけど、「着火」というのは「心に火をつける」ということと通じるなと。送風というのは支援し続ける。そんなふうにつながりそうです。

いま出てきた焚き火のミスを、ミスじゃないやり方と対比させてみました。(スライドを指して)こんな感じですよね。

適当に目を通していただければと思います。池田さんもこれを眺めながら、ツッコミ合いや掛け合い形式で進めていければと思いますけど、アウトドアの人には当たり前すぎて。

池田:焚き火の「着火の仕方」と「(火を)大きくする」のと「(火を)維持する」というやり方が、仕事のチームビルディングにほぼ共通しているということには気づいていないですね。(僕も)気づいていなかったです。

仲山:ちなみにチームビルディングと言うと、「社内のチーム作り」というイメージが強いかと思います。

でも、僕が思っているチームビルディングというのは、人と人との関係性をいい状態にすることです。そういう意味合いで捉えると、まさに今日のテーマの「お客さんのコミュニティってどうやって作っていったらいいんだろう」ということもまったく同じだと思っています。

池田:社内のチーム作りと、あとはインフルエンサーや熱狂的な顧客の人たちとの関係性作りも……。

仲山:社内の人だけも当てはまるし、お客さん同士の横のつながりだけにも当てはまるだろうし、お客さんと社員を含めたコミュニティにも当てはまると思っています。ちょっと進みますね。

「着火剤だけ盛大に燃やして、薪をくべるのを忘れていました」というのは、イベントを1発やって「楽しかったですね」って終わる感じと似ていますね。

あとは「こっちで薪がガンガン燃えているのに、少し離れた別の場所で火を起こそうとしたときに着火剤からやるやつなんていないだろ」って思ったかもしれないですけど。

例えば楽天だと、すでに楽天市場でものすごく売っていますという店舗さんがみんなの前で「うち、いままでこんなことをしてきました」と講演をすることがあります。

それはそれでいいんですよ。でも、聞いている人が始めたばっかりだったりすると、「がんばったらそこまでいけるのか!」と思うけど、トップを走っているようなお店の話ってステージが違ったり、けっこう抽象度が高い気づきを得たりしているので。

どうやって1歩を踏み出していいかわからない人にとっては、あまり具体的には役に立ちにくいというのもあります。それにも関わらず、ずっと事務局が選んでいる講演者はいっぱい売っている人ばっかりというようなことをよくやりがちじゃないですか。

周囲を熱狂に巻き込むにはどうしたらいいのか?

仲山:みんな火がついて燃えているんだったら、いろんなサイズの薪が燃えているわけで。大きい薪の話を聞いたら、次は小さい薪の話でもいいわけですよね。

池田:そうですね。

仲山:同じサイズくらいで燃えている薪の話のほうが、自分にとってわかりやすいようなことってあると思います。あとは、風を送らない。風というのは「コミュニケーションの量」と見立てるといいんじゃないかなと思っています。

それから、あおぎ過ぎて消火してしまうのは、よかれと思って運営側の人たちががんばりすぎてあれこれ手取り足取りやったりすると、だいたいうまくいかないですよね。

とくに県庁さんが開催する講座などは、よかれと思って事務局がいろいろやってあげすぎて、参加した人が「次はなにしてくれるんですかね?」ということになってしまっていたりします。

池田:すごく順番逆転の差し込みをしてもいいですか?(笑)

仲山:どうぞ。

池田:みなさん、Sli.do(会場からの質問を匿名で集められるサービス)の9811でいま質問をお受けしているので、もし(質問が)あればそこに送ってください。すでにいただいた質問で、いまのそれに関連するものがあって。

「チームのミッションや目標をメンバーに浸透させるのに苦労しています!」。ここに来ている侍社員が、ミッションや目標をメンバーに浸透させるのに苦労している(ということですね)。「リーダーとして大切なことは何でしょうか? 私のフォロワーシップが足りないのでしょうか?」と。

この、「私だってあおぎたいわけではないのだ」と。あおがなくても勝手に燃えていってくれるなら、それを見守って大きくするエンパワーメントはしたいんだけれども、あおがないとあおがないで消えちゃうから、あおがざるを得ないのだ、という問題。

仲山:でも、火がついていない人をあおいでも、なにも起こらないですよね。

池田:そういうことですよね。

仲山:結局今日のテーマって、たった1人の熱狂から始まるわけですよね。そこには、すでに燃えているものが存在しているわけなので。

池田:自分がね。

仲山:それを自分がやればいいという話じゃないですか。じゃあ自分の熱量をどう伝えていったら火が大きくなるか? って考えていくと、まさに焚き火だったらどうするかなって考えればいいわけで。いきなり、偉いけど湿っている人に時間を費やしすぎて、自分が力尽きるということをやっていても、あまり意味がないだろうし。

熱狂している人が直面する壁は、周囲との温度差

仲山:あと、よくありがちなのが、「コミュニティを立ち上げるぞ!」と言ってやるときのKPIが、最初に何人参加したかというような。「何十人じゃ恥ずかしいから、500人は集めろ」という。

最近「心理的安全性」という言葉が流行っていますけど、どんな人がいるかわからないところでは、怖くて発言できるわけがないので。

いきなり見ず知らずの人を500人とか100人とか、50人でも多いくらいだと思うんですけど、(その人たちに)「みなさん、発言してください」と言ったって、それは盛り上がるわけないよね、という感じで。

そうやってたくさん集めすぎて、「どこかから火がつかないかな」といろいろやっているうちに、燃料がなくなるということが起こりやすい気がするし。

池田:たぶんここにいらっしゃる方々は、「絶対に自分はそれなりに燃えているぜ」「燃えたいと思っているけど、結局周りに同志がいなくて辛い」というところが、多くの人たちですごく共通していると思うんですよね。

確かに仲山さんが言うように、まじめな侍の人たちはなぜか自分が燃えているから、そこに湿った薪じゃなくて、乾燥した薪……できるだけ小さくて着火しやすいやつを周りに置いて、火の塊をでっかくするのが、焚火の場合は最優先じゃないですか。

でも、いきなり「ここを突破すればうまくいくのではないか」とすごく巨大なゴリアテに挑んでいくような人たちも、確かにけっこう少なくない(笑)。自分は着火しているんだけれども、一番火がつかなそうなすごく大きな薪から攻略しようというところは、確かによくないなと思うんですね。

反面、小さい乾燥している薪のメンバーを集めて熱量を伝播させていく方法って、少なくとも僕が持っている答えは、理路整然と客観的なデータをもって「こうすれば絶対にこうなるから燃えようぜ」と言ったって燃えないものは燃えないという。

エビデンスなんかないし、「それをやったら絶対にうまくいくなんて保証がないから、これからやろうとしているのである」というところで燃え盛っているわけだから。

とにかく、どれだけ熱っぽくとうとうと語るしかないのかなと。語るしかない。僕はこういう人間なので語って、無理くり燃やすという感じでやるんですよ。みんながみんな、僕みたいな暑苦しい人間ではないので……。

仲山:わかります。すごくわかります。

池田:(笑)。