ノロウイルスの脅威

ハンク・グリーン氏:多くの人が食中毒を経験したことがあります。吐き気と腹痛が起こる、あの症状です。胃腸の痛みのせいでトイレで身をもだえ苦しむでしょう。

しかし、食中毒もしくは食品に由来する健康被害は単純なものではありません。実際、アメリカ疾病予防管理センターでは原因となる31種類のバクテリアやウイルス、寄生生物に特別な名前を付けましたが、全体では数百種類にも上るのです。

微生物によって異なる食品汚染する傾向があり、やや異なる症状や培養期間、つまり感染してから気分が悪くなるまでの期間を持ちます。ですから自分が食中毒にかかっているのか、そしてどこで感染したのかを突き止めるのは思っているよりも単純ではありません。

アメリカにおける食中毒の多い理由の一つは、ノロウイルスです。

CDC(アメリカ疾病予防管理センター)によると、ノロウイルスが食中毒の原因の約半分を占めています。ウイルスはとてもシンプルな病原菌です。基本的にはプロテインにコーティングされた遺伝物質で、再生産もできませんし、大きな役割を果たしてもいません。寄生する細胞が必要なのです。

もしあなたがノロウイルスに汚染されたサラダを食べたら、ウイルスはお腹の中で十分すぎるほどの寄生先を見つけることができるでしょう。ウイルスが腸の細胞を見つけると、細胞受容体を騙して内側に入り込みます。そして自身のコピーを作るために細胞の組織を乗っ取るのです。

最終的には、こういったウイルスの子分たちは感染した細胞からより犠牲者を増やすために増殖します。

そして同時に、みなさんの死んだ、もしくはダメージを受けた細胞は身体の中で炎症反応を起こすキッカケとなる化学物質を放出します。近くの血管は血漿を広げて、感染した組織に漏らします。

そして化学的シグナルはより多く放出され、特別な免疫細胞を刺激します。お腹の中の炎症反応は食中毒の典型的な症状である、下痢、嘔吐、微熱などを引き起こします。ですからお腹が痛いのは、免疫システムが微生物と戦っているということなのです。

ノロウイルスについて研究することは難しいことです。なぜならつい最近まで、研究者たちは腸細胞を研究室で育てることができなかったからです。それまでは、科学者たちが理解を深められるように勇気のある人がボランティアでノロウイルスに感染していました。

今では、人間にノロウイルスのワクチンを試すこともできます。しかしそれでも、ノロウイルスはアメリカでは食中毒を引き起こす原因としてはいまだに多いのです。多くのノロウイルスの原因は食品からではありません。

それはとても強い感染力を持つので、感染した人や汚染された表面が感染を広げることができるのです。ノロウイルスはインフルエンザウイルスとは関係がないにも関わらず、一般的には食あたりやウイルス性胃腸炎と呼ばれます。

食中毒になってしまった場合…

では、フルーツサラダを食べてお腹が痛くなったら、どうするべきなのでしょうか? それは探偵のような調査が必要ですね。最も簡単な方法は、原因を調べることです。

「同じくらいの時間に、そのフルーツサラダを食べた人はほかにいなかったか?」。もしくは、「体調が優れない子どもと遊びに行った後に、吐き気が始まったりしなかったか?」などということです。

それはCDCや健康管理局が食中毒が流行した際に調べる方法でもあります。まずは原因を突き止め、それが広がるのを止めることができます。こういった機関は病院から送られてくる病気に関する報告書をチェックし、食品を由来とする病気におかしな兆候がないかを見つけようとしています。

DNAとRNAテストを行い、患者の便のサンプルを分析して、ノロウイルスからリステリアや大腸菌、サルモネラなどのバクテリアの悪玉まで、どんな微生物がいるのかを特定します。そしてそれらがどこからやってきたのかを知るために、患者にインタビューをしたり仮説を立てたりします。

もし、多くの患者が同じブランドのアルファルファ芽を食べていたとしたら、その商品のパッケージ工場を調査しに行き、微生物を探し出そうとします。もし原因が見つかったら、広がりを止めようとします。

健康管理局はレストランを閉めさせたり、食品医薬品局がその商品をリコールさせたりします。しかし、明らかに、トイレで苦しんでいるときに、このレベルの調査をするのはかなり難しいですよね。

誰もがこのくらい細かいノロウイルス調査ができるわけではありません。でもよいニュースがあります。赤ちゃんでもない、年も取っていない健康な人々の多くにとっては、食中毒は嫌な病気ですが、自分の力で回復することができます。

何の病気にかかっているのかを知ることはそれほど重要ではありません。自分が何に苦しめられているのかを知る唯一の方法は、医療のプロのもとへ行くことです。数日でよくならなかったり、嘔吐や下痢のせいで極度に脱水症状に陥っている場合のアドバイスでもあります。

もし心配なら、YouTubeのこの動画を見ていないで医療機関に行きましょう。私は医師ではありませんよ。そして食べるものには気を付けて、食中毒に注意することも重要です。地元のニュースのこういった食品の情報も気を配りましょう。

手を洗って微生物を拡散させないようにしましょうね。フルーツや野菜を生で食べるときには、きちんと洗うようにしましょう。外側を食べないとしてもごしごしと洗うことも必要です。

例えば、メロンを切ると、外側にいた微生物が内側に入ってしまうからです。FDAはダメージを受けている部分や、レタスやキャベツの外側部分も乗り除くことも推奨しています。そして、とくにビーフや家禽、卵はしっかりと火を通しましょう。熱でバクテリアを殺すことができます。

友達や家族が食中毒に倒れた時には、豆知識を披露してあげてください。きっと喜ばれますよ。