ビームスは「モノ、コト、ヒトを創る集団」 

小宮明子氏(以下、小宮):最後になりますが、ビームスの土井地さんからお願いします。

土井地博氏(以下、土井地):いまご紹介いただきました、ビームスの土井地と申します。簡単に申し上げますと、宣伝広報を統括しているディレクターと、社内・社外を繋ぐコミュニケーションのディレクターをやっています。

なんでも屋さんなので、枠に捉われずと言いますか、社風すべて(がそう)なんですけれども、楽しいことすべてを仕事に繋げる。やはりビジネスなので、マネタイズということも含めて進めています。

音楽や人とお話しすることが好きなので、いまは副業ではなくてわりと仕事になっていますが、ラジオ番組をやったり、いろいろなことをしております。よろしくお願いします。いくつか資料のページを作ってはいるんですけれども、限られた時間ということもありますので、ちょっと流しながらお話しさせていただきたいなと思います。

簡単に申し上げますと、ビームスは1976年にできまして、いま42年目になります。洋服屋さんのイメージが非常に強いと思うんですけれども、ちょうど10年くらい前から、いろいろなかたちで「モノ、コト、ヒト」をキーワードに集団化し、楽しい部分を日本に広げていこう、と。

まずは海外に伝えていこうとしています。事例としては、車を作ったりホテルを作ったり、マンションのプロデュースをしたり、セブンイレブンさんと文房具のラインを作ったり。事例はまったくもって、「これとこれとこれ」と言えないくらい、いろいろやっています。いまのところ、一括りで「モノ、コト、ヒトを創る集団」を作っていこうというのが社風でもありますし、1つの目標でもございます。

こういったところで毎回お話しするんですが、Q(クエスチョン)からA(アンサー)に対しても、いわゆる答えをどう導くかという部分で、会議やミーティングをしたり、外部の人から相談を受けたりすることがあります。

(そういう時に)まずは私が部下や各事業部の人間によく話すのが、こちら(のスライド)に出しておりますとおり、クエスチョンマークからびっくりマークにすることを1つテーマにしています。

やはり私たちは小売りというビジネスもありますので、店頭(販売)……いまはECというのももちろんございますが、お客様にお届けするのは商品だけではなくて、不安や疑問に対して、「あ、そうなんだ!」という喜びも含めたびっくりマークにしています。いかに驚きを提案できるかということを1つの目標にしております。

ビームスの創業者は世界を股にかけた船乗り

最初に申し上げますと、非常に変わった会社なので、マニュアルや方程式に沿ったものがなく、カメレオンのようにのらりくらりと進めている会社です。1つ社風として申し上げるのであれば、最初にちょっとまとめの(ような)答えになるかもしれませんけれども、このクエスチョンマークからびっくりマーク(をつくる)というような集団作りをする。そのためのオフィスを借りたり、人材を集めたりというかたちにしております。

(スライドを指して)ここに書いているのは、よくありがちなHPの抜粋になりますけれども、なかなかご存知ない部分もあると思います。ここには書いていないことを話します。ビームス(が創業した)42年前の1976年は、ちょうどオイルショックの時代でございます。

創業者はいまの代表の父親で、戦後間もないころから船乗りでした。世界中のいろいろな港に立ち寄って、仕事と称しながらいろいろ見てきた人物でもありました。その後、いまの新宿(区の)、大久保にある青果市場(東京都中央卸売市場淀橋市場)の段ボールを製造する、小さな会社を作りました。

オイルショックの時に紙(の価格)が高騰して、このままだと段ボール事業だけでは生活ができないということになりました。たまたまかもしれませんが、船乗り時代に世界中のカルチャーを見てきたなかで、日本にその時に思い出せるものがあったと。各種ありますけれども、横須賀の米軍基地のフェンス向こうの芝に平屋があって、デニムにスニーカーを履いていた白人が非常に格好良く見えまして。

これを日本にぜひ入れたいということで、「リーバイス」「ナイキ」を始め、いまいろいろな会社やブランドがありますけれども、(そういったものを)仕入れてきたのが小売りとしての始まりでございます。42年前、原宿に6.5坪(の洋品店が)できたのがスタートでございます。その段ボールは、もちろんいまも事業としてありますけれども、おおもとの部分ではあまり知られていないので、お話しさせていただきました。いま、160店舗で約30レーベルございます。

(創業)42年ということで、やはり三世代とは言わず、マタニティから新生児、あとはシニア向けカルチャーなど、いろいろなことを含めてさまざまななレーベルを作っています。これは事業的という話ではなく、わりとスタッフの「これをやりたい」「あれをやりたい」というものからできたレーベルです。

いま約2,000人くらい(の社員が)グループにいますけれども、プロ(中)のプロは少ないにしても、アマプロが非常に多い会社でございます。マーケットに非常に近いというか、消費者目線で楽しいことを伝えたいアマプロが多い中で、いろいろなレーベルを作ってきた流れがあります。

第一想起で十指に入るためのアプローチ

ちょっと唐突かもしれないですけれども、僕は戦略広報なので、少しそのあたりの話をさせていただきたいなと思います。あまり難しいことは言いたくないですが、いま、戦略広報と販売促進の両輪で動かしている会社です。もちろん在庫ビジネスもあるので、プロパーでセールの前に商品を売ることもありますし、雑誌の出稿ですとか、カタログとかいろいろな部分を作るという、いままでの販促があります。

宣伝広報には非常に力を入れています。通常は限られた予算の中でいろいろなプロモーションをやって、ものが売れたり、伝えたり(している)ということがあるんですが、やっぱりいま「会社としておもしろい」「こんなことをやっている」と(いうことを知ってもらいたい)。

「ビームスを知っている」「(ビームスへ)行ったことがある」「(ビームスへ)最近行かなくなったけれども聞いたことがある」という人が、仮に世の中の人の2割くらいいるとするならば、残りの8割を網羅するために、いろいろな施策やイベントの協賛をしたり、本を出したり、ラジオをやったりしています。

いままではわりと2割くらいはスタッフの雇用や働き方、商品作りに注力していて、よく言われる顧客満足度を高めるというものを中心にやってきてはいたんですが、世の中における情報が非常に増えたということもありますので、いまは残りの7割、8割をいかにチームで集まって、働く時間にアイデアを出すかということを徹底して(やってい)るような気もします。

このあたりは、あくまでもイメージなので、洋服から雑貨、別注品などいろいろなこともやっていて、先ほど申し上げた2割、3割というのは、こういった情報や商品を店頭に置いたり、メディアに出したりということをベースにやっています。

今日はその7割、8割くらいのおもしろいことをいかにやっているかをお伝えしたいなと思っております。(スライドを指して)このあたりは、いま申し上げた通常やっている販促活動という部分になります。

店頭以外でも、いろいろな企業さんと手を繋いで、コラボレーションをしています。ビームスはもともと洋服という部分は非常に強いんですけれども、ワンブランド・ワンデザイナーの1つのショップが横展開している話でもないので、いろいろな人が「ビームスっぽいね」「あ、なんかそれちょっと楽しそうだね、ビームス」という(ものを意識しています)。

なんとなく漠然としているかもしれないですが、みなさんが行きたいところや行ってみたいところ、最近行けていないけれど今日行こう、というようなもののいわゆる10本の指の中に入る。駅に降り立ったり、頭の中で考えてもらう時に、1番目じゃなくても十指の中にビームスが入るために、いかに横にアプローチしていくかという取り組みをしています。

2,000人のキャラクターの色を出せる会社

改めて今日お伝えしたいと思うのは……「働き方」「働く場所」というのは、いまいろいろと非常に注目されていますし、各企業さんの事例はあるんですが……すごく極論で言うと、僕らはいわゆる小売りなので、お店の店頭のスタッフや内勤が650名くらいおりますけれども、そのキャラクターがすべてビームスかなと。

もちろん代表がメディアに出て、会社のことを伝えることはもちろんありますから、2,000人のスタッフすべてが経営者とは言いません。でも、まだ規模が小さい時は、よく「動物園」と言っていましたように、違うキャラクターでいろいろなビームスの色を出せる。

いまはもういろいろなキャラクターがいる中で、よくマーケティング的な話で、「ブランディングはどうされてますか」というようなことを言われます。非常に広い言い方かもしれないですけれども、「らしさ」がすべてをビームスにさせるというような。

スタートとゴール設定だけは、それぞれ上司の方が行って。「何時何分にこの場所に来なさいね」ということと、スタート方法ですね。競技種目やルールを最低限教えて、(その)後の練習の仕方ややり方は非常に自由にしています。

すごく短いので見ていただきたいと思います。(スライドを指して)会社概要で使っているムービーです。

(映像開始)

通常、代表などが話をして「うちの会社はこうこうで」というものですが……(映像に出てくる社員を指して)例えば、絵を本職にしている女の子。

鎌倉の若宮大路にレンバイ(鎌倉市農協連即売所)というすごく有名な鎌倉野菜を売っているところがあります。彼は、そういったところで朝波乗りをして、野菜を洗って売って、スケボーを担いで原宿まで来たり。

自転車が好きすぎて、逗子から自転車で東陽町まで来るスタッフとか。彼(がやっているの)は、マクラメと言われているいわゆる織りですね。彼女は、インフルエンサーとしてすごく有名な子で……みかんばっかり食べていてすごく有名になってしまった子が働いていたり。この夫婦は二人ともうちのスタッフではあるんですけれども、非常に家のセンスが良くて、よくCMで使われたりしています。

これは関西の子で、非常にモッズが好きで、面接の時に「モッズが好き」としか言わなかったんですが、その好き具合に人事が揺れたような、非常に芯が強い子。いま波乗り(している映像が)ありますが、けっこうプロ級で大会に出て優勝している子などもいます。

(映像終了)

スタッフ130~140人の暮らしをまとめた500ページの本を販売

なにを伝えたいかと言うと、これは会社帰り(のプライベートな暮らし)を謳ってはいるんですけれども、やっぱりふだんの自分をいかに仕事に繋げたり、商品企画に繋げたり、プロモーション企画に繋げたり。僕ら本部の人間は、そういう「らしさ」を財産として、そういった人たちをお店やオフィスに配置するための空間作りをしています。

よくオフィスをかためて、「こういうスペースだから、こういう仕事しようね」と言うことがあります。よく話すのが、例えばアルファベットでAtoZがあって、みんなそれぞれAからZまで何かを持っているとするじゃないですか。

その時に何かが集まれば単語になるし、さらにまたいろいろ集まったら文章になって。ひとかたまりになれば、何かストーリーになると。「Aをやりなさい」「Bになりなさい」ということは1つもなくて。マネージメントをする人間や、私もちょっと面接をしたりしますけれども、AからZまでをいかにフォーメーションを組んで、キャリアスタッフが文章や物語にして、それを外に伝えるかというようなかたちにしています。

いま見ていただいているのが、そういったスタッフの暮らしをまとめた本になりました。ちょうど12月にVol.5ということで5冊目が出ます。1冊約500ページくらいのもので約130人から140人のスタッフが出ています。

これはインテリア(の)本ではなくて、(例えば)「Aさんの『らしさ』ってなんですか」ということをまず1枚絵にするんですよね。それが置かれているあなたの家やスペースはどんなところかという、スタッフのサンプリングのようなものにしています。

なぜこれを作ったかと言うと、やっぱりとくにアパレルは就職難というか、時代に非常に左右されることがあります。そんな(ビームスのような)集団で働きたいという、リクルーティングに繋がるようなことももちろんそうです。偉い人ばかりが出ているわけでも、古い人ばかりが出ているわけでもなくて、アルバイトや、海外オフィス・店舗のスタッフも入れ込んでいます。

やっぱり、フラットに見た時に、「あ、仲間なんだ」という(ふうに思えるよう)。これはあくまでもインナーブランディングということも含めて、作っております。もちろん書店で販売していて、外に向けて「ビームスってなあに」という部分を伝えたいということは、もちろん大命題としてはあるんですけれども。