メルカリが“日本で勝ち切る”ための戦略は、テレビCM・資金調達・カスタマーサポート拠点開設の3点セット

メルカリのミッション達成への道筋 #1/2

THE BUSINESS DAY#2 presented by Mercari
に開催
2018年7月24日、エビススバルビルにて「THE BUSINESS DAY#2 presented by Mercari」が開催されました。これは、ビジネスおよびコーポレート系の業務に携わるビジネスパーソンを対象に、新たな知見や最新トレンドなどを共有するコミュニティイベントとして株式会社メルカリが企画しているもの。本記事では、最後のトークセッション「メルカリのミッション達成への道筋」の前半の模様をお送りいたします。

メルカリの過去から未来を小泉氏が語る

奥平和行氏(以下、奥平):みなさん、おつかれさまです。日経の奥平です。よろしくお願いします。このセッションは、「メルカリのミッション達成への道筋」と題しまして、小泉さんに1時間ほど、お話をうかがうという趣向でございます。

最初に事務連絡のようなものなんですけれども、質問をお受けしたいと思っておりまして。

このイベントが「THE BUSINESS DAY#2」っていうハッシュタグなんで、それをつけて質問をしてもらえれば、適宜こちらで確認をしてうかがえるようにしますので。ぜひ、厳しい質問をお願いしたいなと思います。

小泉:たぶん、過去の話から未来の話に入っていくと思うので。過去のことでもぜんぜんいいので、いろいろ質問していただけるとありがたいなと思います。

奥平:一応、このテーマに沿って。前半は過去のお話ですね。メルカリに入られたのって2013年12月ですよね。

小泉:そうですね。会社を創業したのが2013年の2月でして、サービスのローンチが7月なんですけれども、私が入ったのは12月からです。

その当時、山田がプロデュースして、エンジニアが作ってという、どちらかというと、アプリを作って改善するものづくりのメンバーが中心で、コーポレートの初期の社員として私が入ったという感じですね。

奥平:そこから5年ほどですよね。この5年間を振り返りつつ、基本的にスタートアップ企業は、ヒト、モノ、カネ、経営陣、何もないところから立ち上げてくるっていうので、今日、おそらく来場されている方も、その辺りで苦労されている方、たくさんいらっしゃると思いますので、その辺りをうかがいつつ、将来に向かっての話をお願いします。

今、テクノロジードリブンの成長を、進めたいという話をされていますけれども、なかなか、日本でそういうモデルがないっていうところだと思いますので、どう捉えているのかをうかがいたいと思います。

メルカリはフリマサービスの後発だった

奥平:まず、冒頭、何からうかがおうかと思ったんですけど、先ほどもちょっと出ましたが、その辺りにいる記者の方も、ぜひ、これを聞いてくれというリクエストがありまして、やっぱり球団の買収じゃないかと。

小泉:球団の買収ね(笑)。例えば、僕ら、サッカーの鹿島アントラーズのスポンサーをやったり、実はパラリンピックの選手の雇用もしています。

社会の中で会社がどう存在していくかっていう意味での、スポーツっていうのは、すごい可能性があると思っているのでスポンサーしてますが、そんな買えるようなものではないと思っています(笑)。

奥平:先ほど、2013年というお話がありましたけれども、コーポレート系初期メンバーとして入られて、当時プロダクトを立ち上げたのは、7月なんで、5ヶ月くらいということですよね。

小泉:そうなんです。実は、これが1年目です。

2013年の2月に会社を作って、7月にローンチしているので。僕が入ったのがちょうど右から2本目の12月の、100万ダウンロードを突破したか、してないかくらいの時です。

奥平:逆にコーポレート系初期メンバーとおっしゃってるってことは、それまでのコーポレートは誰がやっていたんですか?

小泉:山田と一緒にウノウをやっていた石川(篤)さんが、アドバイザーというか、サポートしてくれたり、専門家の方々に数値面などはお願いしつつやっていたっていう感じなんですが、今執行役員やっている掛川や僕が入ってきてコーポレート機能が出来始めた感じです。まず、良いアプリを作るっていうことに専念したというところですかね。

奥平:さすがにある程度、100万ダウンロード近づいてくると、その体制も変わらないと、ということで、お声がかかったんですか?

小泉:ずっと私たち、フリルが競合にいたんです。楽天さんが買収しましたけど、私たちが参入したのって、ちょうど1年後くらいなんです。

それ以外にも、ほとんどのネット企業が参入してきていまして、おそらくこのタイミングっていうのは、10社くらいのみなさんがやっていたんじゃないかなという中で、実は後発なんですよ。

課題がなにかすらわからない状態でスタート

小泉:なので、プロダクトを磨き込むっていうところに、かなり注力をしていて。ちょうどローンチした7月のところで、資金調達もやっていて。ユナイテッドさんとか、創業時から含めて、3億円強くらいですけれども、そのお金を使って、まずは良いものを作って、オンラインのプロモーションを回して、ひたすら継続率を上げていこう、みたいな。

出品と購入のバランス問題がどうしてもあるので、この時期というのはインストールをさせて、出品に持っていこうと。

奥平:コーポレートとして入られたときには、課題山積の状況からだったと思うんですけれども、まず課題の整理はどうされたんですか?

小泉:課題すらわからない状態というか。掛川にどちらかというと数値面をやってもらって、僕はそれ以外なるべくぜんぶ見るようにしていました。

入った時に僕自身が非常に感じたのは、これはどのスタートアップでもありがちなんですが、モノづくりに注力しているので、会社というよりはプロジェクトチームに近い印象を受けて。

もう少し、会社にしていくということに対してまず1つやらなくてはいけないことがあるなと。ミッションとバリューが、会社としてあまり定義されていなかったので、それを1回、定義しにいって、会社としてなんなのかみたいなことを作りにいったというのが最初ですね。

ミクシィ時代の経営の反省を込めて

奥平:ミッションとして「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」って定義されてますけれども、じゃあ、そうすると入られてすぐミッション・バリューの設定作業に入られた?

小泉:そうですね。実際、私が入ったのが12月なんですけれども。1月に経営陣・ファウンダー3人と私、4人で合宿的なものをやってミッション・バリューを決めて。2月頭に全社員集めて、みんなに発表していくんですけれども、これは完全に私のミクシィ時代の経営の反省というか、もう少ししっかりやっておけばよかったな、という思いがありまして。

何かというと、ミクシィみたいに、プロダクトが強い会社というのは、プロダクトの雰囲気とか、プロダクトの成長が、組織の吸引力になっているというか、組織を牽引していくので、経営陣が、自分たちでミッションはこれだとか言わなくても、なんとなくみんなが1つになっていくんです。

プロダクトが組織を引っ張っていくので、ある意味、楽といえば楽ですけれども。コーポレート側にいた僕としては、ミッションの刷り込みをおろそかにしてしまったと思っていまして。当然、プロダクトというのは、ライフサイクルがあるので、いい時もあれば悪い時もあるという中で、悪いフェーズに入った時に、みんなの意識がブレ始めるんですよね。

1人ひとり理想像がブレ始めたり、働き方みたいなバリューもそうなんですけれども、こういうものもブレまくるので、何が答えなのかわからなくなってきて。そうすると、1人ひとりが好き勝手言い始める、みたいな。けっこうありがちなんです。

私自身は、当然プロダクトを、山田がしっかり作っていくという前提において、信じてはいるものの、一方で、会社とプロダクトというのを分けなければいけないなと。

この会社はそもそも何のためにやっているのか。どういう働き方であるとか、どういう価値観を信じるのかっていうのをしっかり決めないと、やはりドツボにはまるんじゃないかなという恐れみたいなものがありまして、そこを定義付けようっていうのが最初にやった仕事です。

パフォーマンスと3つのバリュー

奥平:話をうかがっていると、最近、ミッション・バリューを掲げるスタートアップっていうのがすごく増えているので、そういう流れなのかなとは思うんですけれども。一方で、特に取材なんかでうかがうと、スタートアップって、みなさんものすごく忙しいじゃないですか。もうこの時期にプロダクトも改変、改良しなくてはいけない。

たぶんカスタマーサポートもしなくてはならない、トラブル対応もある、採用もあるという中で、すぐにミッション・バリューを作るということにならないかもしれないわけですよね。それは、理解は得られたんですか?

小泉:山田もミッション・バリューの重要性を感じていました。実際バリューがあって非常に良かったなというのは、迷った時の判断基準が必ずバリューにあるので、ここからすべて考えればいいんです。

例えば、採用基準もブレません。僕らの採用でいうと、バリューの3つを、さらに3つずつに因数分解して、9個の項目で評価しているんです。

入社後の評価制度も、パフォーマンスと3つのバリュー。この二軸で決めるんです。それ以外にも、自分たちの会社のPRとかって、奥平さんとか質問されたときに、私が答えるとしても、そのバリューに基づいて、会社っていうのはこういうカルチャーだよねとか、こういうものを大事にしていますってすると、1個の筋が通るんです。

なので、バリューがあることで、ある意味で社員が迷わずに、自分たちの大事なものってなんなんだろうって答える点で、バリューがあって会社の生産性が上がったと僕は思ってるくらいです。

奥平:それは比較的、理解が得られたし、効果も得られたと。

小泉:そうですね。やはり大事なことはバリューみたいな言葉って、作って終わっちゃうっていうやつですよね。標語って難しくて、作って満足しているわけではなくて、それをどうやって、みんなにインストールしていくかみたいなところが非常に大事だと思っているので、全社上まずは経営陣である僕ら自身がそれを体現するし、それを言葉にして言うっていうことをやっていました。

バリューは3つ、中1レベルの英語、日本語も添える

「ミッション担当」を創業者の山田進太郎。「US事業にチャレンジする」というのは、もう当時から決めていたので、創業メンバーでUSを担当していた石塚が「Go Bold」を担当。僕はコーポレートも見るので、「All for One」を担当して、全社の雰囲気とかというのを作っていくと。もうひとりの創業メンバー、富島は、プロダクト・エンジニアの視点で「Be Professional」担当。というように、役員1人ひとりが、この言葉を自分が担当するっていうところまで決めたんです。

その中で、1人ひとりがきちんと社員である理由などを、日頃から意識した行動をとることに対してまで責任を負ったっていうところを見ると、僕はけっこうそこまでやらないと、言葉ってなかなかみんなに届かないんじゃないかなと思っています。

後は、僕らミッションが1つ、バリューが3つなんです。バリューが4つ以上だと人間、覚えられないと思っていまして、なので3つが限界だと。

奥平:今日、この手元の水も。

小泉:ボトルに書いてますね。

奥平:Go Bold、All for One、Be Professional。でも、本当に会社に書いてありますよね。

小泉:書いてますね。こういう水に書いてあったり、Tシャツにしたり、あと、会議室の名前がBoldだったりとか、普段からそういうことを口に出すとか目に見える、何気ない仕掛けをたくさんしていくことによって、みんなが必ず覚えられるようにする。

それと、英語の後に日本語がついているんですけど、2つあるのには意味があって。英語の表現って、標語としては覚えやすい。しかもなるべく中学1年生レベルで習える英単語にして、みんな必ず覚えられて。Go Boldって、Goって前に行く感じで良いじゃないですか。なので、この辺のワードに非常にこだわっていて。

ただ英語の標語にしちゃうと、1人ひとりの理解がブレるんで、日本語を補足的にちょっと付けることによって、ある程度みんなを1つに意識統一していきましょうっていう考え方で作りました。

その他大勢からの脱却

奥平:人づくりっていうんですか。人間作りが先行して、非常に特徴的というか、まさにミクシィの経験が生きた?

小泉:そうですね、やはりそれが大きいと思います。

奥平:実際、目の前で起きている戦いに目を向けると、先ほどおっしゃったようにフリル、今のラクマが先行している段階の年で、どっかの雑誌の記事でしたっけ、フリマ特集の中でメルカリが載っていなかったとかいう話が。

小泉:ははは(笑)。そうですね、ちょうど100万ダウンロードを達成した頃、たぶん、12月に私が入社した当日に、まさに日経新聞さんが、フリマ特集的なことをやったんですが最後に名前がちょっと載っていたくらい。本当に、ぜんぜん振り向いてもらっていなかった。

奥平:その他大勢だった。

小泉:その他大勢。けっこうやばいな、と思って。このままいっても、いわゆる「ウィナーテークスオール」で、一社総取りっていうのが、わかりやすいモデルだったので、フリルが手が届かないところに行っていないながらも、かなり離されちゃってるなってことは理解していたので。

けっこうやばいなと思ってからは、もう、ここが次の1年ですね。100万ダウンロードぐらいから1000万を超えるんですが、この1年が勝負だったなっていう感じですね。

現金が手元にないのに、CMを作るプロジェクトはあった

奥平:これ、出来事として、資金調達と、仙台。この仙台はカスタマーサポート、あとテレビコマーシャル。セットみたいに書いてありますけど、どういう理解をしたらいいですか。

小泉:やはり、まずは、さっきも言ったように「ウィナーテークスオール」でいうと、みんなでやらなくてはいけないというときに、いいプロダクトを作っても、いいマーケティングをしなくてはならない。

いわゆる、プロダクトとマーケティングって、僕は車の両輪だと思っているので、その両輪をきっちりワークさせなきゃいけない。そのワークさせなきゃいけないところに、資金調達でしっかりお金を入れていかなければならない。

車でいえば、ガソリンとかですね。ハンドルを握っているのは人事とマネジメント。このバランスをとらないといけないと。まず、車のハンドルを持つみたいなところを見ると、ある意味、ミッション・バリューを決めたので、1つチェックできましたね、と。そのマーケティングをしていくっていうのは、お金が必要なので、2014年3月に、14.5億の資金調達をしました。その時はまだ売上0の状態でした。

奥平:まだ手数料とってない?

小泉:とってないですね。インストール数は伸びているものの、社員数20名強のタイミングで、だいたいポストバリュエーションで90億円から100億円ぐらいのところで15億円弱の資金調達をしたのが、このタイミングですね。ここは、かなり大きな軍資金を得られたので、このお金を使って、2014年5月にテレビCMをはじめました。実は調達金の払い込みの前からCMをずっと作っていました。

奥平:現金がまだ手元にないのに、もうCMを作るプロジェクトがあったんですか?

小泉:CMは資金調達ができる前提で2013年12月から作り始めていて、2014年3月31日で払い込まれていたんですよ。朝一で。払い込まれたのを見て、CMを発注しました。

奥平:そのボタンを押したら走れるようにしてた?

小泉:走れるようにしていて、5月の15日からCMがスタートしたんですけれども、だいたいそのようなスケジュール感で、払い込まれるのを待って、ずっと準備してやった感じですね。

テレビCM、資金調達、CS拠点開設の3点セット

奥平:当時、メルカリみたいなプロダクトでテレビCMをやるケースって、ほぼ皆無だった。今でいうと、スタートアップのプロダクトがやってますけれども、せいぜい、ゲームくらいですよね。

テクノロジー分野の方の発想として、ちょっとひどい言葉を使うと、テレビCMは邪道だっていうと、ものすごい天ツバな話をしていますけれども。それはプロダクトが良ければ、自然に伸びてくるんじゃないかって考え方もあったと思うんですが、そこはどんな思考パターンで、そうなったんですか?

小泉:当然、プロダクトメインというのは前提です。あるゲーム会社の社長さんに教えてもらったんです。CMが効くよ、と。だいたい200万ダウンロードいくと、口コミも含めて回ってくるからCMやってもペイできるよ、みたいな話を聞いたのがきっかけで、準備しはじめたという感じなんですよね。

実際ちょうど、200万ダウンロードくらいのときにCMを開始し、その1ヶ月間で一気に、300万強と1.5倍になっているので、上がりがけっこう強いんです。

そこは200万ダウンロードくらいのときのCM実施は効果があるということを信じて、CMで3億円くらいオンライン広告も1.5億円くらいかけ、合計4.5億円くらい。15億弱くらい集めた資金調達額のうちの3分の1をこの1ヶ月で投資しました。

当然、成功を信じていたので、CSもたぶん東京だけではパンクすると思い、仙台のカスタマーサポートの拠点もCM放映直前の2014年4月に作りました。このときのテレビCM・資金調達・カスタマーサポート拠点の開設の3点セットが日本で勝ち切るための戦略でした。

奥平:普通の日本の大企業でいうと、財務経理本部の仕事と、マーケティング本部の仕事と、カスタマーサポート本部みたいなところを3つくらい持っているわけですよね。それは、ご自身の中でどういう優先順位だったんですか。超人的なパワーと力がないと。

小泉:そうですね、基本的には日本で勝ち切るために、プロダクトの開発以外に何が大事かっていうところを自分の中でメモ出しして、そこを優先順位をつけてやったという感じです。

相手のストラテジーに合うかたちで提案する

小泉:実は、書いてないんですけど、このタイミングでもう1個やったのが、ヤマト運輸にメルカリ便を最初に提案したのが、2014年の2月なんです。

奥平:らくらくメルカリ便がスタートする1年前ですよね。

小泉:1年以上前になります。

奥平:このテレビCM、カスタマーサポート、ファイナンスをやりつつ、さらに次のロジスティクスの仕込みもやっていたと。

小泉:そうです。結局、プロダクトを勝ち切るという意味でいうと、どうしてもバリューチェーンの中にリアルが入ってきちゃうんで、ここを改善しないと、どんなにいいプロモーションしても結局止まっちゃう。

というか、あんまり、お客さんも体験としても良くないんじゃないかと思っていて。ヤマトもかなり偉い人に、当時売上0のただドベンチャーなメルカリが提案しに行ったというのがあります。

奥平:スタートアップって、人も物もお金もない中で、どうやってやりくりするのか、さらにアライアンスで人の力を使っているところがあると思うんですけど。

たぶん、多くの方が興味があると思うんで、まさにおっしゃったような資金調達もしていない、実績もない名前も知られていないドベンチャーが、どうやってヤマトの上層部の方とかにたどり着くんですか?

小泉:僕一応、大企業にいたので、そこの当時の上司にお願いして、ヤマトの偉い人を紹介してもらいました。やっぱり現場から交渉していていっても基本的には偉い人には会えないので、上から行くしかないんです。だから常に上からいけるルートを探しまくっていて、ちょうどそこであったので、まず上からいきますと。これ会うだけじゃダメなんですよ。

けっこうベンチャーであるのは、自分たちの提案でいって、満足してしまうっていうパターンなんですけれども、当時やったのは、ヤマトの決算説明会資料を2年分ぜんぶ見て、彼らの中計を読み込んで。

奥平:もともと証券マンだから。

小泉:そう(笑)。なので、ぜんぶ、彼らのストラテジーというものを洗って、彼らの今のストラテジーに合うかたちで、メルカリがどう持っていくか。

ヤマトさんでいうと、当時、ビジネスユースでいうと、インターネットの普及でBの物流が減っていく中でCを増やさなくてはいけないという時に、Cを増やす文脈の中にメルカリがどう入っていくかというところで、うまく彼らの大きな流れの中に提案をしていったという感じです。

基本的に聞いているヤマトの役員も、自分たちの戦略に則った提案をしてくるんで無下にはできないというか、その後いろいろとやりとりを重ねていき、実現に至りました。

3億円払ってから気づいた会社の考査の必要性

奥平:自分たちの言いたいことを言うんじゃなくて、基本的に相手の考えていることを頭の中をのぞくようにして逆算して持って行ったと。

小泉:そうですね、完全に。あと、先方が社内を通しやすいようにというのも意識しました。実はテレビCMをやるときも、テレビCMを作ったことがある社員が0だったんですよ。僕もなくて、そうしたら最初に何をしたかというと。

奥平:テレビCMを作るときって、最初どこに電話したらいいんですか?

小泉:一応、代理店とかに聞くんですよ。こんな流れですって聞くんですけど、唯一、まったく知らなかったことが、テレビCMって最初のときに、CMの考査じゃなくて、会社や業態の考査から入るんですよ。

奥平:会社がそのテレビCMを流すのに、的確かって審査を受けるんですか?

小泉:審査を受けるんです。これ、知らなくて、そしたらお金振り込んだのに、考査が止まってます、みたいな話になって「え、なんで?」「考査って何?」って言ったんですね。

奥平:その段階で考査って何って言ったんですか。けっこう「Go Bold」な話ですね。

(会場笑)

パワポではなく、ワードで資料をつくった理由

小泉:そう。3億円払った後なんで「え?」ってなって、ほぼ全局考査の承認がおりないですよって話になったんですけど、よくよく聞いたら「CtoC」がトラブルが多いんじゃないかみたいな。

奥平:商品が届かないんじゃないかとか、偽物だとか。

小泉:結局、今でいうエスクローの仕組みで、工夫しているにもかかわらず、そこを知らないんですよね。

というのがあったので、これもやばいなというので、当時僕は証券会社出身だったので、上場審査資料を作った経験がありました。それに則って、ぜんぶメルカリの特徴を書いてそれをワードで持っていきました。

奥平:パワポじゃなくて?

小泉:パワポじゃなくて。ワードですね。先方で切り貼りして社内用の資料も作りやすいので。

奥平:社内文章に切り替えできるように考えて、ワードにしてあげた。

小泉:はい、そういうのは全部お作法的にやってましたね。大企業の方々の仕事の進め方を理解しているのは大事だと思いました。そんなこんなで、最初の頃は、ぜんぜん知らないことも含めて色々やっていて、なんとかCMがすごいヒットしたので、そこで、おかげさまで日本で勝ち切っていった感じです。

奥平:先行するプレイヤーがいて、日経新聞の記事にも載ってるか載ってないかわからない段階では、ビハインドからのスタートだったんですよね。どのへんで、いけたなって内心で思ったんですか?

小泉:CM前後くらいですね。CM実施前ぐらいに並んできて、後で完全に抜き去ったなという感じです。

奥平:400万ダウンロードが。

小泉:CM効果で「フリマアプリってメルカリだよね」、みたいなトーンに社会がなってきたというところですかね。いろんな特集も、CMをやっている認知度で、コメントが変わったなというところがあるので、かなりここは当時、確かにGo Boldかなって思いましたけど、もう行くしかないなと。

それは、ミクシィをやっていたときも、結局、SNSって、当時20社くらいあったんですよ。ほとんどの会社が撤退していった。唯一、残ったのがグリーで、彼らはゲームにピボットしたから残れたというところを見ると、僕自身「ウィナーテークスオール」の怖さを知っているんですよね。

あの時の恐怖心はあるので、メルカリもチャレンジして勝ち切るしかないなと思ったので、踏んでいったというのがありますね。

朝バナナを配ったら、社員が早く来るんじゃないかと思ってた

奥平:話をうかがっていると、USは、またそれでいろいろとチャレンジングな環境があると理解しているんですけれども。国内はここから、一本調子である意味、成功しているように聞こえていますが、スタートアップに失敗はつきものですよね。小泉さんのメルカリのキャリアの中で手痛い失敗ってないんですか。

小泉:細かい失敗はたくさんしているんですけど、僕らの会社、つい最近も新しいプロダクト閉じますとか、意志決定を早めにするなどしています。大事にしているのは、手数が多い会社になりたいなと思っていて、ある意味、そこは潔癖になっちゃいけないなと。

新規事業なんて、なかなか成功しないんですよ。メルカリは超運がよくて、事業1発目で当たってますけど、ほとんど当たらないんですよね。

基本的に、10個新しいサービスがあったら、当たるのは1個か2個だと思ってます。仮に失敗したとしても、それを失敗したと捉えるのか、失敗を糧に成功確率があがったと捉えるかという話だと思っていて。

僕はどちらかというと、1個の失敗が、成功確率が上がったなって思えるタイプなので、あんまり、実は覚えてないというか比較的、いくつか失敗しているんですけれども、ぐんぐん進んでいっている感じですね。

奥平:人事制度かなにかが、朝バナナを配ったら、社員が早く来ると思って配ったって話を聞いたことがあるんですけど、これ、本当ですか?

小泉:そうそう、朝バナナを配ったり、おいしいフルーツを用意したら、社員が早く来るんじゃないかなーと思ってやったんですけど、ぜんぜん早く来なくて、結局、朝眠いんで来ないんですよ。

奥平:一応、ジャンルとしては福利厚生みたいな?

小泉:US事業もやり始めていたので、時差を考えると朝早く来てくれた社員がサンフランシスコにいる社員とも一緒にする時間が長くなるのでっていうので試したんですが、フルーツじゃぜんぜんダメで。(笑)

奥平:果物では釣れなかったと。

人事制度もA/Bテスト

小泉:でも、うまく行かなかったら、2、3週間でやめる。一般的に人事制度の導入って失敗を恐れすぎるなぁと思っていて、完璧になって初めてリリースみたいな。

僕は人事制度もABテストみたいにぐるぐる変えちゃえばいいと思っていまして、比較的、手数を多くする中で、本当に価値のあるものだけを残していきたいな、と思っているので、そこはまさしく、Go Boldで。多少無理でも、やってみなさいよというところは、けっこうありますね。

奥平:なるほど。小泉さん、前半のこれまでのでうかがってみたかったのは、そもそもコーポレート業を1人で見ておられたのを、だんだん規模が大きくなってくると手に負えなくなってくると思うんですけど、どんどん任せていくということ。

例えば、今日、このイベントの最初のセッションでもモデレータをやっていた長澤も、外資の証券会社にいたんですよね。そのご自身の仕事を任せていくにあたって、どういう優先順位付けをしているのか、うかがいたいんですけど。

小泉:1番得意なところから任せていきますね。

奥平:でも、普通なら、自分の得意なものは、持っていたいって思うじゃないですか。

小泉:でも、いざとなったら自分ができるんですよ。

奥平:なるほど。

小泉:なので、自分が一番得意なこと。私が最初にやったのが、CFOを探さなきゃって。

奥平:ご自身もミクシィのCFOでしょ。

小泉:そうそうそう。2014年10月に23億円くらいの資金調達をやるんですよね。バリエーションは300億円弱くらいです。250億から300億くらいで、ここくらいまでは、経営者、経営陣がやらないとVC側が許してくれないんですよ。

ただ、このくらい超えてくると、プロのCFOでなければしんどいし、グローバルなインベスターからお金を得る可能性があるとなると、この辺が「CFO探さなきゃな」って。

奥平:小泉さん、プロのCFOじゃなかったっていう話になるんですか?

小泉:僕は、どちらかというと何でも屋なんですよね。ただ、ファイナンスバックグラウンドがあるので、最低限は知ってる。知っているからこそ、なるべくそこは、早く渡していく必要性があるなと。というところでいうと、長澤を採用して任せていったという感じですかね。

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1 メルカリが“日本で勝ち切る”ための戦略は、テレビCM・資金調達・カスタマーサポート拠点開設の3点セット
2 メルカリ小泉文明氏が語る、会社のミッション達成に近づけない新規事業の撤退判断

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