フィンテックで新しいお金の循環を生み出す

大野紗和子氏(以下、大野):本日はよろしくお願いします。AnyPayの大野です。私たちAnyPayは設立が2016年の6月ということで、ちょうど2歳ぐらいになった会社です。社員数で言うと30人ぐらいでやっています。今日はここ六本木ヒルズですけど、オフィスは近所のミッドタウンに入っています。

私たちは一言でいうとフィンテックの会社なんですけども、普通の日本円みたいな法定通貨のビジネスから始まって、今はブロックチェーン・仮想通貨と多岐に渡るお金の事業をやっています。(スライドの)左上が最初の頃からやっているペイメント事業で、個人間のわりかんアプリの「paymo」、それから決済サービスの「paymo biz」です。

次に左下なんですけど、ICOのコンサルティングっていうのを、テックもビジネスも含めてワンストップでサポートしています。あとは投資事業だったり、仮想通貨、ブロックチェーン関連の新規事業というところもやっています。法定通貨から仮想通貨までいろいろやっているので、「関連性あるんですか」とか「どういうことをやっているんですか」ってよく言われるんですけど。

私たちの考え方としては、法定通貨も仮想通貨も関係なくて、お金とか価値の循環をスムーズにしていくことで、個人だったり、ビジネスに新しい可能性を生み出せると思っていて。それがフィンテックの力だとも思っているので、そういう意味では、「フィンテックで新しいお金の循環をつくっていくぞ」みたいなことをベースにすべてやっています。

ワンストップでサポートしているのが特色

(スライドを指して)こちらはわりかんアプリのpaymoで、テーブルクロス引きの動画とかを見ていただいて知っている方もいるかもしれないですね。20代から30代の方を中心に、割り勘時に使っていただいています。

こちらがpaymo bizで、スモールビジネスだったりビジネスのほうが簡単に決済を取り入れられるということで、B向けのインターフェイスとしてpaymo bizをやっております。

次にICOコンサルティング事業です。ICOってみなさんお聞きになっている方も多いかなと思いますけど、去年から盛り上がっている仮想通貨での資金調達手段のことで、IPOと同じような意味でICOと言われるんですけど。投資家の方からビットコインとかイーサリアムで投資を受けて、その代わりに今までの株のように、自分たちの会社のトークンを発行して、資金調達をおこなう仕組みになります。

私たちがやってきたICOのコンサルティングですが、コンサルティングっていうとすごくビジネスの色が強いように感じると思います。でも、私たちの場合はビジネス・マーケティングみたいなところだったり、各国のリーガルのエキスパートと一緒に、リーガルのことを検討するということをしています。あと技術開発の面で、「どういうトークンを実装するのか」みたいなところまで、ワンストップでサポートしているところが特色だと思います。

ICOって新しい領域なんですけど、全部一緒じゃないとあまり意味がないというか。ブロックチェーンでサービスをやっていきたい、そのために調達をしたい。じゃあトークンを発行するとしたら、トークンにはどんな機能があれば、それを持っている人はうれしいのか。それでマーケティングはどうしていくのかということを、一体で考えていくプロジェクトみたいなものです。

テックもビジネスも一緒になって行う

けっこう難しいんですけど、テックもビジネスも一緒になってやることにやりがいがあるなと思ってます。(スライドを指して)これが(ICOが可能になるまで)だいたい6ヶ月と書いてあって、もちろん内容によるんですけど。

ICO実施のプロセスで、スキームの決定、そしてトークンの部分、ホワイトペーパーとか、あとWebサイトに関する話とか、あと実際のトークンセールのサポートみたいなところまで、準備段階から一括でいろんなプロジェクトをサポートしてきました。

今まで累計で80億円以上の調達を実現、サポートしてきました。例えば、左上のは、100万人以上のユーザーを持っている有名なビットコインのウォレットなんですけど。そこが分散型の銀行みたいなファンクションを、ウォレットのようにつくっていきたいということで、ICOしたのをサポートしたりとか。

右上のところはシンガポールで、いろんな事業体が自分のトークンを発行できる、そしてそれを取引できるようなプラットフォームや取引所をやるということで、ICOしたプロジェクトがあったりとか。左下のところは、インドのカーシェアのプラットフォームだったりとか。

あと右下はタイのソーシャルトレーディングという、有名な投資家がトレードしているのと同じポートフォリオで自分もトレーディングができるというようなサービスを、ブロックチェーン上でやるというものだったりします。そういうかたちで日本の会社ではあるんですけど、国は関係なくいろんなプロジェクトをサポートしているという感じです。

ICOにおける2つのカテゴリ

1つの例として、先ほど左下にあったインドの企業なんですけども、Drivezyというカーシェアリングのプラットフォームで。一言でいうと「Airbnb」の車版みたいな感じで、車を持っている人と、車を持ってないけど使いたいという人を、P2Pでマッチングするというシェアリングエコノミーなんですね。インドってすごく人口が増えてて、20代の若い人が多いんですよね。

なんですけども、まだまだ固定給がある人というのは少なくて、車を買える人が少ないと。そういうときに、こういうP2Pの車のマッチングってすごく需要があって。ただ、今回彼らがICOで調達した背景というのは、当たり前ですけどお金持ちの数のほうが、(車を本当に)使いたい人の数よりも少ないので、需要に対して車の供給が足りないと。なので世界中からICOというかたちで資金を調達して、世界中の投資家みんながグループで、車に投資をしているようなかたちにしていて。

それをインドのユーザーが使って、その収益が投資をした人に分配されるみたいなかたちの設計でやりました。ICOって2つカテゴリがあって、1つ目がいわゆる「ユーティリティトークン」といわれる利用チケットとか、プラットフォームの通貨みたいなもので。2つ目が「セキュリティトークン」と呼ばれる、Drivezyのように収益を分配するかたちで配当がある、株券に近いものです。

ユーティリティトークンにも、セキュリティトークンにも良いところがあって、セキュリティトークンの場合は、配当を渡したりするので、もちろん各国のレギュレーションに合わせて実施をしなければいけないんですが、投資したものに対して、収益が毎月得られたりするので、投資商品としてもまた違ったおもしろみがあったりします。あと、こういうプラットフォーム上で運用されるアセットのオーナーに、みんなでなれるとかですね。

国内外を問わず、積極的な情報交換を進める

そういったかたちが実現できるので、こういうのもおもしろいなと思って我々は取り組んでいます。

残念ながらプレスリリースが間に合っていなくて、今日はまだ話せないんですけど、ICOコンサルティングだけじゃなくて、今まで培ってきたビジネスとテックのところを活かして、toCとtoB向けの自社プロダクトというのを目下開発中で、近々発表できるというところになります。

(スライドを指して)あと、これは仕事をしている様子なんですけど、エンジニアが非エンジニアに向けて、ブロックチェーンの技術勉強会みたいなことを、毎週やってたりとかしていて。ビジネスもテックもお互いに歩み寄って、一緒に良いものを作ろうというところが、すごくうちの会社の特色かなと思います。あとは毎月のように、だれかが国内・海外のブロックチェーンのイベントには参加していて。

そこでいろんなプロジェクトの情報交換をしたり、実際に提携の話があったりというところで、本当に国は関係なく仕事ができているなというのはあります。ありがとうございます。

司会者:大野さんありがとうございました。

(会場拍手)

GunosyとAnyPayの合弁会社「LayerX」

司会者:続きまして福島さんお願いします。

福島 良典氏(以下、福島):はい。僕は疲れるので座ったままで失礼します(笑)。「LayerX」についてお話しするのですが、あまり聞いたことがないと思うので、どういう会社かというところを(まずお話しさせていただきます)。

2018年7月12日にGunosy社の決算で設立するということを発表したんですけど、実は8月1日に登記したので、できて1週間ぐらいの会社です。なのでまだAnyPayさんみたいに、正直「こんな実績があります」とか言うことがないという感じです。

それでは「今後どういう事業をやっていくか」「そもそもなぜこの会社を作ったのか」というところから話せればなと思います。どういう会社かというと、GunosyとAnyPayの合弁会社になっています。先ほどAnyPayさんからお話しのあったICOコンサルとか、特に仮想通貨領域の資金調達のところですね。

(AnyPayさんは)もちろんテックもやっているんですけど、どちらかというとビジネスが強い会社で、Gunosyはよりコアな技術とか、ICO時のコードのチェック、トークンを実際に実装していくという部分ですね。

トークン設計がきちんとされていないものは衰退していく

この会社は「今の世の中に足りてないよね」といった部分を埋めていこうということから作られました。具体的に提供しているサービスは4つあるんですけど、実は大きく2つに分かれます。1つがトークン設計と実装のところと、もう1つがコード監査のところですね。トークン設計のところは粒度が分かれまして、短い期間でいくとトークンのフィージビリティです。

大企業さんとかが「今後ブロックチェーンを活用したいな」と考えているときに、そもそも日本語で読めるあまり正しい情報がなかったりとか、最先端の事例が落ちていなかったりするので、そういった部分を一緒にフィジビリしましょうとか。あとは実証研究ってあるんですけど、PoC的な、まだまだブロックチェーンには技術的な課題とか、スケーラビリティの問題とかがあって。

いきなりユーザーが触れる部分とかっていうのは、まだ作れないよねというところと、作れるところがあって。なので実際に動くものを作ってみて、どうやって動くんだろうみたいな。あと最後は、大野さんのほうからもあったんですけど、ブロックチェーンを活かしていく。例えば「世界中からグローバルオファリングできます」というのは、すごくブロックチェーンが変えていくような未来なんですけど。

一方で、そこのトークン設計がきちんとされていないものというのは、なかなか今お金が集まりづらかったり、「投機性が強いよね」と見られるようになっていて。基本的に僕としては、そういうものは衰退していくと考えています。きちんとトークン設計がなされていて、ユーザーにも投資家にもメリットがあるようなものが残っていくという意味で、トークン設計というところが、今後はすごく重要になってくるだろうなと。そういうことを仕込んでいるビジネスになります。

ブロックチェーンとWebに起こるパラダイムシフト

もう1つは、コード監査ないしはセキュリティオーディットとか、コードオーディットと呼ばれているものです。聞き慣れないかもしれないんですけど、ブロックチェーンというのはやっぱりWebとはパラダイムが違いまして。ブロックチェーンというのは、資産を預かるものとすごく相性がいいんですね。

「ユーザーの資産を多額に預かります」っていうところと、1度デプロイするともちろんコードをアップデータブルにすることは可能なんですけど、基本的にはコードをアップデートできないところがあります。

最初の設計がずっと残ってしまうので、重大なバグとか想定していなかった攻撃手法みたいなものが、リリースした後に発生してお金を盗まれてしまうといった事件がけっこう起きているんですね。そういったものを防いでいくような仕事となっています。

インセンティブの歪みを正す「ファクトチェーンプロジェクト」

では実際に、LayerXでどういったプロジェクトがあるのかということをお話します。何個か今仕込んでいるプロジェクトがあるんですけど、まだお話しできるプロジェクトは1個しかなくて、「ファクトチェーンプロジェクト」というものをやっています。

これはGunosyがもともとニュースメディアの会社なこともありまして。今FacebookとかGoogleとかで問題になっているものに、フェイクニュースというものがあります。フェイクニュースの根本的な問題ってなにかというと、僕はインセンティブ構造にあるなと考えています。

メディア側から言うと、嘘をついたり、多少刺激的な情報を流してでもPVが稼げて、それによって収益が増えるならいいよねってなる。そういうメディアさんって、まともなメディアじゃないですよね。

きちんと正しい事実とか、良い情報をもとに記事を書いて収益を稼いでいこうというメディアさんもいます。一方で、いわゆるアグリゲーションプラットフォームとか、アルゴリズムが介在するようなメディアというのは、こういった2つの記事のどちらを優先するかというと、やっぱりユーザーが喜ぶものを優先しようと。真実というよりは、ユーザーが喜ぶものを優先しようというふうになっているプラットフォームが多いんですね。

そういうインセンティブの歪みを、トークンとかを上手く使ってなにかできないかというところが、このファクトチェーンというプロジェクトになります。今ってフェイクニュースを発見しても、なんのリワードもないですよね。そこに経済的なインセンティブを持たせられるといいのではないだろかという発想で、動いているようなプロジェクトになります。

ブロックチェーンを攻撃するメリット

これはLayerX社だけでやっているというよりは、「Hi-Ether」という日本でけっこう大きなイーサリアムのコミュニティがあるんですけど、その非営利団体というか団体が旗を振っていて、僕らは理念に共感して、技術サポートだったり開発というところで協力をしているようなプロジェクトになっています。

次はコードオーディットについてですね。こちらはまだ外に出せる事例がないんですけど、なぜコード監査というのが大事なのかというところなんですけど。みなさんの中にThe Dao事件とかparityウォレット、最近ですとBancorという言葉を聞いたことがある方ってどれぐらいいますか? 

(会場挙手)

さすがにかなりリテラシーが高いですね(笑)。普通のビジネスミーティングとかブロックチェーンにあまり詳しくない方に聞くと、恐らくほぼ手が挙がらない状態なんですけど、みなさんはもう良く知っていらっしゃると思うので、釈迦に説法みたいになってしまうんですが。

ブロックチェーンというのはお金だけじゃなく、資産性があるもの、価値交換ができるものと非常に相性が良いネットワークだなと思っています。ですので、ブロックチェーン上で大きくなっていくアプリケーションとか、プロトコルというのは、恐らく人の資産とかサービスの資産に関わってくるものだろうと。

そうなっていく中で、やっぱり攻撃するメリットっていうのが、すごく出てきてしまうんですよね。The Dao事件ってすごく有名で、これによってイーサリアムが2つに分かれてしまうぐらいの、コミュニティを揺るがす大事件だったんですけど。基本的にはブロックチェーンの性質上、テストネットとかプライベートネットとかでどれだけ攻撃にさらしてみても、本当にお金が掛かったときの人間の悪意というのにはなかなか気づけないんですね。

多くの会社にとって、ICOは一度しか経験しないこと

例えばみなさんもWebアプリケーションを作ると思うんですけど、「え、こんなこと起こるの?」みたいな、実際にリリースした後にしかわからないようなことがあると思います。そういったものがブロックチェーンのプロトコルとかだと、なかなか許されないというところがあると。

とはいえ、安全な書き方とか、「こういう攻撃パターンってあるよね」「この攻撃パターンに対してこうすると、かなりの確率で安全にできるよね」みたいな実装手法というのは、スマートコントラクトをいっぱい書いている会社とか、ノウハウが貯まる会社にすごく集積されていくんですよね。一方で、例えば「ICOしたいです」ってなったときに、何回もICOする人ってたぶんあまりいないんですよね。いるかもしれないですけど(笑)。

となると、多くの会社にとって(ICOは)1回しかやらないんですよね。いろんなプロジェクトがあって2〜3回ぐらいやるかもしれないですけど、とはいえ数回しかやらないので、1社にノウハウが貯まるというよりは、コード監査をするような会社にいろんな攻撃パターンが貯まっていくと。僕らは「世の中のスマートコントラクト化率」とか勝手に言っているんですけど、EC化率という言葉を聞いたことがありますよね。

世の中のトランザクションが、ECに何パーセント置き換えられていますみたいな。僕らは今後ブロックチェーンが社会実装されてくると、例えば世の中の契約とか、トランザクションだとかが、スマートコントラクトに載ってくるだろうと(考えています)。そのスマートコンストラクタ率がどんどん増えていくと、このコードオーディットというところが、世の中の信頼とか信用を作る上で、すごく大事な事業になってくるんじゃないかと考えています。

短期的な需要でいくと正直そこまでないですけど、中長期を見据えて仕込んでいるような事業になっております。

ハッシュレートの70パーセントを握る中国

あと、ちょっとマイナーなところで、(スライドを指して)ここに「ガスコスト」ってあるんですけど、ガスコストとかガスって聞いたことがある人ってどれぐらいいますか?

(会場挙手)

福島:たぶん異様なコミュニティなので、あまり説明する必要はないかもしれないでけど(笑)。イーサリアムというのは、スマートコントラクトを動かすのに、つまり「Gas(ガス)」として、自分の持っている通貨(イーサ)を使わなきゃいけないんですね。これもまた独特な癖がありまして、Webアプリケーションみたいにノリで書いていると、必要以上にガスコストが高くなる構造になってしまったりします。

特にイーサリアムの場合は、イーサリアム上に入っているようなストレージからデータを取ってくるだけなら、ほとんどコストは掛からないんですけど、データを書き換える場合はすごくコストが掛かって。そういったことを知らずに、サァーっとコードを書いちゃうとけっこうなガスコストになったりとか、そもそも「これをユーザーに負担させるの?」みたいなかたちになるんですよね。

そういった部分の最適化とか、実際に癖のある部分をチェックしていくみたいな事業になります。

マイニングもやってます。マイニングは前段の2つの事業とは大きく異なってくるんですけど、ブロックチェーンの根本的な意味でのセキュリティを担保しているんですね。現在マイニングの世界的な状況でいくと、中国がほとんどのハッシュレートを握っていて、70パーセント以上は中国が握っていると言われています。

実際に中国製のマイニングプールのところが、70パーセントを握っています。ターム単位で見るとどれぐらい握っているかわからないですけど、それぐらいだと言われています。マイニングマシーンに関して言うと、中国のマイニングマシーンにほぼ100パーセントなっています。これっていうのはブロックチェーンの分散性とか、1つの生体、1つの主体によって、コントロールされることがないという、ブロックチェーンのセキュリティの根本的なところに関わってきますと。

エンジニアしか入れないブロックチェーンコミュニティ

そこで例えば「日本のお金でマイニングするとどうだろう」みたいな発想をする方って多いんですけど、これもまた日本はハードルが高くて。(日本は)電気代がめちゃくちゃ高いんですよ。あと、レイバーコストが高いんですよね。ちょっとお金を出して素人がマイニングをやろうと思っても、なかなかできないような状況になっています。

僕らは海外にコネクションを持ってたりとか、実際に自社で運用したりもしていて、運用ノウハウも貯まっているので、海外に実際にホスティングして、安い電気代かつ安定した運用を行なっていて、「お金を上手く外部から集めてこれないか」みたいなところを逆に考えています。

そして最後に、ブロックチェーンエンジニアコミュニティの運営についてです。我々は「blockchain.tokyo」というイベントもやっていまして、あとの対談でも出てくるかもしれないですけど、日本では投機性ばかりが注目されていて、ブロックチェーンの技術的な可能性とか、世の中をどうやって変えていくのか、とくにプロトコルレイヤーについての議論がすごく少ないなと思っています。

ということで、Gunosy社とブロックチェーンに興味を持っていて実際に事業をしているような複数の会社さんと共同で、この「blockchain.tokyo」というコミュニティをやっています。

「ビジネスマンは入れません」というのを売りにしていて、エンジニアだけしか参加できないんですね。参加するときも、GitHubのアカウントを登録してもらって、「ちゃんとコード書いてるね」とか、「ブロックチェーンに対してちゃんと注目してます」っていう人しか参加できないようなかたちになっていて。

そこで話される内容も「どのコインが上がる」とか、そんな話は一切されていなくて。「基本的にこういうプロトコルがおもしろい」「こういうスケーリングのコードで最善の5つのものが出てくる」という話で。最近だとゼロ知識証明みたいな話とか、イーサリアムの実装のパターンだとか、いろんな話がなされています。なので非常に技術的に濃いイベントになっていて、毎月100人規模で開催されている国内最大級のコミュニティになっています。

エンジニアが学べる場づくりに力を入れていく

僕らはブロックチェーンの事業も当然やっていくんですけど、そもそもエンジニアを育成していきたいと考えています。エンジニアを育成というのは、ちょっと上から目線なんですけど。もっと簡単に学べる場を作っていって、「こっちの世界だよ」って……。こっちの世界ってなんだよっていう話ですけど(笑)。こっちの世界にフルタイムでコミットしてくれる人が増えると、よりおもしろくなるなということで。

そういった教育というか場づくりも、非常に力を入れてやっています。今エンジニアをどう育成していくかということで、社内ではリサーチと、あとコードオーディットのところで、実際のコードに触れていくということをやった後に、トークン設計と開発事業に取り組む。この3つをやると、立派なブロックチェーンエンジニアになれるんですよね。

海外だとConsensysとかZeppelinみたいな会社は、こういうフローでエンジニアを育成して、(エンジニアが)自分のプロジェクトを立ち上げていくとかやっているんですけど、僕らもそういうことをしたいなと。最初の事業としては、トークン設計とか、コードオーディットとなっていて、いわゆるtoBみたいな事業です。

将来的にブロックチェーンというのは、プロトコルの世界をどうとっていくかとか、自分たちのルールを上手く作って、それで社会を良くしていくみたいなことが、1番おもしろいところかなと思っていて。中長期でいえば、DEXとか自社チェーンの開発なども含めた自社プロダクトを展開していく予定になっております。以上となります。

司会者:福島さんありがとうございました。

(会場拍手)

プロトコルレイヤーの知識をインプットするメリット

司会者:続きまして、パネルディスカッションのほうに移りたいと思います。ここまででご質問がある方はいらっしゃいますか?

質問者A:ありがとうございました、すごく勉強になりました。福島さんにひとつ質問がありまして、今プロトコルレイヤーに関する技術的な理解を深めることの重要性を説いていたと思うんですけど、僕はまだ技術に関してはそんなに詳しくなくて。実際にプロトコルレイヤーの知識をインプットすることのメリットというのは何があるのかなと。基本的にプロトコルレイヤーとかって、頭の良い人たちが作ってくれているじゃないですか。

実際に使われるチェーンというのは、例えばイーサリアムとか、これからはEOSとかに絞られていって、そこのプロトコルというのは、今で言うインターネットみたいな感じで、あまり動かないものになるのかなと思っていて。そういった場合、実際のアプリケーションレイヤーの開発知識を身に着けたほうが効率的じゃないかと思ったりもするんですけど、そこで敢えてプロトコルレイヤーに関する知識をインプットする必要性っていうのはどこにあるのでしょうか?

福島:はい、まず論点としては2つぐらいありまして、今話していただいたスマートコントラクトのプロトコルレイヤーを、イーサリアムとかEOSとかZilliqaとかいろいろ出てきているんですけど、どこが取っていくのかみたいなところ。あと、ブロックチェーンのおもしろいところはプロトコルが何層にも重なることで。例えば1番下の層って、あまりプロトコルって言われないですけど、たぶんPOWとかPOSとかのコンセンサスアルゴリズムというのは1つのプロトコルですねと。

その上に乗っかって、例えばどういうかたちでスケーリングしていくかとか、どういうかたちのガバナンス機構を持つかみたい部分で、イーサリアムとか、EOSとかZilliqaみたいなものが出てきていて、恐らくその上にどんどん新しいプロトコルが出てきていると思います。

最近おもしろいなと思っているのだと、例えば0Xみたいな分散取引所のプロトコルとかもあって。それ自体はイーサリアムの上で動いているんですけど。まず、「分散取引所のプロトコルってなんだ」みたいな話になるんですが、0Xがやっていることは、オーダーブックをオフチェーンで管理して、オンチェーンでセトルメント、つまり最終的な決済だけをしますみたいなものです。「そのアプリケーションは0Xの周りで作ってね」とか、そういう作り方が、ブロックチェーンではメインになってくるのかなと。

プロトコルへの理解がないと、ビジネスとして勝てない

福島:なぜアプリケーションが、Webの世界で、ビジネスとしてすごく儲かったのかというと、データとかネットワークエフェクトというものを、アプリケーションが独占するという構図になっていたからで。一方でブロックチェーンは、どちらかというと、そこを分散的に管理しようとする。

データとかネットワークエフェクトというのは、あくまでプロトコルレイヤーにあって、例えば0Xが持っているオーダーブックや流動性というのは、アプリケーション類では、誰でも触れるんですよ。でもメルカリとかフリルが持っている商品データベースって、誰でもは触れないじゃないですか。

データを独占することや、ネットワークエフェクトを独占することが、アプリケーションレイヤーでの勝ち方であったのに対し、ブロックチェーンレイヤーで儲かっていくものっていうと、そのプロトコル自体にデータとかネットワークエフェクトを貯めていって、経済圏を作っていくこと。アプリケーションレイヤーはアプリケーションレイヤーだし、コミュニティの参加者はコミュニティの参加者だし、投資家は投資家だし。

それに上手くインセンティブを付けて、1つのトークンとか複数のトークンを回して、中央集権的にやるよりも、分散型のほうが速く改善できるよねというものしか(中央集権型に)勝たないと思うんですよ。そういうものをトークンエコノミーと呼んでいて、もちろんアプリケーションも大事なんですけど、僕らはプロトコルが中心にあると思っています。

ブロックチェーンのレイヤー、とくにプロトコルへの理解がないと、ビジネスとして勝っていくことが難しいし、技術的な意味でも進化がどんどんプロトコルレイヤーで起こるだろうなというところで、そこを重視しているような立場になってます。

ブロックチェーンエンジニアを育てるのに一番良いプロセス

質問者B:福島さんに2つ質問がありまして、1つはエンジニアをブロックチェーン時代に育成するという話があったと思うんですけど、それに関して、発表系が多いかなと思っているんですが。AWSを始めに浸透させた時とかって、けっこうハンズオンでやったりしてることがあったと思うんですが、まず今後(ハンズオンでやっていく)予定がありますかというのが1点。

あとは、エンジニアを育てる上でけっこう実務をされるということを話されていましたが、それって内部のエンジニアだけでやるつもりなのか、外部の会社も下請とかで使っていくつもりなのかということも伺いたいです。

福島:むちゃくちゃ具体的な質問ですけど(笑)。1つ目の質問にお答えすると、ハンズオンでやっていくかに関しては、さっき出したプロセスでいくと、かなり社内のプロセスというのを意識しています。そもそもブロックチェーンという概念が生まれたのは、ビットコインが生まれてからで。

例えば、大学での教育で、学問体系として、機械学習のエンジニアならこの学科にいるとか、暗号学のエンジニアならここにいるとか、経済学の研究者だったらここにいるとか、コンピューターサイエンスならここにいるというのがあるんですけど。

ブロックチェーンエンジニアってどれもかじっていて、かつその専門領域がちょっと違うみたいなところで、教育によってつくられているブロックチェーンエンジニアっていないと思うんですよ。

彼らがどうやって成長してきたかというと、実際のプロジェクトに触れて、コードを書いて、世の中に対して実験することによって成長してきたと。「じゃあ、そのプロセスってどうすれば最短で学べるんだろう」というのを実践している会社が、海外には何社かあるなと思っていて。それを見ながらこういうプロセスだと、良いブロックチェーンエンジニア自体が増えてくるんじゃないかとか。

そういうリサーチ、つまりブロックチェーンの理解から入って、オーディットをすることによって、一通りのコードに触れて、最後は自分たちでプロトコルを作っていくみたいなプロセスが、ブロックチェーンエンジニアを育てる一番良いプロセスなんじゃないかなと僕らLayerXは思っています。

LayerXなら、お金を稼ぎながら勉強もできる

2つ目は、それが社内なのか社外なのかという質問なんですけど、まず基本的には社内を想定しています。

ただ、どうやってコミュニティを活かしていくかとか、オーディットのところでも、「バグバウンティみたいな仕組みを入れていきたいよね」ということもあるので、部分部分では当然社外の人も入れていこうかなと思っているんですけど。基本的には「LayerXに入ると良いブロックチェーンエンジニアになれるよ」ということを売りにしたいなと思っています。

なのでブロックチェーンにフルタイムでコミットしたいという人はLayerXに入ると、お金を稼ぎながら勉強もできるということで、すごく僕らの推したいところです。企業とかで、ちょっと研究していいよと言われても、実際は普段の業務があったりとかして。

じゃあフルタイムでやるにはどうすればいいかというと、お金が稼げる中で、1番クリティカルな技術的知識が学べるところってどこだろうという視点で、授業を選んだりとかブロックチェーンエンジニア育成の仕組みを考えるということです。

質問者B:ありがとうございます。

司会者:ありがとうございます、それではパネルディスカッションに移りたいと思います。