ブランディングは「期待値」にギャップをつくらないこと

澤円氏(以下、澤):もう1つ言語化しなきゃいけないのは、オーディエンスです。みなさんがプレゼンテーションする、コミュニケーションする相手はどういう人なのかということを、自分の頭の中でできるだけ具体的に作っていくんですね。

今回であれば比較的シンプルというか、僕がこうやってプレゼンテーションに関するトーク術をご紹介しますよということになっているので、みなさんの期待値がある程度わかるわけです。

ものすごく抽象的な話だと、ある人はこの人からプレゼンを習いに来てるかもしれない。ある人は料理を習いに来てるかもしれないとかなっちゃうと、これはもう期待がぐちゃぐちゃになっちゃうわけですね。

今回はオーディエンスの期待値はだいたいここらへんになるだろうなというイメージがあったうえで話をしているので、これはマッチングが重なった状態ですよね。

実際のところビジネスなんかをやっていると、こっちは営業しに行っているんだけれども、向こうはテクニカルのサポートを受けられるんだと思ってたりして、期待値にギャップがあります。これはだいたい揉めるんですよ。そういったことが起きるんですね。

そうならないように事前に期待値を揃えておくことが、実は成功するために非常に大事なポイントになるし、それを自動化することを「ブランディング」と言います。

ブランディングがきちんとされていると、最初から期待値が揃うんです。なんとなくわかりますよね。ブランディングがちゃんとできていると、その人がどういう話をするのかがわかるわけですね。

例えば乃木坂46にしましょうか。乃木坂46の人たちは歌を歌う、ライブをやる、CDを出す、単体でいろんなラジオ番組を持つ。それがみなさんの期待値になりますよね。

別にあの人たちにサーカスで曲芸をやれという期待値にならないじゃないですか。やったらおもしろいかもしれないですけれども、そういう期待値はないじゃないですか。

最初からブランディングができているわけです。あの人たちは女性で(メンバーが)たくさんいて、歌や踊りを提供する人たちだというブランディングがされているから、ああなるわけですね。そうすると演じる場所は決まってくるし、期待値も揃ってくる。それがブランディングです。

自分固有の経験をはっきりと言語化する

:とにかくこれを言語化するということです。言葉に落とすんです。書きとめられる状態にすることです。残念ながら脳の中だけだとダメです。「なんとなくわかる」は1番危険な状態です。紙に書けることです。もちろんタイプするでもいいんですけれども、書くということができなければ人には伝えられません。

一発でそれができる1つのゲームがあるんですけれども、どういうことかと言うと、いわゆる記憶スケッチというものです。今手元に紙があるんだったら描いてみてください。ドラえもんの絵、すぐ描けます? よかったら今、10秒くらいで描いてみてください。途中まで。

ときどき、それを子どもに見せたら絶対泣くぞというのを描く人がいますからね(笑)。なんの生き物なのっていう。そもそもあれはロボットなのか。生き物じゃないですけどね。

(ワーク中)

(描いているところを見ながら)いいね~。いい! いいやつだ。今、新しい生物が発見されましたね。

お、うまい。

お、うまい、うまい。

(ワーク終了)

ありがとうございます。(ドラえもんが)描けた人は、もしかしたら絵描き歌が頭に浮かんだりするわけですね。絵描き歌は、描き方の究極の言語化です。そうするとなぞった状態で描くことができますので、それが言語化というものです。

絵描き歌そのものも書き出すことができますよね。そうすると他人に説明ができるんですよ。そうできるかということです。なんとなくわかっている状態が1番危険だということを覚えておいてください。

そしてもう1つ、プレゼンテーションやコミュニケーションをするうえで、一般論というのは人を動かしません。誰でも思いつくから。

なので、一般論ではない自分の体験に根差したなにかを伝えることはかなり大事なポイントだと思っています。一般論ではありません。人は自分ごとでしか動きませんから、自分が関係するもの以外では、人は動かないと思ってください。

オーディエンスの未来のハッピーな姿を具体的に言語化する

:そして核の話の続きですけれども。聞いている人たちが何を持って帰るのかも、同時に言語化です。何を持って帰ってもらったら成功なのか。さっきの流れからいきます。ビジョンというのは何でしたかね? オーディエンスの未来のハッピーな姿ですよね。具体的にどのようにハッピーになるのかを言語化していく。

プレゼンの核は、オーディエンスの人たちが持って帰って配れる状態にパッケージされたものだと思ってください。その言葉です。要するに、繰り返し繰り返し人に言える状態になっているものになります。これがさっきの再現性ってやつですね。

オーディエンスが持って帰って配れるものをいかにして提供できるか。これがプレゼンテーションの良い悪いをはっきりと決めます。ぼんやりとしてちゃダメなんです。具体的でなきゃダメなんですね。それをみんなに知ってもらうために、繰り返し繰り返し言うんです。

さっきからしつこく言ってますね。ハッピーというキーワード。かなりしつこく言ってますよね。そうすると、ハッピーというキーワードを頭に入れておいてビジョンというキーワードをつなぎ合わせると、「あ、そうだ。プレゼンテーション、コミュニケーションは人をハッピーにさせるものなんだ」。それを言葉に落とす。人に伝えられる状態にすることが基本になってくるわけですね。

最後はちょっとパパッといきますけれども。例えばこういう過去の偉人さんたち、アウグストゥス、チンギス・ハン、ナポレオンといった人たちがたくさんいます。下にちょっと説明がありますけど。

当時何千万人とか、場合によっては何十万人とか数万人の軍勢を率いたりして、たくさんの人たちを取りまとめていたわけですよ。どうやったらそれができるんだ、と思うわけですね。その当時はメディアもないわけです。インターネットもなければテレビもラジオもないわけです。どうやったんだろうか?

僕は絶対これだと思うんですね。伝言ゲーム。見えます? 伝言ゲームがうまくいった。やったことのある人はわかると思うんですけど、頭と尻尾でぜんぜんトンチンカンな言葉になるのを楽しむのが伝言ゲームです。でも、これは真逆です。

正しく伝わるだけではなく、行動したくなるかどうか

:伝言ゲームがてっぺんと尻尾でまったく同じ状態になるか、効果がグーっと上がっていく状態になるかのどちらか。これがプレゼンテーションの肝の部分になります。

伝言していって内容が変わらず正しく伝わる、だけじゃなくてみんなが行動したくなる。これをやると、さっきみたいに国が変わるわけですね。大きくいろんな行動が変わる。

例えばこの人なんかも、わかりますかね。織田信長という人ですけれども。やっぱり、おっかないだけじゃないわけですよ。おっかなくて、「お前ら合戦場でうまくやらないとぶっ殺すぞ!」と言ったって全員は動かないわけですね。

たぶんいろんな夢を語ったり、「我々が国を治めることによってこんなハッピーな世界があるぜ。だから手伝わねぇか?」ということを彼は家臣に言ったわけですね。

「俺は天下統一しようと思ってるんだけど、お前はどう思う?」「いいっすね、信長さん!」とかっていうのが、こんな感じじゃないと思いますけど、ずーっと伝言ゲームをしていって、最終的には合戦の1番最前列にいる人たちも「信長さんについていったら俺ら絶対にハッピーになるんだぜ。がんばって生きて帰ろうぜ」ってなるから実際に合戦に勝つわけですよね。

そういった伝言をちゃんと間の人たちがしてくれるように、本人がビジョンを明確に持って言葉に落としてわかりやすくして伝えていく。これを繰り返すことによって最終的にはうまく収まる。収まると言うとちょっと変ですけれども、効果を上げることになるんじゃないかなと思います。これがビジョンと核の部分になります。

伝言ゲームの本質は未来を見せること、未来のない感情論は失敗する

:このあとは実際に僕の動画を見ながら解説をするコーナーがありますので、その話にいきますけども。ここまででなにかご質問のある方いますでしょうか? もしいましたら先に答えておきますけれども。

(会場挙手)

はい、どうぞ!

質問者1:先ほどのお話で、伝言ゲームが世界を制するという話の具体的な事例、ファクトみたいなものってありますか?

:ファクトという意味で言うと、さっきのものが全部ファクトです。なんでかと言うと、歴史上の書物ってあるじゃないですか。この人たちはどういう言葉を発して、というものが口伝で全部伝わってますよね。それが書物になってるんですね。

質問者1:あ、書物になってるんですか?

:たいがいなってます。そうじゃないと、そういう話って残ってないじゃないですか。

質問者1:そうなんですけど。じゃあそれは書物を見ればその話が載っているということですか?

:そうです、そうです。ほとんどの場合、本当かどうかぶっちゃけわからないです。とくに『三国志』なんて、絶対もりもりに盛ってますから(笑)。ですけど、コアの部分はそんなに変わりはないと思うんですね。そうでないと、つじつまが合わなくなることもありますので。

それを見ていただくと、「こういうことを言うと人は動くんだな」とか「こういうことが結局人が動いた原因なんだな」とわかると思います。

質問者1:僕がこの質問をさせていただいた理由は、どういう伝言が伝わりやすいのかなというのが気になったので。

:あ、いいですね~。

質問者1:具体的にどういう言葉を言ったんですか? という質問をしたかったんですけど。それは、書物を見れば、きっと共通に見られるこういうことだというのがわかるかもしれないですね。

:ほとんどの場合、未来の話をしているんですよ。「我々が国を統一することによってこういういいことがある」というものはだいたい成功するパターン。

『失敗の本質』という本を知ってる人います? 第二次大戦でなんで日本軍が負けたのかをいろんな作戦ごとに解説した本なんですけど。内容もめちゃくちゃ重たいですけど、その中に失敗の本質がある。それが失敗パターンなんですよ。

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

どういうパターンが見られるかと言うと、ほとんどが感情だけに訴える話をしたパターンなんですね。例えば「あいつはよくがんばってるから、このまま作戦を続行すべきだ」という根拠のないことを言い出すと、だいたいその先には失敗が待ってるんですね。

具体的にこうこうこうで未来がこうなるからこれをやろうじゃなくて、現状のこの人ががんばっているからどうにかしようという、未来もなにもないような感情論で指令が出るとだいたい全滅するんですね。

未来はここにあるんだと。そこから逆算していくということですね。ありがとうございました。