2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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(スライドで絵を見せながら)これ、なんの絵に見えますか? なにが見えたか、お隣同士で話してみてください。知ってる方いるかな。
では、おばあさんの顔が見えた人?
(会場挙手)
若い綺麗な女性が、後ろを向いてるのが見えた人?
(会場挙手)
こっち(若い女性)のほうが多いですね。鷲鼻のおばあさんの、口元と鼻、目が見えましたか? それから後ろ向いてる女性、見えましたか? さっき「思い込み」と言いましたけど、おばあさんを1回見ると、なんかおばあさんに見えちゃうんですね、これが(笑)。おばあさんがインパクトあっちゃったりして、若い女性を見るほうが大変、みたいな。
もう1つあります。
こちら、英語の文字が見えてきた人。
(会場挙手)
じゃあ何が見えたか、せーのでおっしゃってください。せーの。
会場:「LIFE」。
稲増:「LIFE」です。見えましたか? ぼーっとしてる人もいますね(笑)。
(会場笑)
青色に目をやってください。L、I、F、E。青字を見たらこれ、「LIFE」ですよね。でも灰色のほうに目がいっちゃうと、「LIFE」は読めません。人間関係もそうです。思いこみ。すべてのことが今大きく変わろうとしてるとき、いつも逆張りで考えてみるとか。そういう意識を持ってみていただきたい。
「ゆとり世代」って、さっきのZ世代よりもうちょい上かもしれませんが、2017年の調査ではこんなことを言っています。「楽しく働きたい」が3割。
「ふざけるな」と言わないでください。まじめに働いて、一生懸命やって、楽しく働けるんだったら、ぜんぜんそのほうがいいじゃないですか。別にただただおちゃらけて働きたいと言ってるわけじゃないんです。
「まじめにもやります、一生懸命にもやります、ちゃんとやります、仕事も大好きです。でも楽しくやりたいよね」は、別に悪いことじゃないですよね。
それから、「人のためになる仕事をしたい」「社会に貢献したい」という数字は、上の年代の人と比べると圧倒的に多いです。実はそういう意識を持ってるということなんですよね。
みなさんは「今の若手は仕事が受け身だ」「プロジェクトを自分の仕事と思っていない」「なにかというとパワハラと受け止める」なんて思ってるかもしれません。私は学生さんに大学でも教えてますから、それについてお話しをさせていただくと、今の若い方々はタテ社会の経験がないんです。
体育会系だったらありますよ。3年生は神様、1年生は奴隷と知ってます。だからみなさんがもしタテ社会のマネジメントをやりたいと思ったら、体育会系しか採っちゃいけません。それ以外は、経験ないんだから。お父さんやお母さんのことだって下の名前で呼んじゃう感じですよ。「ユウコと同じ服着てさー」とか「うちのタケシがサッカーでやったんだけどさー」と。「誰?」って言ったら「うちのお父さんのこと」とか(笑)。
みんながお友だちということです。私たちも中学高校の先生にも研修をやってますが、アクティブラーニングといって生徒さんたちに「君はどう思うんだ」「プロジェクトをやっていろいろと見つけてきて、社会的課題をどんどん解決してみよう」「いいねー!」なんて、そういう教育の仕方にどんどん変わっていってます。
怖いですよね。ヨコ社会ばっかりなんです。ヨコ社会ばっかりで、社会人になって初めてタテ社会に直面するんですよ。もう自分のキャラをどうやって立てたらいいのか、ぜんぜんわかんない。いったいどうやったら受け止められるのかぜんぜんわかんないから、もうシャットアウトしたり。
ひと言でも上から目線なことを言われたら、「うわー」みたいな。「なんだここ」ってシャットアウト。そうして適応障害になっちゃう人もけっこう多いですよ。それか、残ってる人も「もういいや、ここってそういうところなんだからそれでいいじゃん。閉じ込もっとこ」みたいになる。「起業家になるためにがんばって勉強しよう!」とか、「もう言われたことしかやりませーん」とかですね。
みなさん、間違っても絶対にこういったことをやらないようにしてください。これから新入社員の方が入ってきますよね。「新しい目でいろんなこと見えるよね! うちの職場のこととかやり方とか、僕たちに反対にアドバイスないかな?」なんて、絶対聞かないであげてください。というか、聞いた以上は覚悟をもって聞いてくださいね(笑)。
「おかしいと思ったんですよ。この会議のやり方とか! だいたい司会者が下手くそで、なんであんなファシリテーションも学んでないような人たちが」なんて。「僕ら大学でやりましたけど、あんな司会者有り得ないですよ!」とか(笑)。「なんですかこの会議の進め方、ぜんぜん結論は出てないし」とか。
そりゃまあ「多少言い方を変えなさい」という練習はしなきゃいけないですが、言いたいことを業務のことからなにからバンバン言っちゃったとしましょう。それを「なるほどなー、良い点突くなぁ」とみんなが受け入れられるんだったらいいですよ。
そこで「いや、なに言ってんだお前、これまで25年間のやり方を知らないのか」と受け入れられないんだったら、絶対に聞かないほうがいいです。一旦は受け入れる度量がなかったら、そんなこと聞かないほうがいいです。
言ってくれと言われたから言ったのに、いきなり上から目線で「お前は何も分かってない! なに生意気言ってんだ!」なんて言われたら。「僕はこれからもう、なにも言いません。なにもやりません」「何やったらいいのか全部言ってください」「なんか言ったら、なにかまた言ってくるんでしょう?」、「どうぞ言ってください、ステップバイステップで。完璧にやりますよ。OK」みたいな(笑)。そうやって壁ができてしまうんですよね。
こうして適応障害とかになってしまうということです。それに若い方々がかわいそうなのは、昔だったら私は周りを見れば先輩が怒られてるとか、先輩が営業していろいろと喋ってるお客さんとのやり取りを生で聞いて、「ああ言うのか」とか、「ああしたらいいんだな」とか、いろんなことを1次情報で学んでました。その中で私は、私の仕事の仕方の型を学んだんです。
でも今、そういうやり取りは全部メールの中です。どんな提案書を出してるのか、どんなやり取りがお客さんとあったとかが、ぜんぜんわかんない。そんな中で「俺の背中を見てついてこい」とか言われたって、今の若い人たちは本当に背中をじーっと見ちゃいますからね。もう、まず言葉がわかんない(笑)。
それくらい、いろんなギャップがあるわけです。ぜひ、これを見える化できてないんだということもわかってあげてください。学習機会がないんです。
そして、「異様に細分化されたシステム」です。ミドルが口を酸っぱくして、「これは何のためにやってるのか」「うちの会社のミッションのためにどうつながってるのか」と、どんなに現実と離れてるとしても、それをしっかりと言わない限りは、自分がやってるのは本当に歯車のようなもので、何のためにこれをやってるのかぜんぜんわかんない。
「何のために俺はこの会社に入ったんだろう。ミッションが素晴らしいと思って入ったのに、入ったら『ともかく目標達成だ! 売れ売れ! 走れ! 〇〇だ!』と言われて。なんだよこれ、ぜんぜんミッションで言ってることと違うじゃないか。幻滅……だったら僕がもっと社会を良くするよ。そういう会社を作るよ」なんて気持ちになってしまう。
これは、彼らの育ってきた環境から考えれば、仕方のないことでもあるんですよ。それも理解しましょう。ただそれで私たちが、それ1色になるということじゃありません。融合させていくことが、とっても重要なんです。
「仕事コミュニケーションの特徴」として、仕事をする以上は相手がまったく自分とギャップを感じる人だとしても、相手が誰かに関係なく、目的に対して互いに納得して進んでいかなきゃいけないようなプロセスです。だからチームで仕事してるんです。
職場の人間関係は、お友だちじゃないんだから自分の好みで選んでません。だからこそ、いろんな人と知り合えておもしろいんです。それが「多様性を楽しむ」、「違いを楽しむ」。相手を尊重して、「こんな考え方もあるんだ、ちょっと新しいことが身につくかもしれないな」と、自分で自分を豊かにする。
自分を「変える」じゃないんです。自分を「豊かにする」んです。もっと対応力を広げてみるということです。職場に外国人の方が来た、シニアの方が来た、まったく違う方が来たときに、「おもしろいな、なんでこんな考え方をするんだろう」と、自分が豊かになるようなオープンな気持ちで接したら、ぜんぜんチームが変わってくるんです。
けど自分たちのやり方に無理やりその人たちを入れようとしたら、やっぱりそこで軋轢が起こってしまいますね。「変える」じゃないんです。自分たちの大切なものは、大切なんです。でもそれに追加して、いろんなやり方もオンしてみませんか。オンして対応力を増やして豊かにしてみませんか、というのが多様性の意味です。
決して「これまでのやり方を変えてください」というような、強制的なものではないと考えていただいたほうがいいです。
「過去と他人は変えられない」という、エリック・バーンさんの有名な言葉があります。自分と相手の対話の中でなにかうまくいかないんだったら、仕事には絶対目的がありますから、その目的のために私とあなたはいったいどういうコミュニケーションをとったらいいのかをちゃんと考えればいいんです。
相手は変わらない。過去と他人は変えられないですからね。いくら上から言ったって変わらないんですよ。自分の奥さんや旦那さんやお子さんも変わんないでしょう? そんなもんなんですよ。人って、人から言われたことでは変わらないんです。自分が「変わろう」と思ったら変わります。
この2人の関係性で、ここ(目的)に向かっていきたくて、相手がぜんぜん変わらないんだったら、どうするか。残ったのは、「私」が自分を変えるしかないじゃないですか。「変える」と言うとまたちょっと抵抗があるかもしれません。自分自身を変えるのではなく、新たな対応力を身につければいいだけじゃないですか。
「ジョハリの窓」も、人事関係の方だったらよくご存知かもしれません。オープンな窓が大きい人は、いろんな方とコミュニケーションがとれますね。これはギャップもあまり感じないで済むんです。自分が知ってる自分で、他人も知ってる自分はオープンウィンドウ。違う人と出会ったら楽しんで、「なるほど、そんな考え方もあるね」と、オープンな窓をどんどん大きくしていくこと。若い方々を受け入れる私たちとして、必要なことだと思っています。
そのときに重要なのは、このオープンな窓がめっちゃ小っちゃい人(笑)。めっちゃ小っちゃい人は、あんまりいろんなタイプの人とはうまくいきません。自分の窓が、めっちゃ小っちゃいんで。ここに合うタイプの人しか合わないんですよ。
でもこれがすごく広い人だったら、いろんなタイプの人と「おもしろいね、あなたの考え方! 参考になるね」と言って、「ちょっと私もそれ試してみるわ」というかたちで、自分を豊かに、大きくしていくことができますよね。
そのために必要なのは、1つはまず自己開示すること。「私はExcelの記号とか表とかめちゃくちゃ苦手なんだけど、こういうの『できない』なんて言ったら元エンジニアとして恥ずかしいから、できるフリしていよう」みたいな。でも大概周りの人たちもわかっちゃってたりするんですけどね(笑)。「稲増さんカッコ悪いこと隠してる!」みたいな。「稲増さん優しそうな顔してるけど、めっちゃ負けず嫌いなんだよね。それ隠してんだよね稲増さん」みたいな。
もう、開示しましょう。「私はこういうとこがダメだから、〇〇ちゃん頼む! こういうとこで私のサポートして!」みたいな。チームで「お互い様文化」を作っていくということです。お互い様文化を作るためには、古い人とか上司とか、上の人が自分の脆さや弱さを見せることが、実は今とても重要です。
アメリカのGoogleとかで今1番人気の「マインドフルネス研修」というのは、自分の弱さ・脆さを見せることを徹底的に研修するんですよ(笑)。不思議な時代になりましたね。
自己開示する、そうすると相手も言ってくださる。「稲増さん知ってますか。ちょっと稲増さんには言いにくいと思って若手たちが言ってないんだけど、若手の人たちは稲増さんのことこんなふうに言ってますよ」……誰かがフィードバックしてくれるようになる。「うっそー!」みたいな(笑)。「そんなふうに思われちゃってんだ私!」なんて。
「稲増さんは声がデカ過ぎなんですよ。それだけで『怖い』と思ってる人いますから。〇〇さんと〇〇さんに近づくときはタイプが違うんだから、小声で近づいてってもらえますか」とか。「距離感も違うから。稲増さん、そんないつもベタッと来ないでくださいよ」と。
そうなんですよ。人って違うから。私が心地よいと思うことは相手も心地よいなんて、とんだ勘違いです。イヤなんですよね。だったらそこをしっかりわからなきゃということですね。
「良い関係づくりのために」できることは3つあります。これはぜひ、今日から試せるだけやってみてください。
「メンバーとの信頼関係が怪しい」「ちょっとあの人とうまくいってないかなあ、あの人とはお互いにうまくいってないかなあ」……なんていう場合には、ポジティブな言葉を使ってください。
人間が人生で1番聞いてる言葉は誰の言葉かと言ったら、自分の言葉です。自分の耳が1番自分の言葉を聞いてます。私は「忙しい」という言葉は使わないようにしてます。誰かから「忙しいですか?」と言われても、「充実してます」と答えます。「やせ我慢?」と思うかもしれないけど、自分が聞く言葉ですから。「うん、忙しいのよ」……イヤです。「忙しい」って、「心」を「亡くす」と書きます。心は亡くしてませんから。おかげさまでとっても充実してます。
自分で自分の聞く言葉を、どれだけポジティブにできるか。これがとっても重要です。さっきの野口の本にもそんなことが書いてあると思います。
なにか隠し事があったりするんだったら、アサーティブな表現を使う。
アサーティブって何というのは、このあと出てきます。いい質問をしたりすることで、ちゃんとお互いが冷静に、しっかりとわかるべきことをわかり合うということ。声を荒げる必要もなく、無理して黙ってしまうのでもなく。しっかりとコミュニケーションをとりましょうよ、ということです。
「お互い支援し合う意識が薄い」というのがあるんだったら、さっきから言ってる、違いを尊重して、お互い様文化で「おもしろいね」と言う。1人から始めてください。それでいいんです。
まず1つ目の、「ポジティブな言葉を使う」。「大ざっぱだなあ、仕事が雑だなあ」とか「しつこいなお前は」と言われたら、やっぱり傷つく人がいます。私はこんな言葉くらいでは傷つきませんが、今どきの人の中にはきっと傷つく人もいます。「こんなこと稲増さんに言われちゃったよ」と思うかもしれない。
ポジティブな言い方は、そのテキストの1番最後に出ております。あとで見てください。じゃあ「大ざっぱだなあ、仕事が雑」と感じたときには、まず一旦は受け入れるのが絶対に基本です。「ざっくりとスピーディーに捉えるのがうまいよね! プラスして大事なポイントをもう少し詳しく説明すると、さらに説得力が上がるよ」みたいに(笑)。
一旦受け入れた上で、でも直してもらいたいポイントは必ず言う。「しつこいなー」なんて言う人は、その言い方をやめてください。「いつも熱心だよね。だから堂々巡りしないうちに、ちょっと視点を変えてみようか」。言い方を少し考えるだけで、ずいぶん変わってきます。
これは別に、「甘い」とか「弱い」とかいうことではないんです。よく勘違いする人がいます。これは相手を受け入れて、甘くしてるんではないか、弱くしてるんじゃないか。そうじゃないです。いいチームを作るためには、お互いがお互いをオープンに、信頼して語り合うような場がまずできないと始まらないからです。
そのためにも、「アサーティブな表現を使う」。
先ほど「受動的じゃないですか、攻撃的じゃないですか」と……つまりなにかイヤなこと、ムカッとすることを言われたり、否定や非難を言われたとき。「何言ってるんですか!?」とか、「はぁ!?」なんていう、そんな対応だったらやっぱりうまくいきませんよね。
でも「わかりました……はい……」なんて言っても、ムカついてたりとかしたらこれもストレスですよね。作為的というのはあんまりよろしくないです。1番良いのは、(スライドを指しながら)こちらの、「相手も自分もWin-Win」。「そんなことできますか?」と思うかもしれないけど、なにか無理やりなことを言われたら大概、大ざっぱに言ってきますから。
「恐れ入ります。もう今4時で、その仕事を5時までというのは、私としてはかなり難しいです。今日はちょっと用事もあるんですけども、この仕事は明日何時からスタートする会議で必要なんですか?」と。ザクッて感じで「今日やっといて」みたいに言われたら、「いったい何時までに必要なんですか?」とか、「先輩はこれ、どれくらいの時間がかかると見積もっておっしゃってますか?」とか。
別に嫌味じゃないですよね。言い方はすごく丁寧に、ちゃんとですよね。自分は助けたいんです。だから何時間かかるのか教えてください。何分なのか教えてください。そしたら助けられるのに。何時までに本当に必要なのか言ってください。そしたら助けられる部分は助けます。自分もがんばります。でもあなた様もそのぶん、譲歩していただく部分があるでしょう? と。
そのためにわからないことがあるんだったら、しっかりとアサーティブに質問して、相手からちゃんと情報を得るということですね。そのようなことができないで、黙っちゃうとか「何言ってんだよ!」とならないように。じゃあいつまでにどうしたらいいのか。「これ、見積もりとしては何分かかる仕事だと思ってらっしゃるんですか?」とか。「これに対して誰かサポートしてくれる人はいるんでしょうか」とか。
聞けばいいですよね。そしたら「僕はここまでの40分間でなんとかできます」とか、「明日の朝早く来て、1時間でこれを仕上げます」ということができるかもしれない。でも「今日やっといてくれよ、頼んだよ!」なんて言われちゃったりして(笑)、「なんだよあの先輩……」なんて。ストレスが溜まっちゃいますよね。
「違いを尊重して楽しむ」って、とってもおもしろいことです。例えば外国人じゃないですけど、いろんな人がいますから。みなさん、「バナナ」「サル」「キリン」を2つをグルーピングしてくださいと言ったら、みなさんはどのようにグルーピングしますか?
「バナナ」と「キリン」の人。
(会場挙手)
手が挙がりましたよ。
「バナナ」と「サル」の人。
(会場挙手)
「サル」と「キリン」の人。
(会場挙手)
あっ、「サル」と「キリン」という人が多いんですね。「サル」と「キリン」の人はけっこう、ロジカルシンキングと言うか(笑)。左脳を使う訓練が、MBA的なものがされてるかもしれません。これは西洋と東洋の考え方の違いで、昔からある『木を見る西洋人 森を見る東洋人』という、有名な異文化コミュニケーションの本の中で出てくる話です。
通常、東洋人は「バナナ」と「サル」を1つのセットと考える方々が、実は多かったです。でも今やロジカルシンキングをしっかり学んだ、西洋人化している日本人は(笑)、かなりこちら(サルとキリン)が多くなってきています。これは「動物」という括りですよね。こちら(バナナとサル)は「関係性」です。
昔の日本人は、関係性で「バナナ」と「サル」のほうが実は多かったです。この「バナナ」と「キリン」という新しいアイデアの方々も、ちょっとあとで聞いてみたいなと思いますが(笑)。
(会場笑)
すごく良いんじゃないかなと思います。(スライドを映しながら)さあ、これ(一輪の花)はどちらのグループでしょうか。このお花は、どちらのグループに近いなと思いますか? 感覚です。
グループ1だと思う人?
(会場挙手)
グループ2だと思う人?
(会場挙手)
あっ、これはグループ2の方が少ない。でも西洋人は圧倒的にこちらです。なぜなら、規則を見るからです。茎が全部まっすぐです。でも東洋人は類似性を見ます。確かに1個ギザギザなんだけど、全体的に言うとこっちのほうが似てる、みたいな(笑)。そういう捉え方です。
人によって、考え方が違うんです。これは別に外国人とかっていうことじゃなくて、いろんな学びによっても変わってきます。
それから3つ目の「違いを尊重する」。
よくある「左脳型の論理的な人」、「ちょっと感覚的な右脳型の人」、アーティスティックな人とかね。こういうのがあったりします。それからけっこう「細かいことはどうでもいいよ」という方と、こちらはどちらかというと「細かいことが大好き」。
野球の監督で言うと、ここ(抽象的・感覚的)は長嶋監督。「ポンといってカーン!」みたいな、そういう人ですね。で、対極(論理的・具象的)は野村監督。「3年前のデータを見せてくれ」とか、そういうようなタイプ。どうしてもこの2人は、あんまり相性はよくないと思います(笑)。
それから中畑監督とか工藤監督みたいな、ちょっと選手とベタベタするみたいな(笑)。そういう方はこちら(感覚的・具象的)で、人間がすごく好きで社交的。お亡くなりになった星野仙一さんなんかは、けっこう論理的で経営的な判断なのかな、とか。ちょっとこれは勝手な想像ですけど、そんな感じ。
実は今の3つ、(スライドの)1番下はポジティブな言葉を使って、何を言っても大丈夫なんだという信頼関係を作っていくということ。これはとっても重要で、ベースです。そしてアサーティブな表現で、言いにくいこともオープンなコミュニケーションがとれるようにしていく。そしてお互い様文化を作っていくことを、今から1歩1歩でもやっていかないと、5年後、10年後、15年後の組織……どうなっちゃうんだろう。
心配になりませんか? 若い方が、みんな辞めていっちゃうかもしれない。そうならないように、ぜひ職場の良い関係づくりをしていただきたいと思います。
おやおや、「人をあきらめない組織」。これはもう「本を読んでください」みたいなものでございましたので(笑)、時間が足りなかったらここは本を読んでいただきましょう、みたいな感じなんですけれども。
パッと言っちゃいますと、うちの会社は(創業)25年と言いました。20年前に、ある素晴らしい販売パートナーが見つかったので、うちの会社の売上はぐーんと上がってきました。15年前に私は『ビジネス・ブレークスルー』という、大前研一さんが今学長をやっていらっしゃる大学院と関係を持って、今教授もやらせていただいています。
そして10年前に海外展開を始め、5年前に私が社長になりました。20年間は野口吉昭という一緒に立ち上げた者が社長をやっていました。実はこの25年を振り返ってみたとき、私はいつも入ってきていただいた方に対して、「うちの会社で働くことで天に徳を積んでいける組織でありたい」と、恥ずかしげもなく言っております(笑)。
端的に言えば、「入ってくる前よりも善い人になってね」ということです。魂清くなって出ていきましょうねと、そういうことです。もしその会社に入って噓つきになっちゃったとか、眉間にしわが寄るような人間になっちゃったとか、この会社に入って人を騙すことがぜんぜん平気になっちゃったら、「その人生何ですか……?」みたいな。
私は、小学校の頃からそう思ってました。「それっておかしいじゃない」と。でもあんまり大きな声で言えなかったんですね。だからいつも小さな声で言ってたんですけど。もうそろそろ言っても大丈夫かな、という時代になってきたようです。
このごろ大ヒットの本で、『ティール組織』がありますね。ティール組織は、マネジメントの目標もなにもなしでも、みんなが共通する理念・目的に向かって、マイクロマネジメントをまったくしないでも動いていくような組織を謳っています。これが今ベストセラーです。
なんでこの本がベストセラーなのか。時代が変わってるから、みな組織の在り様を変えなきゃいけないと思ってるからですね。
「信頼+感謝+尊重」。これもいつも口を酸っぱくして言ってます。「オープンなコミュニケーション、そしてソーシャルに目を向けて活動を広げて、そしてグローバルな展開をして仲間を増やしていこう」というのも、ずっと言い続けています。「利他主義×民主主義」。私たちの民主主義というのは、25年間私たちは給与が自分の申告制です。
この1年間自分はどういうことをやってきたかを言って、それに対して3分間のプレゼンテーションの最後に「自分は来年これだけをいただきたいと思います」と言って、全員、まあ日本で言えば30名ほどですけども、反対か賛成か手を挙げます。そして意見を言います。その意見を聞いた上でもう1回、ラストアンサー。ファイナルアンサーで彼は、もう1回自分の来年の年収を言います。
たとえそれが200万上がろうが50万下がろうが、それはその人の意思決定です。それに対して「いやいやあなたがここで1,000万になるなんて、先輩のことを見てごらんなさいよ」みたいな。社長の給与もなにも全部、うちはオープンなんですよ。誰がどれだけ生産性を上げて、どれだけ給料をもらってて、どれだけの全体額を内部留保金として会社に落としてるか。25年間分、ぜーんぶあります。
それをみんなでぜーんぶ見て、それで「言っとくけどこの先輩が3年間、4,000万円をがんばってやったときに、やっと1,000万円になってんだよ。あんたまだそこまでいってないでしょ。初めて4,000万円の大台を超えたんでしょ」なんていう……ちょっとこれ、かなりブラックみたいに聞こえたかもしれませんが。ブラックじゃなく、本当にそういうデータをしっかり見て、経営意識を持っています。
今30人がどんどん「僕50万上げます」、「僕70万上げます」、「イエーイ」、「がんばろうねー」なんてやってたら、「ちょっと待ってみんな大丈夫? 今トータルで人件費が来期どれだけ上がるかわかってる?」みたいな(笑)。
うちは全員参加型経営なんです。だから私、社長は1番しもべです。みなさんが1番ハッピーに働いていただけるように、常に羊飼いのように後ろから見守っています。そういうリーダーシップのスタイルです。全員参加型経営、すべてオープン。何を質問されても、絶対なんでも答えます。
そういう組織にしていくことが私の誇りだし、メンバーのことを、相手のことを尊重することは、どんな人が入ってきても「ドリームチーム」のメンバーだと必ず思います。「バカじゃない?」と思うかもしれないけど、そんなことないんですよ。
シンガポールでやった、あるリーダーシップの研修で言われました。「あなたは自分のチームのことを、ドリームチームだと思ってるの?」と。「スズキさんじゃなくてタケダさんがいてくれたら、どんなにこのチームがうまくいったか、とか思ってない? そんなふうに思ってたら、あなたはリーダーとして失格よ」と、みんなの前で叱られました。
または「あなたは自分がいなくなったらこの会社は動かないって思ってない? だからあなたがこの会社の成長にとって害悪なのよ」と、みんなの前で言われました。なるほど、と(笑)。それは一理ある、ということですよね。
私がいなくても動くし、私がいなくてもみんな民主主義で動いていける組織になったら、それは素晴らしい。じゃあそのためにはどうしたらいいのかな、ということで想いを込めて書いたのが、11年前に出したその本です。今こそもう1回、書き直しをして出そうと思ってます。おそらく絶版になろうとしていると思いますので(笑)、もう1回書こうと思っています。
「人をあきらめない組織」。「プリンシプル」、「ウェイ・マネジメント」、「モチベーション・エンジン」。人に対しては、「育てる」、「輝かせる」、「挽き出す」。こういったことを意識していく。
この「プリンシプル」にはこんな3つがありますよ、とか。これらのことをぜーんぶ、本の中に実は……アンケートが入ってます。(プリンシプルの)1つ1つを全部落っことして、自分の組織のアセスメントをやってみてください。
(スライドを映しながら)これもそうです。そして、これもそうです。
さっきの3つですね。細かい設問に落とし込んで、6問ずつです。
それでこのように診断をして、あなたの会社は「人を諦めない」経営レベルなのか、それとも「人を認めていない」経営レベルなのか、見ていくということです。ひどいですね(笑)。
もちろんこれはうちがフォーマットとして出してますから、お客様にコンサルティングするときには、設問はその対象に合わせて変えていったりしています。
先ほどの「善玉遺伝子」と「悪玉遺伝子」。うちも3ヶ月にいっぺん、お互いのことを評価し合います。「インディアン」と言います。インディアンは、部落に産まれた子どもはみんなの子どもなので、みんなで育て合うという考え方があるそうです。
社長のこともみんなが育ててくれます。「稲増さん、こういうところ本当にわかりにくい」とか。みんな言ってくれます。「稲増さん、なんか『こなし』で仕事してない?」とか。これは善玉の話です。うちの善玉の、いろんな独自の遺伝子がここにたくさん書いてあります。
先ほどの「ボーダーレス」だとか「密なコミュニケーション」とか「360度オープン」とか。こういったインディアン・ミーティングで、お互いの給与を決め合うとか。こういったこともここの中にあります。
それで、私に変えてもらいたいところは何か、というのをちょっと笑っちゃうような悪玉遺伝子の言葉に変えて、「カンジョルノ」。「稲増さんよく感情が出ちゃって、カンジョルノだから」。
(会場笑)
「ちょっとそれを抑えてください」というのを、20年くらい前はずいぶん付けられましたけど、ここのところはずいぶん納まってきました。人からのフィードバックはとっても重要です。自分を変えていきます。
最後ですけども、今大きく、第4次産業がやってきてることは、みなさんもご存知でしょうか。
2020年にはなんと、回線が5Gになります。回線速度100倍です。100倍になったらどんなことができるか。今反復作業をしてるような人たちは、全部テクノロジーに置いていかれる、というようなことにもなりかねません。本当にそういう時代になってきています。
そこらへんのことはまたニュースピックスで見てみてください(笑)。本当にその手の情報がよく出ています。
AIやロボットに負けない実力を磨くには、さまざまなことに興味や関心を持って、些細なことでも新しい知識や新しい仕事のスタイルにつなげていこうとする前向きな姿勢と、コミュニケーション能力に長けた人材となって、人工知能をサポート役にして自分の価値向上をしていくような、そんなチームができあがってきたら、怖くはないでしょう。
「変える」ではなく、「多様に」。状況に合わせて、たおやかでしなる強さ。ボキッと折れちゃうやつじゃなく、受け入れられるだけ受け入れますよ、と。そして甘さ・弱さとは違う、認める潔さというものですね。これをぜひ。
実はVUCAな時代だと言われています。すいません、ここらへんも……「何かな?」と思う人は検索してみてください(笑)。VUCAな時代と言われてるんです。これを日本語で言えば「まさかな時代」です。その「まさかな時代」に、スタンフォード大学のマインドフルネス研修で1番人気のスティーヴン・マーフィ重松さんが言っているのは、先ほど言った新しいリーダーの要件として、こういうものが追加されるということです。「脆さ・弱さ」「理解」「繋がり・絆」「順応性」です。
私自身、これが「フロー体験」と言って、仕事が本当にぐるぐる回って、フローな状態で楽しく仕事ができるような状態ってどういうものか、ということで書いてるものです。スキルが高くて、かつチャレンジも高ければフロー状態です。
5年前に、社長になった私はすごく苦しんでました。社長としてのスキルが低いから。けれども、徐々に自分でチャレンジしていくことによって、スキルに少しずつ、少しずつ自信を持てるようにがんばりました。
そしたら少しずつ、少しずつ、心配が不安くらいになってきて、だんだん覚醒になってきて、おかげさまで今はすごいフロー状態で仕事をさせていただいています。
人間は変わるし、変わると言うか、オンしていくことができるんだということ。私たちの会社のメンバーも身をもってやっています。みなさんもぜひ、自分もそうだし、自分の周りもフロー状態で仕事ができるようになったら、どんなに素晴らしいだろう。「そんなの無理だよ」って……本当に無理ですかね? その問いを今日はお持ち帰りいただきたいです。
自分の主体性と組織のミッションが重なり合ったら、自分の生き方を実現するために仕事がある、と変わっていきます。みなさんの会社も素晴らしいことをやってるはずです。それはみなさんの生きたい生き方に重なるんじゃないですか、ともう1度考えてみていただきたいです。
最後はHRIのソリューションのご紹介ということで、会社案内等々載せてございます。このプログラムブックなんかを見てください。そして最後、「ポジティブな言葉」が載せてありますから(笑)。
ちょっと照れちゃうような言い方かもしれませんが、真似してみてください、ということでございます。
ちょっと時間をオーバーしてしまいまして、申し訳ございませんでした。本日は本当にお忙しい中、ご清聴をどうもありがとうございました。
(会場拍手)
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