日本の科学に欠落しているシステム

鍵本忠久氏(以下、鍵本):みなさん、お集まりいただきありがとうございます。私は13年間企業家として身を置いてきました。日本には素晴らしい科学があります。今年も本庶(佑)博士がノーベル賞を受賞しました。

しかし、基礎はあるのですがシステムに欠落があります。とくにエコシステムと言われるものです。その要素が何なのかということを私たちは解明しようとしています。アメリカのエコシステムは非常に優れています。

また、中国のレベルも上がってきているのは、とても素晴らしいことです。日本、中国、アメリカでグローバルマーケットの7割を占めています。今回はまず、「何が足りないか」「どう取り組むか」ということについて学ぼうと思います。

この業界のすべての側面をカバーする素晴らしいパネリストにお越しいただいております。バイオテクノロジー業界のインサイト、また次のステップへの明確な道しるべとなることを期待しています。

まずは、Eight Roads Ventures JapanよりSheen Komotoさん、中国のYafo CapitalのSean Jiangさんです。

ヘルスケアベンチャーへの投資が圧倒的に少ない

Sheen Komoto氏(以下、Komoto):最初に数字についてお話ししたいと思います。日本とアメリカで数字上どのように違うのかということについてです。普段は数字を追いませんが、今回は追ってみました。

2017年、(医療)業界におけるアメリカVCの総投資額は100億ドルです。日本は300万ドルですから、(アメリカの)3パーセントですね。2016年から2017年までのIPOは、アメリカでは117件。日本では驚くことにたったの3件です。このような現状です。

この次に話したいのは、政府は(医療分野に)どのくらいの予算を持っているのかということです。アメリカは年間5000億ドル、日本は2000億ドルで、他の数字と比べると大きな隔たりはありません。GDP に対する国家予算は3.2パーセントです。韓国に次いで世界2位の規模で、これはアメリカよりも高い数字です。

Eight Roads(Ventures Japan)はグローバルヘルスケア/テックベンチャーキャピタルです。Eight Roadsに参加する前は、日本企業のヘルスケア投資部門に在籍し、医療ビジネスに従事していました。在籍中、新規投資に約250億ドル近く費やしました。日本企業に勤めていたにも関わらず、そのうちの20億ドルほどは海外のものです。

ユニークなエコシステム

Komoto:現在、私はヘルスケアチームを先導しています。完全に日本に投資しているものです。私たちのエコシステム内で投資を増やし、ベンチャーをサポートすることが私の仕事です。Eight Roadsは資産運用会社の中でも、一番大きな類のものです。

また、UK、中国、インド、日本、アメリカにF-Prime Capitalというファンドがあり、とてもユニークなエコシステムがあります。

ユニークというのは、意思決定のプロセスがとてもグローバルだからです。各ファンドの決断が、グローバルチームで仕切られた投資コミュニティに届きます。私はミーティングのオブザーバーで、日本の国外にもいます。

20年以上の歴史に及ぶ250以上の投資専門の会社です。40億ドルのマネジメント資金があります。その半分以上を医療、とくにバイオテックの分野に投資しています。残りの50パーセント(の投資)は、食や農業の会社です。こちらは日本のファンドで、規模は10万~500万ドルほどのものから、2億~2.5億のところもあります。合計31のベンチャーに投資しているのですが、バイオベンチャーはまだ5つしかありません。

グローバルシェアをいかに50パーセントまで上げるか

Komoto:ここで私のアジェンダです。(医療の)グローバルシェアをどのようにして50パーセントまで上昇させるかです。医療のグローバルポートフォリオがこちらで、ほとんどを中国、UK、インド、アメリカが占めており、日本は限られています。医療会社の合計数は120で、IPOとM&Aは半々です。完成品として承認された商品は20以上あります。 

また、投資エコシステムにおけるユニークな側面の1つとして、共同出資があります。 私たちは普通100パーセントでやりますが、これまでに投資した5〜6社のうち、70パーセントは日本の資金で、残りの30パーセントはアメリカから(の資金)です。中国、UKにも同じことが言えます。

では、なぜそうするのかと言うと、共同出資の重要性は、ローカルのテクノロジーをグローバルにすることだからです。リターンを求めたり、競争できるプログラムを作りたいのであれば、海外に進出しなければなりません。

ベンチャーを買うためにアメリカの同僚からヘルプをもらう場合、アメリカに行かなければなりません。収益とリサーチの実用性を上げるためです。そういったことを行うアメリカのチームもあります。

こちらは最近使っているシステムの一部です。一つ一つ説明はしませんが、これら5つの会社は、私たちの資金で設立されています。つまり、科学者、共同出資者、マネジメントチームを調達したことになります。こうして、ほかの投資家とともに会社を作ったというのが、最近のダイナミズムです。

当時のバイオテックにおいて、アメリカと日本における大きな違いはなにかと言うと、1億のメガラウンドがあるわけですが、これについてはディスカッションで詳しく説明します。アメリカなどグローバルな世界ではスピードが重要で、私たちは科学的根拠に欠けており、他のものを見る傾向にあります。

アメリカでは初期段階のIPOが多いです。アメリカではIPOのあと、投資家は株主としてとどまりがちですが、日本では撤退しますね。ありがとうございます。

(会場拍手)

中国でIPOが高騰している4つの要因

鍵本:次の登壇者はSheenです。自己紹介をお願いします。

Xiaoyang (Sean) Jiang氏(以下、Xiaoyang):上海のYafo CapitalのSheenです。

会社の簡単な説明となりますが、上海を拠点にグローバルビジネスにも投資をしております。自社のサイエンスプラットフォームもあります。中国国外の薬や医療機器のライセンスについてです。最初に中国の強力な医療市場について説明します。

2017年の医療部門におけるIPOのトップ10のうち、9件が中国の会社でした。昨年の医療部門におけるIPOのトータルのランキングでは、46件を中国が占め、次が8件のインドでした。 トータル金額は約40億ドルです。

過去30年におけるIPOのチャートをみると、医療部門におけるアメリカのIPOは非常に多く、2017年は45件となっていました。中国のものも含みます。2018年は驚くことに数字が小さく、マーケットが小さかったです。青のバーはパイプラインの医療会社で、93件となっています。

なぜ中国でこのように(IPOが)高騰しているのか。そこには主に4つの要因があると考えています。まず、残念なことではありますが、中国では患者数が非常に多いからです。とくに肺がん罹患率が高く、全体の50パーセントを占めています。(そのため、)中国では革新的な(がん免疫治療)薬を発表しています。

日本・中国・アメリカの医療市場を比較すると、(中国の)人口はアメリカの4倍、日本の10倍ですが、医療(分野)への支出はアメリカの5分の1強です。市場は大きいのに、参入項目が少ないのです。