バーチャル空間では高齢者も20代になれる?
為末大氏×石川善樹氏が語る、人生100年時代のeスポーツ

TOKYO100スポDAY #1/3

TOKYO100スポDAY
に開催

2018年7月24日、産経新聞社、Cyclist、IGN Japanが主催する「TOKYO100スポDAY」が開催されました。本イベントは、「“100歳時代”をより良きものにすることを目的とした『100歳時代プロジェクト』」の一環として、トークセッションのほかにも、ローラー台を使ってロードバイクに乗り、画面内の仮想空間を走れるゲーム「Zwift」の試遊展示も実施。本パートでは、元陸上選手の為末大氏、予防医学研究者の石川善樹氏が登壇し、スポーツとeスポーツに関連したトークセッションを行いました。

100歳まで元気にスポーツをする

司会者:みなさん、なぜ私がこういうeスポーツのイベントの司会をしているのだろうかと思う方もいるかと思います。もともと『えいごであそぼ』のおねえさんをしていまして、歌を歌ったりいろいろしています。

バイクに乗ったり、自転車に乗ったり、ちょっと太って体型がこんな感じになっていますけれど、動けるんです。自転車大好きなんですね。

私も実際にZwiftに参加させてもらって、こうやって走ったりもさせていただいていることもあって、今日はここでみなさんと一緒に参加させていただくことになりましたので、よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

今日は、スポーツと医療というポイントからお話を伺っていけたらなと思います。みなさん、肩の力は抜いてくださいね。大丈夫ですか? 部屋寒くないですか? 大丈夫ですか? はい、とりあえず始めますね(笑)。なんだろう、このゆる~っとした感じ。緊張してないですよね。大丈夫ですね。

では、もうプロフィールを紹介するまでもないと思うので、ご本人に登場していただいていろいろお話を伺っていきたいと思います。今日のゲスト、まずは為末さんお願いしまーす! そして石川先生よろしくお願いしまーす! 

(会場拍手)

どちらでもお好きなところへどうぞ。はじめまして。よろしくお願いいたします。

為末大氏(以下、為末):よろしくお願いします。

石川善樹氏(以下、石川):よろしくお願いします。

司会者:石川先生、いいTシャツを着ておられますね。日本一なのね。素敵ですよね。

石川:ありがとうございます(笑)。(Tシャツを指して)ちなみにこれが誰か知ってますか?

司会者:バカボンのパパですよ!

石川:あ、知ってますか(笑)。

司会者:私、見た目はこんな感じですけれど、メイドイン兵庫県ですからね。父親はフランス人ですが、母親は日本人なんですよ。この顔ですけれど、目を見ないで話をしていただいたら、ただの関西人です(笑)。

石川:そうですか(笑)。よろしくお願いします。

司会者:よろしくお願いいたします。今日は、100歳まで元気にスポーツをしていただくというテーマでスポーツのお話をしていきたいと思っています。私からご紹介するのもあれなので、ご自身で自己紹介を。石川先生がマイクを持っていらっしゃるので、先にお願いしていいですか。

ワニワニパニックにはまった高校時代

石川:予防医学の研究をしている石川と申します。よろしくお願いします。それくらいですかね(笑)。(どういう人物かは)まあ話しながら(わかる)と思います。スポーツというと、高校まではゲームしかやったことなかったんです(笑)。1番ハマっていたのはワニワニパニックです。知ってますか? ワニが出てきて、こう……。

司会者:ゲーセンのやつですよね。いかに早くあれ(叩く)するやつですよね。わかります、わかります。

司会者:大会とかもあるの?

石川:はい、僕は新宿のゲームセンターで開催されていた大会によく出ていました。

司会者:新宿で! どんな感じなんですか?

石川:それが……絶対王者と言われている人がいて(笑)、その人を打ち破って、僕が新チャピオンですよ!

司会者:なんだろう、これ!? ん~、すごいことなんでしょうけど。

石川:世が世なら、ワニワニパニックの道を歩んだ可能性がありますね。eスポーツの時代ですからね。

司会者:それ、ごめんなさい、う~ん、e……いいスポーツ……ですね(笑)。

石川:(笑)。

司会者:そこからどうやって予防医学のほうに進んだのかが、ぜんぜんリンクしてこないのですが。

石川:それは、父が予防医学をやっていたからです。歌舞伎の息子は歌舞伎をやるみたいな、そんな感じで僕はずっと予防医学をやっています。

司会者:なるほど。為末さん、笑いすぎです。仲良いですもんね。

為末:はい。もう仲良くてね(笑)。

司会者:そんな為末さんから見て、石川先生はどんな方ですか?

為末:石川先生とはオフィスが一緒なんですよ。オフィスは3LDKのマンションなんです。入って左側に石川先生がいて、だいたい僕は真ん中の部屋か奥の部屋にいます。定期的に「どっちがポップコーンやる?」みたいな。そういう感じのオフィスに2人でいます。

石川:(笑)。

為末:おもしろいんですよ。よく真ん中で打ち合わせが行われていて、ホワイトボードが置いてあるんです。そこで石川先生が数式を書いていて、そこに僕があとから入ってきて「これは何が書いてあるのかな?」という感じです。

司会者:へ~。2人でどっちがポップコーンを作るかという、その姿を見てみたいですね。それはどうやって決めるんですか?

為末:気が向いたほうが作ります。

司会者:「できたよ~」と一緒に食べるんですか?

石川:そうです、そうです。

陸上と自転車の共通点

司会者:楽しいですね(笑)。為末さんは(有名なので)もうプロフィールをご紹介するまでもないと思いますが、私も拝見させていただいていました。スポーツから、現役から今は引退されて最初は環境が変わったと思うんです。ちょっと離れたところからスポーツを見てどうですか?

為末:スポーツを見てですか。今は2020年に向けて特にですけれど、こんなにみんながスポーツ好きなんだなというのはけっこうびっくりしましたね。引退するまで、そのように見たことがなかった。「スポーツ」と呼ばれるものって、イメージでいくと食べ物屋さんみたいな感じなんですよ。

司会者:ん?

為末:「食べ物屋さん」というカテゴリーが「スポーツ」というカテゴリー。僕は陸上選手なので、カテゴリーでいくと、例えばラーメン屋みたいな感じなんです。だけど焼肉屋というカテゴリーとは全く会ったこともないみたいな感じです。野球と陸上は全然違うんですけど、「スポーツ」で全部くくるじゃないですか。

司会者:確かにそうですね。

為末:今日は自転車好きの人が来てらっしゃるんですけれど、自転車の人たちは数字が好きじゃないですか。

司会者:あ~。

為末:球技系の人たちにはそういうキャラクターがあんまりないんですよ。だからそれは引退していろいろおもしろかったことですね。いろんな違う世界の人と話をしました。

石川:数字というと、陸上と自転車は近いところがあるんじゃないですか?

為末:近いと思います。でもデータが取れるから、自転車の人のほうがもうちょっと数字好きな人が多い印象が強いですね。

石川:なるほど。

司会者:確かに走っていると、データ取れるのは取れますけど、結局自分自身が一生懸命こう……、ごめんなさいね、自分が走るのが苦手なんです。小さいときから喘息持ちだったので、だいたい体育祭のときは三角座りして見てるタイプだったんですよ。長距離走ってみたい、短距離走ってみたい、というのがあったけれどできなかった子でした。

自転車とかで走っているときは、(データが)ちゃんと見れるじゃないですか。ご自身で走っているときは、練習のときは声掛けとかコーチとかがいたりすると思うんですけれど、レースのときに自分のペースのキープは実際に体でわかる感じなんですか?

為末:そうですね。体感しかないですね。要はどれくらいスピードが出ているかということですよね。それは体感でやっています。

司会者:当たる風(で速さを実感すること)だったり?

為末:まあそうなんでしょうね。そういうことです。けっこう当たりますよ。100分の1は無理ですけれど、10分の1秒くらいの誤差です。「だいたいこれくらいかな」と思ってゴールすると当たったりします。体感があるんですね。

司会者:すごい。

日本にもいずれシエスタができる?

為末:陸上というのは回転数と心拍数くらいじゃないですか。自転車だと、ペダルにかかる力の方向とかも、計算する人は計算しちゃうんですよ。だからおもしろいですよね。

司会者:おもしろいですよね。今(の季節)はもう外で走るのは危険じゃないですか。この異常な暑さ! なんですかね、これ。今まで選手のみなさんは、「気合が足りない!」「水飲むな! 走れ!」みたいに、昔はそうだったじゃないですか。でもこの天気は、ねぇ? スポーツの練習やめていいやつですよね?

為末:これは厳しいでしょうね。

石川:「外で体動かすべからず!」みたいな。(気温が)ここまで高いことが話題になったことはなかったじゃないですか。

為末:ないですね(笑)。一番僕が激しかったのは、(カタールの)ドーハで試合したときです。昼間(の気温)が50何度になるんですよ。

司会者:(笑)。

為末:当然昼間は試合できないんですけれど、でも、そういう国だと朝の6時までの練習か、20時からの試合しかないんです。そういうものなんですね。日本もそうなりそうな気はしますよね。10時から15時、16時まではみんなシエスタしちゃうみたいな(笑)。

司会者:いいですね~。

為末:(気温に)適応する気がしますよね。

司会者:無理なくね。昔のスタイルではなく、気象やいろんなところに合わせていってもらえたらいいなと思いますよね。だからこそ、このeスポーツですね。石川先生、eスポーツというのは、今まで聞いたことはありましたか?

石川:もちろんです!

為末:石川先生はeスポーツ好きだからね。

石川:そう、大好きです。僕は見る専門なんですけど、とくに僕が好きなのはストリートファイターという格闘ゲーム。暇さえあれば見てます。

司会者:やらない? 見てる?

石川:見てるほうです。いろんな選手たちの試合を見ています。

スポーツにはイノベーションが起きていない

石川:eスポーツの何がおもしろいかというと、やっぱり人がおもしろいんですよ。

司会者:人?

石川:人。

司会者:やってる人?

石川:ゲームに真剣に取り組んでいるプレーヤーたちがおもしろいんです。プレーヤーのいろんな育ちとか、あるいはどうしてもこのライバルに勝てないとか、そういういろんなストーリーを抱えながら試合に臨むわけですよ。それが今回どうなるかとか、そういう人の物語を見るのがおもしろいですね。

司会者:なるほどですね。それは新しいやつ(視点)ですね。

石川:これはたぶんeスポーツも、いわゆるスポーツも同じだと思うんです。

司会者:選手の背景、この選手がどういうふうに練習してきたかとか、生い立ちとか、それがどう試合に反映されるのか。でも、実際のスポーツでは、その人が練習してきたものを体と体でぶつけ合うのが、要は戦略ですよね。指の運動というのも変な言い方ですけれど(笑)。

為末:eスポーツという言葉で言うとあれなんですが、最初に射撃がオリンピックに入ったときも同じ感じだったんじゃないかと思うんですよね。活動量だとeスポーツのほうが多いくらいじゃないでしょうか。

石川:あ、そうかもしれないですね。

為末:射撃だって下半身は動かないですよね。そういう意味で言うと昔から集中だけが勝負を決めるというスポーツがあったので、デジタルなのかそうじゃないのかは、そんなに意外性はないですね。

司会者:そこからつながってきて、いろんな技術が発達してきて、その結果としての画面というところですよね。確かに、横からピョンと出てきたものをバンと撃つのはすごい集中力ですよね。

為末:そうそう。もともとは、牛の胃袋か何かを丸めたのがラグビー(ボール)という話があって、そこからサッカー、バスケットボール、野球が始まっているんです。そういう意味では、あんまりスポーツにはイノベーションが起きていない感じなんですよね。

だから、次は何ですか? と言うとやっぱりデジタルが出てきます。それを使って何をするんですか? というのは、これからなのかなという気はしますよね。

eスポーツの良さは、世界中の人が参加できること

司会者:Zwiftもそうなんですけれど、eスポーツの何がいいかというと、やっぱりお家にいながら世界中の人たちと一緒に同じタイミングで走れるところだと思うんです。それは格闘技のゲームもたぶん一緒だと思います。

石川:そうですね。

司会者:みんなで参加できるのもおもしろいところの1つ。もちろん、その人のバックグラウンド(のおもしろさ)などもあります。これからの暑さや、今日もさんざんテレビでやってましたけれど、2020年まであとちょうど2年ということで、どんどん変わってきている。

今日ちょうどカウントダウンが発表されていましたが、そう考えるとあと2年しかない。周りは大変な騒ぎになると思います。その中でeスポーツがどんどん発達して、その次、さらにその次と広がっていくと思うんです。

どうでしょうか。先々のスポーツの種目としてこれから入ってくるという話もでていますが、どんなふうにしたらもっともっと広まってみんなにより近くなると思われますか、為末さん?

為末:eスポーツとスポーツのe化という2つがあると思っています。Zwiftはスポーツのe化だと思うんですね。つまり外で自転車を漕いでいるんだけれど、こうやって家でデジタルでもできますというのと、一方でデジタルが……

石川:eだったことがスポーツになる感じと、スポーツがeになる感じ?

為末:そうそう。

石川:eのスポーツ化とスポーツのe化。ああ、おもしろいですね。

eスポーツは、年齢も人種も違う人と対等に楽しめる

為末:そういう世界がどんどん来る気がする。そもそもランニングマシンを室内でやるのは、あれもすでにeスポーツですねと言われると、そうだなと思うんです。これはすでに20、30年くらい前からありましたよね。

一方で、そもそもデジタルがないとスポーツが成り立たない、さっき言った牛の胃袋の球がないと成り立たないスポーツみたいな感じで、要はデジタル環境がないとそもそも試合ができない、というのがいわゆる本流のeスポーツじゃないかと思うんです。

その世界も、どのへんまで着地するのか僕はちょっとよくわからないんですけれど、おっしゃるように世界中にいろんなつながりができる。

もう一方で、なんとなくおもしろそうだなというのが、相手の姿が何者かわからないまま試合が始まって終わるということもある気がします。つまり、アバター同士が戦っている状態だと、相手がどこの誰かよくわからない状態のまま最後まで戦って、試合が終わっていくこともある気がしているんです。

そうなってきたら、いよいよ未来っぽいですよね。みんなが仮想スタジアムの中に入っていって戦っている様子を見るみたいな感じ。今はまだ2次元じゃないですか。『ストリートファイター』とか、あの中に入って見るような世界が来たりするとおもしろいかな、とか勝手にいろいろ考えていますね。

司会者:おもしろいですね。考えてみると楽しいですよね。可能性は無限大じゃないですか。これからどんなふうに発展していくか。どんなアイデアを出せば、VRとかで実際に落っこちるようなことが体感できたりするのかとか、しかも風が出てきたりとか。体感型というのがどんどん進化してきていると思うんです。謎の相手と誰だかわからないまま(試合をする)。

為末:謎の相手ということは、たとえばVRを外してみると、対戦相手が80歳とかもあり得るわけですよね。人種が違うとか。そういうスポーツは今まであんまりなかった。

おじいちゃんの格好をしているけれど、中身が違いましたということが、リアルに起こるようになると、今後おもしろいかなという気がするんですよね。20歳の若者を60歳が負かせる可能性があるものは、もう囲碁とか将棋とかしかなかったところに、スポーツでそういう新しいものができるのはけっこうおもしろいなと思いますね。

司会者:そうですね。先生どうですか?

勝つことがゴールか、強くなることがゴールか

石川:ちょっと観点が違うんですけれども、僕がeスポーツを見ていて、例えば格闘ゲームを見ていて思うのが、「eスポーツ」をする人と、「e武道」をする人がいるんですよ。つまり、勝つことがゴールの人たちと、強くなることがゴールの武道家みたいな人たちがいます。

為末:極めたい、みたいな感じ?

石川:目先の勝利を追っていくと、実は弱くなるようなことがあるみたいなんです。ゲームとはいえ、人となりがすごく出るんですよ。例えばマラソンでも、「よーいドン!」と言ったときに突っ走る人と、ゆっくり行ってあとから追い上げる人みたいな感じです。その人となりが出るじゃないですか。

そのときに、勝ちたいのか強くなりたいのかで取り組み方とかがかなり違うみたいです。例えば柔道がそうじゃないですか。国際基準になればなるほど、(武道としての)柔道からスポーツ化してきたというか、勝てばいいのかみたいなことがありますね。

司会者:そうですね。

石川:昔からからゲームをやっているような人たちというのは、どちらかと言うと勝つことよりも強くなることや技を磨くことのほうがすごく重要に考えています。そこがeスポーツなんて言われたりすると、途端に勝利至上主義みたいなのも入ってくる。

司会者:おもしろいですね。そんなふうに考えたことがまったくなかったですけれど、確かに。

石川:それはたぶん僕から見るとスポーツをしたいのか武道をしたいのかの違いなんですよね。スポーツと武道でけっこうおもしろいのが、目的が勝利であるのか、自身を修練するというか鍛えることに興味があるのかの違いなんです。

「子どもの脳の発達を一番促すものは何なのか?」という研究があって、武道がいいと報告されています。それこそテコンドーとか空手とか合気道とかなんです。なぜか武道が子どもの脳の発達をすごく促すんです。

司会者:集中とか、そういうことでしょうか?

石川:たぶんそれは礼儀作法とか、相手のことをきちんとリスペクトするとかなんですね。もっと言うとたぶん自分自身を鍛える、自分を見つめるということだと思います。

表eスポーツと裏eスポーツ

司会者:自発的にどんどん……私も幼児教育、モンテッソーリ先生をしているんですが、やっぱり教育というところでは自発的に、脳の発達は2歳くらいからなにか物を触って「これは何だろう?」「食べられるのかな?」というところからどんどん動くじゃないですか。

たぶんそこがどんどん進んでいくところでリンクしているんでしょうね。私、武道は知らなかったのでおもしろいですね。確かに精神を高めて自分を見つめて、「自分の弱かったところはどこだろう」とか「どうしたらきれいに向こうにパンチが届くのだろうか」とか、そういうところはつながってくるんでしょうか。

石川:そう、おもしろいんですよね。たぶんeスポーツとe武道に今後分かれていくんじゃないのかなとか思います(笑)。

司会者:おもしろいですね~。

為末:〇〇道みたいなね(笑)。表……わからないけれど、表千家とか(笑)。

司会者:裏千家、表千家みたいな(笑)。

石川:表eスポーツと裏eスポーツ(笑)。

司会者:先ほど柔道の例も出してくださいましたが、道を極めるもともとの柔道が、オリンピック種目になって点を取っていくとなると、またぜんぜん変わってきてしまうことがありますよね。本来の柔道だったら勝てないなど、不思議なことが起きますよね。

アイススケートでもなんでもそうだと思うんですけれど、点を取っていけばいいという話じゃないなとは思うんですが、そこは勝負の世界だったらまた違うかもしれませんね。極めていくというところだと自転車も、自分との戦いであり自分のペースで走っていく。先ほども言っていましたけれど、パッと脱いだらおじいさんかもしれない。

今のスポーツの世界、おじいさんおばあさんがめちゃくちゃ元気じゃないですか。昔の80歳と今の80歳はぜんぜん違いますよね。それは予防医学が進んだり、いろんなことがあるかもしれません。

為末さんはいろんなスポーツの現場に携わってきて、大会でも元気なシニアな世代が多いと思うんですが、どうですか?

時代が人々の生き方に影響を与える

為末:マスターズという大会があって、それは年々参加者も増えています。我々が小学校で始めたときには25、26歳くらいが引退年齢だったんですよ。実際にそのくらいになるとアキレス腱や、いろんなところが痛くなって選手が引退していたんです。

でも今はもう30何歳くらいになっていますね。僕が覚えているのだと、高野進さんという方がいます。その方が30歳すぎまで現役を引っ張ってから、「なんか30歳すぎくらいまで普通現役続けるものなんだね」ということを、僕らは中学くらいで思うようになったんです。

それから僕らが現役終わるくらいになると、30歳くらいまではけっこう平気で、それくらいからちょっと体が痛いのでそろそろ引退かな、と考える。そういうものなんじゃないかという気がするんですよ。昔だと、石原裕次郎さんの若いときの写真、見たことあります?

司会者:あります。

為末:38歳で50何歳くらいの貫禄があるじゃないですか。どういう前提で自分が生きているのかという思い込みが、けっこう大事な気がしているんです。

司会者:ギターのアントニオ古賀さんも、うちの父と仲がいいんですけれど、そんなとき(若いとき)のときの写真を見たら、何歳やろ? と思ったんですよ。今70いくつなんですが、今のほうが若いですし元気ですし。その時代時代の生き方というのが写真に出ていたんでしょうね。

石川:サザエさんもね。

司会者:そうですよ! 波平さん、実はめっちゃ若いんですよね!

石川:波平さん54歳ですよね。

為末:54歳!

司会者:びっくり! なんでしょうね、あの割烹着を見るとほっとしますけれどもね。今の時代、54歳ピンピンしてますもんね! 

バーチャル空間では高齢者も20代の感覚になる?

石川:先ほどの為末さんの手法だと、要は限界は脳が作り出している幻想のようなところもあるんじゃないか、というところですよね。

為末:こういうeスポーツみたいなものがどんどん発展すると、逆側が出てくるんじゃないかと思うんですよ。有名なもので、高齢者の人がたくさん出ている映画と子供がたくさん出ている映画を見て、「どっちがどんな気分になりましたか?」とアンケートを取るんですね。

実際はそれは関係なくて、映画館から外に出てくるまでの歩行のスピードを取っているという実験があるんです。見事に高齢者の人が多い映画を見た人の歩く速度のほうがゆっくりになるんですよ。

自分が何であるかなんていうのは、所詮どういうモデルで生きているかだと思うんです。eスポーツの中だと自分がいつも20代みたいになっていて、これが終わったあとだけめちゃくちゃシャキシャキ動いて、2日くらい経ってだんだん高齢者になってくるとまたやる、みたいなことがあるかもしれない(笑)。

バーチャルなんだけど、そもそも日常はバーチャルじゃないんですか? みたいな観点ですよね。脳科学の人とかはそういう捉え方をしますけど、そんな感じがしますね。

石川:自分のアンドロイドをつくっている石黒先生という方がいるんですよ。石黒先生が言っていたのは、アンドロイドは歳をとらないんです。本当に自分そっくりなアンドロイドをつくっているんですが、アンドロイドは歳とらないのに自分はどんどん歳をとる。だからできるだけアンドロイドに寄せようと思ってそこから整形をしまくっているという(笑)。

司会者:そっちか~(笑)。

石川:アンドロイドに近づこうとしているという(笑)。

司会者:自分が若く、中から……予防医学教えてあげてください(笑)。

石川:為末さんの言うとおり、eスポーツもどっちが本当の自分なのか、たぶんだんだんわからなくなってくると思います。

司会者:結局自分が見て、こうなんだと脳に影響させることができるということですよね。

石川:そうそう。

司会者:自分のペースが最初はゆっくりかもしれないけれど、どんどん走っていくとスピードが上がって、周りがこれくらいで走っていたら自分もそのペースで走れるようになったりするというところもあるんでしょうね。

100年前の常識は「運動しないほうがいい」

石川:予防医学とスポーツということで言うと、そもそも体を動かすことは健康に良いというのは、つい最近わかった話なんですよね。それを最初に発見したのがイギリスのモリスさんという人なんですね。

イギリスに2階建てバスがあるじゃないですか。2階建てバスには2人の人がいて、1人が運転手、もう1人が車掌さんなんですよ。車掌さんは2階に行ったり1階に行ったりして体を動かすんです。そこでモリスさんは「1日座っている運転手と車掌さん、どっちが長生きなんだろう?」という研究をしたんです。給料は変わらないという前提です。

調べる前は運転手のほうがいいんじゃないかと思っていたんですね。というのは100年前の常識は「体は動かさないほうがいい」だったんです。だけど調べたら、行き来している車掌さんのほうが長生きだったというのを発見した。

そのときモリスさんは「よし、自分も運動しよう」というので近所をジョギングしたそうなんですよ。ジョギングを初めてした人がこのモリス先生だそうです。そうすると近所の人は、「いよいよモリスは気が狂った」と、めちゃくちゃバカにしていたんですね。

そういうイギリスで勉強した夏目漱石という人が、「運動するとどうも良いらしいよ」ということを初めて日本に持ち込んだんですよ。

司会者:夏目漱石なんですね~!

石川:(日本で)運動の効用が初めて書かれた本が『吾輩は猫である』なんですね! あの本の中に苦沙弥先生という主人公が出てきて、せっせと動いているんですよ。それは「どうも外国の文献によると体を動かしたほうが健康に良いらしいぞ」という理由からなんですね。だから「体を動かすと良い」というアイデアは最近の話なんです。

司会者:『吾輩は猫である』をそんな感覚で読んだことなかったですけれど、それはおもしろいですね。

石川:読んでみてください。その話が書いてあります。当時の明治の人はびっくりしたと思いますよ。苦沙弥先生はなんて変人なんだと。

司会者:何が起きた!? と。モリスさんもそうですよね。周りが「あの人は自分で体を痛めている」と言っていた(笑)。

石川:そうそう。何をやっているんだ!? と。そういう意味で本当に新しい常識なので、まだまだ日本人の中に体を動かすということが根付いていないんだろうなというのは思いますけどね。

ハーフバイクのおもしろさ

司会者:少しずつフィットネスだったり、トレーニングをしたりストレッチをしたりというところは広がっていますよね。ストレッチはけっこうやるじゃないですか。動いたり、歩く、ウォーキングはいいとかもありますが、いろんな動かし方でもっと広がるといいですよね。

私も「へ~!」というのがこの短い時間であったので、どんどんそういうのが出せていけたらいいなと思います。次のブロックでは、実は為末さんと石川先生に乗っていただくお話が届いているかと思います。実際にふだんは自転車、トレーニングで今でもけっこう乗られますか?

為末:非常に乗りますね。知ってます? 自転車を借りられるじゃないですか。

司会者:はい、レンタサイクル。

為末:あれによく乗ってますね。違う自転車かもしれないですけど(笑)。

司会者:なんだろう、いやいや、意外。普通にレンタルしてるんですか?

為末:あれすごく便利ですよ。知ってますか。

司会者:知ってます。いや、知ってるというかね、為末さんがそれをレンタルして走っていると思うと(笑)。

為末:やってます。

司会者:それを借りてどんなところへ行かれるんですか?

為末:出勤してますね。すみません、普通で(笑)。駅から借りるんです。

司会者:普通に使ってもらうというのは、一番嬉しい使い方ですね。

為末:すごく便利ですね。それで毎日乗ってます。

司会者:よかった。毎日乗られているんですね。先生は乗られてますか?

石川:自転車はですね……。

為末:オフィスにあれがあるじゃないですか(笑)。

石川:ハーフバイクというのを知っていますか?

司会者:ん?

石川:立ち漕ぎする三輪車みたいなものがあるんです。今それに乗っていますね。

司会者:立ち漕ぎする三輪車はどこで乗られるんですか? 街で?

石川:乗るのは代々木公園とか、そういうところなんですけれど、すごく説明しづらいんですよね(笑)。

為末:立った状態でこうペダリングしてる。(立ち上がってジェスチャー)

司会者:こういう動きですか?(立ち上がってジェスチャー)

為末:そうそう、そのままペダルで回っていく。

石川:ハーフバイクという三輪車なんです。

司会者:なぜ、あえてそこにいったんですか?

石川:何か、ちょっと難しいことをやりたかったんですよ。

司会者:う、うん。

石川:ハーフバイクは最近発明された新しい自転車みたいなもので、とにかく乗るのが難しいという評判を聞いたんです。じゃあやってみようと思ったんですよ。

司会者:乗ってみようかと思ったんですね。

石川:まずハンドルが曲がらないんですよ。だから曲がろうと思うと体ごと倒さなきゃいけないんですね。そういうおもしろさもあります。

司会者:ハーフバイクね。ちょっとメモっていいですか。

石川:おもしろいですよ。YouTubeで調べたら出てきます。

司会者:気になった。

石川:我々のシェアオフィスでは自転車の人が多いですよね。

為末:自転車多いですね。

司会者:よかった。今日は実際に乗っていただきます。ちょっとハーフバイクみたいには立っていただけないんですけどね。次のブロックで実際に走って楽しんでいただけたらなと思います。

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