二軸で分析する、顧客の階層と感情

高橋遼氏:続いて「顧客のピラミッド」みたいな話をさせていただくんですけれども、これは顧客の階層と感情のお話です。

ここ、実はすごく重要なお話なんです。まだ買ってくれてないお客様、「トライアル顧客」ということで1回買ってくれたお客様、そして「日和見顧客」という、まあ今日はAの商品買うんだけれども明日はBの商品買ってあさってはCの商品買うというように、その日によっていろんなブランドを選ぶよというお客様、そして「継続顧客」という何回も繰り返し買ってくれるお客様ですね。

続いて「ロイヤル顧客」、その上が「熱狂顧客」といって、そのブランドのことが好きでしょうがないお客様、というピラミッドです。ここで注意しなきゃいけないお客様の階層というのがあります。実はそれが「継続顧客」なんですね。

皆さん顧客の分析をされているかもしれませんが、継続的に買ってくれているので一見すごくいい良質なお客様のように見えるんです。

私たちもこれまでいろんなアンケートをしてきたわけですが、実はオレンジの層のお客様って「なんで買ってくれたんですか? なんでいつも買ってくれるんですか?」と聞いてみると、意外と、家が近かったからとか、とくに不満がないから習慣的に買ってました、みたいな人が非常に多かったりするわけです。

あるアンケートだと、だいたい半分以上の人たちが、とくになんの感情もなく買っていた、みたいな結果が出てくることもあって、要はその感情が整っていない、習慣的に購入されている人たちっていうのがこの中にけっこう多く含まれている可能性があるんです。

これのなにが危険かといいますと、買ってくれてる間はいいけれど来週同じエリアに他の新規のお店がオープンしたり、来週ほかのブランドの商品が値引きのキャンペーンを期間限定で行ったときに、ぜんぶ浮気しちゃうようなお客様がこのなかに含まれているということなんですね。

継続顧客なので、顧客基盤をつくれていそうに見えるんですけれども、実はぜんぜんそんなことなくて。感情が伴った購買っていうのをつくっていかないと、すぐにお客さんっていうのは他社のキャンペーンによって浮気してしまうというお話だったりします。

この差は非常に大きいと思ってまして、どうやって「ロイヤル顧客」、もしくは「熱狂顧客」に変えていくことができるのかが重要になっていくんじゃないかなと思っています。

「買ってくれた=好き」なわけではない

90年代には、CRM(Customer Relationship Management)という考え方がはじまって、いろんなソリューションツールとか導入されてきていたんですけれども、アンケートをとると9割以上が失敗に終わったみたいなことが言われていたりします。

失敗にはいろんな原因があると思うんですけれど、やっぱり購入量とブランドへの愛、これを私たちは「熱狂度」と呼んでるんですけれども、この「熱狂度」を混同してしまったために起こったんじゃないか、失敗したんじゃないかなと思っています。

買ってくれてるから私たち(ブランド)のことが好きなんでしょ、とブランド側は思いがちなんですけれど、実は買ってくれた人とブランドのことを好きな人と、更にはブランドのことを誰かに勧めたい人ってぜんぜん違う人種だったり、ベクトルだったりします。なので、これらのベクトルはそれぞれ分けていかなきゃいけないんです。

よくあるのは友達紹介キャンペーンですね。買ってくれた人たちに、お友達を紹介して会員になってくれたら何ポイント差し上げますとかこういう景品を抽選でプレゼントしますみたいなコンテンツがありますが、だいたいワークしないことが多いですね。

皆さんもうお分かりだと思いますが、そこには感情が伴っていないんです。買ってくれているから好きなんでしょ、という前提でキャンペーンや施策を走らせてしまうと、とくになんの感情もない状態なので、とくに勧める理由もなければ、下手したらプレゼント目的でとにかく入ってよみたいな感じで友達を紹介してしまうということもある。これでは、ほとんどワークしないですよね。

購入後までしっかり描くカスタマージャーニーマップ

私たちとしては「熱狂顧客」の熱量をまず高めて、その熱量が高い状態で人に勧めてもらうということをやっていかなきゃいけないんじゃないかなと考えています。そうすると、まずは感情を高めるための取り組みをしなければいけないですよね。

本当に大切な顧客は誰ですかと聞くと、「お客様全員です」とおっしゃる方たちが多いと思います。それは間違ってはないと思うんですが、本当に本当に大切なお客様って誰ですかと問うたときに、私たちとしてはやっぱりブランドに熱狂してくれているお客様なんじゃないかなと。ブランドのことを好きでいてくれるお客様を本当に大切にすべきなんじゃないかなと思っています。

皆さんのなかにもカスタマージャーニーを引いている方がいらっしゃるかもしれませんが、購入がゴールで終わってしまってるカスタマージャーニーってのがよくあったりするんですね。

ところが、これからマーケティングファネルが主戦場になってくるとすると、購入をしてからお客様の感情が高まって熱狂してもらうためには、どんなジャーニーを描くべきかというと、購入後の顧客の熱狂までがカスタマージャーニーの最終到達点なんじゃないかなと、ここまで意識をして設計していかなきゃいけないんじゃないかなと思っています。

ということで、まず1つめのお話ですね。なぜ今「熱狂顧客」に注目すべきなのかなんですけれども、マーケティングは「宗教の時代」に入った。今入っていますので、顧客が持つ文脈価値によってブランドの輪郭が形作られていますよ、というお話をさせていただきました。

そのなかでお客様を囲い込もうとするのではなくて、彼らが熱狂しているポイントを理解したマーケティング活動をすることが不可欠になってきますよ、というところが前半の重要なポイントになっています。

モノとサービスに対する2つの考え方

2つめ、その「熱狂顧客」はどんな人なのかを知る、というお話に入っていきたいと思うんですけれども。

本当に大切なお客様はブランドのことを愛してくれてるお客様、というお話をさせていただきましたが、ブランドに向けられている熱量、どういうふうな愛だったり、どういうふうな熱量がブランドに向けられているのかということを、どんな文脈のなかでそれを発揮されているのかということを理解していかなきゃいけないですね。

先ほど製品を中心としたコミュニケーションの限界というお話をしましたが、ここではサービスに関する2つの考え方というのをご説明します。

世の中には、サービスに対する考え方というのは2つあると言われてます。1つは「グッズドミナントロジック」という考え方ですね。この世のすべてのモノはかたちのある物とサービスに分かれますという考え方です。まあ当たり前の話ですね。モノとかサービス、というお話です。

今回お話しするのは「サービスドミナントロジック」という考え方です。このサービスドミナントロジックというのはおもしろい考え方といいますか、ちょっと変わった考え方をするんです。この世の中のモノは、物を伴うサービスと物を伴っていないサービスがあって、両方ともサービスなんですよ、という捉え方をするんです。

顧客の熱狂を考えていくときにはこのサービスドミナントロジックで物事を考えることがすごく重要になってきます。なぜかというと、サービスドミナントロジックにおける消費者の捉え方っていうのは、普通と異なるからなんです。

グッズドミナントロジック、この世の中のモノは物かサービスに別れるよという考え方のもとでは、消費者のことを企業が作り出す価値を単純に消費する人だと捉えているんですけれども、サービスドミナントロジックのなかでは消費者のことをこうした存在とは捉えていないんですね。

消費者、つまりモノを買ってくれる人たちを、企業と共創して価値をつくる価値共創者であると捉えています。消費者のことを、価値を一緒につくる人たちだという見方をするんです。

顧客と一緒に価値をつくる「サービスドミナントロジック」

これがすごい重要な考え方なんです。(スライドを指して)例えばこれはいかにも高級そうなレストランの絵ですけれども、これが12月24日の夜だと思ってください。

ここに男性が集団で入ってきて、「とりあえずビール!」みたいな注文をするのって普通想像しづらいですよね。まずそういう人たちっていないですし、いたとしても相当空気読めてない人たちだと思うんですね。

イメージするとしたら、男女のカップルで、ちょっと小綺麗な格好をして、みたいな感じじゃないですか。

そういうシーンを考えたときに、この高級レストランの価値を誰が最大化してるのかという視点で捉えたとき、レストランができることというのは、店内を隅々まで綺麗にすることだったり、すごく美味しい料理やお酒を出すことなんです。

その中ですごくいい感じのカップルが、いい感じのシャンパンを頼んだりすることは、基本的にレストラン側ではコントロール不可能ですよね。そこで価値をどうやって最大化しているのかを考えると、その価値を 一緒につくっているのはお客様である、という考え方ができますよね。

レストランの格付けは、そのレストランだけじゃなくて、そこに来るお客様が一緒につくってるんだよといったことは、レストランの場合よく言われるんです。

この考え方を皆さんのブランドにも当てはめていく、というのがサービスドミナントロジックの考え方です。お客様を価値共創者、一緒に価値をつくっていく人たち、パートナーであると捉えているんですね。