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仮想通貨の課題と未来の可能性(全2記事)

クラウドファンディングとICOの決定的な違いとは? ビットバンク社長らが予測する、仮想通貨事業の未来

2018年6月17日、ベンチャー経営に関わる起業家を中心としたメンバーが一堂に会する「G1ベンチャー2018」が開催されました。第3部分科会の「仮想通貨の課題と未来の可能性」には、ビットバンク廣末紀之氏、京都大学公共政策大学院の教授・岩下直行氏、弁護士の増島雅和氏が登壇しました。福岡市長の高島宗一郎氏をモデレーターに、「通貨圏の次の一手」になり得る可能性を持つ仮想通貨の今後について語り合いました。

ICOで資金調達のあり方は変わるのか

高島宗一郎氏(以下、高島):ICOないし、仮想通貨による取引が盛んになってくると、「資金調達のあり方もこれから変わってくるんじゃないか」「資金が集めやすくなるんじゃないか」というようなお話もあります。

先日エストニアに行った時に、福岡のゲームの企業がエストニアでICOしていたり。もしくは、愛知県でしたかね、市町村レベルでICOなんていう話題も出ておりました。

今後、資金調達のあり方が、仮想通貨の分野が盛んになっていくことによって、廣末さん、今後どう変わっていって、どのような良い未来が開けてくると思いますか?

廣末紀之氏(以下、廣末):これも規制次第だとは思います。ただ、2014年だったと思いますけども、世界で最初に行われたICOがイーサリアムなんですね。そのイーサリアムのICOは、僕もちょっと参加をしたんですけども、とても、もう震えるぐらい感動しました。

ヴィタリック・ブテリンさんが、ホワイトペーパーということで技術仕様をWebサイトで書いていて。ビットコインで支払って、代わりにそのイーサリアムを払い出す仕組みだったんでした。

だいたい当時の金額で、2ヶ月ほどで30億円ぐらいの調達を行ったんですね。これは私が何に重ねたかというと、インターネットが出る前に、まさか自分たちがメディアになるようなことなんてできないと、みんな思っていた。

情報が、ラジオ、テレビ、新聞とか、マスメディアに牛耳られていて。そこに「情報の収集と配信」という機能が集中をしたわけですけども、インターネットによって個人でもWebサイトで、情報発信とか収集ができるような世界ができたわけですね。

これと同じように、仮想通貨のストラクチャーをうまく使えば、今までできないと思われていた個人だとか、あるいは、プロジェクト単位のものも、発行体になることができる。いわゆる、その会社というフレームワークを超えて、グローバルでそういうことができるようになるのは、革命的な仕組みだなと思って感動したわけですね。

当然、それに目を付けて、調達(ICO)をしようという動きは、去年から今年にかけてたくさんあったんですけど。今ある問題というと、最低限のルールセットができてないので、発行体と投資家の情報の非対称性が、あまりにも大きい。

これはある程度整備をしていかなきゃいけない、と思ってるんですけども、ICO自体を「これはもう詐欺だ!」「禁止だ!」というのは、それはちょっとわかってなさすぎだなと僕は思ってて。いいかたちで使えば、今まで直接金融の恩恵を被れてなかった個人とかプロジェクトというのに、資金の還流ができるようになるわけで。こういうものは、ルールをつくったうえで、積極的にやるべきだと思います。

一面だけを見て「禁止だ!」って言ってるのって本当ナンセンスで、僕は事業者として、ここというところのルールをつくっていくことで、できるだけ推進をしたい。今言われている「交換業のライセンスがなきゃできない」みたいなことも言ってるんですけど、それもあまりにも規制が過大すぎて、産業の広がりってできないのかなと。

例えば、ライトな基準をつくってエントリーをしやすくするとか、そういうことをやらないといけないと思いますね。ここは日本にとっても、非常に大きなチャンスだと思いますね。

クラウドファンディングとICOの大きな違い

高島:すみません、ちょっと初心者の質問なんですが。

クラウドファンディングでお金を集める部分と、いわゆる仮想通貨で、ICOというかたちで集めるのとで、決定的なメリット・デメリットや違いってどこにあるんですかね?

廣末:そうですね。クラウドファンディングは、資金の出し手と、発行体との関係が、その瞬間に終わってしまうことがあって。

ICOというか、クリプトの仕組みを使うと、あたかも会社と投資家のような、けっこう継続的な関係が構築できるという。そこがクラウドファンディングとの大きな違いかなと思いますね。あと、価格もありますね。

岩下直行氏(以下、岩下):付け加えさせていただくと、クラウドファンディングだと返さなくちゃいけないけど、ICOだと返さなくていい。ノーオブリゲーション。これがICOの最大の特徴であり、最大の問題です。

結果として、ICOをやりたいという人たちは山ほどいます。山ほどいますが、残念ながら、そのICOによって調達した資金によって、目覚ましいイノベーションが起こったことはない。今、ヴィタリックのイーサリアムの話がありましたが、その話以外に私は聞いたことがありません。

去年から今年にかけて、いわゆるICOによって2兆円ぐらい資金調達されています。これはほとんどが返す必要がないお金です。ある人たちは夜逃げというか、持ち逃げしてしまいました。ある人たちはまったく何もつくっていません。ちょっとだけやってる顔をしてる人たちも、ほとんどビジネス的には成功していないようです。

あるいは、ICOとしてトークンを100億円発行しますと。100億円発行したトークンをセカンダリーのマーケットで売ると、これが400億円に値上がりします。したがって、100億円投資した人は4倍に収益があがります。しかし、今そのトークンがいくらになってるか、市場価値で50億円にしかなっていない。例えばそんなプロジェクトがあります。

そうすると、プラスになった人は、発行体が100億円プラス。プライマリーマーケットで買ってセカンダリーで売った人が300億円のプラス、セカンダリーマーケットで買って高値づかみしちゃった人は350億円のマイナスです。さらにあと50億円ありますが、私はいずれゼロになると思いますので、結局、高値づかみした人は400億円のマイナスになると。

高値づかみした人の400億円の犠牲のもとに、プライマリーマーケットの300億円と発行体の100億円が出されるという。一種の宝くじのようなものだと思いますが、果たしてこれがまともな金融のあり方であろうか。

あるいは、そのICOの結果、ちゃんとしたイノベーションが起こるということであれば、そういう人を選ぶという。例えば、高い株価のつく会社を選ぶから、その会社は一生懸命開示をして、こんないいことをやろうとしてるとアピールするわけですね。そういうのがまったくないんですね。

誤字脱字がたくさんあるホワイトペーパーとか、ホワイトペーパーなのに「これを参照」とかいって、それがぜんぜん文章として終わってないとかですね。とんでもないのがたくさんあって。でも、いきなり買って、「4倍になればなんでもいい」という人たちが買ってるんで、これは良いものを見極めるとかという話じゃぜんぜんなくなっちゃってる。

それが今、大きな問題で、これを放置したまま「ICOだからイノベーションだ」(と言うのは違うと思います)。それは確かにタダでお金が100億円もらえりゃ、それはうれしいですよ。でも、「そのために他の犠牲者をつくるのか」「社会の金融の秩序を壊すのか」というと、それはやはりよろしくないだろうというのが、たぶん中国がICOを禁止した理由です。

そして、同じような理由で、金融庁もICOに対してはかなり厳しい警告というか、注意喚起を昨年(2017年)の10月に行っています。ただ、日本は禁止はできません。法治国家ですから、ちゃんと法律をつくらなければならないので、そういう意味では、やりたい人はやってらっしゃるということだと思います。

ICOの基本ルールはどう作るべきか

高島:今の「返さなくていい」という表現が誤解を生みそうで、要するに「ICOしました」って言って、とにかくお金だけ集めて、非常にずさんなかたちでのホワイトペーパーを出すという人も出てくるんじゃないか、ということは非常に気になることです。これについて、廣末さんとして、反論あるかと思うんですが。

廣末:いや、ある意味、まったくルールがないからそういうことが起こるのは、そうだろうなと思いますし、証券市場ができた当初、証券詐欺みたいなのが山ほどできたのと同じようなことですよね。

そういうところから基本的なルールというものをつくって、「投資家の保護」と「発行体の後押し」が両立するようなルールをつくるべきだと思いますし、それは僕も必要性を感じます。なにもルールがない中でやるべきじゃないと。

ただ、そこも程度の話なんですよね。やりすぎちゃうと、結局今までできなかったことが、できるようになったにもかかわらず、それがあまりにも重い規制をやることでやりづらくなってしまうようなことが起こったら、これはもう本当に本末転倒だと思いますし、「いいかたちでやれるようにするにはどうするか?」という視点で考えないといかん、と思いますね。

なので、ここは業界団体も、ICOに関する基本ルールセットはつくっていこうと思ってますけども。やはり長期的にみても、いたずらに禁止だとか、今はトラブルが多いからといって、その芽を摘むべきじゃないと思います。

高島:ICOを自治体がする話も最近あるわけですけれども。例えば、自治体は市債を発行できるわけですね。非常に安い金利で市債を集めることができて、しかも、返す時に自分たちの財源だけじゃなくて国からの交付税措置もあるというようなかたちになれば、行政にとっても、市債は非常にメリットがあるわけなんですが。ICOをした時のメリットってどういうものがあるんですかね?

廣末:いや、ですから、デット(負債)による調達が適してるんだったら、それをやればいいと思いますし、ICOみたいにエクイティ(株式資本)的な使い方のほうがマッチするんだったら、それはそれでかまわないと思うんですね。どっちでもいいと思います。

僕も、実は沖縄が非常に歴史的におもしろかったんで、沖縄に「琉球コイン」をつくって、アジア圏のハブの構想を沖縄に提案をしたことがあって。そういうようなことも、ストラクチャーによっては、十分活用ができる話になると思いますね。ただ、従来の金融の方法論で、デットに耐える必要性もないと思います。それは内容次第だと思います。

仮想通貨の取引所などの安全性は?

高島:はい。さて、残り15分になりました。みなさんそれぞれいろんな視点から、聞いてみたいこともあるかと思うので、質問タイムに入りたいと思います。

(会場挙手)

質問者1:先ほど増島先生のほうから、「日本よりも海外で」という話があったと思うんですけども。新しいサービスをやろうとしたときに、トークンを発行しようとすると交換業のライセンスが必要だとか、クリプトアセットの売買をするようなサービス、DAppsみたいなのをやろうとすると賭博に引っかかるとか、確かに日本ではなかなか難しくなってるなと思ってまして。

そこがシンガポールなり、エストニアなりでやった場合、何が解決されるのかなど。逆に海外でやった場合に、まだこういう課題が残るみたいな。海外発でやったときの、もう少し詳しいお話をいただけたらなと思います。

高島:(もう1人の挙手者を指して)先に質問どうぞ。

質問者2:ありがとうございました。私も高島さんと同じぐらいの理解度で、今日は参加させていただいてるつもりです(笑)。努めて明るい未来を見ようとしても、聞いてるとなんとなく「ヤバいかな」という感じも交錯するんですが。

これ、日本は仮想通貨の取引所などがよく狙われやすいような気がしていて。よく家に空き巣が入るときに、一番弱いところを狙うと言うので、日本が餌食になりそうな感じがしていて。今度、カジノの議論も、国のほうでありますよね。これは大丈夫なのか。それで、何をしておくのが一番大事だと思っておられているか、そのへんを教えてください。

高島:わかりました。では、先に、2つ目のご指摘からちょっと聞いてみつつ、海外への進出の話にいきましょうかね。じゃあ、岩下先生お願いします。

セキュリティ標準とリテラシーの重要性

岩下:何をしておけばいいかということですけれども、私はブロックチェーンはわりといい技術だと思うんですよ。もちろん競争的マイニングが、いろいろな問題をはらんでいるとか、ということは別途ありますけど。今のビットコインなりイーサリアムなりは、そういうもの自体は比較的完成された技術として、上手に使えば、かなり安全に使うことができます。

しかし、ビットコインやイーサリアムを通していたとしても、例えばコインチェック事件やマウントゴックス事件が起きているので日本だけで起こっているように思われがちですが、韓国やシンガポール、アメリカでいろんな事件が起きています。

フィアットカレンシーでは起こりえないような、大金の盗難事件があちこちで起きているので、そういう意味では、当然自分の身を守りつつやらなければいけないし、社会としては、一定のルールをきちんと守っていただきながら、安全にチェックをしていただくことが必要だと思います。

そのために、現在の仮想通貨交換業者の方々向けに、ガバナンス面では金融庁の検査が入っているところですし、技術的な面では、先ほど申し上げた「バーチャルカレンシーガバナンスタスクフォース」のような、民間の団体がセキュリティ標準を一生懸命つくっています。

こういうものをきちんと守っているところ(交換業者)を使うことですね。もともと登録された仮想通貨業者じゃないような人たちもありますけれども。それ以上にまったくなんの許可も受けないで、セミナーを開いて売ってる人たち、実はたくさんいるんですよ。私も東京で、喫茶店に入ってよく仕事するんですが、必ず1組はいますね(笑)。

(会場笑)

仮想通貨セールスをやってる人たち、ものすごいいますよね(笑)。今、秋葉原とか、大手町らへんに行くと、もうすごいもんですけども。それは仮想通貨でものすごい儲かってる人たちが出てきて、世の中に注目されると、そうなっちゃうんですよ。

だから、そういう意味では、一人ひとりのリテラシーというものを上げていくことも、とっても大事ですね。そのうえで、仮想通貨自体が、本来使われる方式で使われるようになれば、これはとても望ましいことだと私は思っています。

高島:はい。個人のリテラシーの話と、それから、国レベルでのセキュリティの話とか。

質問者2:一番心配なのは、マネロンとか暴力団の話ですよね。

高島:そうですね。ありがとうございます。

海外での法規制、その基準

高島:それから、増島さんが海外という話をされていて、最初の質問者の方からそういった質問がありましたが、増島さんから、よろしいですか?

増島雅和氏(以下、増島):長期では、けっこう日本の法制をフォローするようなかたちになってるんです。タイでも日本のように規制を強化するルールができちゃいましたし、インドネシアも今やってるとか。

あとは、先ほどちょっと言いましたけど、シンガポールですらも、ペイメントのルールを大きく変えてるんですけど。今出てるものに、さらにエクスチェンジみたいなものを含めていくような方向になっているので、長期ではだいたい、どこも同じような規制をすることになるのかな、ってことなんですよ。

それってなんとなくわかって。金融のルールってワンパターンなので、「規制をしましょうか」「どんな規制にするべきですか?」というのは、世界そろって同じようなものが出てくる感じなんですね。

僕らが大事だと思っているのは、「それをいつやるのか」ということです。とくにスタートアップの人たちは、規制が早くに来てしまえば、その分だけ世界に出ていかないと……。これはスタートアップの人たちにしか、今、僕の申し上げていることはわかっていただけないと思いますけれども、そういうところが大事じゃないですか。

それによって大企業がグチャグチャして入れないところをどう攻めるかがスタートアップの真骨頂だと思っていますから。その意味では、早くに「お利口になって正しい規制を入れました」というのがいいことかというと、スタートアップ目線では絶対そうじゃないというのが1点ですね。

あとは、G1だからこそちょっと申し上げたいんですが(笑)、G1として、この仮想通貨まわりについて、みなさんの共通認識をどうするのか、とくに「G1ベンチャー」ですから、どういう目線を持つのかが大事になるかと。

僕らはたぶん、廣末さんもそうだし、ベンチャーのところで関わってる人はみんなそうだと思いますけど、今思ってることのアナロジーが、すごくインターネットが出た時と似ていると思うわけですよね。だから、(仮想通貨が)バーッと出てきて、今みんながこぞってこの仮想通貨領域を張ってるわけですけど、感覚としては正しいような気がしますと。

要するに何を言ってるかというと、けっこう世界が変わっちゃうと思うんですね。その分だけ不安定になるんですと。例えば、メディアのところでも、たくさん著作権侵害とか、いろいろ起こって不安定になりましたよね、ということがあると思いますけれども。メディアと同じぐらいに、いろいろ不安定にはなるんでしょう、ということなんです。

その不安定になった分を、既存の昔のメディアが支配していたものに対して、「いろいろ秩序がおかしくなりましたね」というところだけを見て、「ここがこうマズいので、そこを今までと同じ水準で維持するような規制をしましょう」ということをすると、その国は負けちゃうわけですよね。日本はメディア、インターネットで完全に負けましたから。

メディア分野での失敗が繰り返される

増島:今回は「あ、またメディア分野での失敗が繰り返されてる」という感じがしてるんです。既存の金融、既存のイメージ、既存の持っている水準、メリットのほうは置いといて、へこんでる部分をなんとか合わせようとすると、他の国はそういう見方をしてなかったりするので、両方を見てストラテジックに動くという人たちに負けるという。こういう構造に入っていくわけです。

「それがやっぱりまた起こってるぞ」というのが、僕らの感覚ですと。これは結局、ポリシーメイクをする人たちの世代のモノの考え方は、日本はずっとそうなってましたので、その思考の癖で、どうしてもこのへこんでる部分がやっぱり気になる。

へこんでる部分をなんとか上げないと思うんですが、とはいえ下の部分が気になるから、そこを上げるように対策するんですが。これでもう散々負けてきたみたいな部分がある中で、「どうすんだ?」と考えたときに、日本全体が(対策するのが)本当はいいんですけども。

少なくともG1ベンチャーで、なにかモノを共通して見て、どういう意見をアドボケイトしてくのか。どういうことを考えている人を(判断して)支持をして、その人たちをポリシーメイクに影響を及ぼせるような状態に上げていくのか。ここは僕、切にお願いをしたいと思ってます。

どうしても実績のある人、もうすぐ引退を迎える人の力が強くて、僕らはなかなか届かないんですよ。「この状態はまた同じことを繰り返すぞ」ということを非常に強く思っていて。G1ぐらいしか、この状態を支えてくれる人はいないんじゃないかと思っておりますので、ここはすごく強くみなさまにお願いしたい、と思っています。

高島:そうですね。どうこれから見ていけばいいのかというところで、今まだ全体の中でボヤッとしていて、その糸口も今日つかめればな、という思いで参加された方も多いと思うんですが。

ちなみに、日本のストラテジーを考えてる、ポリシーメイクをしてる人は、どういうストラテジーを持って、誰がしてるんですか? そのへん、ちょっと岩下さん教えてください。

岩下:増島さんのお言葉にお言葉を返すようで誠に恐縮なんですが、たぶん私と増島さんのリアルバトルを見たいという方も少なからずいると思うので(笑)。

(会場笑)

岩下:ちょっとだけ申し上げますと、たぶん今の仮想通貨法をつくった人は、かなりベンチャーに対する親和性の高い人たちで。これは日本において、もちろん(国際的な動きとして)FATFの規制も、ガイドラインもありましたけれども、まず日本からこの仮想通貨をきちんと法制化して、みんながビジネスをできるようにしよう、ということを考えた政策立案者の方々、それをサポートした弁護士や官僚の方々がおられましたし。

私も何をやってたのかをよく知ってますので、決して日本が右も左も見えないで突っ走っちゃって、ベンチャーに良くない環境をつくったというような批判は、僕は当たらないと思います。

日本は「とりあえず、なんのルールもなかったらできないでしょ」と、「まずルールをつくりましょうよ」と言ったことが、僕は意味があったと思うし、結果として、日本にたくさんの仮想通貨交換業者ができて、世界のビットコイン取引の6割を取引するまでになったわけですから。私はそこの部分についての育成には、つながったと思います。

問題は、その後のストラテジーをどうするかなんですけど、あの時はまだ時間があったんですね。日本の場合、法律をつくるとかって時間かかるんですよ。

そうすると、その時間の間、ある程度プランニングして変えるのは可能だったんですけど。そんな中で、こんなに早く、去年の高騰、コインチェック事件が、もうあっという間に、半年ぐらいの間にパタパタパタと起こりましたから。

これに対応できて政策が変えられる国なんて、たぶんほとんどないですね。たまたまそういうのに当たった国が、例えば、シンガポールとかエストニアとかあったかもしれないけれども、それはほぼ横一線ではないかと私は思います。

(会場挙手)

高島:はい。もう最後の質問になります。どうぞ。

規制に対してスタートアップ側はどうするのか

質問者3:通貨って結局全部仮想じゃないかという仮説があるんですけど。金(きん)だって、別にそんな、アステカではなんの意味もなかったとかいう話もありますし。

ですから、仮想通貨を最初につくった人は、そういう意図もあったんじゃないかなと思うんですが、体制からいろいろいじめられる……って言ったらあれですけど、少しいろいろ心配される理由になってるような気もしてまして。

これが例えば、さっき言われていた、10年とか20年先の世界だとしたとすると、つぶさないためには0.5歩(先を)見ないといけないわけで。そういう意味では、もし法制化が追いつかないんだったら、違う方法がないのかとか。例えばサンドボックスとか、非常に限定した範囲で、とにかく技術と知識の醸成と、それから、今までにないガバナンスの仕組みとか。

とにかく、つぶさないために、かつ保護もできるというような、なにかそういう仕組みを活用することについて、なんらかができないもんかと増島さんに聞きたいなと思います。

高島:じゃあ、増島先生、どうぞ。

増島:正直、規制は規制でこう動くんですと。(その規制の動きに対して)スタートアップ側は、どう対処するのかをストラテジックにやるということですよね。時間効果を狙う、国をズラす、ナラティブを使う、実はいろんな方法論があって。それに成功すると勝てるという、そういう世界なので。 僕は、各会社が知恵を総動員をしてやるものだと思っていて。なので、「国がやってくれますね」みたいなのに、「じゃあ、(国が)やってくれるので、僕も助けてください」みたいなのは、スタートアップ的には甘っちょろいわけですよね。そんなもんでどうにかなる世界ではないんです。

仮想通貨はとくに、金銭的な価値を扱ってるんで、世界中の人がすごい勢いでやってるわけですよ。なので、なかなか「政策をやって、その政策の枠内でぬくぬくしませんか」みたいなのは、たぶん発想として違うだろうと思いますと。

でも、日本の国の中でなんかやってくれるとすれば、基本総攻撃を受けますんで(笑)。総攻撃の中で「この範囲だったらいいじゃないですか」という制度が存在すれば、それはちょっとは役に立つんじゃないですかという感じはしてますし、だからこそ、我々が、サンドボックスの提案をして、これを動かすと。

7月から動き出しますけど、ここにはありとあらゆるものを投げ込んで、少しずつ壁を削るように壊していく、というのをちょっとやっていこうと、こんな感じだと思ってます。

高島:お時間になりました。本当にゴールというか、みんなで明確に1つの方向性が見えてなくて、今その過渡期のざわめきの中にあると思うんですけれども。

誰かということではなくって、スタートアップ側から、それから、規制側から、そして、プレイヤー側から、みんなそれぞれの立場から、いろんなチャレンジをしていきながら、この分野でも日本がしっかりと戦略を持って、日本が遅れていかないようにね、みなさんでチャレンジし続けることができたらいいな、と思っております。

すばらしい3人のパネラーのみなさんに、大きな拍手をお送りください。ありがとうございました。

(会場拍手)

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