「何をやらせてもダメだった」
引きこもりのような主婦がNewsPicks副編集長になるまで

トークショー

「仕事2.0 人生100年時代の変身力」を執筆した佐藤留美氏が2018年8月10日、新著刊行を記念してトークイベント「変わる時代の変わらないリスク。ちがう明日を生きるための『仕事2.0』」に登壇しました。書籍のテーマと同様に、多様かつ柔軟な働き方をすればどうすればいいのか? 専門家や実践者をゲストに迎えて議論しました。本パートでは、佐藤氏本人が自身のキャリアパスを振り返り、書籍を執筆した理由などを語りました。

異色の経歴を持つ佐藤留美氏

司会者:みなさんこんばんは。島崎と申します。今、エッセンスという会社でフリーランス人材と企業のマッチングをしてるのですが、昨年One HRという団体を立ち上げまして、共同代表を就任させていただきました。

昨年から、One HRで何回かイベントをやらせていただいてるんですけども、2回ほど佐藤さんにはご登壇いただいておりまして、今回は新刊を出されるということでもうこれはイベントをやるしかないということで、出版記念イベントをさせていただきました。

佐藤さんは、このあと詳しく説明いただくんですが、NewsPicksの副編集長をされていました。もともとは人材関連会社で勤務されていて、そこからフリーランスになられて、NewsPicksの編集部に入られた、という異色の経歴を持った方です。

おそらく緊張されてると思うんですけど、ちょっとずつそれがほぐれていくと、いい感じでみなさんに温かさが伝わるんじゃないかと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

ではさっそく進めさせていただきます。どうぞ、座っていただいて。最初に佐藤さん自身の仕事アップデート遍歴ということで、この『仕事2.0』という本を書いた著者として、これまでどのようにアップデートをされてきたのかということをお話しいただいてよろしいでしょうか。佐藤さんお願いします。

佐藤留美氏(以下、佐藤):こんばんは、みなさん。今日はお集まりいただきまして、お暑い中、本当にありがとうございます。NewsPicks編集部の副編集長をしております佐藤留美と申します。本当に今日はありがとうございます。こんなえらそうに『仕事2.0』なんて本を出させてもらって何様だって感じなんですけど……。

司会者:大丈夫ですか? だいぶ緊張してる(笑)。

(会場笑)

佐藤:私本当に緊張するんですよね。性格が内向的で書くくらいしかできないんですけど、こうやってなんかやれって言うから(笑)。

(会場笑)

「どういう経歴か」というと、この本の副題が、「人生100年時代の変身力」というタイトルでして、その概要についてはのちほど話すんですが、私自身がこう変身してきましたというのを(このスライドに)書きました。

こんなふうに本を出したり、キャリア論を偉そうに語ってますけど最初はもう学生結婚をしまして、就職活動もしてないし、学生結婚だし、本当ダメ人間で。夫の仕事の関係で専業主婦をするというのをやってたんですね。

引きこもりのような主婦をやめてキャリアのために働きはじめた

佐藤:それがもう本当に適応できなくて、布団を干したりする生活だったんです。そんな引きこもりのような主婦の暮らしをしていて、もうこれは嫌だと。好きで結婚したんですけど、主婦ってこんなにつらいのかと思って。

それでそのとき出始めのマッキントッシュをローンで買いまして、それで泣きながらマッキントッシュでDTPの勉強をしまして、30万円くらいしたかな、3ヶ月DTPのスクールに通いまして。

それで「グラフィックデザインができます」って適当に履歴書に書いて、キャリアデザインセンターの編集部に潜り込んで、編集者になったんです。

1996年、1997年くらいかな、それぐらいに大学を卒業してると思うんですけど、「これはダメだ」「専業主婦はつらい」「働きたい」。でも今みたく新卒採用が30歳までOKとかいう時代じゃなかったんですよ。

もう「あなたダメです」みたいな感じになっちゃうんで、30歳まではセカンドチャンスOKにしてあげてほしいんですけど。それで、そのときに出始めのパソナとかに駆け込んだんですよ。

そしたら、なんか私「(タイピングを)打ってください」とか言われてカウントされて、「はい、(打てた文字が)何文字です」みたいな。それがやたらダメで、もう何をやらせてもダメなの(笑)。それでもうやれる職種が受付などで、受付とかもやってました。

司会者:そうだったんですか。

執筆した記事が朝日新聞の記者の目に止まった

佐藤:ただいるだけの仕事もつらいと思って、それで技能を身に付けなくてはというさっきの話に繋がるんです。マッキントッシュを……今マッキントッシュなんて言う人いないね。Macを学びに行って、それで上京して、編集者になるとこまでは今のところはいけたんです。それが25歳くらいだったかな。

キャリアデザインセンターって今もあるんですけど、当時は紙の雑誌を出してまして、その紙の雑誌の編集部、編集をやってたんです。そのときに「社員の平均年齢28歳の会社に転職しろ」って記事を書いてたんですよ。自分でもね、なんで社員の平均年齢28歳の会社に転職しろって言ったのか根拠は忘れてしまったんですけど(笑)。

司会者:(笑)。

佐藤:Sonyの平均年齢と何かを足したり割ったりとかいろいろしたんだと思うんですね。この年齢がいいとかって仮説を作って書いたら、ある新聞社が取材に来たんですよ。面白いからなんで28歳なのか根拠を示せって言われて、慌ててなんかもう根拠を示したりとかしたんです。

そうしたら、その新聞の記者がすごくいい人で、「ちょっと面白いから系列の週刊誌で書きませんか」って(言われて)書いたんです。そのときにキャリアデザインセンターって副業OKでもなんでもないんですけど、自社よりその新聞社の方に通ってたんですよ。

司会者:そうなんですか。副業が本業みたいな。

佐藤:そうそうそう。とにかくその面倒見のいい人がいて、記者というのかジャーナリズムのイロハみたいなところから教えてもらって。副業なのに教えてもらって、トレーナーみたいないい人で、その人がまた今度「SPA!」や「東洋経済」の編集長をガンガン紹介してくれて。

それで「(NewsPicksを)やってみない?」と言ってくれたのが前の編集長の佐々木(紀彦)なんですが、そのときに出会ってから13年ぐらいの付き合いです。今の編集長の金泉(俊輔)は「SPA!」の編集長だった。彼もそのときに出会った。

司会者:その新聞社の方が恩人なんですね。

佐藤:そうですね。

会社に申し訳なくなってフリーランスの道を歩み始めた

佐藤:副業を2年くらいやってたら、あまりに会社に申し訳ない状況になってきた。ものすごい自分で言うのも何ですけど、会社には貢献して、記事の人気投票もかなり上位の方だったんで、表彰してもらったり。会社にはそれなりに貢献してたんで文句はあんまり言われなかったんですけど、さすがにこれはちょっと体がもたないなと独立したのがちょうど30歳なんですよ。

フリーランスになって、10年間フリーで会社も作って、東洋経済とかPRESIDENTとか日経WOMANとかいろんなところで、会計や労働についていろんな記事を書かせてもらいました。

司会者:この間、「すごい楽だった」っておっしゃってましたよね。

佐藤:楽?

司会者:楽というか、楽しかったって意味で。

佐藤:あ、楽しかったという意味。最初フリーランスになったばかりのときはなんの仕事でも受けてたんで、エロから株までとか言われて。

司会者:ええ、そんなときがあったんですね。

佐藤:だけどその面白いなとか思ったのは、33歳くらいかな、ピタッとそういう他のファッションとか株とかそういう仕事がこなくなって、キャリアとか労働観という仕事しかこなくなったんですね。

そのときに仕事というのは自分で探していくんだなって、勝手に専門性とか決まっているんだなと思ったというのが、けっこう大きかったですね。それはもう終わりまして、独立したらおかげさまで営業することもなくけっこう順調にやらせていただいていたんですが、すごく最後の方って同じような仕事ばっかりになってるんですよね。

「さよなら、おっさん」に込めた想いについて

佐藤:なんか退屈になってきたなってときに、前の編集長の佐々木が東洋経済を辞めてNewsPicksに移籍するって言って、「佐藤留美さん来ない?」というんで、それで編集部の立ち上げに一緒に参加したという。それから4年経ちましたというのが今のところまででございます。

司会者:はい、ありがとうございます。NewsPicksといえばということで、最近話題になりました「さよなら、おっさん」に込めた想いについて聞かせてください。

前にお話ししたときに、おっさんが意思決定を阻害してるみたいな記事をいつか書くみたいなことおっしゃってたのを聞いてたので。これが出たときに、それなのかなと思ってたんですけど。これはどういうことなのか、教えていただきたいと思うんですが。

佐藤:自分もおばさんなので、おじさんとかという年齢差別とかそういうのでは全くなくて、おっさんというのは一つの象徴という意味でつけさせてもらってまして。つまり、古い価値観に固まって、新しい価値観に適応できないとか。

あとなんていうのか、過去の成功体験を振りかざして「俺の時代は二徹三徹が当たり前だった」っていって若手にもそれを強要する人とか、序列意識がすごく高くて、人の名刺を見て「なんとか長」ってついている人とそうでない人で態度を変えるとか。

それに女性や若い人にぞんざいな人。あと自分の会社とそうでない組織に対してばさーっと線を引いて「うちは、うちはさー」みたいな(笑)。「うちの女子はさ」みたいな。いるでしょ?

司会者:(笑)。

佐藤:そういう人って、内と外を分けてる。縦社会というイメージの人もこう定義させてもらったということ。

司会者:なるほど。

100年生きたときの変化適応のリスクを考慮する

司会者:そこからアップデートしないといけないのも、この『仕事2.0』に繋がってくるとは思います。続いて、なぜ今『仕事2.0』なのかということで。これ記事にもあったと思うんですが、この図をちょっと説明していただいてもよろしいでしょうか。

佐藤:なぜ今『仕事2.0』なのかというと、まず変わらざるを得ない時代がきているなと。いつまでも同じ仕事で、同じ会社にいられる時代ではもうなくなりつつあるなということがなんといってもまず大きいと思います。それは私たちが生きちゃうリスクというか。

司会者:生きちゃうリスク。

佐藤:100歳以上もしかしたら生きちゃうかもしれないというリスク、生きることはすごくラッキーなんですが、もしかしたらその80歳くらいまでの資産計画しかなかったら、その後どうすんのというのはすごく不安な時代になってくる。

司会者:そうですね。

佐藤:そうです。それで1つの会社で一生を終えることというのはもう難しくなってますし、職業寿命も会社の寿命も短くなってる。会社の寿命ってみなさんどのくらいかご存知ですか?

24.5歳くらいみたいです。ものすごい短くなってる。職業寿命も短くなってる。私みたいな記者という仕事もAIでできるようになるかもしれないんですが。

司会者:そうですね。実際に日経のAI記者がいますもんね。

佐藤:日立製作所の会長の中西(宏明)さんを取材させてもらったときに、10年くらい前にすべての職業、まだそれをやってるそうなんですけどね、30万人以上いるグループ企業のすべての人のすべての職業を分解してその難度、難しさとかレアさ、希少性とかでその人の仕事の値段を出していく作業をやったそうなんです。

そうしたら大量にいらない仕事、もう必要ない仕事が出てきたっておっしゃっていて、「すごい時代だな」と。だから、すでにその現象は起きていると中西会長が強調してらっしゃったことはとても印象的でして、棚卸しをしちゃうとそういう大企業っておそらくそういう不都合な真実みたいなものがきっといっぱい出てくると思う。それなんですよね。

学生は自由になることよりも安定したい

佐藤:ちなみに愕然としたのが、人々の意識がわりとそこまでは変化していないってこと。

その例として、例えば、これはリクルート就職研究所のデータなんですけど、就活生、大学生は安定して確実な事業成長を目指している会社を支持しているという。安定してる、安定したいというのが80パーセントを超えてまして。

あとさらに実力主義というのはあんまり人気がなくて、終身雇用と年功序列は案外学生さんにも人気があるんですね。半数以上の人が、年功序列を支持してる。こんなのが出てきまして。

司会者:けっこうショックな。

佐藤:ショックで、私は学生さんってもっと自由になりたいんじゃないかなあと思っていたので、これを見たときにけっこうびっくりしまして。

時代と学生さんとか若い人の意識がやや乖離してるんだとしたら、もう早いうちに変身がしやすい時期に『仕事2.0』で世界に壊していくことを、多少過激にでもお伝えしたいなという本当に老婆心でこの本を書かせていただきました。

司会者:老婆心で(笑)。ありがとうございます。ここからはまさにどう変わっていくかというところに入っていくんですけども、企業と個人はどう変身すべきかということで。じゃあまず企業の方を紹介いただけますでしょうか。

佐藤:もうこの説明をさせていただいたら、専門家のみなさまとのパネルディスカッションでこういうテーマを話していきたいんですが、まずは私の方の意見を言わせていただきます。

積極的に外の世界と触れ合うことで自分の市場性が見えてくる

佐藤:普通の大手企業や中堅企業とかにずーっと長年いると上司を見て仕事をするというくせがすごくついちゃうと思うんですね。

それってすごくいいことだと思うんですけれど、一方で、すごく市場感覚というか自分の専門性や自分が満足して仕事してるかとか、あるいは今自分を他社の人が欲しがるかに、やっぱりビビットでなくなっていくことがあると思うんです。

その考えだと私は本当にたまたま偶然でしたけど、朝日新聞の方が声をかけてくれて「寄稿してみない?」って。私のこの程度のものでお金になるんだって、まず最初に副業したときびっくりして、それが上手くなるとギャランティも上がってくるんですよね。

「ああそうか、こういうことなんだ」って。市場性も外に出てみないとわからないので、そういう機会になるんじゃないかなということで、企業も副業を解禁するべきだと思いますし、個人もそういったことにどんどんチャレンジしていくべきじゃないのかなって思います。

司会者:客観的に見られる場を作るということですよね。

佐藤:そうですね。あと企業がTwitterを実名でやっちゃダメとか、霞が関の官僚の人がMessengerも使っちゃダメとか言われているみたいですね。でもすごい私とやり取りとかしてて「なんで使わないの?」とか言ったら「許可制だから」とか言うんですよ。やっぱり官僚って大変だなと。

司会者:すごいですね。

佐藤:そういうことって古臭くないですか? Messenger覚えちゃったり、Slack覚えちゃったりするとメールとか書けないじゃないですか。だからああいうのはどんどん解禁すべきですし、けっこうTwitter発信とかFacebook発信とかなんでも、インスタも全部したいようにさせた方がいいと思います。セミナーとかね。

司会者:そういうところに負荷をかけることで、より若い人が逃げちゃうような気がするんですけど。

佐藤:そう。

キャリアパスの提示は機械にやらせればいい

佐藤:でも、たぶん囲い込みたいというのがあるんでしょうけれど。あと、大胆だと思うんですけど、企業って50歳くらいまでわりと社員の人に気持ち良く働いてもらうために、そのあとのキャリアパスをあえて提示しなかったりする傾向が若干あるのかなと思ってました。

例えば、大企業とか、とくに商社とか、ある商社の人事の人にこのあいだ聞いたら「うちの会社は52、3歳まで役員になれるかどうか言わないよ」みたいな。希望を持たせるようにしていると。でもそれってどうかなって思いまして。

司会者:だからとってそれに備えて、早いところ自分で割り切れる人ってなかなかいないと思うんで、会社の方がちゃんと教えてあげるというか。

佐藤:教えるというのも人事としてつらいのかなとかって思うんで機械にやらせたらどうかなって思って。

司会者:なるほど(笑)。

佐藤:今HRテックの特集を作っているのですが、今や機械があなたの想定し得るキャリアパスをピッて飛ばしてくれるんですよ。日本人ってたぶん多いと思うんですけど、機械の言うことってけっこう信じませんか?

なんか機械占いとかけっこう信じたりとかして。人事がやっても上司が言えなかったら機械にやらせればいいんじゃないかなと思ったりしてます。

司会者:確かに。その方が納得せざるを得ないというか、そうですよね。

佐藤:残りはあとでみなさん方と論じるとして、あとは社員の方としては「永遠のルーキー」というものを使ってますが、いつまでも自分は新人だというような心構えで40歳になっても50歳になっても新しい仕事に抵抗感をもたないでトライするという、そういう心構えみたいなものとかが、やっぱり必要なんじゃないのかなということと。

1つのきっかけとしてやっぱり副業が面白いトライになるんじゃないかなと思ってます。

司会者:この副業2.0というのはどういう意味ですか?

佐藤:副業1.0というのは昔のフリーアナウンサーとかがよく土日に結婚式やってたとか、医者が他の病院でバイトするとか、あんな感じでお金、小遣い稼ぎというかそういうイメージ。スキルの切り売りみたいなのが副業1.0で、2.0はどちらかというとなんだろう、新しいことへの挑戦とか自分の振り返りのための方法として副業を使うという。そういう世界に挑戦してみてはどうかなって。

司会者:なるほど。成長のためですね。

佐藤:そうですそうです。

司会者:なるほど、ありがとうございました!

(会場拍手)

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