都内初の民間校長かつビジネス講師の藤原和博氏

司会者:お待たせいたしました。本日は、ご来場いただきまして、誠にありがとうございます。ただいまから日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム2018・分科会「AI時代を生き抜く」を開始いたします。

ここ数年、メディアでは「AI」や「人工知能」が話題に取り上げられることが多くなってきました。自動運転、自動翻訳、前向きな情報もありますが、見えない時代に不安を感じ、なにをどうすればいいのかわからない、という方もたくさんいらっしゃると思います。

今日は本当に幅広い年齢・職種の方にお越しいただいております。私たち全員に共通するAI時代を生き抜くための重要なポイントをたっぷりとお話しいただきたいと思います。

ご登壇いただきますのは、教育改革実践家としてメディアにも多数出演されております、藤原和博さんです。ご存じの方も多いかと思いますけれども、藤原さんは、都内では義務教育初の民間校長として杉並区和田中学校校長を務め、現在はビジネス研修の講師としてもご活躍中です。

それでは藤原さん、どうぞよろしくお願いいたします。みなさん拍手でお迎えください。

(会場拍手)

藤原和博氏(以下、藤原):じゃあ、あらためまして、みなさんこんにちは。

私はこの10年の間に1,300回を超えるこういう講演……というよりは僕の場合はライブなんですね。みなさんのほうにも1時間半ぐらいの間に7回ぐらい振ると思うので、ブレストとかディベートを思う存分やってもらうので、自分の頭を動かして主体的かつ協働的に学んでもらいたいと。つまりアクティブラーニングというものですね。

藤原和博氏とさだまさし氏はそっくり?

藤原:そういうことなのですが、東京では相当講演会をやっており、どこぞでお会いした人もいるんじゃないかなと思うので、ちょっと最初に聞きます。今日、私ナマ藤原と初めて会う人だけ手を挙げて。はい。

(会場挙手)

わりと多いですね。はい、わかりました。それでは、その初めて会う人に聞きますが、初めて会ったけど、顔をよく見てみるとある歌手に似ているんですね。わかりますか? ちょっと言わないで。隣の人も相談しないでもらって、僕が「どうぞ」と言ったら、でかい声でその歌手名を叫んでいただきたいんです。まぁ、眠気覚ましだよね。

思い浮かばない人もいると思うんですよ。それはぜんぜん構わないの。正解を言うみたいな必要はないから、思い浮かばない人は自分の好きな歌手名をでかい声で叫んでください。負けずに。

浜崎あゆみであろうと、AKBの誰ぞであろうと関係ない。もう本当に、前後左右の人がなんと言おうと気にせず、自分の好きな歌手名を叫ぶ。もしくはわかった人はそのわかった歌手名を叫ぶ。いいですか?

どれぐらい揃うか揃わないか。けっこう若い人たちが多いんだけど、大学生がけっこう多いのかな。あのね、高校生以下だとわからない人のほうが多いんですよね。これぐらいだとどうなのかなと。たぶんね、40代以上の方はほぼわかるんじゃないかと思いますが、ちょっと試してみましょう。いきますよ。

私ナマ藤原に似ている歌手名ね。「誰でしょう?」「どうぞ」と言ったらでかい声でお願いしますね。一番後ろのほうの人は叫ぶようにお願いしますね。いきますよ。はい。では、私に似ている歌手名は誰でしょうか? どうぞ!

会場:さだまさし!

藤原:ほぼ一致してますね。関西でやると、どういうわけかね、谷村新司が混じるんだよね。よくわからないんだけど。

(会場笑)

27歳で「リクルートのさだまさし」の異名

藤原:そのさだまさしさんとは、僕は実は27歳の時に出会ってまして。リクルートの広報課長をやってまして、宣伝課長と一緒に帝国ホテルでお茶飲んでいたんです。そしたら、1番前の人と僕とのこのぐらいの距離で、さだまさしと湯川れい子という作詞家がお茶を飲んでいたんです。

ものすごい偶然だったので、僕のほうはもちろんずっと知ってましたけれども、彼は知らないと思ったのでちょっと驚かしてやろうと思って近づきました。後ろから行って「ちょっとすいません。さださん」と言って、その湯川れい子さんとの話が終わったらちょっと話したいなと思って声をかけましたら、すごい顔して振り向いたんですよ。

ガッと振り向いた時にムンクの叫びみたいな顔をしてたので、これは怒られたかなと思って、僕はもう逃げて帰ってきました。自分の席に。そしたら彼のほうが追っかけてきて、「あなた誰ですか?」「弟より似てるんだけど」ということで。

(会場笑)

まぁ自覚はあったらしいんですよ。当時、僕は「リクルートのさだまさし」としてはもう不動の地位を得ていたのですが、まぁそんなことなんですね。

(会場笑)

彼はこのところ、3歳上なんですが、もう20年前から禁煙で横がちょっと太ってるのね。だから、テレビでご覧になると横が太っていると思います。今、ご覧になっている私の顔のほうがより原形に近い。ということで、当時は原形同士でしたので、本当に瓜二つで。

15分ぐらい話したあとに彼がなにを言ったかというと、「藤原さん、これはなにかおかしい。絶対なにかある。今日、とにかく、これから俺に付き合ってくれ」と。「なんですか?」と言ったら、「親父のところ行くからちょっと話をしたい」と。親父になんか聞きたいというわけですね。なんかどっかでしたんじゃないかということですね。

それで、僕はマネージャーの車で拉致されまして、当時、四谷にありました「さだ企画」。今は(東京都千代田区)二番町のほうにありますが、そこに連れ込まれまして、全従業員呼び集められ、最後にお父さん出て来られましたけれども、全員から指差して笑われたという、こういうエピソードございます。

結果的にはいったいなんだったのかといいますと、あとでわかるのですが、NHKホールのコンサートに呼ばれまして、僕が楽屋に母を連れていったんです。向こうも実は母を連れてきてまして、母と母同士が似ていたという非常に無難な理由でそっくりだったと。それから35年ぐらい経つのですが、いまだに家族同様のお付き合いという感じですね。

教育・ビジネス・著述業で幅広く活躍

藤原:この2年間、僕は奈良市立一条高等という(学校の校長をしていました)。みなさんたいがい知らないと思いますが、ダンスでは全国でベスト8以内にだいたい入っています。奈良県の代表、関西の代表、近畿の代表になることもあります。

それからサッカーですね。サッカーでは、僕の赴任中は2年間続けて夏・冬・夏・冬と奈良県代表をしてましたので、サッカーやる人も知っているかもしれませんけど。今年の冬は横浜桐蔭をやっつけましたので、相当名前を上げたんです。

そういうふうに一条高校の校長をやっていたので、2年間、奈良に赴任してました。奈良では春日大社とか、それから東大寺とさだまさしさんは非常に縁が深いので、境内でコンサートやるぐらいの感じなんですね。なので呼ばれまして、春日大社で一緒に2人でお祓い受けたり、そんなことがございました。

まぁ「教育界のさだまさし」というようなことで、そういう意味では通っているんです。

今日は教育とそれからビジネスと……。そうは言いましても、僕はリクルートで社員としては18年、その後0〜4,500万の間で年収が振れるフェローという会社と対等の契約をして、プロとして新規事業の開発だけをやっているんですね。

余計な会議とか接待とかはやらないでいいと。こういうフェローという仕事の仕方、「客員社員」と訳すことあるんだけど、社員じゃないんです。プロですね。

そういうこともやりまして、リクルートとは25年付き合ってましたし、今スタディサプリの授業をやっていますが、そこに僕の授業は今日やるものも含めて51パターン入っていたりします。

いまだに縁が深いんですけど、そういう意味では半分以上ビジネスパーソンなので、ビジネスでのコミュニケーション技術、それから教育、それから人生というところですね。

僕の著書には『35歳の教科書』、それから「55歳の教科書」と言ってもいいような『坂の上の坂』という12万部売れたベストセラーがありまして。この春に『45歳の教科書』という、つまり35歳、45歳、55歳でどういうことを考えたらいいかという、それぞれの教科書みたいのを書いている作家・著述家という面もあります。

35歳の教科書

坂の上の坂

45歳の教科書

今後10年のあいだに生じる最大の社会的な変化とはなにか

藤原:そういう人生の面と、「教育」「仕事」「人生」みたいな感じで全部ごちゃまぜにしながら、かつ、最近のAI・ロボットがどこまで進化するかということを含めて。たぶん知っている人は知っていると思います、常日頃YouTubeなんかよく見る人は、落合陽一君とかホリエモンと、かなり密に仕事をしていますので、そういうところも織り交ぜながら、みなさんにまず未来のイメージ。

未来といっても、どこか向こうにある未来じゃなくて、今とつながっていく、この今この瞬間とつながっているみたいな。それのイメージを少し固めてもらい、どういうふうに仕事というものは変化していくのか。

変質しない仕事はないです。医者の仕事や弁護士の仕事でさえも、ある部分なくなってしまいますし、ある部分がものすごく変質し、たぶんみなさん仕事をしていらっしゃる方はイメージあると思うのですが、ここから10年ぐらいすると、どんな仕事でもAI・ロボットと協業、一緒に仕事をやるようになると思います。

というようなことも含めてイメージを持ちながら、自分はどういうふうにしたらここから先、まぁ人生の中盤あるいは後半ですね、楽しく生きていけるか、あるいは生きがいを持って生きていけるかという、そのイメージを少し持ってもらったらうれしいかなと思います。

そういう話でいいですか? いい? よければ一応拍手で承認。

(会場拍手)

では、さっそくです。アクティブラーニングですから、まず最初にみなさんにこのお題を振りたいと思います。「今後10年、最大の社会変化はなんですか?」というですね。これは、『10年後、君に仕事はあるのか?』というダイヤモンド社からのベストセラーで今は11刷ぐらいまでなってる本の最初、冒頭で出てくる問いかけなんです。

10年後、君に仕事はあるのか?

と同時に、一条高校の校長として、僕が2年連続して入学式で新入生と保護者を前に問いかけた問いかけでもあります。「今後10年、最大の社会変化はなんだと思いますか?」というのですね。

AIやロボットにコントロールされないために必要なこと

藤原:1人で「う〜」とか考えてもそんないいアイデア浮かびませんので、3〜5人ね。例えば2人と話すんだったら、前の人とパッと後ろを向く。それで4人でいいと思います。2人だけでチャットするのはやめて。そうじゃなくて、バッと後ろを向いて4人ぐらい、3、4、5人を1チームというような感じで、それでブレインストーミングしてもらいたいと思います。

ブレインストーミングというのは脳(brain)の嵐(storming)と書くので、脳がつながるということがすごく大事です。今日の僕の話の中で脳をつなげるとか脳がつながるってことをおそらく100回言うと思うですが、この感覚がこれからものすごく大事になってきます。

その脳をつなげた例えば3〜5人に、将来的にはAIとかロボットがつながってきますので、その感覚を自分のイニシアティブでコントロールできる人だったら、これはいくらでも幸せになれると思うんだけど、それができない人はおそらく従えられるようになる。ネットワークに従えられる人。

まぁ、今でもわりと青山のあたり、そのへん歩いている人たち、スマホを片手にこうやってやっているじゃないですか。僕には半分以上の人が「スマホが人間を連れて歩いている」というふうに見えますよね。

そういうふうにならないように、スマホなんて道具にすぎないので、やっぱり自分の支配下に置くということを当然やってもらいたいんです。そのためには脳をつなげる技術を訓練しなきゃいけないのですが、ぜひ今日はブレストとディベート、6回7回やりますので、やってみてもらいたいと思います。

サッとつながるためには、まずとにかくバカなことを言ったほうがいいです。正解を当ててやろうとか、正しいことをかっこよく言いたいみたいな、例えば、パッとたまたま組んだ3〜5人のチームにすごい美人のお姉さんがいた場合、ちょっとかっこいいことを言いたい男の子の気持ちもわかるんだけど。そこでウケを狙ってバカなこと言ったほうが、とにかくお姉さんにも笑っていただいて、全員が和む。和むと脳がスッとつながりやすくなるんですよ。

みんなが正解を言いたくて、なにかカッコイイことを言いたくて、なんか正しそうなことを出しますと、もう脳が交わらない。脳がつながらないです。だから、ろくなアイデアが2周目から出てこないです。なので、1周目はもうとにかくバカなことの言い合いでけっこうです。

ブレインストーミングの2つのコツ

藤原:今後10年ですからね、まぁわかんないけど、「人間がみんな飛ぶようになっちゃうんじゃないか?」と言ってもいいし、「隕石が当たって全員死んじゃうんじゃないの?」というぐらいのことを言っても全然いいです。正解なんてないので、そういう感じで頭を柔らかくしてもらいたいと思います。

あとは、なにかいいのが出てきたら大げさに褒める。別に驚いていなくても「おお!」とかですね、「おっ、いいじゃない!」みたいな感じで、「いいね!」「いいね!」の乱発。あるいは拍手しちゃってもいいですから。

今僕がさりげなく言った2つのことが、実はブレインストーミングのコツでして。最初1〜2周はバカなことの言い合いをやったほうが脳がつながりやすい。もう1つは、褒めて褒めて褒めまくる。大げさに褒めて酔っ払っちゃったようにやったほうが、後ほどいいアイデアが出てきます。

脳がつながって化学変化が起きるのがブレストの一番大事なところなので、後に説明します。「情報編集力」というキーワードがあるのですが、これが高くなるためには、ぜひこの脳をつなげるということ、技術を磨いてもらいたいと思います。

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