ファッションの定義は10年で激変
『mini』&『ローリエプレス』編集長が語る、SNS世代の価値観

ifs fashion insight vol.2 いまどき女子にとってのファッションを再定義する: めざせ、“いじられ上手”!―SNS世代との「関わり」のつくり方 #1/3

2018年6月27日、「ファッションを再定義する」をテーマに、次代に向けたファッション×ビジネスの新たな視点を提案するトークセッションシリーズ「ifs fashion insight vol.2」が開催されました。今回は10代~20代に支持される『mini』編集長 見澤夢美氏、『ローリエプレス』編集長 遠藤優華子氏が登壇。若年層の女性にとってのファッションにフォーカスしました。本パートでは、この10年の間のファッションの定義の変遷について議論しました。

「ファッション」は洋服を指すものではなくなっている

中村ゆい氏(以下、中村):「SNS世代」とは、今の20代を指しますが、現在の30〜40代の方が20代だった頃とは、かなり違う感覚で「ファッション」や「コミュニケーション」のことを考えています。

SNS世代とどのように関わり方をつくっていけばいいのかは、サービスにしろモノづくりにしろ、共通の(大事な)事項だと思いますので、そのポイントについて、今回みなさんにお伝えしていければと思っています。

そもそも「ファッション」というものの捉え方の前提を、みなさんと共有しておきたいと思います。弊社は洋服ということだけではなくて、(ファッションは)時代のムードを表すものであり、「なりたい自分」や「自分自身の気分」といった自己像を表現するもの、と広く捉えています。

先ほど(冒頭で行われたイントロダクションで)小原(注:伊藤忠ファッションシステムの小原直花氏)からグラフをお見せした通り、最近は情報やコミュニケーションのあり方、とくに「なりたい自分」や「自己表現の仕方」といった面で環境が変わってきていますので、(SNSがファッションを)大きく左右しているというところが、顕著に出ていると思います。

価値観や自己表現をする場所がどんどんと変わっている。とくに今回のターゲット(20代の若者)について言うと、ほぼみんながLINEを使っていて、YouTubeもTwitterもみんな見ている。

この値(21歳~25歳のSNS使用率)が一番高いんですね。先ほどのグラフを、20代だけに限定した数字がこちらです。他の世代では(SNS使用率が)どんどん低くなっています。

ファッションは「なりたい自分」に近づくためのもの

中村:(20代の人たちは)SNSを見たり、使ったりするのが当たり前の人たち。自己表現の場とかストリートと言われていたところが、2000年代ぐらいまでは「街」だったと思うんですけど、今はもう自己表現の場所は、ネットになっているのが現実だと思います。

自分を表すものが、物理的な見た目にプラスして、(SNS上で見せる)自分の画像が「ネット上の見た目」になってきています。ここが今回の話の前提になるかなと思っています。

これ(ファッションの役割に関する20代と30代の比較)は、最新の調査結果なんですけど、「あなたにとってのファッションの役割」について聞いたんですね。そうすると、30代以上は、「自分らしさ」や「自分の内面を表現する」という書き方をするんですけど、20代の方は、先に「こうなるべき」というイメージが自分に対してあって。

「それ(理想のイメージ)に対して合わせていく」とか「作る(コーディネートする)ものだ」という答え方をしているので、そもそも「お洋服」の捉え方も大きく変わっているよね、ということになります。

今回は、「SNS世代にとってのファッションは、これまでと大きく変わってきているよね」ということを、メディアに携わる方から、よりリアルに「実際どうしてるの?」というところも含めてお伝えしたいと思っています。

ここからはゲストの方と、「ifs fashion insight」のオフィシャルモデレーター稲着さんもお呼びして、お話を進めていきたいと思います。今回のゲストは『mini』の編集長の見澤さん、『ローリエプレス』の編集長の遠藤さんです。では、ここからは進行をバトンタッチしたいと思います。稲着さん、お願いします。

稲着達也氏(以下、稲着):それでは、よろしくお願いします。

中村:よろしくお願いします。

稲着:まず最初に、私の自己紹介から。……ファッションの文脈でいうと、いわゆる「青文字系」という単語を作った会社である、と言われている「アソビシステム」という会社で、原宿系のカルチャーを世界へということで、いろんなエンタメコンテンツを作っています。

ファッション&カルチャー雑誌を刊行していたり、『HARAJUKU KAWAii!! STYLE』というWebマガジンをやっていたり。プロダクション事業もやっているので、今回ゲストで来ていただいている(見澤さんが編集長を務める)『mini』という雑誌にも、モデルを出させていただいたりしています。

8年連続ファッション雑誌実売No.1の『mini』

稲着:テーマは、中村さんからお願いします。

中村:はい。テーマは、「めざせ、いじられ上手!」ということでいじられ上手なメディアのお二人をお迎えしました。

稲着:なるほど、はい。「SNS世代特有のファッションとは何なのか」を再定義することと、「いじられ上手」がキーワードになる、と。

中村:はい。

稲着:はい、ではゲストに入場していただきましょう。

中村:お願いします! どうぞ座ってください。

稲着:ではさっそく、見澤さんから自己紹介をお願いいたします。

見澤夢美氏(以下、見澤):よろしくお願いします。宝島社のmini編集部の見澤と申します。(スライドに)書いてある通りなので……(プロフィール)は飛ばしまして。うちの会社は、8年連続でファッション雑誌実売ナンバー1でして、ファッション誌のシェアは約3割を占めています。

もともと『宝島』という雑誌から、スピンオフで『CUTiE』というスナップ写真などに特化しているファッション誌ができました。

そこから、『CUTiE』の男性版として『smart』ができ、「『smart』みたいな格好をしている女の子が裏原にいっぱいいるよね」というところから、『smart』のガールフレンド版として『mini』が創刊されました。現在、ここにあるように、全部で12誌出しています。(現在は13誌)

稲着:はい。

見澤:『mini』に関しては、現在ファッション雑誌5位。前年同期比で116パーセント伸びています。10代・20代が、あまり雑誌を買わないと言われている中で、『mini』は今、伸びていて、まだまだ見込みはあるかなと思っています。月間平均実売部数が15万部を上回るという、結果が出ました。

稲着:このご時世に実売部数をポンと出せちゃう雑誌自体が、けっこう珍しいですよね。発行部数は出しても、実売は出さないところって多いじゃないですか。

見澤:発行部数は言ったもの勝ちなので……(笑)。(スライドを見て)「最新号、2号と続けて完売!」とリリースしたことで、毎日新聞さんだったり、繊研新聞さんに取材をしていただきました。(若い世代が)雑誌だけじゃなく、物を買わないと言われている中で、『mini』が売れてるというのは、やはり世の中的にも興味深いなと思っていて。そういった話を、今日はできたらいいのかなと思っています。

中村:ぜひ、お願いします。

見澤:お願いします!(笑)。『mini』ではストリート感のない女優さんに、あえて『mini』っぽいストリートな格好をしてもらうのが、こだわりです。もちろん、女優さんのオリジナリティーを出すのも大事なんですけど、『mini』の世界に染まっていただくことをより大事にして、いつも誌面(え)作りをしています。

石原さとみさんは、ふだんは絶対こんな格好をしないと思うんですけど、(スライドのような)こういう格好をしてもらったり。有村(架純)さんもそうですけど、イメージがない人でもストリート(な格好をしてもらう)というのが、『mini』の持ち味です。

こちらが最近の付録です。去年から付けているコスメ付録が、目新しいかなと思っています。これは非常に反響も良くて、完売することも多いコンテンツになっています。

かわいくなるための一歩を届けるメディア『ローリエプレス』

稲着:続いて、遠藤さん。

遠藤優華子氏(以下、遠藤):こんばんは。『ローリエプレス』という女性向けの媒体を担当しています、遠藤と申します。『mini』さんに比べて、ローリエプレスをまだ知らないという方も多いかと思うので、ちょっとお時間をいただいて、媒体の紹介からさせていただければと思います。

『ローリエプレス』は、エキサイトが運営している女性向けメディアになっております。かなり前から媒体自体はあるんですけれども、2年ほど前にアプリが立ち上がりました。そこから、今までずっと『ローリエ』という名前だったのですが、『ローリエプレス』と名前を変えて、リニューアルをして、現在運営を行っています。

Webメディアというと、キュレーションというふうに思われる方がけっこう多いと思うんですが、『ローリエプレス』のコンセプトとしては、立ち上がった時からずっと、オリジナルのメディアというかたちで、運営をさせていただいております。かわいいものが好きな女の子たちに向けて、情報を発信しているようなメディアになっています。

続いて、メディアとしてのポリシーは、「かわいい」というのはすごく大事にしているんですけど、それだけじゃなくて、「かわいくなるための一歩をお届けしたいな」というコンセプトを持っています。

なので、本当にかわいくなれる、リアル感あるコンテンツを考えています。生っぽい声とか、なにかそういう……今のユーザーが何を知りたいのか? というかたちで。ストレートに「ニュース」ではなくて、かなり実践的な内容をお届けしたいなというところを軸に、運営させていただいています。

現状はこのようなかたちになっていて、これからますますアプリのダウンロード数も伸ばしていきたいな、と思っています。昨年は総合ランキングでApp Storeで1位を獲得させていただきました。

Web(サイト)もあるんですが、アプリのほうに力を入れて運営していますので、スマホをお持ちの方は、ぜひダウンロードしながら見ていただけると、これからお話しさせていただくことも理解が深まりやすいかな、と思いますので。ぜひ、「ローリエプレス」で検索していただけると出てくると思うので、よろしくお願いします。

自由に使えるお金の使い道の第1位はコスメ

遠藤:ユーザーに関して簡単にご紹介させていただきますと、都市部に暮らす女子がすごく多くなっています。(また)週3回以上、積極的にアプリを利用しているユーザーが、かなり多くなっています。次のページで(ご説明すると)だいたい、年齢層は18歳から24歳の「Instagramが好き!」みたいな、情報感度の高い女の子たちがすごく多くなっていて、その層が90パーセントを占めています。

以前採ったアンケートでおもしろかったのが、ユーザーさんの53パーセントが「インスタグラマーになりたい」と答えていたりすることが、ちょっと独特なデータだなと思っています。

なりたい顔ランキングを採ったときに、1位の石原さとみさんとか、2位の小嶋陽菜さんは、テレビで活躍されている芸能人の方だと思うんですけど、それに並ぶかたちで、ユーチューバーの方だったり、Instagramで活躍されているモデルさんがランクインしています。今どきの女の子たちがこういうものをすごく積極的に見ているところに繋がるのかな、というかたちでご紹介させていただきました。

このあたりの話は、後ほどみなさんにさせていただく予定なんですが、コスメやファッションへの関心が、すごく高いユーザーさんが多くて。インフルエンサーさんに影響を受けやすいというようなデータも、以前採った調査で出てきました。自由に使えるお金の使い道の第1位がコスメだったり。このあたりも、後で見澤さんとお話しさせていただく予定なので、ぜひ楽しみにしていただければと思います。

こんな感じで、「購入した」「調べてみた」「実践した」という方もすごく多くいるんだよということを、ご紹介させていただいております。ポイントとして、インフルエンサーさんを起用してコンテンツを作っているというところもあります。

ただインフルエンサーさんをたくさん抱えているというわけではなくて、媒体の世界観にマッチしていることと、かわいくなるためのヒントを届けたいと思っているので、なんらか(の方法で)自分でそのことを発信できる方。例えば、自分なりのメイク方法やファッションの秘密をお届けできる人を選定させていただいていて、いろんな方のご協力のもと媒体を運営しています。

Webメディアでは珍しい「読モ」制度

遠藤:昨年から読者モデルのローリエガールズという女の子たちにも活動していただいています。SNSを積極的に使っているような10代から20代の女の子に募集をかけて、読者モデルとして活躍してくれる、インフルエンサーにあこがれを持つアーリーアダプター的存在の女の子たちにもご協力いただいて、媒体を一緒に盛り上げています。

関係図としては、支えてくださる一般のユーザーさんが一番多くいて、その上にローリエガールズのネットワークがあり、執筆していただいたり連載を持ってくださっているインフルエンサーさんがいて、成り立っています。

(リアルイベントに関するスライドを見て)あとは最初のところで、「リアル感を大事にしている」とお伝えしたんですけれども、こういったリアルなイベントも実際に行っていて、パーティー形式のものだったり、真ん中はワークショップっぽいコンテンツだったり。

けっこう、ユーザーさんと直接会う機会を大事にしていて、実は今日も座談会企画をやってからここに来ました。いろんなユーザーさんや読者の顔が見えるようなコンテンツ作りをがんばってやらせていただいております。今日は、よろしくお願いします。

稲着:さっそくなんですけれども、今回のこの話の最初に、「この10年間でファッションってどのように変わったんだろう」というところを。とくに最初、見澤さんに(聞きたいです)。

雑誌って長く積み重ねていくと、アーカイブが残っていって。だいたいその頃って、みんなどういう気分で生きてたのかな? っていうのがわかると思うんですね。それを踏まえて、どうなんでしょう? というところをお聞きしたいですけれども、(ご意見)ありますか。

見澤:はい。

稲着:(スライドを見ながら)そうですね、資料としていただいて……これは、10年前の『mini』の表紙ですね。

見澤:昔の『mini』になります。

中村:懐かしい感じが……(笑)。

見澤:今の表紙とイメージがけっこう違うかなと……前の編集長の時代の表紙なので、方針もまた違ったように思います。

中村:なんだか全体的に強いですよね、すべてが。

定番の人気コンテンツだったスナップ企画をやめた理由

見澤:少しごちゃっとさせていますよね。中身での大きな違いでいうと、カタログに近い作りがとても多いんです。また、雑誌を昔から読んでいらしたという方も多いと思うんですけど、当時はスナップページがなによりも、一番強い企画でした。

中村:うんうん。

見澤:要は(スナップページに出ているような)親しみのある子の衣装のほうが、女優さんが着ているよりも真似できそう……という理由で、人気があったんだと思うんです。これは年に2回、スナップ号と呼ばれる、スナップを巻頭でやる号だけでなく、小さい企画でも(スナップを)必ず入れていて、かつての本当に人気コンテンツでした。

稲着:ここまでが10年前。

見澤:はい。(スライドを見て)これが最近の表紙になります。昔に比べるとちょっとスッキリしていたり、白場が多かったり、今っぽい雰囲気が出てると思います。これは私(が編集長)になってからの表紙ですね。

中村:ここからは実際の誌面の話ですね。

見澤:はい。スナップ企画って、今はInstagramやZOZOTOWNの『WEAR』で検索をかけたり、いくらでもSNSで見られるようになったので、ある時から「もう、やる必要はないな」と思って。「SNSで見られないものをいかに届けるか」に注力するようになりました。

それとともに、かつては、あまりメイクをしていない今宿麻美さんが不機嫌な顔をして立っている、それが可愛いというようなイメージが『mini』は強かったんじゃないかと思うんですけど。)ご覧のように、しっかりメイクもするようになっていて。「コスメもの」は、とても需要があることに、ある時気づきました。

巻頭でも、良い位置でメイクページをやるようになったのが、(ここ)数年の変化だと思っています。なのでわりと(『mini』は)すっぴんに近い顔と思われがちですが、色ものやカラコンも使用しますし、派手なテイストになってきていますね。

稲着:ちょうど10年前くらいって、女性のファッションの転換期でしたよね。イメージだとやっぱり2007年くらいから。もともとたぶんその前って、カーディガンにスカート的な、OLとかお嬢様風というのが、どちらかというとメインストリームにいて。

それがデニムやスニーカーを使ったカジュアルスタイルに(変わっていった)。たぶん2007~8年頃が転換期だったと思っていて。その時期のカジュアルスタイルの隆盛とともに今も伸びていってる。

今どきの女子の関心事はメイク・美容系コンテンツ

見澤:そうですね。ストリートというのは、ずっと言い続けています。「Tシャツ・デニム・スニーカーが三種の神器!」と。甘い物が流行ろうがなんだろうが、ずっとやり続けてきましたが、

ここにきて、ストリートが本当に盛り上がっているというのが、やっぱり大きいです。その中でも流行り、廃りはあるんですけど、今のストリートというと、わりと気持ち派手目、というか。チャレンジするアイテムも多かったりするので。「男の子みたい」というほど男の子っぽくないというのが、最近のストリートの傾向かなと思います。

稲着:はい。この10年間の変化に関係すると思いますが、今どきの女子が関心を持っていることとして、メイクの割合がすごく増えてきたと思っています。

今回、一応ファッションという話ではあるんですけれども。服を買わなくなっている代わりに、メイクに時間やお金を使うようになってきている動きがこの10年間で起きていると思うんですね。『ローリエプレス』さんの説明でも、メイクの記事が人気があるというような話もありましたし。

遠藤:やっぱり、コスメ系がすごく人気で。ファッションも人気はあるんですけど、ローリエプレスの中でダントツに人気になるのは、美容系のコンテンツかなっていう感じですね。

稲着:今の10代の特徴って、『ローリエプレス』を運営している中でも感じることってありますか?

遠藤:やっぱり『ローリエプレス』の場合は、そこが『mini』さんと近いかな、と思っていたんですけど。すごく突飛なアレンジとか、すごくハイレベルな内容ではなくて、どちらかというとこう……教科書チックな。基本に忠実な内容とかを展開することが、すごく多いんですね。

なので、夏だからといってカラーメイク、ドーン! みたいなやつよりは、「カラーメイクをいかにナチュラルに、ふだんのメイクに取り入れるか」みたいなもののほうが読まれやすかったりとか。カラコンも、最初の選び方から教えてあげるとか。そういうもののほうが人気が高いのかな、というのはありますね。

SNSがファッション業界に与えた影響

中村:遠藤さんは、見澤さんの『mini』の変遷を聞きつつ、今のファッションのムードをどのように感じていらっしゃいますか?

遠藤:表紙から、さっき見比べさせていただいて、何がって言語化するのは難しいですけど、すごい「昔っぽい」と思いました。パッと見てやっぱり、なんか昔っぽいなぁって。新しいほうを見たら、「今っぽいなぁ」って思って。

本当に言語化するのが難しいんですけど。ちょっとヘルシーさというか。今、そういうものが需要としてはあるのかなと思っています。前はすごいいっぱい色が入っていて、なんかドーンみたいな文字(の使い方)だったんですけど。最近は、けっこうそれを厳選した中で、文字量は多いんだけど、すごい余白があるというか。そこがすごく今っぽくって。

中村:そうですね。

遠藤:そういう流れはありますよね?(笑)

稲着:「気分」という単語がここまで日常的に使われるのって、ファッション業界特有だと思うんですけど。あと、10年前と今とを比較して、その時代の「気分」がこんなに変わるんだな! というようなことが、わかる感じがありましたよね。

「じゃあ、その気分を規定しているのって一体何なんだろう」というのを研究されているのが、たぶん中村さんとかだと思うんですけれども。やはりSNSがある・ないというのが、この10年(の違いで)一番大きいですよね。今回、「SNS世代」と今どき女子を定義するに至ってるんですけど。

中村:たぶん、そこ(SNS)によってすごい(変わった)。今までは、服が自分を表現する、一番の自分の表面だったと思うんですけど、その最前線が変わったとことだと思います。

なので、そういう(SNS等で)全体として伝えるということになったときに、服だけじゃなくて、自分のメイクとかケアとか、そういうところの関心が高いなというのは、うちのほうで調査していても出てきている内容ではありますね。

ファッションは自分の思考を語るもの

稲着:ふだんの自分のビジネスの中でも、タレントに来る案件が、アパレルさんよりも、コスメのブランドさんなどがすごく増えているなという実感もあります。(ファッションというのが)服だけじゃなくなってきてるんだなというのは、すごく強く感じます。

中村:そうですね。服がおろそかになったわけではなく、全体的な見た目意識について全体的な感度がすごくアップしている。オシャレのスキルも、メイクのスキルも、全部が昔よりも感度が高い。

稲着:そういう意味で『mini』さんのほうでも変化として、雑誌の中で取り扱う領域が、この10年でより幅広くなった、みたいなこともあったりしますか?

見澤:そうですね……領域ですか?

稲着:SNS世代にとっては、ある意味自分がいるSNSや画面に入るものすべてを、その人にとってのファッションと捉えるのであれば、自然と取り扱う領域も広くなったりするのかなと思いました。

見澤:そうですね、ちょっと後(の話)から出てくるかもしれないんですけど。今、ファッションというのが、ブランドというより、ストリートでいうと、音楽とすごく密接になってきていますね。『mini』だと、LDH系やK-POPを扱ったりとか。音楽の好みやメイクも含めて自分がこういうふうに見られたいとか、こういう人間です! という思考を語れる「ファッション」になったと。

ただ、そうは言っても、『mini』って実はページ数が少なくて、うちの会社では一番薄いんです。その中に情報を詰め込んでいるので、実はファッションとビューティに特化した雑誌なんです。

案外、すごく分厚い雑誌って、同じ服が何度も出てきたりしてるなぁと感じたりするんですけど。『mini』はそんなスペースがないので、同じ服が出てくるとかはほぼないですし、とにかく薄い中に詰めているというのが、作り方としてはあるんですよね。

中村:逆に、凝縮する方向なのでしょうか。

見澤:そうですね。例えば食器の企画とか……(笑)。そういうことはしていないんですよね。

中村:うん、それはわかりやすい。

3.11をきっかけに10~20代の価値観が変化

稲着:この「自分のケア」というのは、次のスライドを見ると、ボディケアのことなのかなと思うんですけども。

中村:はい、そうです。

稲着:確かに、10年前とかにボディクリームやボディオイルを、今ほど若い人がやってるイメージはなかったですね。今、ローリエさんとかたぶん、読者層が10代・20代ですけど、やっぱりそういう記事も読まれます? ネイルケアとか。

遠藤:めちゃめちゃ読まれますし、最近はやっぱり毛穴とか皮脂、テカリとか。夏ならではのスキンケアの記事が、すごいクリック数です。アプリで見るとお気に入りができる仕様になっているんですけど、それがPV以外の部分で、どれだけ記事が人気化(しているか)という指標として見ていて、クリックが伸びるものだとスキンケアとか、「朝のルーティン、どうしてる?」みたいなものは人気が高かったりしますね。10年前はやってなかったですよね。

中村:そこまで当たり前な空気感はなかったと思います。みんな、メイクして盛ることには意識があったと思うんですけど、その後のケアまでは意識していなかったと思います。

遠藤:さっきの表紙を見ていて思ったんですけど、盛る文化から自然さを重んじるという流れはあるかなぁと思っていて。だからこそ、たぶんメイクアップも大事なんですけど、(メイクアップ)だけじゃなくてふだんのケアから気にかけたり。盛るといっても、意味がちょっと変わってきてるのかな、と思います。

中村・稲着:そうですね。

遠藤:重ねて盛るんじゃなくて、そもそもの土台を上げていって、ナチュラルにきれいというか、素っぽい感じがけっこう受けてましたよね。

稲着:リップやチークは、けっこう派手めになってきたなという印象があるんですけど、逆に肌の色そのものはナチュラルに見せるのが、今風ですよね。

見澤:「すっぴん肌風」みたいな。「透け肌」とか、ありますね。

稲着:はい、すっぴん肌って(よく)言います。

見澤:『mini』でもすごくそういう企画が人気です。ちょっと感じているのが、3.11の震災の時をきっかけに、私はなんとなく読者の感じが変わってきたなと思っています。あの頃に物じゃなくて、要はボディケア、スキンケアとか、自分に投資するというか、自分自身を良くするような。もっとそっちにお金をかけるほうが(いい)っていう意識が、芽生えたのかなぁという気がしていて。

なんでもかんでも、いっぱい持っていればいいというものでもない、みたいな。そういう風潮が出てきたかなというのは、あの時(3.11)をきっかけに感じましたね。

中村:うんうん。

ブランドは通用しなくなった

稲着:ブランドで物を買わなくなったところに、似ているのかもしれないですね。

見澤:そうですね。

中村:うんうん、確かに。1つの傾向としては、「ブランドは通用しなくなった」というのがあると思いますね。

見澤:(メイクの変化に関するスライドを見て)このへん、その今の(話にあった)……。

中村:はい、メイクですね。これは10年前との違い(の特集)で。

見澤:そうですね、とても人気があったメイク特集になるんですけど。

稲着:すっぴん肌、やってます?

見澤:(スライドを見ながら)この前のところまでが、いわゆる本当にカラーものを使ったメイク特集ですね。ここからが……今も話に出たんですけど、透け肌ベースメイクマニュアルで、さっきと違ってものすごく細かい作りになったと思うんです。けっこう誌面(えづら)が地味にはなったんですが、案外そういうものが、『mini』ではとても人気があって。

先ほど、「基本のキ」みたいな話もありましたが。やはりとにかく初心者というのを意識して、ページを作っている部分があります。「知ってそうで知らないこと」みたいな、こういう地味な企画が『mini』ではわりと人気ランキングで上だったりします。

稲着:あと、もう1つ気になったのが、(前のスライドに)戻ると、「お金をかけたいジャンル」の5位に、「イベント、フェス」というのが入っていて。音楽とファッションっていう話が先ほどありました。自分の仕事で音楽レーベル事業もやってるんですけど、音楽フェスがこの10年でむちゃくちゃ増えましたよね。

中村:そうですね、うんうん。

稲着:ここについても、聞けたらと思うんですけど。

中村:うちのほうでリサーチしていると、イベントフェスに行くためのファッションとか、コトをモチベーションにファッションを楽しむ流れになってきていて。とくにさっき聞いた質問も、反応が高いのが20代で、残りの世代はあまりそこまで高い反応にならないんですよね。他の世代と比較しても、20代の方がイベントフェスに関心が高い、とか。

あと前回、第1回目(のifs fashion insight)でもご紹介したんですけど、コミュニティというか、そういう人が集まるところに参加するとか。(20代は)そういうことへの関心がとても強い傾向がありますね。

音楽フェスや旅行に合わせたファッション

稲着:もともと音楽とファッションって、すごく密接で。どういうことかというと、きっと、その音楽自体に合うファッションがあるんですよね。あと、そのジャンルの先駆者の人が、どういうスタイルで生きていったかということが服に反映されていたり。最近フェスに行くと、その音楽の持っているジャンルや雰囲気に応じたファッションをしようという楽しみ方があるんですよね。

自分も音楽フェスがすごく好きなんですけど、例えばフジロックとサマソニの両方に行ったときに、フジロックは屋外で、すごいアウトドア。一方で、サマソニは幕張メッセで、屋内都市型というところで、やっぱり着ていく服が当然変わるんですよね。

中村:そういうシーンの多様性が、服の提案としてもけっこうハマっているし、(シーンによって違いがあった方が)ファッションも盛り上がると思います。

見澤:『mini』まわりで考えると、音楽とファッションが融合するというのが、わりと久々な印象です。LDHやK-POPが出てくる前は、あまり音楽は関係なかったなぁという気がしているんですね。

でも、今、若い子たちがK-POPが好きで、韓国ファッションが好きで、ストリートが好きだったり、E-girlsに憧れたり、髪の毛の色を派手にして、メイクして……みたいな子たち。派手なファッションを楽しむ、というのがすごく新しい動きだなぁとは思っています。

例えば、みんなで盛り上がる! というときに、どういう格好でみんなで写真を撮るか、とか。そういうのがファッションと関係してきているなとは思ったりします。

稲着:やっぱり、撮った写真をSNSに上げるのって、(写真を撮った場所の)背景とか雰囲気と、自分の雰囲気がちゃんと合っていないといけない。そういう点ではもしかしたら、旅行とかもそうなのかもしれないですよね。

中村:そうですね。

稲着:どこに旅行へ行くから、そのために服を買う。そういう購買のきっかけが、あったりするのかもしれない。

中村:それはあると思います。

浴衣で行くディズニーのまわり方

稲着:なんかこういう、(若者が)イベントフェスへの関心が高いみたいなところで、遠藤さんは何か、おもしろいエピソードとかありますか?

遠藤:最近、浴衣企画をしまして。今、ディズニーランドが7月まで七夕のシーズンなんですね。

中村:うんうん。

遠藤:プレスデーに、編集部で撮影しに行った企画があって。でも、それは「浴衣でディズニーに行こう」という文脈だったので、浴衣(そのものへの)フォーカスではなくて、「浴衣で行くディズニーのまわり方」という話だったんです。

Twitterとかアプリのお問い合わせで、「このモデルさんが着ている浴衣はどこの浴衣ですか?」とか(があって)。そっち(浴衣)がメインではなかったので、それは編集部の私物だったんですけど、問い合わせがきてしまって。

やっぱり浴衣とかって、「今年、自分が着るならこれ!」みたいなものがあって、みんな、普通の服を買うよりも少し情熱をかけてくるんですよね。デートなのか、お友達と遊ぶのか。着たらもちろん、写真にも載せたいと思うし。

だからこそ、浴衣や水着は、けっこう選ぶのが慎重になったり、外したくないと思うんですよね。そういうケースがすごく多いので、それ(問い合わせ)があってから、ちょっと気をつけるようにしました。買えるものを紹介してあげたほうが、ユーザーさんにとっても良いなというのもあったので。

けっこうピンポイントで(問い合わせが)「お家でゆっくりボディケアをしよう」という企画のプロップス(小道具)で白いテディベアを置いていたら、「それはどこのですか?」って問い合わせがきたり(笑)。

だから、何かのシーンを彩る1つのものに対しても、気になるポイントがあったりしていて。みんな感度が高いなと思うことがあります。そういう問い合わせをいただくことがあって、おもしろいなぁと。

中村:それは、今回のテーマに繋がる核心的な話だと思います。

遠藤:申しわけなくなっちゃって……浴衣も、編集部の私物だったので。自分のものを褒められたような気持ちで、自分はうれしいんですけど(笑)。

中村:あははは。

稲着:今、話したこととか、まだ……先にこっち(「服にお金をかけたいシーン」についてのスライド)を出せばよかったと思ってたんですけど。

中村:赤(で示した部分)が、LINE世代の女性の反応が高かったところなのですが、服にはお金をかけたいシーンが「オフの日に外に出かける時」「恋人と過ごす時」だったり。恋人と過ごすのは、1つのシーンですよね。あとはディズニーやフェスへの反応がすごく高いのが特徴ですね。

稲着:なんかこう、「オシャレそのものを楽しむ」という感じでは、なくなってきているんですね。

“生活者の気分”から未来を読み解く、マーケティングカンパニー

伊藤忠ファッションシステム株式会社

“生活者の気分”に注目した、独自の「ファッションマーケティング」の手法を活かし、 リサーチから戦略設計、ソリューション提供まで、一貫したサービスを行います。

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