考えるってどういうこと?

安藤昭子氏(以下、安藤):じゃあ、考えるってどういうことなんだと。考えるということについて、ここで少し皆さんと考えてみたいと思います。

まず大前提です。私たちの頭の中で起こっていることとして、ひとの頭の中の思考プロセスというのは、もうブラックボックスですね。なにが起こってるかわからない。

(スライドを指して)INPUTとOUTPUT、認知情報と伝達情報とありますが、私たちは日頃なにか情報が入ってきて、例えばdocomoという文字が入ってきて、それをOUTPUTしようと思います。docomoから、かしこもに行くのか、スマホに行くのかというふうになります。

そのあいだ頭の中でなにが起こっているのか考えるというのは、普通に生活してるとできないですね。勝手に自動操縦してくれてると。

もう一回ちょっと連想のことを試してみたいんですけれども。前にリンゴがあります。今皆さんにやっていただいたのは、このリンゴを起点にざーっと連想の思考プロセスを可視化していただくことだったんですけれども。今度はワークシートには書かなくていいんですけれども、リンゴを見て、できるだけたくさんリンゴから連想して、言い換えてみてください

リンゴからなにが連想できるかということを、先に先に進むんではなくて、リンゴから何種類もの連想というのを頭の中に思い浮かべていただく。これをちょっとやってみていただけますか? 頭の中でいいです。

リンゴから何種類もの連想を働かせてください。イメージとしては放射線状になにか出ていって、いろんなリンゴの見方というのが、ばーっと書き出されているようなイメージ。いいですかね。ちょっと聞いていきたいと思います。

では前の方に。リンゴといえばなんですか?

参加者5:リンゴと言えば赤。

参加者6:アップルコンピュータ。

参加者7:アップルパイ。

参加者8:すぱい。

安藤:スパイ? ああ、酸っぱい。

参加者9:青森。

安藤:ああ、産地。

参加者10:ええ、ビートルズ。

安藤:なるほど、リンゴ・スター。

参加者11:丸い。

安藤:丸い。形からいきました。

参加者12:白雪姫。

参加者13:ニュートン。

安藤:なるほど。

これもおもしろいんですよ。今皆さんに聞いて、だれもかぶってないんですよね。

意味のかたまりのネットワークを進んでいく

安藤:リンゴだけでも、物語からアップルコンピュータから味からビートルズまで、さまざまです。

これは皆さんの頭の中で、無自覚ではあるんですけれども、なにかがぜんぜん違う個人の体験や頭の中にあるものを使いながら動いているということですね。

今の例えをちょっと絵にしてみますけれども、リンゴと見て、果物と思ったひとがいるかもしれないですし、丸いや赤いも出ましたけれども、なにか見た目のものが出てるかもしれない。青森もありましたね。青森と言われると、それはまあ産地のことだから、もしかしたらそのあとずるずるっと引きずられて、ほかの産地のこともイメージしてるかもしれないですし。

白雪姫もありましたね。白雪姫では物語か。ニュートンもありました。こういったかたちで、リンゴひとつから取り出せる情報っていうのはとてもたくさんあるんですね。

この立場に立つことが、まずは発想力を引き出すときの一番基本的なスタンスです。

ある情報にはリンゴひとつを取ってみても、たくさんの情報が隠れています。そこにたくさんの見方でアプローチできるんだ、というスタンスに立つのがまず大事ですね。

編集工学では意味単位のネットワークと言いますけれども、私たちの頭の中は通常、ある意味の単位のかたまりでネットワークされてるんです。

例えばリンゴと聞いて甘いと思ったひとは、なんとなく味というかたまりで、いろいろなイメージが想起されてるはずなんですね。もしくは白雪姫は、物語というような意味の単位でなにかが想起されている。

つまり、考えるということは、ある意味のかたまりのネットワークを進んでいくことだとも言えると思います。

先ほど皆さんに一人連想ゲームをdocomo を起点にやっていただいたときも、いろんな分岐点が出てきたと思うんですよ。docomo から始まって、携帯電話と言ったあとに、スマホに行こうかな。それともキャリアに行こうかなというふうに、分岐がでてきてるはずなんですね。

その中を私たちはなにか選びながら進んでいる。これがなにかを考えるともなしに考えるときに、頭の中で起こっていることです。

漠然とした思考プロセスを意図をもってマネジメント

それで、ここが大事なところなんですが、そういった漠然とした思考プロセスを意図をもってマネジメントしよう、っていうのが編集だと言っていいと思うんですね。

私たち編集工学研究所はそれを工学的にいろいろ中を見ていきながら、じゃあもうちょっとそれを上手にするためにはどうしたらいいか、ということを日々考えてるということです。

もう一回言いますけれども、私たちの頭の中はブラックボックスです。それはそれでいいんですけれども、ブラックボックスのままで終わらせないというのが編集の考え方です。

これは編集工学が前提に置いている思考の4つのプロセスです。まずなにかの情報がインプットされると連想が勝手に働いちゃうんですね。さっきのリンゴからビートルズが出てきたように。

それを連想とも言えるし、収集とも言えます。なにか情報を自分の頭の中にたくさん集めてきている状態。

そして今度はそれを自分の体験知なども使いながら、なにかに関係づけてるはずなんです。

なにかと関係づけて、アウトプットに向かおうとするときには、それらのことをなにかしらの構造にしてる。構造化をしているはずです。

構造化をしたら、じゃあそれをどうやって伝えようかなと演出をかけている。先ほどの「えーっと、ビートルズ」というのか、「ビートルズ?」というのか、そのひとことの発するなにかを相手に伝えようとするときに、どうやって意味をのせようかっていうことをこの最後に向かって考えてるはずなんですね。

これもおそらく頭の中で起こっている、大雑把にいうと4つのプロセスというのがあるだろうと私たちは見ています。

これを4つの頭文字を取って、4Cプロセスというふうに呼んでるんですけれども。コレクトしてコネクトしてコンストラクトしてコミュニケートする、というのが私たちの頭の中の営みでしょうと。

そうだとすると、それぞれのステージで頭の中で起こっていることを、先ほども言いましたように意図をもってマネジメントすることができるようになったら、私たちの編集力というのはどんどん高めていくことができるだろうという前提になってます。

そのために私たちはそれぞれのステージにおいて、考え方の「型」というのをつくってるんですね。これを皆さんに教えているのがイシス編集学校です。

情報には「地」と「図」がある

今日、皆さんにやっていただいてるワークは、イシス編集学校でやっているようなことを少しリアルのワークショップ形式にして持ってきてるものなんですけれども、そのなかでもとても基本的で、とても大事で、とてもパワフルな型として、情報の「地」と「図」という考え方があります。

これをワークも通して、今日は皆さんにぜひ持って帰っていただきたいと思います。

リンゴひとつにもこれだけの情報が隠されているわけですが、それをどれだけ多様に取ってこれるかということをするために、情報には「地」と「図」というものがあるという、まずその前提に立っていただきます。

「地」と「図」ってなにかというと、情報には必ず「地」になっている情報、文脈といってもいいですし、情報の分母といってもいいですが、そこにさまざまな「図」となる情報がのってるんですね。

例えばリンゴならリンゴ、docomo ならdocomo という情報が、なにとも関係なく存在しているということはないんですね。なにかの頭の中の文脈のうえにのってるはずなんです。

この情報の「地」を変えていくことによって「図」が変わっていくんですね。

先ほどのリンゴでいうと、情報のこの緑のところが「地」だとすると、そこから出てきてるものは「図」だといったん思ってください。

リンゴを見て青森と思ったと。「地」なっているものは、産地という考え方ですね。産地という考え方に立つと、他には長野とか岩手とかも出てくるし、待てよ、リンゴってまだ他にもいろんな情報があるよな、というところで情報の「地」を変えるんですね。

味ってどうだろうと思うと、甘いとか酸っぱいとか出てくる。もう一回「地」を変える。じゃあリンゴを物語として見てみるとなにが出てくるか。白雪姫とかというふうにして、私たちは情報の「地」を意図的に変えていくことができる。

これをしていくことが、たくさんの見方をひとつの情報からゲットするときにとても大事なアプローチなんです。

情報の言い換えテクニック

安藤:さて、ここからそろそろちゃんとワークに入っていきたいと思うんですが、情報の「地」と「図」を皆さんに体験していただきます。

お手元のワークシートの真ん中にスマホが書いてるのがありますよね。これは情報の「地」と「図」のワークシートです。

さっきのリンゴと一緒です。スマホから放射線状にいろんな情報が出てくるようなイメージを持っていただくのが、一番やりやすいと思います。できるだけたくさんスマホを言い換えてみてください。

情報の「地」と「図」を意識しながら、ああここで止まっちゃったなと思ったら、どんどん「地」を変えるということをやってみてください。

これも制限時間2分のなかで、できるだけたくさん、いくつスマホを言い換えられるか。スマホから連想されるものを回りにばーっと書き出してください。

いいですか、はいどうぞ。

(時間経過)

どうですか。ちょっと数えてみてください。なん個書けたかなって。普通に一個ずつの言葉をひとつとカウントして数えていただいていいですけども、どうでしょうね。

これ必ずしも数だけが大事なわけではないですけれども、ちょっと最初のお試しとして、20個あったってひといますか?

お、いた。すごい。20個あった。

えっと、15個あったってひと?

あ、だんだん増えていきますね。

2分で途中で手が止まったってひといます? 

ああ、そうだと思います。

止まるんですよ。だいたい10個ぐらいで。10個出ればいいほうかな。5個ぐらい出たところで止まるんですよね、突然。

あれ、出ないみたいな。そのあとなんとかもがいて出そうとするというのが、これはもう普通のことです。頭の中の構造がそうですから。

ここをどうやってどんどん次に次にと見方を変えていくかというところが、この情報の「地」と「図」を意識してくださいということなんですが、ちょっとテクニカルなヒントをお伝えします。

情報の言い換えテクニックというふうに書いてますけれども、少し覚えておいていただくと、なにかあったときに使っていただけるかなと思います。