弁護士ドットコムのFinTech事業参入

橘大地氏:みなさま、はじめまして。弁護士ドットコムという会社で執行役員をしております、橘と申します。弁護士ドットコムは2005年に現会長の元榮が創業いたしまして、ユーザーと弁護士をマッチングするプラットフォームとしてサービスを提供していました。

例えば、人生で離婚や交通事故といったライフイベントに遭遇したとき、知人に弁護士を紹介してもらったり、駅前の法律事務所に行ったりすると思います。しかし交通事故で悩んでいるのに、紹介されたのは離婚に強い弁護士だったり、またその逆だったり、最適な弁護士にうまく出会えないという社会課題がありました。

そのような課題を解決すべく、弁護士ドットコムは「専門家をもっと身近に」を理念として、サービス開始から9年後の2014年に株式上場しました。現在は専門家とユーザーをつなぐだけではなく、企業法務における法律や契約に課題があることに気づいたことから、別のサービスも行っております。今回はその「クラウドサイン」と、FinTech事業についてご紹介させていただきます。

私は法律とテクノロジーを掛け合わせたリーガルテックという事業の責任者をしております。

契約締結を紙で行う必要性への疑問

FinTech事業の紹介の前に、先ほど簡単にご案内したクラウドサイン自体をご紹介させてください。

クラウドサインは、紙と判子で契約締結する今までの契約締結のあり方を考え直し、オンライン上で契約締結ができるサービスです。

私は弁護士資格を持っており、前職では法律事務所で弁護士活動をしていた経験があります。クラウドサインは、その当時の思いから必要と感じたサービスです。弁護士時代に、例えばベンチャー企業が複数の投資家から資金調達をする案件を経験したのですが、当然ながら関係当事者も多く、数十枚に及ぶ契約書を交わす交渉が必要でした。

弁護士として契約書の修正業務や交渉業務を担当し、だいたい1〜2ヶ月ぐらいかけての大型の交渉案件となりました。しかしながら、1〜2ヶ月経ってようやく契約交渉がまとまり「これで資金調達先から投資を受けられる」と思った瞬間、この契約締結の作業という課題に当たりました。

例えば4人から8人くらいの投資家がいて30枚ぐらいの契約書があれば、当然ながら製本もそれだけ必要ですし、その30枚のページに割印が必要です。

また東京の投資企業に契約書が行ったり、あるいはシンガポールの投資家にも契約書を送ったり、場合によっては福岡県のファンドに行ったりと、この複数当事者の契約書がワールドツアーのように巡回していって、1〜2ヶ月の契約交渉よりも契約締結に時間がかかってしまう経験がありました。それがクラウドサインをつくろうと思ったきっかけです。

規制以外の、不文律の合意

しかしながら、日本には判子文化があり、そういった文化と向き合うことからこの事業は始まっています。少し動画でご説明いたしますので、ご覧ください。1分間の動画です。

(映像が流れる)

はい、ありがとうございます。このクラウドサインを3年前にリリースさせていただきました。リリース時の反応としては、「こういった契約書を待っていました」とか、起業家の方を中心に大きな反響をいただけました。

実際に問い合わせも多くいただいたのですが、例えばみなさまの会社に「クラウドサインっていうサービスがあるよ」といったときに、明日から企業取引において判子を使わずにこれを使えますかと聞くと、「いや、なかなか難しいね」といった反応が最初はすごくありました。

これは当然だと思っていまして、企業努力とか当事者の熱量とか、そういったものではなかなか解決できない問題であることに気づきました。

クラウドサインのリリース前は、当然ながら紙と判子での契約行為がほぼ全体の100パーセントに近いと言っていいほどの締結手段となっていました。こういったことをクリアしていく必要があるなと思っておりました。1つずつご紹介させてください。

この国にはRegulationという規制ともに、「規制外の規制」があることに気づいていました。国が定めた規制以外の、不文律の合意がこの国にはあると考えています。もともと法律の原則として「契約方式の自由」がありまして、そもそも別に「判子で契約締結してください」なんていう規制は一切ございません。

ですので、例えば口頭合意もありますし、FAXでの受発注やインターネット上の利用規約もあります。インターネット上で締結する「規約に同意します」といったさまざまな同意手段はあるんですけれども、いざ法人取引となった場合には唯一、判子というもので取引されていたという実態があります。

日本における判子の歴史

興味はないかもしれないですが、判子の歴史についてスライドで3枚だけご紹介させてください。なぜこの国では判子が流通したのかです。

これはみなさんご存知のことかと思うんですけれども、中国から福岡県に漢委奴国王印が西暦57年に輸入され、政府印として利用されていました。政府の意向で「この文書は政府の正式規制の文書である」ということを証明する手段でした。

こうした官印というのは徐々に廃れていくんですけれども、戦国時代がやってきて、武家の署名として花押というものが普及し始めます。例えば豊臣家の花押、徳川家の花押、という武家ごとに普及し始めました。

そして時代は西洋列強を迎え、西洋が日本にやって来たときに、向こうではサインで外交取引をするので、「印鑑というものは国際取引においてどうなんだ?」という議論が明治時代にありました。

そうしてアジア圏においても諸外国との企業取引においては判子が廃れ、サインが流通してきました。国に届け出る届出書として印鑑というのは残っている国も一部残っているんですけれども、企業間取引においてはほとんどサインというのが流通していました。しかしながら明治時代は印鑑を採用しまして、グローバルだと判子が唯一残ったと評価しても良いのがこの国の歴史になっています。これがいままで代々伝わる判子の日本の歴史です。

もう1つ、ゆえに発生したネットワークエフェクト、ネットワーク効果というものについてです。クラウドサインは自社がいかにいいと思っていたとしても、相手方が「判子でください」といった場合には、どちらかを採用しなければいけないという問題があります。

これは「1対1ならどっちにしますか?」という話です。企業間取引においては複数のプレイヤーが、月に100社以上と取引するという会社は珍しくないと思います。1社がクラウドサインを導入したとしても、相手方が判子である以上、自社に関しても判子じゃないとこの企業間取引というのは成立いたしません。

仮に1社説得し終えて相手方もクラウドサインになったとしても、ほかの契約は紙で締結しますので、紙とクラウド契約の二元管理問題というのがございます。ゆえにクラウドサインを導入するのはなかなか難しかったという問題がありました。

3万以上の企業が使うクラウドサイン

あともう1つは、狭い意味でのRegulationです。判子での義務付けはないんですけれども、一部の業法に「紙で交付してくださいね」という法律がございます。これはもともと口頭契約を防止する意味で「紙で残してください」という当時の法律が残ったものになります。

なので、口頭契約を禁止して「エビデンスをしっかり残してくださいね」と伝えるという労働者保護とか賃借権保護を目的としたものです。電子上でもエビデンスが残る電子契約時代なんですけれども、一部こういった業法が残っているのは確かです。これらの法律は、現行法によると、クラウド契約を活用することは難しくなっています。

以上が、この国に判子での契約取引がまだ流通している理由となっています。

結論から言いますと、クラウドサインでようやく壁を乗り越えることができました。いま導入者数はもうすぐ3万社を突破しようとしております。

まさに今日の「MFクラウド Expo」は、主催のマネーフォワードさん自身の契約取引をすでにクラウドサインでやっています。機密保持契約書や雇用契約書、業務委託契約書に大量の契約書を、取締役執行役員の管理本部長の方にプレゼンをして導入をいただきました。

そのほかにも、スクウェア・エニックスさんや金融業界の野村證券さん、モルガン・スタンレー証券さんですとかリクルートグループさんでも導入いただいております。

これらがなぜできたのか? 当然ながらみなさん疑問になると思います。少しだけご案内できればと思います。

クラウド契約で実現する高速締結とコスト削減

ワールドワイドに広がり、売上も好調になっており、流通が阻害していた理由を一つひとつ乗り越えてきたというのが、クラウドサインの3年間の歴史になっています。

判子という常識を乗り超えるためにはどうするか? まずは当然ながら「判子よりもクラウド契約がいい」という論理的な正当性が必要です。この証明ができればできるほど、「判子にも脆弱性は存在するのではないか?」という議論が進んでいきます。

まず、契約のスピード化です。当然ながらみなさんもご経験あるかと思うんですけれども、NDAは「秘密を守りましょう」と、取引の最初に取り交わす契約書となっています。

しかし「秘密を守りましょう」というだけなのに、契約書を印刷して、製本テープを結んで、稟議書を書いて管理部に渡し、管理部が押印手続きして、また現場に返って、そこから郵送して、相手方がまた同じことをして返送すると、だいたい2週間ぐらいかかります。これが大企業ですと×1,000通とかあります。そんな作業を日本の法務部は全国でやっております。

クラウドサインの場合は早ければ1分もかからないぐらいの時間で契約締結ができますし、実際にベンチャー企業だと、打ち合わせの最後の1分間でNDAを締結して帰るとか。NDAを締結して、秘密を開示しあうミーティングを今週中に入れてしまう。そういったスピード感で打ち合わせが行われます。

さらにコスト削減です。郵送代は最低でも140円かかりますし、当然ながら業務効率化も阻害しております。大企業に至っては、この郵送代だけで5,000万円から1億円ぐらいは削減できるんじゃないかと見込んでおります。

そのほかにも、電子契約の場合には印紙税がかかりません。証券会社にヒアリングしたところ、「印紙税に1億円以上のコストがかかっていました」というデータもございました。これをすべてクラウドサインに置き換えた場合、純利益ベースでキャッシュとして1.2億円が削減できますので、非常に売上インパクトも高いとされています。

個別管理していた書面も一元化

こういった便利なサービスが、管理部・監査法人からして本当にウェルカムなのかという問題があります。現場は便利だとしても、管理部はNGというSaaS、クラウドサービスというのはよくあります。

法務部や管理部の目線ですと、「契約書は管理部で紙でファイリングして保管しています」という会社はあるんですけれども、受発注書面や納品書、申込書というのは、日本企業の場合は確認書類として現場で保管していることが多々あります。

現場が結んだ契約書も、クラウドサインがあった場合は管理部で一元管理できます。例えばタブレットやスマートフォンからでも、今この瞬間に検索すれば契約書をすぐに取り出すことができるのです。

また、契約期間の問題。例えば来月切れる契約書で自動更新がついているものはそのままでもいいんですけれども、自動更新がついていないままに契約終了してしまうとか、そういったことの管理は紙の保管だと恒常的な手間がかかります。

クラウドサインの場合はアラート機能がございますので、来月切れてしまう契約書で自動更新がついていないものだけをメール通知するなど、クラウドサインを活用したところは法務部が強い組織を作ることができます。

こういった論理的正当性を着々と蓄えてきました。

「クラウドサインを導入しない手はない」体系をつくる

紙と判子が流通していた理由のもうひとつが、ネットワーク・エフェクトと呼ばれるものです。

導入しない理由をなくす体系として、導入側が非常に安く使えることが重要だと思っています。月1万円、もしくは1件を送るごとに100円という価格体系にしております。先ほどのとおり、紙の郵送代だけで少なくとも140円かかりますし、印紙代は1通4,000円という印紙税かかりますので、コストインパクトは小さくありません。

相手方もクラウドサインを活用しなければいけないのですが、相手方に関しては一切無料です。クラウドで契約をして、クラウド上に締結したものを見にいくにも料金は不要です。こうして「相手方も導入しない手はない」という体系にいたしました。

スタートアップ業界では、「クラウドサインで投資契約を結びましょう」というキャンペーンをして、一斉に導入すればみなさん便利になりますという、相手方も巻き込んで一斉に導入するという手法を用いました。

その結果、著名なベンチャーキャピタルから「もうクラウドサインで締結しないで紙で契約する人は迷惑だから、投資するのやめてくれ」という期待以上の言葉をいただいて、クラウドサインはスタートアップ業界で一斉に浸透していきました。

ほかにもおもしろいキャンペーンをやっていて、法務業界を巻き込んだことがあります。

これはe-Sportsのようなもので、弁護士同士の契約交渉は、だいたいWordファイルを送ってメールでやっていると。そんな契約交渉の当たり前から抜本的にやり方を変え、その場で契約しちゃえばいいんじゃないかということで、弁護士2名がその場でオンラインドキュメントツールを使用し、どちらが契約交渉に勝つかといったイベントを実施して、法務業界にクラウドサインの認知度を広めました。

こういうイベントも含めて発信していると、もともと判子で流通していた契約取引というのが、徐々に「クラウドサインを導入したらおもしろいんじゃないか」ということで、一歩一歩、相手方もクラウドサインを活用していくようになりました。

逆向きのネットワーク・エフェクトを利用

ネットワーク・エフェクトというのはおもしろいもので、逆転すると逆向きのネットワーク・エフェクトが発生します。

スタートアップでは今、紙で契約書類が届くと「返送するのが面倒くさいし、印紙税がかかるので、クラウドサインで送ってください」と逆にクラウドサインの利用を要求される現象もあると聞きます。紙で締結すると相手方に迷惑をかけてしまうので、最初からクラウドサインで締結するというような現象も生まれつつあります。

また、雇用契約ではかなり浸透しています。ベンチャー企業入社の初日、だいたいペーパーワークで、住所と名前を何枚も書くというのがよくあります。最近のベンチャー企業ですと、入社初日にスマートフォンに書類が届いて、通勤途中に契約締結をして、入社初日はCEOから経営理念とかの話を聞いて、楽しくスタートできます。

そういった相手方への配慮というところでクラウドサインを活用したいという声もいただいています。これが反転して、判子の場合のほうが心理的障壁が大きいという現象です。

契約のグレーゾーンを解消へ

最後に、「とはいえ結べない規制があるじゃないか」というところです。私たちはここに今チャレンジしております。

1つが「グレーゾーン解消制度」というものです。例えば、建築請負契約では紙で契約しようというのが基本原則の法律になっていて、例外的な場合は電子化もOKですよという書かれ方をしています。クラウドサインは、この例外に該当するのかがグレーゾーンになっていました。グレーゾーン解消制度は経産省が行っている「それを解消してあげますよ」という制度で、それを活用いたしました。

その結果、建築請負契約でクラウドサインを使っていいという明確な回答をいただきましたので、規制に対して徐々にクラウドサインにお墨付きをもらおうという働きかけをしております。

先ほどのとおり、こういった企業たちにクラウドサインを導入していただくことで、判子のほうがめずらしくなるほどに浸透しました。

もちろんこれはベンチャー企業やIT企業に限ったことで、日本の金融業や人材業、製造業のみなさんはまだ紙の契約がマジョリティでありますので、業界を問わず、国内全体に浸透していけばありがたいなと思っております。

テクノロジーで解決する契約形態

紙と判子を使っている市場は本当に莫大だと思っております。紙の契約書だけではなく、請求書・納品・受発注書面といったものも合わせると、この国では何百億枚という紙が流通していると考えられます。

これに対してテクノロジーでできることはまだまだあると思っていまして、例えば本人確認。アルバイトをするための契約を締結するとき、三文判を100円で買ってきて押し、会社に渡したあとその三文判をどこかにしまっておくとか、「それって本人認証機能として機能しているのか?」という疑問があります。

例えばそれを指紋や顔での認証にするとか、そういったテクノロジーを使うことで、確実にその人が契約を締結したことが証明できます。

ほかにも、自社の取引先名などを書いただけで簡単に契約書が作成できたり、最近は翻訳技術も浸透しておりますので、場合によっては日本語の契約書をアップロードするだけで外国人とのアルバイト契約を結べたりと、そういった翻訳テクノロジーも今研究が進んでいます。

クラウドサインで結んだ契約は、必ず相手方から支払われる

少し前段のご説明が長くなってしまったんですけれども、このクラウドサインがFinTech分野にも関わるということで、今回の「MFクラウド Expo」で登壇しております。簡単にご説明させてください。

今回の座組みとしては、まずクレディセゾン様とベリトランス様と提携させていただきました。

なぜクラウドサインがペイメントというFinTech事業を始めたかですが、だいたい7〜8割の契約書は支払いとセットにされているという実状があります。NDAではお金の取引はないのですが、例えば業務委託契約書、雇用契約書、賃貸借契約書の家賃、ジムの入会費用の申込書、セミナー費用など、だいたい契約書というのは支払いがセットになっています。

私は弁護士として活動していたんですけれども、債権回収の依頼というものがあります。契約は締結したけれど取引先が支払いをしてくれない、資金回収で困っていると。

そこで、「紙で契約した契約書は債権回収の業務をしなければいけないが、クラウドサインで結んだ契約は、必ず相手方から支払われる」、このような世界観を作りたいと思っておりました。

100パーセント債権回収ができるスキーム

これをどうやって実現するかですが、銀行のAPIを活用するとか、ブロックチェーンを活用するなど、さまざまな技術を検討してたんですけれども、クレジットカードがすでに流通していることもあり、クレジットカードの機能を使うことにいたしました。

クレジットカードには、与信枠がだいたい数百万円程度が設定されています。クレジットカードを発行して、その人が払わなかった場合にはクレジットカード会社が立替払いしますよという社会制度があります。

送信側からすると、受信側から残高があれば支払いが行われて、仮に受信側の残高がなかったとしても、クレジットカード会社から送信側に支払われることになります。つまり、クラウドサインから送ると、送信側は100パーセント債権回収ができるというスキームにできることに気づきました。

請求側のメリットとしては、未回収債権がゼロになります。クレジットカード会社は立て替え払いで、翌月末に支払ってもらう契約なんですけれども、クレジットカード会社からは早期入金オプションを利用して翌日支払ってもらえることによって、支払いサイトが30日早くなることもあります。

契約締結する前に「この会社と締結していいのか? 取引していいのか?」という与信判断をしなければなりませんが、債権が100パーセント支払われるということは、今までは与信的にリスクと判断していた中小企業とも取引できる可能性があります。

さらに、支払い側のメリットもあります。銀行のように平日だけの営業ではないですので、24時間365日払いできますし、振込手数料もかかりません。

支払う側の分割払いというメリットもあります。みなさんショッピングするとき「クレジットカード何回払いにしますか」と聞かれた経験があると思うんですけれども、1回払いだけじゃなくて24ヶ月払いですとか。例えば建築請負契約で、1,000万円の契約書を24ヶ月払いできたりもします。クレジットカード決済手数料の範囲内で分割払いをすることもできます。

クラウドサインでの決済実演

こういった「クラウドサインペイメント」を導入費用一切不要で提供しはじめました。これは決済手数料率が重要だと思っていましたので、法人向け決済に関しては2.0パーセントから活用できるということで、すごく安い料金プランで提供しております。

概念としてはおもしろいと思うのですが、どういったサービスなのか(がうまく伝わらないかもしれないので)、実際の画面にお見せできればと思っております。

場合によっては、契約書だけではなく請求書をクラウドサインで送って、その請求書の金額をクラウドサイン上で支払いできるとか、さまざまな利用シーンで実際に今使われております。

こちらが利用イメージです。これは、送信側から受信側にどうやって送るのかという画面になっています。

まず、契約書をアップロードして、誰に送るのかという氏名とメールアドレスを記入いたします。もちろん登録した雛形からアップロードすることもできます。

そして請求情報として、例えば洋服の4万円とかを請求するという利用シーンを考えます。これだけでもう入力完了です。あとは送信ボタンを押すだけで、導入側・送信側でやる手続きは終わりです。

受け手側はクラウドサインに一切登録する必要はございません。先ほどメールアドレスを記入いたしましたので、メールを開きます。これは、PCだけじゃなくて、スマートフォンでも開くことができます。

書類の内容を確認して、売買契約書で「4万円を支払ってください」という契約書です。ですので、ここをクリックして「支払います」と。

あとは、クレジットカード番号とセキュリティコードを記入するだけで、売買契約書の締結と支払いが完了いたします。たったこれだけですね。

クラウドサインペイメントを利用している企業は

このテクノロジーを使えば、例えば100名の方がセミナーにいらっしゃったとして、入り口で「1,000円をお願いします」「名前なんですか?」などと聞かれて支払うことがありますが、クラウドサインペイメントを使えば100人同時送信もできます。歩いている間にスマートフォン上で支払いが終わって、入り口は素通りできる。

そういった世界も実現できますし、例えば「塾の会費を払ってください」「ジムの会費を払ってください」「請求書を月初に1,000社に送ります」といった、さまざまな用途でクラウドサインペイメントを使うことができると考えております。

クラウドサインペイメントがどこで使われているか。一部ご紹介します。例えばこちら、600株式会社さんは、オフィスグリコやオフィスファミマといったオフィスに置く自販機を提供しているベンチャー企業さんです。

もともとクラウドサインのユーザーで、この自販機を設置する申込書に使っていただいたんですけれども、債権回収はベンチャー企業がベンチャー企業に納入するもので、その資金回収というのが法務業務としては非常に課題となっていました。

それが、申込書を回収すると同時に支払いもいただけるので、債権回収などは一切なくなって、「この取引、与信リスクは問題ないだろうか?」という不安がなくなったという事例がございました。

こういった事例というのは日本の社会にはまだまだあると思っていまして、クラウドサインが普及した今、このペイメントも同時に普及できると考えております。

キャッシュフローで苦しむ地方の中小企業

「債権回収リスクをなくしたい」という1つの思いからペイメントをスタートしたクラウドサインは、ベンチャー企業のほか3万社に導入していただいており、地方の中小企業の経営者と話す機会にも恵まれました。

そこには「キャッシュフローに困っています」という会社が山ほどいることに気づきました。例えば先ほどの建築請負。建築会社さんですと、例えばマイホームを買いたいということで3,000万ぐらいを出して買ったときに、2,000万円ぐらいで下請けが発注を受けます。だいたい納品して検品したあとに資金回収ができますので、1年後に2,000万円入ってくるという契約書を1年前に結びます。

ですので、確実に1年後には2,000万円が入るんですけれども、職人への毎月の支払いや、ネジを買ったり木材を買ったりというのは先に支払わなければいけないので、そこで資金が枯渇して潰れてしまうという話を山ほど聞きました。

それをつなぐために銀行融資や、先ほどの企業再生の融資案件というのがあるんですけれども、最近の銀行融資というのはなかなか追加融資が難しいという実態もあります。「来月まで待てば2,000万入るんだけど、泣く泣く今月破産しなければいけない」という会社もあると聞きました。

クレカの仕組みでキャッシュフローを循環させる

クレジットカードという仕組みを使うことによってこのキャッシュフローが循環するので、企業をつなぎとめることができるのではないかということに、クラウドサインペイメントをリリースしてから気づかされました。

法人間の取引流通というのは920兆円ぐらいとされているのですが、日本の場合、クレジットカードで決済されているのは0.3パーセント程度と言われております。これが米国水準だと3.4パーセントで、このパーセンテージはもう年を増すごとに伸びていると聞いております。日本でも3.4パーセントになった場合、30兆円が流通することになります。

企業取引においてはクラウドサインでの契約締結が流通しておりますので、そこにクレジットカードを乗せることによって、この3.4パーセントの多くのシェアを取ることができるんじゃないかというビジネス的な機運もあって提供しております。

そのほかにも新規のFinTechサービスを次々と開発しておりまして、今のクラウドサインペイメント、つまり売買契約書を渡して「4万円払ってください」という1回きりのトランザクションを、今後は月額課金の回収にすることができるように開発すれば、例えば家賃とか塾の月会費1万円の回収とか、さまざまな用途で使うことができると考えています。

あとは早期入金オプションですね。例えば1年間ジムの年会費で12万円というのは毎月入ってくるお金です。毎月入ってくるという契約書を結んであるため、銀行さんからすると12万円入ってくる可能性があるので、明日別に11万5,000円とちょっと5,000円を割り引いて融資することができます。こういったキャッシュフローの早期化を図ることができる機能をどんどん追加していこうと思っております。

POファイナンスという考え方

ほかにも、本日の『日経FinTech』にも掲載された事業で、POファイナンスという考え方があります。

受注したときに契約書を結ぶのですけれども、先ほどのとおり債権が発生するのは納品してからです。納品したあとに代金の回収まで、だいたい日本の場合30日サイトとか60日サイトが多いですので、納品して60日後に、資金がようやく入ってきますね。

この納品から実際に代金を受け取るまでの間の金融商品は、日本の場合山ほどあります。いわゆるファクタリングと言われて、債権を売って、それを回収するというスキームです。

この金融スキームはあったんですけれども、一番困っているのは、受注して契約書をやりとりしてから納品までの1年間~2年間を早期化できないかというので、我々の電子契約を使って、ここの債権を担保して銀行から融資を受けるということです。

先ほどのとおり、1年後に2,000万円が入ってくるので、別に明日1,900万、ちょっと割り引いて融資を受けるというのは、銀行からしても担保にすることができます。こういったPOファイナンスの事業会社さんとの提携をもとに、銀行さんとかとも提供してまいりたいと考えております。

クラウドサインは、契約という入口を押さえていますので、契約を担保にした融資事業ですとか、先ほどのとおり、契約に基づいた支払いというのをクラウドサインとしては手がけてまいりたいと思っております。

過去の契約をクラウド化する「クラウドサインSCAN」

ほかにも新規事業をどんどんやっておりまして、先日「クラウドサインSCAN」という事業を開始させていただきました。「これから結ぶ契約書をクラウドサインにしましょう」というのを、いままで事業として3年間やってきたんですけれども、そうすると「過去の契約書をどうしましょう?」という課題がございます。

クラウドサインに過去の契約書を取り込める機能はあるんですけれども、じゃあ実際5万件とかの契約書のダンボールの山について、このスキャン作業を誰がするんだという問題がございます。けっこう最近ですと、社内弁護士とかも増えてきておりますが、じゃあその弁護士の方にスキャンを頼むかという問題があってなかなかできないよねという課題がございました。

ですので、この事業としては、依頼したい書類を詰めたダンボールをうちに送ってさえいただければ、すべてスキャン化いたします。

契約書の場合はスキャンデータにするだけでは意味がなくて、やっぱり契約の終了日とか自動更新があるかないか、取引先名、場合によっては取引金額で検索したいという方もいらっしゃいますので、そういったデータというのが大事になります。ですので、その契約書の中身については、秘密保持(契約)を結ばせていただいて、我々が見させていただいて、契約書の内容に伴ってタグ付けしてクラウドサインで検索対象にすることができるのです。

最近だと法務のコンサルなども依頼していただくこともあります。やっぱりデータドリブンの組織を作りたいというところで、データにもとづいて、来月回収できる債権がいくらあるのかと。来月切れる契約書が5件あるんだったら、「更新しなくていいんですか?」と事業部に働きかけしたりとか。

やっぱり企業データにおいて、エビデンスが一番高いのは契約書です。ですので、企業買収のときに、デューデリジェンスといって、契約書を審査したりとか、融資するときに「重要な取引先の契約書を見せてください」とか。一番重要なエビデンスになっている契約書がデータ化されていませんので、「契約書をデータ化しませんか?」という事業もしております。

こういったさまざまな契約にまつわるところを事業として手がけておりますので、みなさん判子をつくるときにはクラウドサインを思い出して、ぜひ導入ご検討をいただけるとありがたいと思っております。以上となります。

(会場拍手)