折れた骨はより強くなるのか?

ハンク・グリーン氏:「あなたを殺さないものならば、あなたを強くするものだ」と、少なくともケリー・クラークソンは主張しています。そして骨に関して言えば、その通りだとされてきました。

しかし、実際は骨折が治癒した骨がより強くなるという証拠はなく、かえって弱くなっているかもしれないのです。けれども、骨折した骨が治癒している途中で一時的に強くなっていることがあり、そのため、骨は折れるとさらに強くなるという考えが広まったのかもしれません。

一般的に、折れた骨を治す最初のステップは、折れた骨の破片が正しい場所に戻り、固定されすことです。そして組織が再生するまで動かないように固定する必要があるので、ギプスや添え木が用いられます。再生も段階的に生じます。

骨が折れた直後、骨にできた隙間に血がたまり、塊ができます。それにより、折れた場所に特別な掃除をする細胞が来て、死んだ骨の細胞や断片を取り除くまでその場所を保護します。

その後、骨を作る細胞が、骨折により生じた隙間を埋め、柔らかい皮膚硬結を形成します。

6週間~12週間以上をかけて、より強い材料が加わることにより、その若い皮膚硬結が、硬い皮膚硬結になります。

きっとこの状態が、「折れた骨はより強くなる」という言い伝えの原因となったと思われます。なぜならこの時、この場所の骨は、一時的に周りの骨より強い状態だからです。しかし、その原因は、骨がより太い状態になっているからに過ぎません。

折れた骨の強度は周りの骨と同じ

それは医者が「網状骨」と呼ぶ骨で、骨状の繊維がランダムに絡まってできているので、そう呼ばれています。それは、単位体積あたりで言えば通常の薄膜状骨よりもろいのですが、通常の骨より厚みがでる場合があるので、周囲の骨より圧が強くかからないと折れない状態になります。

しかし、その皮膚硬結はそんなに長い間あるわけではありません。1ヶ月ほど経つとその硬い皮膚硬結は新しい薄膜状骨に変化します。

すべてが順調ですと、折れた骨も、周囲の折れていない骨と同じ強度に戻ります。実際、そうなれば折れた場所がどこだったのか特定することも難しくなります。しかし、実際はすべてが順調に行かないこともあります。それで、同じ部位を何度も骨折してしまう、という現象が起きるのです。

研究や骨の種類によりその推定に差がありますが、女性を対象にした2012年のある研究によれば、一般的に同じ骨を骨折する確率は高くなり、時には6倍以上になります。しかし、そのような統計が、新しくできた骨が弱いということを証明しているわけではありません。

身体を鍛えることが骨を強くする

例えば、2回目に折れた部分が、その骨の全く同じ場所であったのかということが記録されているわけではないからです。それに、もしそうであったとしても、新しい骨がより弱いのか、患者が一定の場所に負荷のかかる何かの身体的活動をしているからかということまではわかりません。

それに、骨折した部分が休んで回復している間に、その骨全体が弱くなって2回目の骨折が生じる場合もあるのです。骨は、筋肉組織に押されたり引っ張られたりしていないと、体は強くなくても良いのだと認識していまい、骨の中にあるミネラルをとって、他の部分に使ってしまうのです。

逆を言えば、一般的に、体を鍛えることにより、骨を強くすることができるのです。実際、骨を強める科学は、よくアスリートや宇宙飛行士に利用されています。体重がかかるジョギングや、体を強化するリフティングなどのエクササイズは、骨に丁度良い圧力を与え、骨を形作る細胞を活発化させます。

そして、骨の密度と強度を高めるカルシウムなどの骨を強めるミネラルを使って、骨を丈夫にすることができるのです。ですから、骨に多少の負荷をかけることは骨を強くすると言えますが、骨折は骨を強化することにはならないということです。