生きたいように生きるには、やり抜く力が必要

続いて、「すらら」をどうやって活用しているのかについてです。 

先ほどお話ししたこういった特徴があるなかで、重きを置いているのはここです。ただ基礎学力を上げるためではなく、「すらら」を使ってやり抜く力をつけた結果として基礎学力が上がる、というのが狙いです。

やり抜く力をつける理由として、僕は生きたいように生き続けてほしいんですね。でも、責任とか当事者意識ということを理解しないといけない。「自由」と「勝手」の違いを理解しないと、好き勝手に生きる人になるんです。

だからこそ、好き勝手に生きる力ではなくて、生きたいように生きるためにやらなければいけないことはなにか。その内の一つがやり抜く力だと思います。そして、そのプロセスを自分自身でリフレクションし改善させる力が必要です。

どこでも、なにからでも学べる力を養うには

僕は、ある大学の先輩との出会いがなければ、サッカー以外のことに対してぜんぜん真剣になれない人間でした。授業の間、90分間ずっと寝続けていたんですよ。早く授業を終わらせたいから。その手段が「寝る」だったんですね。寝たら一瞬で時間は過ぎますから。

僕は講義中に寝ますが、講義も集中しきる姿勢の先輩に対して「先輩、すごいですね」って言ったら、先輩が僕に「お前、サッカーの試合って何分?」(と聞くので)「90分です」って(答えました)。「あれだけ走って、肉体的にも精神的にも疲れるなかで90分間集中しなければいけないのに、ただ座って90分勉強することもできないやつに、サッカーがうまくなるわけない」って(言われてしまって)。

そのとおりだなと。自分自身が好きなことは意味を持てるけど、そうじゃないことを自分の人生につなげられなかったら、それ以上スケールしないんですね。その一言から生きる姿勢を学びました。苦手なことに向き合いその過程からも学べる力がすごく大事だと感じ、そういう原体験のために「すらら」を使っています。

あとはその場の目標やトピックを捉える力ですね。例えばこの場の目的を。最初に共有したわけではありません。でも、僕がいきなりYouTubeを流して踊り始めたりしたら、場が成り立たないですよね。だから、この場の目的はなんなのかをお互いが捉えて、その目的を達成するために思考してパフォーマンスできることが必要です。だから、こういったことをやっぱり理解しないと。

正答率よりも「やりきったか」で評価する理由

どうやったらうまくいくかなと考えて、最初子どもたちに自分たちで計画を立てさせてみました。それを出してもらってフィードバックして、使い方を考えようと。うまくいきそうになかったら、また考え直しましょうということで。

まずは小テストをやってみました。そうしたら、それぞれの個人のレベル別がわかるから、それに合わせてやりましょうと。なるほど、そっちのほうが効果的っぽいですね。一緒にやってみましょう、ということでやってみました。

例えば、月曜日から木曜日の間に決まった課題を出すんですね。それについて、正答率じゃなくて、やりきったかどうかを評価します。

解答して正解するということは、一人ひとりの能力が違いますよね。だから、なかなか難しいところがある。でも、やりきるかどうかって自分でコントロールできますよね。だって、行動するだけだから。やりきる、そこを評価しますということにしています。

そうすると、期日内の達成率が今94パーセントだったんですね。本当に全部やりきってくるんですよ。なんのためにこれをやっているかって話をすると、そういう力をつけたいからやりきってくるんですよ。

ほかの学校と比較してもらったデータです。なんのためにやっているのかというのを明確にしてやっているところは、やっぱり(目標達成)率は高いです。みなさんが運用する上で、ICTのツールを使う上でのロールモデルになるかなと思います。

すららなら多様性も確保できる

学習時間もけっこう高い。2年目以降のところと比べても上位に入っていると。僕たちはスタートして3ヶ月です。でも、2年目以降の子としっかり同等にやっているレベルになっている。

今はこういうかたちにしています。だいたい6グループに分かれています。それぞれの学習の内容があって、アナログでやるときは、各グループに課題を1個提示して、先生がチューターで回ると。なかにはわかっている子もいるので、子ども同士で学び合いが起きるんですね。だから、先生がなにかアプローチする瞬間はけっこう少ないです。

普段の基礎学力のところでこの「すらら」のレクチャーを使っているので、そこでお互い見直して、もう一度教えあったりしています。なので、本当に支援が必要な生徒に、先生がその時間を使えるというのはあるかと思います。

テクノロジーが可能にしたのは知識量に幅がある生徒が同じ教室の中で学習を進められるということ。別室で授業したり、少人数教室などを設定する必要もないということです。

限られたなかで学習時間を伸ばす工夫

知識量を増やすのに学習時間が多いか少ないかは影響します。ただ、あともう1つ、機会があるかないかが重要です。塾に行ける人や、近くに勉強を見てくれる人がいる、家にたくさん本があるかどうか。つまり、なにかを学習する機会があるかどうかは生まれてきた環境によって差が出ます。

そういうときに、このeラーニングというのは使いやすいですね。というのも、学校の授業時間は限られていますよね。授業時間外の時間をどのようにして自分の成長につなげられるかがポイントです。

時間は有限でこれだけは、世界中誰であっても平等です。経済の平等はありえないけれども、時間だけは平等。だからこそ、タイムデザインをする力がすごく大事です。

ICTを使いeラーニングを使えば場所を限らず学習できますから、本人がやろうと思えばその機会は提供できるんです。あとはこの「やろう」と思える力。モチベーションをこちらがしっかり刺激する必要がある。

学習時間を伸ばす工夫をしないといけない。 ただ闇雲に問題を出して、わからない内容を多く出してしまうとやっぱり折れてしまうので、個別学習システムのいいところは、その生徒に応じた問題を提供できてスモールステップをちゃんと踏める点です。

目的と、そのためのツールがあれば自分でできる

探究コースは偏差値のための授業はしませんから、大学入試の模試対策などは一切していません。中間考査も期末考査も。僕自身は正直英検などの資格は必要ないと思っているぐらい。でも、本人が受けたい理由に資格を活用して選択肢の幅を広げたいとか、自分の現状を認識したいなど内発的な動機があればもちろん否定しません。

おもしろかったのは、探究コースの子が受けたいから「どうぞ」と言ったら、通るんですね。普段から資格や模試対策をしない探究コースの生徒で、中学の時も英語がすごく得意ではなかった生徒が英検準2級に合格したんです。

理由は、なんのためにやるかという目的を本人が持ち、自由に学習できるツールがあることです。それでしっかりと自分自身で計画してやってしまう。それはすばらしいなと思いました。中学校では英検を受けたことはないのに、高校生になってたった3ヶ月で準備して結果を出すことは簡単ではありません。

それ以外に、例えば英会話もやっています。ALT1人で30人に対して、一人ひとりの発話量を担保をすることは無理ですね。だから1対1の英会話をやっています。

あとは美術の時間は、ボストンにつないでいます。美術を使って思考をどんどん磨くビジュアル・シンキング・ストラテジーという授業があり、それをボストン在住のアーティストに提供してもらっています。ちょうどこっちが朝9時だったら、向こうは夜22時なんですね。それを彼らがやってくれる。

それにプログラミング。1つのスキルとして今後あれば有効なスキルであるのは事実かなと。英検よりも僕はこっちのほうが正直強いなと思っています。