2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
代官山えほんのはなし『ぺぱぷんたす002』刊行記念トーク&サイン会(全1記事)
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祖父江慎氏(以下、祖父江):みなさん、こんにちは。
脇田あすか氏(以下、脇田):こんにちは。
祖父江:今日は3歳から100歳までの……。
脇田:4歳からです。
(会場笑)
祖父江:ありがとうございます。4歳から100歳までのたのしい本『ぺぱぷんたす』についてのいろんなお話をしていこうと思います。なので、4歳から100歳までの人用のお話にしない?
脇田:はい(笑)。
祖父江:私がアートディレクションと書いてあるけど、アートをディレクションできるわけないよね。
脇田:そうですね(笑)。
祖父江:ということをやっている、祖父江慎といいます。
脇田:祖父江さん率いるコズフィッシュのデザイナーの脇田あすかと申します。よろしくお願いします。
祖父江:よろしくお願いします。
(会場拍手)
祖父江:人前でおしゃべりは、もしかして何回かありますか?
脇田:人前でおしゃべり?
祖父江:はい。
脇田:こういうトークショーははじめてですね。
祖父江:はじめて! みなさん、はじめてなんですって!
脇田:温かく見守ってください。
祖父江:はい。いつもは、私たちは『おはスタ』の木曜日に出てるのよね?
脇田:そうですね。
脇田:(ポスターを指差して)後ろになにかありますね。
祖父江:今日のためだけに作った(笑)。
(会場笑)
しかも、さっき持ってきたから役に立ってないよね。
脇田:そうですね。
祖父江:告知になっていない(笑)。じゃあ、『おはスタ』のスタートをやってみましょうか? 「かみのすきなこ」からいってみる?
脇田:はい。
祖父江:いつもどういうふうにしたっけ?
脇田:(小声で)「かみのこあつまれ」で、私が「『ぺぱぷんたす』のじかんだよ」って。
祖父江:次どうする? 「よろしくね」? いいじゃない? せーの! かみのすきなこ、あつまれ!
脇田:『ぺぱぷんたす』のじかんだよ!
祖父江・脇田:よろしくね!
(会場拍手)
脇田:できないです。
祖父江:僕が見本をやります。先に細かく説明しますと、前に人がいるとツバが飛ぶので申し訳ないです。「ペ」は普通に「ペ」なんですが、「ぱ」のときになるべく唾を遠くに飛ばすように「ぺぱ!」というですね。
(会場笑)
「ぷん」が難しい。普通「ぷん」というと唇の破裂音なんですが、ぺぱぷんたすの「ぷん」は、口を閉じて鼻の破裂音。「ぷん!」。
脇田:これが難しいんですよね(笑)。
祖父江:ぷん! これ鼻をかんでからやらないと注意なんですよ。「たす」は歯を食いしばりながら「 っつすー 」と言うんです。
じゃあ続けてやりますと、ぺぱ! ぷん! っつすー!
(会場笑)
ってなるんですね。飛ばないようにしました。ぜひチャレンジしてください。これできる子、意外にいないのよ。
脇田:ちょっと難しいですね。
祖父江:たまに子どもさんでいるよね。びっくりしちゃった。
祖父江:こういう本ですが、今日は初めてのトークということでいろいろ弄っちゃおうかと思います。脇田さん、脇田、ワッキー、あすか様。なんと呼べばいいんですかね?
脇田:いつもどおりの呼び方で。
祖父江:いつもどおりがいろいろだよね。
脇田:いつもどおりはワッキーかな。
祖父江:じゃあ、ワッキーさんでね。ワッキーさんは子どもの頃、このような本に対してどのように関わったりしてたんですか?
脇田:意外と子どもの頃の本の記憶がなくて(笑)。
祖父江:そうなの?
脇田:とくにこういう『ぺぱぷんたす』みたいな、紙と思いきり遊べる本は、パッと思いつくものはあまりなくて、どちらかというと落書き帳みたいなものですね。ただのノートやチラシの裏で遊んでた記憶があります。自由が利くというか。
祖父江:でも、そうかもね。(自身を指して)ソビーは、子どもの頃……。
脇田:ソビーは?(笑)。
祖父江:小学館から出してるので、紙の付録がたくさんあったわけよ。なので、組み立てたり、切ったり、折ったり、書いたり、貼ったりしながら、工作をやっていたの。
それが楽しみで学年誌とかをとってたけど、僕が小学校4年生ぐらいから付録がつかなくなってきた。(当時は)シールが人気で、シールばかりになっちゃった。それ以降、紙と遊ぶ付録って小学館さん、少なくなっているかもしれない。
脇田:でも、また最近出てますよね。
祖父江:そうだね。今度出る『幼稚園』とかも、お寿司だっけ?(幼稚園9月号)脇田:回るお寿司ですね。
祖父江:回るお寿司だったり、徐々に紙を使うものが増えてきています。
脇田:ほんとの、です。
祖父江:「フォ」と「ほん」って違うよね。「フォッフォ」と、「ほっほっ」てね。どっちが好き? 「フォ」と「ほ」と。
脇田:「フォ」も「ほ」も、どちらも好きですね。
祖父江:それで、なぜこの『ぺぱぷんたす』を作りたかったかというと、「本はみんなのものだ」という教育を私たちは受けたのよ。だんだん、お父さんみたいな会話になってきたね(笑)。
学校でも「本はみんなのものだから、唾つけてめくっちゃいけません」とか。「唾つけてめくるのをやめましょう」って書いてある図書館、今はないね。昔は書いてあったのよ。
脇田:見たことないですね(笑)。
祖父江:年配の人って肌がカサカサになって、めくりにくいから、だいたいの人が(指にツバを)ペッてやって、めくっているんですよ(笑)。図書館に行っても、水分を含みやすい本は、地側(本の下側)の前小口(背の反対側、めくる側の下の角)が膨らんでるの。
脇田:人のツバで膨らんでいるということですか?
祖父江:そう、膨らむぐらいだった! 戦後は紙が貴重だったから、本は大事に扱いなさいという教育があったんだけれども、はたしてそれでいいのか! 日本の絵本だけが大きいでしょ?
脇田:サイズが大きいですよね。
祖父江:そう。もともと、(海外の)子ども用の絵本といえばポター! ポターの『ピーターラビット』は小さい。
脇田:文庫よりも小さいですか?
祖父江:小さいです。12センチぐらいで、CDぐらいしかないです。
ちなみに『ピーターラビット』の第1巻は、昔はお父さんがお料理される扉があったんですけれども、今はなくなったみたいです。
脇田:お父さんがお料理される?
祖父江:うさぎパイにされちゃったお父さんが食べられている絵から始まるの。それで「君たち、人間に気をつけなさいね」という教えをピーターラビットが受けます。
だけど、お父さんがお料理されて、食べられる絵が、「ちょっと残酷かもしれない」ということでやめたんだよね。
脇田:トラウマになりますもんね。今は違うんですね。
祖父江:今はほとんどの本はその絵が外されているけど、高めの復刻本は残っているかもしれない。
祖父江:というわけで、(『ピーターラビット』の)このサイズ。
脇田:小さいですね。
祖父江:そうでしょ? 小さい子の体にぴったりですね。ページをめくると、一番最初にちゃんと名前を書くコーナーがある。自分の名前を書くということは、外国のお友達は、絵本をもらったらそれは自分のものになるんです。ただ、日本は「みんなと読みなさい」ということで、みんなで読める用にどんどん大きくなっちゃった。
保育園も、お休みタイムの前にさらに大きめのサイズで読んだりしてね。僕も読みに行ったことあるんだけど、意外に難しいんですね。
脇田:読ませるのがですか?
祖父江:絵本を読んで子どもがだんだんスヤスヤとなる感じにやるんだけど。おもしろく読んじゃうと目が冴えちゃうから、つまんなそうに読まないといけなかったり、いろいろある(笑)。
というふうに、これだけでもないです。例えば、うさこちゃん。うさこちゃがわからない人は、ミッフィーちゃん。うさこちゃんとミッフィーちゃんの違いを知ってる?
参加者1:名前の違いですか?
祖父江:名前? 同じなんだけど、違うんだよね。なにかというと、もともとはオランダ語で……。
祖父江:あっ、こういう話をしていたら『ぺぱぷんたす』にいかないね(笑)。つい好きで。
(会場笑)
脇田:でも、それをちょっと聞きたいです。
祖父江:(うさこちゃんの絵本を持って)最初のページに名前を書くページがあります。自分の名前を書いてからスタートで、うさこちゃんは落書きがしやすいのよ。(後ろ姿のうさこちゃんは)目と口を描けばこっち(読者の方を)向くしね。
脇田:うんうん。
祖父江:なんの話かといえば、うさこちゃんというのは、オランダ語で「ナインチェ(Nijntje)」という。
オランダ語を訳すと、「ナイン」というのが「うさぎ」、「チェ」というのが「ちゃん」という意味。だから、直訳するとナインチェは「うさこちゃん」だってさ。うさこちゃーん!(笑)。
でも、すぐ福音館書店が最初に目をつけたんだよ。オランダで発売して、すぐに日本でも売りたいといって、石井桃子さんが直訳で「うさこちゃん」にしたんですが、そのあとでイギリスでこれがキャラクターとして売ろうということで、イギリスでついたのが「Miffy(ミッフィー)」なんですよ。
脇田:そうなんですね。
祖父江:それでキャラクター権利関係がミッフィーちゃんと呼ぶことになったのを輸入して、グッズはミッフィーちゃん、絵本はうさこちゃん。同じなのに違う、びっくり。
脇田:ミッフィー(の由来)はどこから来てるんですかね?
祖父江:よくわからないけどね。なんでミッフィーなんだろう? でも、おばあちゃんやおじいちゃんがミッフィーちゃんの発音をできないね。
「おじいちゃん、ミッヒーーちゃんよ」、(発音を噛んで)「え、ミッヒイーちゃんかい」「違うよ。ミッピーでしょ?」とか言ってね(笑)。発音しにくいのがミッフィーちゃんなんだけれども。
講談社と福音館で(権利関係が)混ざっちゃったんだけど、今は棲み分けができた。福音館さんはオリジナルをそのまま出して「うさこちゃん」。講談社さんはキャラクター的な展開で、編集・企画を加えて「ミッフィーちゃん」。でも、同じです。
脇田:なるほど。
祖父江:でも、ミッフィーちゃんは、お洋服を着替えればお友達に変身できる。
祖父江:……違う! 『ぺぱぷんたす』の話じゃないか! そうだそうだ。
なぜ『ぺぱぷんたす』を作ったかというと、日本では子どもが本をもらっても、自分のものになりにくい。「お友だちやお姉ちゃんと読んで」とか、そういう長持ちさせようというきらいがあるんですが、本はもともと消耗品ですよね。(落書きを)描いて、(ページを)切って、味わうのが大事だよね?
みんな本のことを見るものだと思っているよね。本は嗅ぐもので、噛むものでしょ? そういうふうに「筋肉で体当たりだ!」というのを子どもの時代から学ばないといけない。
なのに、「見るだけ。遠くで見て。汚れるから触らないで。はい、見せた」。これじゃあダメだと思って、それで小学館の笠井さんと手を組んで、ボロボロにするための本を作ろうとして立ち上がったのが、『ぺぱぷんたす』なんですよ。
(会場笑)
それで、1号目が出るまでに時間かかったんですよ。それは僕が忙しかったからなんですよ。困っちゃって、それで手伝ってもらえると助かるなと思って来たのが、誰でしょう!?
脇田:はい、私です……。
(会場笑)
祖父江:そうなんです! それで僕は手伝ってもらおうと思ったんだけど、だんだん忙しくなってきたら、結局まるごとお手伝いをお願いしちゃった。僕は「あ、いいね。いいね!」とか言ってるぐらいで、(『ぺぱぷんたす』が)できちゃったんだよね。
ということで、ここに書いてあるアートディレクションは僕なんだけど、僕は「いいね!」「え〜!?」と言っているだけ。実際に作ったのはワッキーさんです。
脇田:(笑)。
祖父江:これができた。1号目は先に表紙を破って売ってるんですよ。
なぜ破って売っているか。何回も言っているから知っているよね? お母さんが買って、子どもに渡すときに「大事に読みなさい」という意識を削ぐためです。最初から破れているから、「もう破っていいんだ」というところからの出会いが1号目。
ぼく、絵本作家の片山健さんがすごい好きで、(ぺぱぷんたす1号目ができたときに)片山さんのところに『ぺぱぷんたす』を自慢しに持っていったんですよ。これを見て片山さん、いきなり表紙を破ったもんね。
脇田:本当ですか?(笑)。
祖父江:(表紙が破れているので)「おお」と言って、破りたくなるのね。子どももきっとそうだと思います。楽しいし、おもしろいよね。
これが1号で、2号目が本当はすぐに出す予定だったんですよ。そうしたら、なかなか出なかった。
脇田:なんででしょうね(笑)。
祖父江:そしたら、コズフィッシュ(祖父江氏のデザイン事務所)に新入社員が入ったんですよ。えっ、誰だっけ?
脇田:……私ですね。
祖父江:そうでしたね!
(会場笑)
祖父江:そうしたら急にできましたね。7月7日、ちょうど1年後に出ましたね。七夕の日に出会えたという。これが2号目です。中にシールの付録がついています。
1号目は表紙を破ったので、2号目は、ぺぱちゃんとぷんちゃん(がメイン)。本物がお家に来てほしい子がいるだろうと思って、本物のぺぱちゃんがお家に来る感じでやったんだよね。
だから、かみぐるみ。ぬいぐるみみたいな感じだけど、でも本物なの。かみのこだから。(絵本を)ちゃんと立てると本物が来たぞ! このぺぱちゃんは、印刷してるけど、紙だから本物のぺぱちゃん。
脇田:絵本の内側もそうですよね。
祖父江:目鼻口(のシール)を貼っちゃてるけど、(ぺぱちゃんが)寝転んでるの。だから、絵本を立てて一緒に、「今日はどうする? 一緒にテレビでも観る?」「うん、観る!」って、一緒に横になってテレビ観たり、(表紙に空いた穴から)「きみのことをのぞいちゃうぞ!」と言って覗いたりね。撫でたりもできるし、いろいろできるんだよね。
なんてすてきな2号目でしょう。
祖父江:今日はこれの2号目の話をしにきたんだよね。製作工程の写真があると聞きました。
脇田:表紙の案ですかね。
祖父江:じゃ、説明してみて。
脇田:いやいや、これはたぶん、私が(コズフィッシュに)入る前なので(笑)。
祖父江:これなんの写真が入っているかね。いま初めて見る。及川さんが描いたのかな? あっ、僕が描いた絵です。
脇田:こうやって見ると、完成形にかなり近いですね。
祖父江:近いよね。(絵のイメージが)「わーい」「あっかんべー」だよね。
脇田:これも表紙なんですかね?
祖父江:最初は、ぺぱちゃんがもっと大きかったの。3等身にしようと思って。蛇腹をつけて、抱きまくらみたいな感じの、もう本当に妹や弟(みたいな存在)がいるサイズ。
もう一巡した感じにしたら、一緒になって野球やったり、ゲームやったりできるかなと思って、ああいう大きさだったんです。
脇田:紙で遊ばないんですか? 野球やったり(笑)。
祖父江:野球。「いくよ!」、 ヒューンっていって、「ナイスキャッチ!」とかで、いろいろ遊べるじゃん。でも、これやるのが実はけっこう難しかったんだよね。
脇田:蛇腹が難しかったんですかね。
祖父江:そう、蛇腹をやるとね、つまり無駄なことに…。意外にお金がかかった。
脇田:(笑)。
祖父江:ということでやめたんだ。それで2等身のぺぱちゃん誕生。
100%ORANGEの及川さんという上手な人がいる。上手な人といったら怒られるけれど(笑)。
及川さんは、お父さんやお母さん的な人には「ORANGE100%さん」とよく呼ばれるといって悩んでました。「自分のことを検索しようとしても、ジュースばっかり出てくるんだよね」と言っていました。
その及川さんに「どんな感じだといいかな?」と聞いたときに、書いてもらった最初がこれだよね。もうほとんど同じだよね。
脇田:同じですね。
祖父江:笛を持ってないけどね。
脇田:そうですね。完成形は笛を持ってる。
祖父江:切って「こんなかな?」「やった、かみぐるみさんできた!」という喜びのポーズをしている時の私です。後ろに貼ってあるのはスヌーピーミュージアムのファイナルのポスターですね。
これは見覚えがあるね。どっちかが僕なんだよね。でも、難しいんだよね、これ。似た顔してるから。わかるかね、どっちか。
大きいほうがソビーだとみんな思いがちだけど、小さいほうがソビーです。それで大きいほうがワッキーです。これを覗くと、ちょうど口のところに鼻が出るんだよね。
でも、僕が持っているやつは、ついついおもしろがって、口から舌をベーって出したら、汚れました。あまり(スタッフが)触ってくれなくなっちゃったね(笑)。そういう遊び方もできます。
後ろにはなにが貼ってあるんだろうね? 坊っちゃん展が貼ってありましたね。さきほどの不気味な目と口を貼って喜んでいるところですね。これは遊んでいるところですね。これはなんだ?
脇田:「ずっとはれるまん」ですかね。
祖父江:「ずっとはれるまん」を作ったのは、中村至男さんという美しい肌をした男性のデザイナーです。すごい美容に凝ってて、肌がきれいなの。一緒に韓国に行ったときに、免税店でカタツムリやヘビなどをいろいろ買って帰ったみたい。
脇田:カタツムリやへビを?
祖父江:うん、(カタツムリやヘビの美容液やクリームは)すべすべに効くんだって。
脇田:へえ。
祖父江:という人が「ずっとはれるまん」を作ってくれたの。
脇田:(はれるまんって)このシールの人ですよね。
祖父江:このシール。1回目は「ずっとめくるまん」だったんだけどね。このはれるまん、けっこう遊べるよね。いっぱい遊べるよね。
脇田:うん、そうですね。
祖父江:まぁ、そういう……まぁね、うん。これ絶対に狙ってるよね。このシール。ちょっと置き方によっては男の子がおもしろがったりするようなもの入っているしね。
脇田:はい(笑)。
祖父江:こういうシールやっぱり人気あるんだね。子どもの頃、シールブームだったのは人気があったからだな。僕は工作が好きだったね。
祖父江:明和電機さんは電気製品ばっかり作ってるんですよ。だから、「節電のことを考えてください」といって、電気がいらない楽器を作ってもらいました。
脇田:はい。持ってきました。
祖父江:じゃあ、やってみてください。だいたい失敗します。
(脇田氏が3回実演するも失敗)
脇田:何回も遊んでいるから、この弁がちょっと(扱いづらい)。
祖父江:そうですね。
(4回目の実演で成功)
おお、いいじゃん。(口をつけるのが)ちょっとした角度で、だいぶ音が違うんですが、最初はストローでやろうという予定だったんですよ。
でも、ストローは悔しいので、「せっかくだから紙でやろうかな」と思って、ユポという紙を使ってます。1970年ぐらいにできた未来の紙。つまり、木を使っていない紙。ベースには石油のフィルムです。そして表面に石を砕いたものが塗ってある。だから、濡れてもぜんぜん破れない。果たして紙と言っていいのかどうか……。
でも、ユポはカッターの刃でシュシュシュって表面の粉を裏表こすると、そこが透けるんですよ。おもしろいよ。
そういう素材を使っているから、何回吹いても大丈夫なんだよね。意外にけっこう難しいんだよね。作るときも難しいし、吹くときも難しい。でも、たまたま1発ですごいいい音が出ることもあるね。
脇田:あとはもう1個がこれかな。ビリビリマスクです。
(脇田氏が実演)
祖父江:僕だったらもっといい音出すんだけど、僕のは持ってきていないからいいや(笑)。
これはすごい紙を使ってるんだよね。ユポに対して驚きの10分の1の価格。ユポは高いもんね。もっと高いかもしれないね。これは普通の純白ロールという片艶の晒(さらし)クラフトの包装紙を使っています。
「晒クラフトってなに?」って聞かれることがあるので、ちょっと聞いてみてください。
脇田:……晒クラフトってなんですか?
祖父江:あ、晒クラフト? ええと……。
(会場笑)
クラフト紙があるじゃない? クラフト紙は茶色っぽかったりするじゃない? でも、よくみんなが見るクラフト紙はそんなに茶色くなくて、肌色っぽいライトオレンジなクラフトでしょ? あのクラフトはクラフトと言わずに、正確な名前があるんですよ。
脇田:なんて言うんですか?
祖父江:よく聞いてくれました。半晒(はんざら)クラフトと言うんですよ。
半分晒したクラフト。これが多く使われている、どこにでもありそうな、そういうクラフト紙なんですよ。単なるクラフトは…。「もっと正確にいうと?」と聞いてくれる?
脇田:もっと正確にいうと?(笑)。
(会場笑)
祖父江:正確にいうと、未晒クラフトというんだよね。未だかつて晒していないクラフト。それでここに入っているのは晒したクラフトで、晒クラフトよ。
晒すと白くなる。もともとのクラフト紙は、本棚みたいな茶色なんだけど、これをちょっときれいにするために酸などで晒すと、半晒になってもう少し明るくなって、どんどん晒せば晒すほど白くになって、それが純白ロール。
その紙は薄いから製本ができないと、みんなが泣くところをがんばって入れてもらって、それで作ったのがビリビリマスクです。
脇田:白夜という名前ですよね。
祖父江:白夜です。純白ロールという大きいカテゴリの中にいろいろなメーカーで(名前が)つきます。
片艶は、片面が艶々してるのが片艶です。薄すぎて製本泣かせなんだよね。閉じたときに皺が入っちゃったりすると返品が来るから嫌だってみんな言うんだよね。
でも、製本されてしわしわになっていたとしても、なるべくクレームを言わないようにしてもらわないと。(本の)値段がどんどん高くなっていっちゃうんだよね。
『デザインのひきだし』とかは、「まぁしわしわになったら、しわしわになったでいいや」というつもりでやっているから(いろいろな紙を)綴じて(製本して)いるけど、ぜんぜんクレームはないのよ。
でも、こういう本だと、少しでも皺があると「取り替えてください」と言う人がいるから、そこはやっちゃいけないといって、奥の手でいろいろね。袋を作って、そこに人の手で入れて、袋の上を閉じて……と、ややこしいことがいろいろ行われる。
しかも、薄いからもし袋に入れるとしても、「ああ、入らない」ってなっちゃって面倒くさいじゃん。綴じてしまえばいいんだよね。「皺でもいいぞ」と思ってもらえるといいんだけど、なかなかこの世は難しい。
作り手がしわしわでいいと言っても、販売部に「いや、ちょっと待ってください」って言われることがある。でも、(『ぺぱぷんたす』を販売する)小学館さんはがんばった。綴じてある!! あと一歩、もっと薄い紙まで綴じてほしいね。
脇田:あのね、「いろのハープ」の話をするといいかなと思って、今日いろいろと持ってきてあるんです。ちょっと遊んでみますか。
私たちはいろのハープを「タララン」と言っています。どんなのか見てみよう。実はもうちょっと上手にめくります。
祖父江:いきます!
(祖父江氏、「いろのハープ」をめくる)
参加者:おお〜。
脇田:きれい。
祖父江:本を開けて、(めくれる様子が)タラランとなると、おもしろいよなと思って。こういうページを作ろうとしたんだけれども、(最初は)綴じ方が違うから、なかなかこうならなかったね。
脇田:これも製本がけっこう大変でしたね。
祖父江:4回ぐらいやり直したね。また、音もする。
あとは色もきれい。TOKAさんという蛍光色が得意なインキメーカーのVIVAシリーズがあったんですよ。VIVAシリーズはビビッドで、週刊誌はTOKAの蛍光色を使うケースが多いんですけれども。
インクを盛れば盛るほど、鮮やかなんだけど、2年前に発売されたTOKAの「VIVA DX」は、なんとすごいことか! インクを盛れば盛るほど鮮やか! ではなくて、1回刷りが一番鮮やかという、作業する人にやさしいものが出た。それを使っています。ここはサターンイエロー。
脇田:それたぶん濃いやつじゃないかな。祖父江さんが持っているの。
祖父江:(制作当初は)VIVA DXなのにVIVAのつもりでけっこう濃く刷っちゃったから、普通に刷ってもらったのね。
きれいでしょ。じゃあ2作目のタラランをしてみます。開きの角度が大変難しかった。
(祖父江氏が再び実演)
脇田:そうですね。あと、のりをどこまでつけるかも難しかったですよね。
祖父江:苦労したよね。でも、やっぱり音もいいよね。ダララン、タララン、タラランっておもしろいですね。
脇田:うん、とくに意味はないページなんですよね。
祖父江:なんの意味もないページが大事。おもしろいものは意味がないほうがいい。だいたい「これのためにこれをやる」のは、つまんないじゃん?
ゲームは、ボス倒すためにがんばって倒したら終わりじゃん。ボスを倒すためにやることも決まってるじゃん。剣を持つ、剣を鍛える、歌を唄う。
脇田:やることが決まってますよね。
祖父江:決まってる。これは決まってないから自由すぎる。色もあるから、いろいろできるよね。
祖父江:このポスター、いいよね?
脇田:はい(笑)。
祖父江:本当はこういうポスターを作りたいなと思ってたんだけれども、「これだと子ども向きじゃないかもしれないね」ということで、小学館さんに作ろうと言いにくかったので、コズフィッシュで勝手に作って今日持ってきたのね。
脇田:はい。勝手に作りました。
祖父江:世界に1枚ずつしかないのね。
脇田:(左側のポスターを指して)この左の女の子いいですね。
祖父江:これですね。これ(女の子が持っているオブジェ)も紙のダンボールでね。
脇田:ダンボールで全部作ってあるんですね。
祖父江:びっくりするのは、この頃のお家には新聞紙がないのよね。
昔だったら新聞紙はどこにもあると思ったら、新聞紙がなくて、どこにでもあるのがダンボールだった。ダンボールで入れる服を作って、これマスクも作ったよね。
(右側のポスターを指して)こちらはワッキーとソビーです。楽しいよね。これは(「おはスタ」)朝やってるから、暇な人は見てください。なんか笑いどころがわからないコーナーですが。
脇田:なにをやっているコーナーですか?
祖父江:紙の好きな子たちみんなで、紙で遊ぶんですよね。
脇田:うんうん。
祖父江:自分も出てくるくせに(笑)。
脇田:(笑)。
祖父江:でも、新聞紙を楽器にしてみんなで演奏会したり、あとは紙による火遊びもしちゃうのよ。
紙で火みたいにしてメラメラとね。紙で火遊び、おもしろいよね。なんでもなれるよね。
脇田:紙遊びなんですかね?
祖父江:紙遊びなんですよ。神がかってる。
祖父江:3号目作るんだよね。今日だって、ここに来る前に3号目の打ち合わせをする予定だったんだよね。
脇田:予定だったんですけど(笑)。
祖父江:入稿が間に合わなくて、結局できなかったのね。
脇田:はい。
祖父江:だいたい僕が足引っ張ってるね。でも、3号目すごいよね。3号目のヒントはね……。1号目がなにがテーマだったか知ってる?
「破いちゃえ、乱暴に使おう」。だから、このままでも楽器なのよ。なにかの曲を演奏するときに、絵本を楽器にしていろいろなことができるの。
2のテーマは、いろいろなことを忘れちゃったりして楽しもう。つまり、僕は今日忙しいのに、このあと音楽を聞きに行きたいなと思ってたけど、音でなんでもかんでも忘れちゃうのが2号目。
脇田:それでこういうマスクを使うんですね。
祖父江:だから、紙笛も吹いています。
(ハッとして)そういえば雑誌の『幼稚園』。大人だけど、僕は毎号取ってるの。
『幼稚園』は保育園の子でも買っていいんだよ。よく読むと、保育園と幼稚園の子用と書いてあるから。『幼稚園』に、いつもワッキーさんとソビーさんが小さく入っているので、よかったら思い出してください。
(ぺぱぷんたすのコーナーがあって)付録が毎回ついている。今回の付録は、黒い紙。これすごいんですよ。この黒い紙の遊び方は、自由なんだけど、黒いところに鉛筆で字を書いたら、黒に黒で読めなくなるじゃんってつい思いがちですが、鉛筆の色が輝く!
これは色校だから恐る恐るやってますが、濃い鉛筆で書くと、すごく輝くのよ。あっ、鉛筆が飛んできた。
脇田:(笑)。
祖父江:やります! いいの、色校に書いても?
脇田:はい、いいです。
(祖父江氏が黒い紙にイラストを書く)
祖父江:僕が書くのはヤミヤミのミーヤくん。まず目があります。もう光り始めた!
脇田:光っていますね。
祖父江:ヤミヤミヤミヤン。闇を書いているつもりが輝くくん。しかも、あっ、鉛筆ありがとうございます。
脇田:(笑)。
祖父江:鉛筆は持っていないけど、僕は常にポケットに消しゴムを持っているんです。あと、鉛筆の上から書ける。消しゴムで黒くなる。
そういう付録が『幼稚園』には入っている!
脇田:すばらしい。
祖父江:みんな欲しくなっちゃったねぇ。
祖父江:あとは、溶ける紙。
脇田:溶ける紙。
祖父江:すごいんだよ、溶ける。しかも、油性ペンで絵を書いて上手に水に浮かすとと、紙だけ消えて絵が残る。一筆で書くといい。しかし上手にやらないと、絵も溶ける。
(会場笑)
脇田:難しいですね。
祖父江:そうなんだ。10回に2回ぐらい成功するんだよ。ここに書いてある印刷の子は意外に残ったままだよね。
脇田:インクは、そうですね。
祖父江:油性なんです。印刷インキは油性だから残るんですよ。アブラカタブラ。
しかも、ほかにもなにがあるかというと、こういう水出し。あれ、今日『ぺぱぷんたす』の宣伝なんだけど、『幼稚園』の宣伝になってきてるけど、まぁいっか。
脇田:(笑)。
祖父江:水出し。水であらま(紙に水滴を垂らして)、不思議。3面の鏡を見て、たら〜りたらりと出てきた油。
ガマの油のように、たら~りと絵が出てきます。1枚が2枚。2枚が3枚。3枚でおしまい。
脇田:はい(笑)。
祖父江:(ぺぱぷんたすの話に戻って)あとは、メビウスの輪です!
脇田:祖父江さんのページ?
祖父江:はい。もう自分で全部やりました。これはね、そんじょそこらのメビウスとは違うんですよ。
これはですね、まぁ縦に2つに切って、これの倍の長さになるんですけれども、いくらいっても裏がない。この男女の仲をハサミで切ったらどうなるか?
脇田:輪にしたあとに切る?
祖父江:メビウスの輪にしたあとで男女の仲を切ると、この仮面を女の子が隣にいる男の子に渡すのではなく、裏にいる男の子に渡すことになるという、保育園にしては難しい(内容になる)。小学5年生ぐらいの内容をやっちゃって失敗と思ったのですが、自分は楽しかった。
つまり、メビウスは真ん中で切ると、いま答えがわかっちゃったかもしれないけど、表と裏というのが構造が変わっちゃう。でも、秘密だ。これはやった人の楽しみを取らないように内緒にしておこうと思う。
祖父江:あっ、「時間だから質問しろ」って言われた。テレパシーが来た。
(会場笑)
ちゃらちゃっちゃ、質問タイム! はい、質問がない人もある人も質問をお願いいたしマンモス!
司会者:手を挙げていただければ、マイクお持ちしますので。
祖父江:お願いしマンモス。ワッキーかソビーか、どっち向きでもいいです。もし質問がないときはこちらから質問しちゃうよ。
(会場挙手)
あっ、来た! お願いします。
質問者1:すみません。さっきから気になってたんですけど、ポスターを今日貼られたということだったんですけど、貼る時に破れたんですか?
脇田:ええとあれは……(ポスターが)丸まった状態でコズフィッシュに届いて、「丸まりをとろう」と祖父江さんが言っていて、壁にはったら(少し破れた)。でも、ほかはつまり、ああいうデザインです。
質問者1:あっ、デザイン。
脇田:はい。
祖父江:これも実は、破れて(ポスターの紙が)ちょっと薄くなっているでしょ。
脇田:そうなんです。あと近くで見ていただけばわかると思うんですけど、白い紙が薄くなったような感じにわざとしているんです。
祖父江:カットするところは黄色かなにかの色で作っておいて。僕は「破っちゃえばいいんじゃないの?」と言ってたんですけど、いや、きちんとカッターナイフで切ったほうがいいという意見がきたことによって「それはそうかもしれない」と思って。来る前に丁寧にカッターで切ってたね。
脇田:はい。右側の折れてるほうのポスターも、そういうふうにわざとカットしてあります。
でも、(貼って破れちゃった部分を見て)なんかそういう、紙は永遠でなく変わっていというのがぺぱぷんたすのテーマだから。ここでまた育つ。
脇田:いま紙を育ててるんですね。
祖父江:なにかあるたびにこれを持っていって、貼って、どこまでボロボロになるかというのを育てないといけない。それでこそ「紙」と思っているところなんですよ。
脇田:はい(笑)。
質問者1:ありがとうございます。
司会者1:ほかに質問のある方はいますか?
祖父江:意外にいないのかもしれないね。
脇田:じゃあ祖父江さんに質問してもいいですか? 3号目でやりたいテーマなどは、祖父江さんの中で決まってるんですか?
祖父江:あるさ。3号目はスペース、場所よ。つまり、住まいだったり、空間だったり、そういうこと。
紙と紙のある場所と。紙はいまどこにある? ここにある。しかし、ここにある紙がここじゃないところにあったときに、紙は紙なのか? 果たしてミカンなのか? ……今のはつまんなかった、ごめん。
(会場笑)
とにかく、紙というものと場所、紙によるコミュニケーションはだいたい同じなんだけれど、紙のうーん……。あ、わかんない。
(会場笑)
という感じ。
脇田:なるほど。
(会場笑)
脇田:ありがとうございます。
祖父江:じゃあ、ワッキーさんに質問があります。3号目の中にもしなにか1個やれるページができたら、なにやる?
脇田:私が3号目でやれたらいなと思っていたのは、大日本タイポさんとかが入って、言葉を使って、何かができると楽しいかなと思いますね。
祖父江:大日本タイポさんは、うんこやおしりのタイポで言葉をやっていたけどね。
脇田:うんうん。
祖父江:言葉だ! じゃあ、3号目、言葉にしようか。
(会場笑)
脇田:大丈夫ですか(笑)。
祖父江:言葉いいかもね。じゃあ、そういう場所と言葉みたいな雰囲気でいっちゃう?
脇田:3号目(笑)。
祖父江:はい、賛成の人? あれ、いないか。
(会場挙手)
あっ、いた! いいかも。じゃあ、反対の人? あ、いない。
ということは、賛成あるいはどっちでもいい人だ。
(会場笑)
脇田:どっちでもいいのかもしれないですね。
祖父江:じゃあ、言葉かもね。
質問者2:お話ありがとうございました。僕は学生なんですけど、就活をやるまでに時間がまだありまして。なにか祖父江さんなりに学生がこの時期にやっておいたほうがいいこととかってありますか?
祖父江:いろいろだと思うんですけど、僕の会社ではなるべく独特な笑い方をする人を採るようにしてるんです。
(会場笑)
脇田:デザイン関係ないんですか?(笑)。
祖父江:関係ないかもしれない。笑い方の研究かな。でも、そうだ。(脇田氏の方を向いて)近い人がなにか指導してあげてください。
脇田:近い人(笑)。
祖父江:学生だったばかりだった人。
脇田:社会人になると制限が多いと思うんですけど、お金や大人の事情がたくさん持ち込まれてモノができていく感じがほとんどだと思います。
学生のうちはなにをやっても誰も止めないし、自分がよければいいことがほとんどだと思うので、それが大事かなという気がします。
祖父江:賛成! まぁ、やれるときやっておかないとね。社会に出ると、うち自由そうだけど、意外にきついしね。
(会場笑)
やりたいことが意外にできないんだよね。だから、やっておいたほうがいいよね、って僕も思いました。
脇田:そうですね。
司会者1:質問のある方がいらっしゃいましたら。
祖父江:いた!
質問者3:今日はお話ありがとうございます。冒頭のお話で、絵本は、海外の場合は1人1冊が自分の絵本というお話があったと思うんですけど、『ぺぱぷんたす』は子ども1人というか、人1人に対して1冊ですか? 例えば3人兄弟がいたら、1人1冊のほうがいいんでしょうか?
やはり親としては、価格を気にするところもあると思うんですけど、理想としては1人1冊なのかなと思って。
祖父江:『ぺぱぷんたす』の、とくに2号目は、がんばってお安くしてあります。
(会場笑)
脇田:1号目より2号目。
祖父江:1号目よりいくら安いかというと、なんと400円も安いんだよね。
脇田:本当ですね。
祖父江:すごいよね。
脇田:でも、2号目のほうが分厚いんですよね。
祖父江:そうなんだよね。ページがあるね。本当のことをいうと、お1人様1冊か、あるいは、人によっては「取っておくよ」「使うよ」「あげるよ」ということで、3冊あるかもしれないですが。
各ご家庭にいろいろな事情があるので、逆に3人ぐらいいたら、誰がどのページを所有するか、分け合うことの教育に使うのもありかもしれない。
「僕はシールがどうしてもほしいんだ」と言って、「じゃあその分、このメビウスとこれと合わせたぐらいね」と(交渉する)。どのページがどう平等かという価値観の分け方をやれる。ということで、1冊でもいいような気はする。
脇田:シールは何回でも遊べますね。
祖父江:そうだよね。シールは何回でも遊べる上に、2号目のシールを3号目に貼ってもらってもいいしね。
テレビに貼ってもいい。よくテレビに貼って遊ぶよね。シール。遊ばない?
脇田:昔はやったかもしれないです。テレビが分厚かったですしね。
祖父江:分厚かったから? え、横に貼ってたんだ?
脇田:はい。
祖父江:……。
脇田:モニターに貼っていたということですか?(笑)。
(会場笑)
祖父江:モニターになんか決めて貼るのよ。そこに顔がちょうど入っちゃったら当たりなのよ。
(会場笑)
脇田:楽しい。
祖父江:けっこうドキドキよ。おおむね顔の位置とかサイズって、意外や意外、いけるじゃん。そう計算すると、けっこういいチャンスが来るのよ。
ということで、お一人様、別に1冊である必要はないけれども、どちらかというと大事にしない心、これさえあれば(いい)。大事にせずに分け合う心。
大事にする=未来のなにかの役に立つかなって、そうやって取っておくために買う人って信じられないよね?
どちらかというと、もう消費しちゃえばいいのよ。使い切って、それを記憶の中、あるいは細胞の中に蓄えて、その使い切ったエネルギーをもとに来年のお米になるんだ。
(会場笑)
そういう感じで、とにかくもったいがらない。
祖父江:そういえば『もったいないばあさん』という絵本が流行ったらしいね。『もったいないばあさん』。時代は不思議だよね。少し前は『BRUTUS』で「贅沢は素敵だ!」だったし、その前もいろいろとね。
どちらかというと、大事にしても、本はどうせ壊れてなくなるものだから、なるべく元気で付き合いのあるうちに濃厚に関わって遊んでもらったほうがいいんじゃないかな。
(絵本の)字も、遊び方は書いてあったりするけど、自由だもんね。この『ぺぱぷんたす』という字で、ぺぱちゃんとぷんちゃんの子同士で着せ替え遊びをやるとかさ。
でも、字の着せ替えのお洋服が今ついていないから、どこかのページから切ってくればいい。そういう感じで僕は紙っ子だったときにハサミとノリとでずっと本を裂いてた。がんばって、「これ切っちゃおう」って。
(会場笑)
紙というのはやはり遊びにはもってこいなんです。こんなふうに終わっちゃってもいいのかな? あっ、いま質問のコーナーだったんだ。そういうふうに思いました。なので、分け合うのが大事だと思います。
脇田:はい(笑)。
司会者1:もうお2方ぐらい質問。
祖父江:どんな質問があるかな。なにか今までにない退屈な質問とか欲しいよね。どんなのでも、悪いのでもいい。でも、意外にみんな照れ屋さんだからこないのかな。質問じゃなくてもいいよね。「僕がこういうことが得意です!」とかね。
質問者4:質問してもいいですか?
祖父江:どうする?
(会場笑)
うそうそ。お願いします。
質問者4:今までの『ぺぱぷんたす』の内容だったり、いろいろ紙を使ったアイデアみたいなものは、具体的に、例えばこのアイデアはこういうときに思いついたなど、どんなときに「これいいな」と思いついたり、やりたいと思ったりするのか、お聞きできませんか?
祖父江:いつでもですね。
質問者4:いつでも?
祖父江:いつでもですね。あまり「このとき」ってないよね。意外にみんなアイデアということを崇高に考えすぎ。アイデアは意外に、どこにでもあって自由よ。だから、ここに紙があった。なにやると言ったら、その場でいろいろ出せばいいだけで。
「じゃあ、考えましょう。なにやりましょう?」「じゃあ、僕はすっごい長いヘビ作ります。ワッキーはどうしますか?」。
脇田:「私はなるべく小さくちぎってみたいです」。
祖父江:という感じ。なので、あまりアイデア会議とかないかもね。
脇田:うーん、そうですね。
祖父江:だいたい『ぺぱぷんたす』の場合、どちらかというと誰にお願いすることが先で、その人がなにやるかを見たい感じで、あんまり具体的に「こうやってください」ということを言わなくてもすむ人には「なんかやって」で終わっているんですよ。ひどいんですよ。
(会場笑)
しかも、ページ数も言わないんですよね。
脇田:そうですね。
祖父江:さらに締め切り言わなくて怒られちゃったりしてね。自由すぎて、あとで台割をまとめるのが大変なのは笠井さん。そういうふうに自由に頼んでいるから。
脇田:すごい変なかたちなんですけど。
祖父江:普通、本って、16ページ分で1人で、直角折で合わせて背中を糊付けしてできる。頼み方がよくないせいで、「僕は3ページとか9ページ作りたい」とかでバラバラ。見開きからの人もいるし、1ページからの人もいるし。
脇田:紙も印刷もバラバラです。
祖父江:時間もバラバラ。いつも大日本タイポさんだけ決めてるんだよね。
この先も大日本タイポさんにずっと頼むんですが、どういう頼み方かというと「うまくいかなかったページを担当してください」と頼むんですね。
(会場笑)
最後に何ページ残ったかでお願いする。「今回どう?」「2ページで右と左」「うわー、難しいな」って(笑)。
(会場笑)
そういう人はいるけれども、ほかの人はわりと「こういうことやりたい」と言って、もし紙が変わるんだったら、見開きからだと困るということは……困らないんだけどね。大日本タイポさんがいるから。だけど、
見開きから始めると、目立っちゃうんだよね。紙が変わるところが大日本タイポさん(になるから)。そんなおいしいネタばかりは出せないかもしれないけど、片ページからやったほうがおいしいんだよね。
あ、いや、大日本タイポさんは、実は人気あるんだよね。
脇田:失礼ですね(笑)。
祖父江:ごめんなさい、ダメだ。いけないね、仲良しすぎちゃって失礼を言っていることにいま気がついちゃった。いつもね、ダジャレ勝負とかしてるのだけど……。あっ、それは関係ないや。なんだっけ?
脇田:ええと……。
祖父江:そうなので、アイデアは目的がないアイデアでも別にいいんですよ。プランより(価値が)高いのがアイデアと思われがちじゃん。アイデアがあれば、いろいろなプランができるからね。目的に向かうけど、プランは退屈じゃん。アイデアはなんでもいいから楽なんだよね。
紙があれば10個ぐらいアイデアができます。触って、ちぎる、細く裂く、濡らして消すとかね。紙は音もするし、鼻もかめるし、絵も描けるんだ。紙はだいたい絵を描いたり印刷するもん。
というような感じで、「アイデアを考えたときなんてない」のが今日の答え。明日はまた変わるかもしれないけど、いいかなと思っています。
質問者4:ありがとうございました。
祖父江:よし! OKだって。よかった。
質問者5:お2人に聞きたいんですけど、記憶の中で一番最初に好きだった絵本と、あと最近好きな絵本がなんかあれば教えてもらえればと思います。
脇田:私は五味太郎さんの『きんぎょが にげた』が記憶にけっこう残っていますね。アニメーションでも何回も繰り返し見てました。
最近の絵本は、タラブックスというインドの出版社のものです。最近見て感動したのは、タラブックスの絵本ですね。1枚1枚、シルクで手摺りしてあるもので、デジタルのものとはぜんぜん違う感じで、インクの凹凸も楽しいし、色もきれいだし、すてきだなぁと思いました。
祖父江:僕の場合は子どもの頃、絵本や本がそんなに好きじゃなくて。一番記録に残っているのは姉が大好きだった『あかずきんちゃん』という絵本です。
それはなぜかというと、絵がリアルに丁寧に描かれていて、自分ではその絵本が絵なのか写真なのかよくわからなくて、怖くて見られなかったんです。
今みたいに地球が狭くないから、世界には未開の土地や国があると思っていたんですよ。だから、サルバドール・ダリの絵を見ても、写真だと思っていて。こんな国があるんだって。溶けているような(イメージ)。それで、赤ずきんちゃんの絵本を見ると、絵みたいな人が住んでいる国があるんだと。「なんかやばいんじゃないの、この子?」というような感じだったんだけど。
姉は本が好きで。その赤ずきんちゃんは怖くて、めくれなかった。赤ずきんが狼に食べられるって聞いて、写真のようなのでどうしようと思って、赤ずきんが一番記憶に残って怖くて。本をなるべく開くときは、精神統一して「よし、大丈夫だ」というときに開くような感じ。写真が怖かったんですよ。
それで、好きだった絵本は、僕は幼稚園の時から1年生ぐらいにかけて、月刊誌で『ひろば』という雑誌を買ってもらってたの。
今はもうないのかもしれないんだけれども、開くと最初に観音ページがあって。一番記憶に残っているのは、「まるのくに」「さんかくのくに」「しかくのく」にといって、全部丸で丸い国に丸い車に乗った丸い人が丸い目で。全部丸で描いてある。
後ろで見ると、三角のおうちに住んでる三角さんが三角形の自転車にのって、全部三角で描いてある。そういうのが好きで好きで。
そこに「なぞりましょう」という点々のぐるぐるを、今も子どものこの書写の教科書にあるような、「なぞってみよう」という(ページ)。手の滑らかさというか、そういう点々をなぞるのが好きだったんですね。だから『ぺぱぷんたす』みたいな本が、好きだったのかもしれない。点々が描いてあると、すぐ線をつなぐものだと思い込んじゃってたから。
昔、藤子不二雄さんの『オバケのQ太郎』という漫画があって、オバQが消えた号が好きだった。お化けが消えるシーンを点々で描いてたから、「よし描けるところがあった」「よし、つなぐぞ」って全部つないでた。
祖父江:最近ではないかもしれないけど、最近の好きな絵本は、僕は片山健のコッコちゃんシリーズがたいへん好きです。『おやすみなさい コッコさん』も好きだし。コッコちゃんは100億回ぐらい読んでいるね。
今、言いすぎました。100回ぐらい読んでいます。コッコちゃんはいい。かわいいでしょ? コッコさんがお友達に会うんだけど、なかなか仲良くなれなくて、仲良しになるまで(の話)です。
『おやすみなさい コッコさん』は寝るまでの話ね。子どもを寝かせたときにけっこうよかったのよ。自分としては好きなんだけれども、『おやすみなさい コッコさん』ってどうくると思う? おやすみが。すごいのよ。遠くからやってくるのね。“眠い”が。
まぁ、僕から説明すると内容と違っちゃうので。めっちゃ好きやねん。これ。
(会場笑)
じゃあ、朗読します。『おやすみなさい コッコさん』。
(祖父江氏、『おやすみなさい コッコさん』を朗読)
(会場拍手)
いいでしょ、これ? これね、内容がかなり好きなんだけれど、子ども寝かしつけるのにもけっこう効くの。途中で飽きちゃうから。
(会場笑)
司会者1:ありがとうございました。これでいったん質問コーナー終わらせていただいて、なにか締め・まとめを、最後になにかお二方にお願いします。
祖父江:ぺぱぷんたすの時間が終わっちゃうよ。あれ? 終わらなくていいのか。始めようか。
(会場笑)
脇田:始めますか?
祖父江:うん。かみのすきなこあつまれ!
脇田:ぺぱぷんたすの時間が終わりました。
祖父江・脇田:さようなら。
(会場拍手)
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