社会保障について「オリジン」から考える

小泉進次郎氏(以下、小泉):それでは、次にいきます。4人目は、株式会社Campus for H共同創業者の石川善樹さん。よろしくお願いします。

落合陽一氏(以下、落合):よろしくお願いします!

(会場拍手)

石川善樹氏(以下、石川):こんにちは、よろしくお願いします。今日は「社会保障とポリテックを考える」ということなんですけれども、なにを考えるにしても「どこから考え始めるか」って重要だと思うんですね。

ある人は自分の体験から考える。海外の事例から考える。テクノロジーから考える。財政から考える……って、いろんな切り口があると思うんですけども。今日は、「オリジン」。起源というところから、社会保障について僕は話したいと思います。

マッカーサーとシックスメン

これなぜかと言うと、「オリジンを知らないとオリジナルはつくれない」という名言がありまして。なので、今日はオリジンの話をするんですけども。

じゃあ、社会保障のオリジンはどこにあるのかというと、(スライドを指して)このマッカーサーおじさんですよね。

彼のもとには、「シックスメン」と呼ばれた6人の部下たちがいたんですね。彼らが実質日本の改革・再建を担ったわけなんですけども、(スライドを切り替えて)社会保障を担ったのはこのサムスさんです。

社会保障ってことに関して、このサムスさんは非常に重要で。なぜなら、彼が憲法25条の第2項を書いた人なんですよね。第1項はみなさんご存知だと思うんですけども、第2項にも非常に重要なことが書いてあって。

どういう文言かというと、「国が社会保障をやれ」って書いてあるんですよ。これはアメリカの憲法には書いてなかったことですね。日本という国の特質を考えると「お上から降ろしたほうがいいだろう」っていうことで、国の責任ってことが謳われてるわけですね。

食料を回すべきは大人か子どもか

当時どういう状況だったかって言うと、とにかくみんなお腹が空いてたんですよ。政治家に求めてたものは、「どの政党が俺たちの腹を満たしてくれるのか」という、そこが争点だったんですね。この状況を見かねたサムスは、「給食を支給しよう!」っていうふうに考えたんですね。

日本政府に掛け合うと、「子どもより大人に食料を回すべきだ」って話があったんですよ。なぜなら当時の日本を立て直すのは大人たちであって、働かない子どもたちに食料なんか回す余裕はないだろう、と。

サムスさんは次にアメリカ政府に掛け合ったんですけども、アメリカ政府は「日本なんかよりもヨーロッパの同盟国に食料を回すべきだ」っていう感じで、困っちゃったんですね。

困ったんだけども、サムスはなんとかして日本の子どものお腹を満たしてあげたいと。給食をしてあげたい。ということでずーっと探してたらですね、手を差し伸べてくれたのが、日本政府でもなくアメリカ政府でもなく、アメリカに渡っていた日本人の移民が手を差し伸べてくれたんですね。

給食制度を作った浅野七之助

僕らの本当に大恩人だと思うんですけれども、岩手県出身の浅野七之助さんっていう方です。彼が「一食を分かち一日の小遣いを割いても、援助することは良心的な義務である」ってことで、のちに「ララ」と呼ばれる会を作って、日本に食料を送って、そして私たちの給食制度がスタートしたんですね。

こういうような話は、この『日本人の生命を守った男』という本に詳しく書いてあるので、ぜひみなさんには読んでいただきたいんですけれども。サムスの功績がとても大きいです。

まず憲法25条の生存権っていうところ。ここを整備するところから始まって、予防・医療・福祉・社会保障の基盤を作ったんですね。そして給食の導入ってことをしたし、なによりサムスが誇りとしたのが、全国的な保健所制度の確立です。

戦後直後の日本人の人口は、8,000万人いたんですね。で、「1つの保健所で10万人見よう」と。800ヵ所作れば日本国民全員をカバーできるじゃないかっていうことで。当時の合言葉は「改革は急げ、ゆっくり行くとつまずくぞ」。ということで、ものすごい短期間で全国に保健所制度を作ったんですね。

真に価値があるかは、時の試練が教えてくれる

これは昔も今も日本が世界に誇れる制度ですね。本当に日本全国の現場に、保健師さんや栄養士さんっていう健康の専門家がこれほど配置されてる国ってのはないわけですね。

で、その結果GHQが統治した6年間で、日本人の平均寿命は10年延びるんですよ。これは恐るべき戦後の偉業ですね。

なぜサムスがこんなことをしたのか、っていう話を最後にしたいと思うんですけれども、彼は「我々は民主主義を日本に導入したけども、それはアメリカの民主主義じゃない」と。「民主主義の原理を導入したんだ」って言ってるんですね。「それは言うなれば、『個人は価値がある』という原理であり、心を導入しようとしたのである」と。

ただサムスという人は、非常に慎重でですね。こうも言ってます。「民主主義の原理、個人の価値というものが確かに導入に値するものであったとしても、それがどれほど真に価値があるかということは、時の試練のみが証明してくれるだろう」ということを述べています。

今日私たちは、これからの社会保障、そしてポリテックってことを考えるわけですけども。それを考えるにあたって、どのような主義・主張に基づいてそれを考えるのか。そしてなにを最も、1番の価値とするのか。そういう大きな話も念頭に置きながら、具体的にいろんなテーマをこれから考えていければ、というふうに思います。

時間どおりに私、終わりましたよ! どうでしょう!

(会場笑)

(会場拍手)

時の試練を乗り越えたプレゼン

小泉:ありがとうございました(笑)。アレですね、最後の一文であった「時の試練のみが~」っていう……5分の試練を見事乗り越えたな、と。

石川:はい(笑)、ありがとうございます。

小泉:本当に「社会保障のオリジン」、そして演説調のプレゼン。

(会場笑)

石川さんらしく、ありがとうございました。素晴らしかったです。

(会場拍手)

落合:でも、大人にお金を使いがちですよね。

小泉:ね。

落合:子どもにお金を使わないとって思いますね。