2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
SOCIAL FIGHTER AWARD 最終審査会(全1記事)
提供:株式会社LITALICO
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岸田崇志氏(以下、岸田):SOCIAL FIGHTER AWARDはLITALICOという会社が主催していますが、もともとLITALICOは店舗の事業で発達障害のお子様向けの教室や働くことに障害のある方向けの就労支援事業などをベースにやっております。
地方でサービス提供を待っている方々も増え、より多くの人にサービスを届けていくために、インターネットやテクノロジーの力を使っていけないかというチャレンジを3年ほど前に始めました。なので、私自身はLITALICOの中でこういった教育・福祉とテクノロジーをかけ合わせることによって、もっと世の中の可能性を広げられないかということをここ数年間やってきています。
福祉・教育はすごくリアルでの価値がある分野だと思うので、そこに技術をどう応用するか、どういうプレイヤーの方に参加していただくかが、すごく大事だと思っています。もっとこういった輪が広がるとすごくいい世の中になると思ってやっています。
我々は、実際に店舗でいろいろな方と接する中で、利用者の方が抱える困難は人それぞれで、1つでも多く困難を一緒に解決していきたいという気持ちにどんどんなっていくわけです。
そういった中で、社内でカードを使った療育のツールがあったんですが、手書きだったり手作りだったりが多いので、支援員の方から「こういったものをアプリにしたらすごくいいんじゃないか」「おうちでも使えたらもっと指導の幅も広がる」というお声をいただいて、去年の4月ぐらいにリリースさせてもらったものが『えこみゅ』です。発語によるコミュニケーションが難しいお子さんの支援ツールになっています。
こういったツールをリリースする中で、学びもすごくあったと思っておりまして。この1年で、8種類のアプリケーションをローンチして、100万ダウンロードを突破して、世の中のニーズを感じるところがすごくあります。
岸田:意外だったのですが、こういった社会課題などをすごくシンプルにアプリケーションにして世の中に出していくと、想像していたよりも世の中の人に使ってもらえました。あとは日本だけでなく海外での受け入れられ方やコメントなどによって、日本と同じように困難を抱えている方が世界にもいることがすごくわかりました。
実際、僕たちも、アプリを作ることで世の中を変えたり、誰かの力になることは、はじめに(アプリを)出したときに「どこまでできるのかな?」という懸念があったんですが、実際にコメントをいただく中で、一人ひとりの困難をうかがい知れて、「初めて○○ができた」といったコメントがすごく多くて、アプリ1つでも人生を変えることができる可能性に気づくことができています。
一方で、先ほど「この1年で8本出した」と言いましたけれども、まだまだ困難を抱えている方がすごく多いわけです。人それぞれ固有の困り感があり、課題が多いですが、我々だけだと解決できないものもあり、ちょっとした力を借りるだけで世の中がもっとよくなることが、すごくたくさんあると思っておりまして。
今回、SOCIAL FIGHTER AWARDを開催したきっかけにもなるんですが、さまざまな人たちと一緒に課題を解決することで、より早く世界を変えていける力になると思っています。
課題に関しての取り組み方としては、本当に困っている人の「こういうのがあればすごく明日から楽になるのに」というようなアイデアと、いろいろなアプリの技術を持った作り手が、もっとマッチングしていくと、課題が直接アイデアになって課題解決に結びついていきます。しかし、教育・福祉領域の困りごと・アイデアとIT・技術の間がまだまだ埋まっていない場合が多いと思っています。
岸田:世界に目を向けて見ると、「XPRIZE」という活動があります。例えば月面着陸や海洋汚染や病期診断・医者不足といった、人類の今後の進化につながるような、壮大な課題を解決するコンテストがすごく多く行われているんです。
しかし、AIなどのいろいろな技術がどんどん進化していく中で、貧困・教育などの社会課題の解決はできておらず、どんどん乖離していく気もしています。ここをもっと埋めていく役割が必要です。新しい技術を世の中で本当に困っている人に届ける役割を持つプレイヤーがもっと増えてくるといいと思っています。
縦軸が技術進化です。指数関数的に広がっていて、月面旅行が近いうちにできるのかなと思ったりはします。しかし、その前にある貧困は多分なくならないですし、世の中の生活課題に困る方はまだまだいて、ここを解決するプレイヤーがいないかぎり、どんどんギャップは広がっていく状況かなと思っています。
「人類の」よりも「一人ひとりの社会課題」をテーマにしたコンテストにフォーカスを当てることによって、世の中の1つの課題が解決して、もっと助かる人が増えてきて、それで人生が変わったという経験ができる場を増やしたいという思いでSOCIAL FIGHTER AWARDを開催しています。
こういったかたちで本日は開催しています。身近な困っているところにフォーカスをあて課題をもっと提起したい。それにプレイヤーに参加していただく。SOCIAL FIGHTER AWARDのSOCIAL FIGHTERは、参加される方の名前をSOCIAL FIGHTERと名付けるとすごくいいと思ったので、(この名称で)始めています。
テーマに関しましても、1回目は誰もが一度は経験したことがある「学校」という課題に関して提起することで、より多くのSOCIAL FIGHTERに参加していただけるのではないかと思い、「学校」というテーマで開催しています。
というところで、このあとファイナリストの方から発表いただけると思うんですが、すごくいいものばかりご応募いただいておりますので、ぜひお楽しみにご覧になっていただければと思います。
(会場拍手)
司会者:続きまして、SOCIAL FIGHTER AWARDのこれまでを、株式会社LITALICO CTO室・武貞真未より申し上げます。それではお願いいたします。
武貞真未氏(以下、武貞):こんにちは。ここまでSOCIAL FIGHTER AWARDが生まれたきっかけを岸田からお話しさせていただきました。ここから先は、4月に始まったSOCIAL FIGHTER AWARDのプロセスとそれを作るに至ってどういう思いがあったのかを含めて、お伝えさせていただこうかなと思っております。
私、すごく緊張するんですね。あまり人前に立つタイプではありません(笑)。でも、どうしてもみなさんにお伝えしたいので、お話しさせていただけたらなと思います。
私が入社した頃はまだCTO室がなくて、先ほど岸田の話にあった、リアルとテックをかけ合わせる前段階で、リアル(直接的な支援活動)しかありませんでした。そのとき私がいたのが対面型の教室で、お子様への指導だったり、プログラムの企画開発だったり、幼稚園や小学校、関係機関を含めた地域連携担当しながら支援を行っていました。
小さいお子さんは2歳から大きい子は中高生までいて、小学生の低学年が年齢層としては多かったのですが、そのとき、担当していたお子さんの中には、平日の日中に教室へ通っていて、ふだん学校には行きたいけれど行けない不登校というお子さんがいました。
担当するときに、勝手な先入観で「不登校だからあんまり話してくれないかも」「コミュニケーションがスムーズには取れないのかな」と思っていましたが、私の想像と彼らはぜんぜん違っていて、とても元気で、楽しく積極的に授業に参加してくれる子たちでした。
武貞:これ、何かわかりますか? 恐竜です。その(不登校のクラスの)中に恐竜が大好きなお子さんがいました。すごく詳しくて、専門書にある難しい言葉も全部読めてしまって、私が読めないような漢字も読めているし、本当にすごいなと思っていました。
「これはどういうこと?」と聞くと、わからない大人にもわかるように、丁寧に教えてくれるようなお子さんで、すごくすてきだなと思いました。子どもとしてではなく、ひとりの研究者として尊敬できるお子さんでした。
でも、彼の凸凹の部分の中にはやはり困っていることがあって。自分が勝負に負けることが許せない、こだわりの強さがあって頑固になるところ、自分の好きなものについては話せるけれど、相手の気持ちを読み取ることはどうしても難しくてコミュニケーションが上手くできなかったり。そこから付随して、人がたくさんいるところに来るのがすごく怖いというようなこともありました。
学校には行きたい、お友達と一緒に過ごしたいんだけれども、なかなかできない。彼は「自分が悪いんだ」「自分が治れば学校に行けるんだ」と思っていて、すごくがんばっていました。
実際に私と一緒に授業をする中で問題が解けなくて悔しくてたまらなくて、お守り代わりのぬいぐるみを握りしめて涙を流しながら我慢する姿だったり、ゲームでお友達に負けそうになってタオルを食いしばって嗚咽するような姿を見たときに、こんなにもがんばらないと学校には行けないのかというのが、すごく悲しいし、つらかったんです。誰も悪くないのに、本人も、私も、親御さんもすごくつらい思いをしているということが何度もありました。
彼と関わっていく中で、社会のフレームに適合していくことは一定必要ではあるものの、他の選択肢として、凸凹があったとしても社会の側にいろいろな受け入れの仕方だったり、サポートの仕方があったらいいのにという考えが強くなっていきました。
例えば、クラスの同級生だったり、親御さんだったり、担任の先生だったり、学校の先生だったり、身近にいる関わる人たちが少しずつ理解をしてくださったり、その中でいろいろなサポートや配慮が増えて、教育の受け方や社会での過ごし方を調整することができたらいいんだろうなと思いました。
とはいえ、子どもたちは大きくなっていくので、小学校で連携をして、(その後)中学校で、高校で、大学で、働く先で。毎回毎回関わる先で連携していくのは時間がかかるし、すごく大変なんですね。
武貞:なので、対処療法的にではなく、社会の側自体を、私たちが一緒に変えていくことができたら根本的な課題解決に取り組めるのではないかと考えました。私たち大人は教育を大人達だけで語ってしまいがちです。なので、教育の中にいる子どもと一緒に語りながら、社会の側を作っていくことができたらいいのではという思いがあり、それで生まれたのが子どもに意見を聞く「子どもアイデアソン」です。
このアイデアソンはのちほどご紹介するPLAYERSのタキザワさんという方にご協力いただきました。会場も私たちの会社ではなくて、オフィス家具メーカーであるオカムラさんの「WORK MILL」という活動拠点を貸していただきました。
子どもアイデアソンの次に、子どもたちから聞いたアイデアや意見をどうしようかというところで、より多くの人を巻き込んでやっていきたいなと思ったときに、既に教育や福祉に興味がある人で集まるだけでは新しいプロダクトを作ることは難しいので、普段関わっていない大人にどうやったら関わってもらえるかなと考えました。
とくに技術をかけ合わせるにあたって、エンジニアだったりIT領域の方に関わっていただきたいというのがあったので、先ほどの岸田の話にも少しあったとおり、アワード全体をゲームっぽい雰囲気にして、お題もわかりやすい言葉で設定をすることによって、より多くのエンジニアの方に参加していただけるようにと工夫しました。
また、ハッカソン当日のコンテンツ自体もエンジニアの方が行ってみたいと思えるものにできればと考え、もともとプログラマで『ぼくのなつやすみ』というみなさんがよく知っているゲームの作り手でもある綾部(和)さんに「アイデアから開発につなげる企画の作り方・広げ方」という講座をしていただきました。単体でもおもしろいと思ってもらえるイベントとして、子どもアイデアソンのアイデアを実装するハッカソンを実施しました。
ハッカソンは綾部さんの協力はもちろん、会場はCode for Japanさんのご協力の下、ジャパンシステムさんにお借りして、本当にいろいろな人や場所に助けていただきながらやってきたのがこれまでのイベントになります。
そこから派生して地方で自主的にハッカソンを開催してくださる方がいらっしゃったり、プロダクトを複数応募してくださるチームも現れて、オープンイノベーションという名前にふさわしく、いろいろな方々に協力・賛同いただいてやってきたのがSOCIAL FIGHTER AWARDです。
武貞:私ばかり話してもわかりづらいと思うので、実際に協力いただいた方にも少しお話をしていただきながら、SOCIAL FIGHTERについて、もう少しお話しさせていただけたらなと思います。ここからは、先ほどのお話の中で登場していたタキザワさんと綾部さんにも一緒に前に出てきていただいて、お話をさせていただけたらなと思っております。
あらためてご紹介をさせていただくと、まずタキザワさんは、子どもにアイデアを聞く『子どもアイデアソン』を作るときに企画を一緒にしていただいた方です、PLAYERSさんというチームで活動をされていて、ワークショップデザイナーとして社会課題に対していろいろな企業と協働しながら活動されている方です。
次にご紹介する綾部さんは、ハッカソンの「アイデアから開発にどうやってつなげるか」というところで、企画の作り方や広げ方について話していただいた方で、ゲームの『ぼくのなつやすみ』を作った方でもあります。
先ほど登壇したCTO岸田もお2人と一緒に話していきます。
司会者:それでは、タキザワ様、綾部様、前方へお越しいただければと思います。大きな拍手をお願いいたします。
(会場拍手)
まず、実際にどうやって協力いただいたのかも含めて紹介させていただけたらと思うので、タキザワさんから少しお話しいただいていてもいいですか?
タキザワケイタ氏(以下、タキザワ):タキザワと申します。ふだんは広告代理店に勤めていて、「PLAYERS」ではさまざまなスキルを持ったプロフェッショナルによるプロボノチームとして、社会課題の解決に向けて活動しています。SOCIAL FIGHTER AWARDでは子どもアイデアソンの企画・実施を担当させてもらいました。こちらにムービーがありますので、ちょっとご覧ください。
(動画が流れる)
小3から小6のお子さん8人に集まっていただいて、PLAYERSメンバーが対話をしながら、お子さんの課題や悩みを引き出していくんですね。
最初に「学校にあるものをいっぱい出そう大会」をやって、学校に関する要素を出していった後に、「最悪の学校を作ろう大会」を開くと、非常に盛り上がるんですね。最悪の学校からリフレーミングし、「もしかしたら最悪の学校から最高の学校のヒントがあるかもしれない」というかたちでアイデアを出していきました。
PLAYERSのメンバーが対話しながらどんどん引き出していったものを、グラフィックレコーダーという、対話をリアルタイムで視覚化するメンバーを各グループに入れていて、子どもの発言をどんどん絵にしていく。子どもたちが「いま感じている課題」と「こうなったらいいよね」という理想の姿を一緒に具体化していきました。
本日こども審査員として来てくれていますが、「担任の先生がつまらない」という課題は最高だした。これを言われると先生もつらいですよね…(笑)。
実際のアイデアとしては、担任の先生がポメラニアンを飼っていたようで、ポメラニアン型のロボットを作って採点を手伝わせようと。その代わり、先生に時間ができて子どもたちと遊べるという、先生視点の素晴らしいアイデアになりました。「先生の働き方改革」のヒントにもなると思います。
あとは、図工の授業があって「これを持ってこい」と言われたのを忘れたりで、いつも怒られているというお子さんがいて(笑)。
(会場笑)
ランドセルにモニターがついていて、忘れ物を教えてくれるというようなアイデアですね。さらに、そのモニターで友達とゲームができるというように、本当に子どもならではのアイデアがたくさん出てきました。
(動画が終わる)
武貞:ありがとうございます。では、続いて、綾部さんの紹介をさせていただきます。少しだけ自己紹介をしていただいてもいいですか?
綾部和氏(以下、綾部):ミレニアムキッチンの綾部です。本職はゲームを作る仕事と、なぜかカレー屋をやっています。
最初、業界に入ったころは、グラフィックもできるプログラマとして、小さなチームに参加していたのですが、『ぼくのなつやすみ』という企画を思いついたときに「これは3、4人ではできないな」と気づいて、97年にゲーム制作会社のミレニアムキッチンを立ち上げました。以後、ソニーさんと組んで『ぼくのなつやすみ』シリーズを作っています。
他ではやっていないテーマだし、夏休みが嫌いな人はいないだろうと思って、夏休みのゲームを作り始めたんですけれども、思いのほか好評で、移植も含めるとシリーズで6タイトル出しています。
私自身が50歳近くなってきたときに、いろいろアイデアを出すのは好きだけれど、ゲームだけだとそれがあふれてしまう。ほかにもなにか、場を持ちたいなということで始めたのが、なぜかカレー屋さんです。『火星カレー』というお店を池袋でやっていますので、みなさんよろしくお願いします。
(会場笑)
あと、今回こういうかたちで声をかけていただいたのは、おもしろいモチーフのゲームを作っていることと、「もともとこういうIT業界の人間なのに、なんでカレー屋さんをやっているんだ?」という興味もきっかけになってほかの業界でも声をかけてもらっているんだと思います。
私が担当したのがアイデア出しのアイデアハッカソンですね。アイデア+実装のハッカソンです。
そのへんも、いま話してしまっていいんですか? ちょっと待ったほうがいいですか?
(会場笑)
武貞:大丈夫ですよ。
綾部:いいですか。
綾部:まず、「学校の課題を解決せよ」という今回の趣旨に共鳴していただいた方に集まってもらって、アイデアを出して、そのアイデアの中から「これを作ろう」ということをいろいろと決めていって、実装に対して、またその中でチームを作るということを1日がかりでやりました。
私自身、実はゲーム業界でも、PCやスマホ(の世界)ではなくて、どちらかと言うとコンシューマの家庭用ゲームの世界にいた人間なので、ハッカソン的なものを見に行ったことはあるけれど、実はそんなに参加したことはなかったんですよ。そういう意味でも非常におもしろい経験でした。
例えば、岸田さんがおっしゃっていたように、アイデアはあるけれど、それを実装するテクニカルなものを持っている人との架け橋が足りないということは、私も普段から思っていることだったので、そういう意味でもすごく有意義な会だったと思います。
1人でやっていると足し算の積み重ねにしかならないんだけれど、人と人がつながって、優れたアイデアと優れた技術がつながることでかけ算にもなることを実践できるおもしろい場になっているんじゃないかなと思います。ここまで言っちゃって大丈夫なのかな(笑)。
司会者:はい。どうぞ。
武貞:大丈夫です。ありがとうございます。
(会場拍手)
武貞:では、いくつか質問をさせていただきたいです。そもそも、なぜご協力いただけたのかも含めて、関心が持てたポイントだったり、興味が持てた理由があれば、少しおうかがいしたいなと思います。
タキザワ:では先に。僕はふだんは企業さんの新規事業開発やブランディング、人材育成、組織開発などで、ワークショップを実践しています。
そして、うちの子がいま小3なんですが、子どものほうが発想が柔軟でクリエイティブでなんですよね。大人のほうが既成概念があってむしろ(アイデアが)出ないことが多い。
でも、世の中の子供向けのワークショップは、「コレを作ってみましょう」「絵を描きましょう」など、工作っぽいものがどうしても多いです。そこで、子どもたちの創造力を最大限に引き出した、本気のアイデア出しワークショップをやってみたいなと思っていたんですね。
ちょうど今回のSOCIAL FIGHTER AWARDのテーマが「学校の課題を攻略せよ」ということだったので、一緒にワークショップをやって、自分の子どもにも参加させたいなと思ったのがきっかけです。
先ほど説明したように、PLAYERSのスローガン「一緒になってワクワクし 世の中の問題に立ち向かう」とも合致していたので、PLAYERSとして子どもアイデアソンの開催を提案させてもらったのが経緯ですね。
綾部:私がお手伝いさせていただいた理由は、いま、某ゲームの企画・制作を進めていて、ちょうど手が空いていたということと、大勢の人向けに作っているのに「自分が作ったものは人々をどのくらい幸せにしてるんだろう」ということが、よくわからなかったからですね。クリエイターとしてそこに不満があったんです。
あとは、正直な話、この座組に参加することによって、どういうおもしろい人と知り合うことができるだろうか、それによって自分やそのチームが社会にどう貢献していけるだろうかということを想像したときに、いろいろとワクワクしたのがやはり理由ですね。かなり即答で「やります」と言ったと思います。
武貞:はい。即答してもらった記憶があります。ありがとうございます。
武貞:では、次の質問に移らせていただきます。実際に開催したハッカソンでの企画だったり、アイデアソンでの発見だったり、ご自身の想像していなかった発見や気づきなどがあれば教えていただけたらなと思います。
タキザワ:先ほど子どもアイデアソンについて紹介しましたが、子どもたちの課題にブレがないんですよね。僕ら大人が考えようと思ったら、今の子どもたちの学校生活を想像したり、自分の子どもの頃を思い出しながらやると思うんですが、目の前で子どもたちが学校や先生のことを、ボロクソに言うわけですね(笑)。
でも、そこにはまったくブレがなく、子どもたちの本心です。そこがやはり一番刺激を受けたというか、これを子どもたちと一緒にカタチにしたら、本当にすごいものができそうだと、ワクワクしました。
でも、子どもはカタチにするところはなかなかできないので、そこをエンジニアやデザイナーが協力できると、学校嫌いな子がいなくなるんじゃないかと実感しました。
でも、アイデアソンが終わったら大人たちはみんなグッタリしていましたね(笑)。子ども8人に対して、大人30人ぐらいでワークショップをやったんですが、エネルギーをすべて子どもたちに持っていかれてました(笑)。そういった意味でも、子どもが主役のとてもいい場だったと思います。
綾部:私のほうのハッカソンは毎年やるべきですね。最初の年度で技術的なことも含めて、レベルの高いおもしろい人たちが集まったので、これは毎年やるととんでもないことになるんじゃないかなと思いました。
あと、良くも悪くもすごくまじめな方が集まっている感じがありました。先ほどのお子さんたちのアイデアハッカソンだと、その逸脱がおもしろいと思うんですよ。大人の方はもう少し羽目を外してもいいかなとは思いましたね。
なにかの失敗を回避するためのアプリを考えていた方が何名かいたんですが、個人的には時々失敗してもいいんじゃないかと思っています。
ただ、私のアイデア出しのレクチャーのときにも話したことですが、みなさんのいろいろな作品ができあがってくるのを見てみたら、全体的にユーモアがなかなかすごいんですよ。そこに関しては、ほぼみんなどこかに入っているのではないでしょうか。
ユーモアは人と人との潤滑油にもなるし、多くの場合コストをかけずに人生を豊かにできるものなので、そういう作品が多かったのはすごくおもしろいですね。今回もたぶん、そういうものが選ばれていますし。
みなさん、そういう趣旨を理解してちゃんと集まってくれているのが、すごくうれしかったですね。
岸田:僕はアイデアソンとハッカソン両方に参加させていただいた上で、まずアイデアソンに関しては、SOCIAL FIGHTER AWARDを始めたときに「新しい取り組みをやってみよう」というかたちでスタートしました。
実際に当事者のお子様方のアイデアを聞くと、「自分の発想力ってなんて狭かったんだ」といきなり冒頭から気づかされて、「実現できるんじゃないか」「世の中で本当に使ってもらえるのか」など、いろいろなことを考えすぎてしまうと、本当に困っている人の気持ちに向き合えていないことがあると、すごく気づけました。
ハッカソンに関しましては、先ほどのプレゼンの中でお話しさせていただいたように、私どもはLITALICOという会社で働いておりますけれども、ふだんこういった福祉・教育の輪で出会えないような人に実際参加していただいて、本当に可能性を作れる幅がいいと思いました。
みなさんすごく頼もしい方というか、なんでも実現できそうな方にすごく参加していただいたので、ふだん本当に福祉などの業界も、こういう活動をどんどん繰り返すことによってもっと新しい次の世代の福祉・教育などのアプローチになる可能性をすごく感じられたところもあります。今回ファイナリストに進まれた方もいると思うので、すごくいい場だったと思っております。
武貞:ありがとうございます。
武貞:次の質問に進めます。ハッカソンやアイデアソンなど、SOCIAL FIGHTERの少し先の話や、広いお話として、みんなで福祉・教育を変えていくことをやっていきたいなと考えたときに、いま私たちができることや、これからできることとして、アイデアやいま考えていることがあれば、おうかがいしたいなと思います。
タキザワ:いまPLAYERSでは、子ども向けもそうなんですが、障がい者の方たちと「音のない世界」や「光のない世界」を体験しながら、一緒に新しい価値を作っていくチャレンジをしています。
そういったかたちで、子どもや大人、障がいある・なしに関係なく、いろんな個性を持った人たちが、フラットに未来について対話や創造ができる場をもっと作っていきたい。
特に日本は、障がい者の方と一般の方が触れる機会があまりにも少なすぎるので、まずそういった機会を増やしていくことからやっていきたいです。そして、まじめに議論するだけでなく、一緒にワクワクしながら、ふざけたことを言って楽しみながら、創造力あふれる未来を作っていけるといいなと思っています。
綾部:私は今すぐにアイデアはないんですけれども。たぶん、それぞれの人たち、それぞれの子どもたちが、自分の人生の主人公になれるかたちで、いろいろな行動を起こしたり生きていくことが、ものすごく大事だと思うんですよ。
そのときに、アプリやガジェットかもしれないですが、なにかそういうものをお手伝いすることができるといいかなと思っています。
例えばうちの会社でいままでゲームを作ってきて、若い人が入ってきたときに、人数が増えれば増えるほど、仕組みが整っていないと、それぞれがそれぞれの主人公になれずに、ただ仕事の時間が長くなってしまったり、いろいろと問題が出てきます。
それは気持ちの問題もあるのかもしれないですが、仕組みで解決できるはずなんです。個々のいろいろなチームや社会の問題点を超えて、うまくできる仕組みができるといいとずっと思っています。
岸田:個人的な願いなんですが、ものづくりができる人がすごく増えて、作れる楽しさをみんなに知ってもらうことができると、世の中がすごく変わると思っています。
例えば、プログラミングがもっとすごく簡単になって、学校の先生がその生徒のためになにかを作れるようになったり、課題を持っている一人ひとりがそのままアイデアをカタチにできるような時代に、もっとなっていければいいなと思っていて。
あとはこういった場で発表というか、みなさんが作ったものにアテンションをもらって、そういった人が評価がされる世の中になってくればいいと考えています。
武貞:ありがとうございます。ちょっと時間が限られてきたので、次が最後の質問です。参加いただいたお二人から、SOCIAL FIGHTER AWARDに対して、「こんなことができたらいいな」「こんなふうに展開してほしいな」ということがあれば、教えていただけたらなと思います。
タキザワ:まずは、継続的にやり続ける中で、社会も変わってくると思うので、その中でどんどん進化させながら、柔軟に変化しながらやっていくのがすごく大事だなと思います。ちゃんと継続するだけでもすごく大変だと思うので、やり続けていってほしいですし、そうすれば自然とそこから新しいプロダクトやサービス、人材が出てくると思います。
さっきの子どもアイデアソンのプレゼンの映像でありましたように、子どもたちが本気で考えて、いいと思ったアイデアを伝えようと一生懸命にプレゼンテーションするというのは、とてもいい体験だったと思っています。そういった子どもたちが自信を持て意見やアイデアを発信できる場にもなっていくと、日本も変わっていく予感がしますね。
なので、子どもたちが自分と向き合って、大人たちと協力しながら、社会に発信し続ける場になって欲しいと思いますし、それに向けてこれからも協力していきたいと思っています。
武貞:はい。ありがとうございます。
綾部:今回、例えばアワードが出て、またそれが話題になることが繰り返されて、規模が10倍ぐらいになったり。とにかく、もっとみんなが知っていて、みんなが参加したいと思える存在になることが大切だと思います。
ただ、審査員としていろいろ見せていただくと、実は「こんなにたくさん応募があったんだ?」とびっくりするぐらい集まっているので、すでに規模的にはかなりのものになっていますね。
例えばCode for Japanさんの活動もそうですが、プログラマなどのテクニカルなものを持っている人たちは、通常、自分たちが社会を変える力を持っていることを自覚していないと思うんですね。なので、「いや、そんなことはないよ」と言いたい。
実は一人ひとりがそういう可能性を持っているし、その輪がもっと大きくなっていくと、いい意味でとんでもないことになるという期待はありますね。なので、このアワードがもっと盛り上がって、どんどん有名になっていってほしいです。
武貞:ありがとうございます。最後にもう1個だけやりたいです。今日お越しいただいているみなさんにも、コインがお渡しされていると思います。みなさんにも投票いただきたいんですね。
みなさんにも審査員になっていただきたいので、審査員になるみなさんに対して「こういう視点で見てほしいな」ということを少しだけ短かめにお二人にお願いしてもいいですか?
タキザワ:このあと説明があると思いますが、今日はアイデアソンに参加した子どもたちも子ども審査員として審査をしてもらうんですね。プレゼンターに対して質問もしたりすると思うので、子どもたちからどんな質問がでるかも、楽しみにしてもらいたいと思います。
綾部:短くまとめますと、自分が欲しかったり、誰かに使ってもらいたかったり、具体的に「あっ、これはいいな!」というのが身近なところで想像できるものがいいかなと思います。そういうところも気にしつつ、見ていってください。お願いします。
武貞:自分の周りの子どもが使うイメージができるような?
綾部:はい。
武貞:では、パネルに来ていただいたお2人と岸田に、最後拍手をお願いいたします。ありがとうございました。
(会場拍手)
株式会社LITALICO
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