会社の目的とは社会的価値をつくること

井上高志氏(以下、井上):調子に乗ってうちの執行役員人事本部長の羽田幸広が「働きたい会社のつくりかた」という題名の本を書きまして、おかげさまで増刷で6刷目までいって、たくさん読んでいただいております。これも僕らからすると「利他」なんですね。僕は10年間掛けてこれをずっとやり続けていて、その中には失敗もあるし成功もあるし、気をつけなければいけないポイントというのが何個もわかってきたんです。

これを洗いざらい全部書いて、これを「1,500円でどうぞ」というふうにお話しているので、ご興味がある方はぜひ読んでください。宣伝じゃないですよ(笑)。

また、社長業を始めたのは26歳ですけど、社長っていったい何をやればいいんだってことで10年ぐらいずっと悩んでいたんですね。悩んでいたというか「これでいいのかな?」って。これまでリーダーシップをやったことがない。

僕がリクルートを辞める時はペーペーの社員だったわけですし、もちろん社長も(経験が)ないです。それどころか人生の中で、班長さんも学級委員長もやったことがないので、もう本当に徒手空拳で「これでいいのかな」ってやってきたのですが、経営者の方もいらっしゃると思うのですが、とにかくいろんなことをやらなければいけないじゃないですか。

人、物、金、マーケティング、プロダクト。あれもこれも最終的にこの3つに集約できるんじゃないかなというのをずっといろいろ考えながら、ウィスキーのオンザロックを一人で台所のところで立ちながら飲んでいる時に、天から降ってきたんですね。「あっ、これだ!」みたいな感じで。会社というのは、そして部門とか事業というのは、社会的価値をつくることなんです。目的は。すべてはそれです。

社会的価値 = 人 × 情熱 × 仕組み

それって「社会的に価値はありますか?」って問われ続けることで、この社会的価値を最大化するのは、人と情熱と仕組みの掛け算だと。人というのもいろんなことをやってますけど、例えば因数分解すると採用と育成に分かれますけど、さらにツリー構造でいくと、採用でも中途採用、新卒採用、技術だったり営業だったり。もしくは外国人採用、女性の登用、高齢者の活用。いろんなことに因数分解して、また枝分かれしていきます。

その人たちを妥協のない採用で、最高の仲間を集めるためには、どういう選考プロセスをやったほうがいいのか。どうやって辞退しないようにしたほうがいいのか。それに対しての報酬はどうしたらいいのか。評価はどうしていったほうがいいのか。配置転換はどういうふうにすべきか。これらが全部繋がってくる。

たった3つの掛け算なんですけど、細かくツリー構造にすると、この下に数10個ずつぶら下がってくるので、いつも社長の頭の中は200とか300のタスクとか案件、プロジェクトとかでパンパンになっているわけですよ。

それをまとめていくと、1番大事なのは最高の仲間同士を集めて育てて、その人たちに活躍をしてもらうことだと。その優秀な人たちが入ってきても、やっぱり人間ですからバイオリズムがあって、浮き沈みもあります。これをずっと熱くし続けるためには、情熱を入れ続ける。

エナジャイズし続けるというリーダーが必要なわけです。このためにはビジョンと戦略があって実現への執念があって、それを鼓舞し続ける。「いいぞ、いいぞ、その調子だ、がんばれ、ゴールは近いぞ!」みたいに、ずっとコーチングし続けるということです。最後、これは人をひとり採って、優秀なマネージメント、リーダーがいて、1 x 1だと意味がないので、それを倍化していく仕組み化というのはやっぱり大事で。

人がひとり入ったらこの会社だと、10人力になるとか100人力になるという仕組み化のところが、すごい大事だなというところがあるので、これはちょっと力を入れてやっています。すわれわれのマネージメントの評価指標としては、この3つを見てます。どれだけ良い人を採用し、育てているか。どれだけエナジャイズしているか。どれだけ仕組み化して、どんどん倍化する仕組みをBPRし続けているか、ということを評価の中で見ています。

社会を変えるには、正義だけでなく力も必要

あとは薩摩の教えですね。何かに挑戦して成功した人が1番偉い。2番目は何かに挑戦して失敗した人だ。ここをいつも強調しています。だから、バッターボックスを沢山用意するから、「できるかどうかじゃなくてやってみろ」と言って、事業の立案とか実行というのを任せていきます。4番と5番はいらないからねって言ってますね。あとは正義と力の関係でいくと、『論語と算盤』もそうですけど。

正義がない力は単なる暴力で、これは企業に置き換えても、そういう会社があります。一方で、力なき正義は単なる無力だと。なんかすごく良いことをいっぱい言ったんだけど、業績が低迷してぜんぜん伸びてないよねっていうのは無力ですよね。これは個人も法人もそうだと思いますけど、やっぱり世の中を良いほうに変えるには、正義もあるし力も持っている、そういう存在にならなければいけないので、これを2つとも高い次元で両立するということがまさに経営だと思いますということです。

よく質問を受けるのですが「利他主義って良いですね。でも利他と売上利益というのが相反することが出てきたらどうするんですか?」っていう。相反しないように両方達成するのが経営だと、当然でしょということをお伝えしています。

子育てにも使える部下の教育メソッド

ちょっと時間が迫ってきているので、僕の今やっていることをさらさらと言います。さっき言った世界平和。紛争がない。これは50年後です。その手前でBase of the Pyramid(BOP)の人たちが自立できる社会をつくろう。そのためには、水、食料、住宅、医療、教育、働き、エネルギー、この辺のイノベーションを興していこうと。今、着手中のところでいくと、さきほどちょっと説明したような、グローバルなところに展開していったり、プラットフォーマーになろうとか。それから教育とかリーダー育成とかをやってます。

「Living Anywhere」というのは未来型のキャンピングカーみたいなもので、レベル4とかレベル5の自動運転技術を搭載、再生可能エネルギーで、いろんなことができちゃいます。それから財団をつくってまして、もともと公益志本主義を提唱しているのがこの方で、ダボス会議なんかでも監修メンバーで入っている原 丈人さんという方で、日本よりはもしかしたら世界でのほうが知名度が高いかもしれませんが。

そういった方と「100年後の未来ってどうデザインすべきか」というようなことを一緒にやっています。社会デザインというものの1つが「Living Anywhere」で。もう1個の社会デザインは、財団でいろんな叡智を集めてやってます。それから教育改革、これは21世紀に求められる人間のOS(Operating System)基本OSというのがあって。

これをどうやってインストールしていくのかというもののプログラムをつくりました。企業向け研修のかたちにも仕立て上げました。実はこのメソッドというのは、子育てにばっちり効くように計算してつくっているんですね。なので、会社にいる時には部下を育てるために使えるメソッドになっていて。

それで成果が見え始めて、そのメンバーたちが育ってくると、「実はお父さんお母さん、これは子育てにもまったく同じように効くんですよ」というのが埋め込まれているので、まだちょっとできていないですけど、これの子育てバージョンをつくって、全部無償公開しようというふうに思ってます。みんなが家に帰ってそういう育て方をすると、セルフ・エスティーム。自尊感情、自己肯定感、自己効力感、これが持てる子供が育っていくので、「自分でやってみよう」というふうに前に飛び出せる人たちが増えるといいなと思ってます。

社会をデザインするのに大事なこと

先程ご説明しました規制改革では、新経連の理事をやってまして、IT重説のオンライン化(を進めています)。「不動産の重要事項説明なんかは対面じゃなくてもいいじゃん」ということで、賃貸に関しては突破してつくりました。民泊規制も緩和できました。あとフィランソロピーは、成功した起業家たちが、社会貢献活動に自分の私財をバンバン投じられるように、税制とか公益認定規制というものをちゃんと変えていこうというふうにしてます。

もう、アメリカなどで大きな成功をつかんだ人は次の時代のために浄財寄付して、しかもハンズオンに入っていって、どんどん社会変革をしていくんだということも進めています。あと不動産市場の活性化。あと先程ご紹介いただいたベナン共和国。聞いたこともないかもしれませんが西アフリカです。そこで学校をつくったり、井戸を掘ったり、製品をつくったりというのもやってます。

あと世界平和。広島でやっている「国際平和のための世界経済人会議」これの主催者側のほうの1人としてもやってます。今年1発目でやるのが、第1回目になるのですがピースデイ。今年の9月2日開催で、1日目は「旅祭り」といって、世界一周をしてきた旅好きの若者たちがいっぱい集まります。こっちはラブ&ピースな人たちが集まって、そんなに堅苦しくないです。

音楽のフェスっぽい感じで楽しみながらも、ふと気づくと「やっぱりピースって大事だよな」ってビール飲みながらふと思うみたいな。そういう仕立てにしてますので、よろしければ幕張海浜公園でやってます。ここまでで終了となりますが、この後はもしご質問があれば「Living Anywhere」の参考資料だとか、どんなことをやろうとしているのかとか。

シンギュラリティ(技術的特異点)の時代が到来すると、僕らシンギュラリティ大学ジャパンサミットのスポンサーを今年やっておりますけども、エクスポネンシャル(指数関数的・飛躍的)のテクノロジーの進化というのも、とんでもない感じで。ぜんぶ90度のカーブのようにいろんなものが上がってくるので、もう5年10年すると劇的に社会が変わっていくと。

これを活用して何をやろうかというのも、社会デザインにとって大事だなというふうに思いながら、こういった活動をしています。以上、一旦終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。

(会場拍手)