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カスタマーサクセス大会議 ~参加者全員で議論する「Road to Success」~(全2記事)

2018.10.11

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ユーザー解約防止の役割では終わらない ボランチとして立ち回るカスタマーサクセスのあり方

提供:弁護士ドットコム株式会社

2018年8月22日、SmartHR 本社オフィスにて「カスタマーサクセス大会議 ~参加者全員で議論する「Road to Success」~」が開催されました。これは、企業でカスタマーサクセスに取り組んでいる部門責任者をパネリストに迎え、日頃よりカスタマーサクセスに取り組むお客さんと一緒にこれからのカスタマーサクセスについて考える、全員参加型のイベント。本記事ではパネルディスカッションの前半部分をお送りします。

2018年はカスタマーサクセス元年

高橋歩氏(以下、高橋歩):みなさんこんばんは、今日はよろしくお願いします。

まず最初に、登壇者の方々の自己紹介をさせていただければと思います。1分ぐらいでお話をいただければ。では小川さんからお願いします。

小川泰正氏(以下、小川):みなさん、こんばんは。僕はSansan株式会社でカスタマーサクセスの責任者を務めている小川といいます。もともとは人材系の会社にいまして、Sansanに入って3年ぐらいです。

人材系の業界にいたころはいわゆるフロー型のビジネスだったので、サービスを売ったら売り続けなきゃいけませんでした。Sansanに入った理由の1つには、やっぱりクラウドサービスでサブスクリプションのモデルであるってことがけっこう大きかったんですね。

何が良いかというと、これってストック型のビジネスなんです。ストック型のビジネスってカスタマーサクセスがすごく重要だなってことを改めて思ってて。そういう思いのなかで、いまカスタマーサクセスの仕事をしているところがあります。

もう1つ、高橋歩さんとは以前Schoo(スクー)というサービスでご一緒させていただいた時もちょっとお話したんですけど、『カスタマーサクセス』という書籍が出たことで、2018年が日本においてのカスタマーサクセスの元年になるのかなと思っています。

そういう意味で、カスタマーサクセス元年を後押しすることををみなさんと一緒にやりたいなという思いがあるので、今日はインタラクティブな会話ができると非常にありがたいなと思ってます。

マネージャーではなく「ヘッド」

高橋歩:ありがとうございます。それでは、佐々木さんお願いします。

佐々木翼氏(以下、佐々木):はい。Reproの佐々木と申します。

私は「ヘッドオブカスタマーサクセス」という肩書なんですけど、こないだPulseに行った時に、何人かの方に「カスタマーサクセスマネージャー」だって言ったら、「マネージャーだとあんまりちゃんと営業してくれないよ」って言われまして。それで日本に帰ってきてからすぐに名前を「ヘッドオブカスタマーサクセス」に変えました。すごくフワッとしてるんですけど、そちらのほうがちゃんと営業してくれてうれしいな、っていうところです。

自分の生い立ちみたいなところをお話すると、吉田松陰がすごく好きで、私の生き様は吉田松陰の真似だったりします(笑)。学生の時には某シチューメーカーさんでインターンをしていました。当時、クリームシチュー界で一番売れていた商品があるんですけど、それを売る仕事です。あとはバスのラッピング広告を売ったり、いろんなことをしてきましたね。

その時になかなか成果が出なくて、そこからデータマーケティングに行きたいなと思っていたころに「CRM」っていうキーワードに出会いました。シナジーマーケティングっていうCRMベンダーがあるんですけど、そこでずっとインサイドセールスとか、マーケティング、営業なんかをやってきました。なので、ずっとBtoBのSaaS領域にいます。

そこから自分で会社立ち上げたりしてたんですけど、なかなかうまくいかなくてですね、「これはヤバい」と思って、30歳まであと2年だっていう時に、修行できる会社を探そうっていう時にReproに出会って。Reproではいまカスタマーサクセスを修行中ですね。よろしくお願いします。

高橋歩:ありがとうございます。続いて(高橋)昌臣さん、お願いします。

高橋昌臣氏(以下、高橋昌):はい。高橋と申します(笑)。モデレーターも「高橋さん」なので、私は下の名前で読んでいただければ。昌臣と申します。

私は2005年ぐらいからモバイル系の会社で動画配信サービスの企画や運営をやってきました。2009年にMDパートーナーズっていう会社の立ち上げメンバーとして参画したかたちで、そこではO2Oのビジネスだとか、あとは普通の単純なWeb開発をしながら、開発ディレクターみたいなことをやってました。

SmartHRにカスタマーサクセスとして入ったのは2016年と最近で、カスタマーサクセス歴でいうとまだ2.5年ぐらいのペーペーだと思っております。さきほど今年は「カスタマーサクセス元年」だという話がありましたけども、僕もそんな感じで思っているので、みなさんとより深いコミュニケーションができればいいなと思っています。

クラウドサインの盛り上げがCSチーム設立につながる

高橋歩:ありがとうございます。じゃあ、岩熊さん。

岩熊勇斗氏(以下、岩熊):はい。弁護士ドットコムでクラウドサインというサービスをやってます、岩熊と申します。よろしくお願いします。

僕はもともと新卒で株式会社ディー・エヌ・エーという、モバゲーとかプロ野球の球団経営とか、いろんなことをやってるインターネットの会社に入りました。その時にビジネス開発部のパートナーアライアンスグループというところで、アライアンスとか営業みたいなことをやっていました。

クラウドサインには2016年にジョインしています。当時クラウドサインは、サービス自体が立ち上がった直後のできたてホヤホヤで、「これからどうしていこうかな?」っていう段階でした。スケールしないことをするフェーズだったので、とにかく顧客の声を聞きながら、トラクションチャネルの開拓をしながらフィードバックをプロダクトに反映したり、もちろんCSもやり、アライアンスもやりマーケティングもやりと、何でも屋でしたね。全部一通りやりました。

そうしてプロダクトマーケットフィットして、スケールの足がかりがついたタイミングで、チームごとの役割を明確にしました。正式にはその時にカスタマーサクセスのチームが立ち上がり、今日に至ります。

趣味は『ポケモンGO』なんですけど、まだやってる人はいらっしゃいますか?

(会場挙手なし、高橋歩氏&高橋昌臣氏挙手)

岩熊:え、マジで?

佐々木:(高橋歩氏&高橋昌臣氏を指して)2人。全部で3人か。

岩熊:高橋歩さんとは僕(ゲーム内で)お友達になってるんですけど、昌臣さんとはまだなってないんで、後でよろしくお願いします。

高橋昌:ここの目の前にジムがあるんですよね。

岩熊:そう。「あるな」って思って見てました(笑)。

高橋昌:昼休みに、みんなでちょっとやってました。

どこからがカスタマーサクセスなのか?

高橋歩:ポケモンGOの話はあとでやってもらうとして、最後に私はモデレーターの高橋歩と申します。

キャリアとしては、一貫してデジタルマーケティングやデータ分析の領域でお客さまと対面して伴走させていただく仕事をしています。先月からHiCustomerという会社に入り、カスタマーサクセスを担当しています。

ちなみに、ここでひとつおうかがいしたいなと思ってることがあって、「HiCustomer」というサービスをご存知って方どのくらいいらっしゃいますか?

(会場挙手)

高橋歩:あ、うれしい。良かった、ありがとうございます。これ、ちょっと写真に撮って社長に送りたいぐらいです。

(会場笑)

高橋歩:すごい、全員手を上げてくださってるんじゃないかな。ありがとうございます。僕のミッションはカスタマーサクセスの管理支援ツールのカスタマーサクセスなので、みなさんみたいなカスタマーサクセスマネージャーの方をサクセスさせるために責任は重大で。けっこうドキドキしています。

佐々木:期待値がすごく高いですね(笑)。

高橋歩:はい(笑)。今日はモデレーターとしてがんばります。よろしくお願いします。

「組織」「ミッション」「キャリア」の3つがメインテーマ

高橋歩:さっそく本日のテーマに進んでいこうと思うんですが、みなさんからアンケートでご質問だったり今やってることだったりと、たくさんお書きいただきましてありがとうございました。整理していくなかで、だいたいこの3つぐらいにまとまっていくなってことがわかってきたので、今日は3つのテーマでお話をすすめてみたいと思います。

1つ目が「組織」です。カスタマーサクセスやっていくにあたって、どういう体制で、どういう立ち位置でやっていくのかってことについて議論してみたいなと思っています。

2つ目が「ミッション」。カスタマーサクセスって、解約防止といったところを最初はミッションにして進めていくんですけども、その先にはどんなものがあるんだろうみたいなことについて議論していければと思っています。

そして、3点目が「キャリア」です。カスタマーサクセスって新しい職種ですし、どういう人たちがそこに入ってきて、どう進んでいくのかみたいなところを議論していければと思っています。

……とその前にですね、4名の方々に最近取り組んでるカスタマーサクセス活動をいくつかご紹介いただきたいなと思っていて。じゃあ、岩熊さんからお願いします。実は最近、HiCustomerでもクラウドサイン入れまして。

岩熊:ありがとうございます。

高橋歩:ありがとうございます。実際に顧客として体験してみてすごく感動したんですけど、あれこそ、オンボーディングのプロセスをがんばってつくられてるんじゃないですか。

岩熊:そうなんです。これ、僕も聞いていいですか。「クラウドサイン、知ってるよ」っていう方どれぐらいいらっしゃいますか?

(会場挙手)

岩熊:おお! ありがとうございます。みなさん、ありがとうございます。(会場後方のオフィススペースを指して)後ろのSmartHRの社員のみなさまにも手を上げていただきまして、本当にありがとうございます。SmartHRさんには昔からお世話になっておりまして、導入事例にも出ていただきまして、本当に感謝しています。いつもありがとうございます。

(会場笑)

クラウドサインのオンボーディングプロセス

岩熊:あ、それでクラウドサインですね。最近までもっともがんばってきたのが「オンボーディングのプロセスを、より汎用的なものとして設計し直すということです。この半年ぐらいはあらためて力を入れて取り組んできました。

クラウドサインのサービス特性としまして、とにかく安いんですよ。ACVがすごく低いサービスなので、全てのお客様に対してハイタッチでオンボーディングしていきましょう、みたいなことがどうしてもできないサービスです。

とはいえ、サービスをご利用いただく上で最低限の知識として把握をしてもらわないといけないこととか、業務フローとして準備が必要なことがあるので、そこをどういう体験で「よし、使えるな」というところまで持っていくのかっていうのを、すごく精緻に設計しました。

HiCustomerさんのオンボーディングの一番はじめのところでいうと、キックオフミーティングを、(会場後ろを指して)いまあそこに来ている降井という女性が、ニコニコしてますけれども、やってもらってまして。

高橋歩:ありがとうございました。

降井:ありがとうございました!

(会場笑)

岩熊:にこやかなんです、彼女。あとで懇親会で話しかけてみてください(笑)。

それで、「ベルフェイス」というツールを使ってオンラインで顔合わせさせていただいて、スムーズに利用開始をして「便利だ!」と感じていただけるまでの必要十分な情報を提供するのと、そこまでのスケジュールだけすり合わせるというのをやってます。そこからオンボーディングのプロセスを設計してきたところですね。

いま並行して取り組んでいるのが、そのオンボーディングのプロセスを入ってきてくださった方のセグメントによって精度を上げていきたいなといったところです。受注のチャネルであったり、想定されるクラウドサインを使うボリュームであったりというところで、Time to Valueを計測して、そこに応じて……。

高橋歩:そのあたり、後で話してください(笑)。

岩熊:後で話しますか? わかりました。ありがとうございます。じゃあ、そんな感じですかね(笑)。

高橋歩:後でネタが出てくるんで、楽しみにしておいてください(笑)。

(会場笑)

オンラインとオフラインをどう融合させていくか

高橋歩:次ですね、昌臣さんにお聞きしますね。「チームが大きくなっていくなかで、チームをうまくつくっていくところに苦心された」とうかがいました。

高橋昌:そうですね。私たちも前半ではオンボーディングをすごくがんばって、プログラム化、パッケージング化をしておりました。

まだまだカイゼンするべきところはあるんですけれども、今までオンボーディングがうまくできてなかったお客さんたちをうまく掘り起こしたいなと思ってました。

それをやりながらのオンボーディング対応って、けっこう大変なところではあるんですね。なのでオンボーディング専任(オンボーディングスペシャリスト)を置いて、オンボーディングを満足いくものにしてもらう。それから改善してもらうってところを、いま組織としてやりたいなと思っています。

オンボーディングが終わった後は、CMSに次の更新に対してのすべての責任を担うっていうことをやりたいなと思っていて。オンボーディング前/オンボーディング後みたいなところで組織を分けようかなとがんばっているところです。

高橋歩:専門家をつくっていくなかで、そのキャリアをどうつくっていくのかのお話がのちほどできればと思います。

高橋昌:はい。

高橋歩:さて、小川さんはコミュニティマーケティングに取り組んでるとうかがいましたが?

小川:そうなんですよ。お客さまは7,000社以上です。ひと通りやれることは全部やってきたんですけど、今日来ていただいてますSalesforceの北川さんにこの前教えを請いに行きまして、「コミュニティってどうつくればいいですか?」について聞いて真似させていただいてます笑。

(会場笑)

小川:今日来てくれている田中くんが火付け役となっていまして。結局コミュニティの火付け役が大事でして。その最初の焚き火をどうつくるかについて試行錯誤してます。

いまはユーザーのプロファイリングというか、使っていただいてる方にしっかりインタビューをかけています。そこからどうやってユーザ会をつくりオンラインのコミュニティに持っていくかみたいなところが、まさにいまのテーマだなって思ってます。テンションあがりますよね、立上げって。

高橋歩:オンラインとオフラインをどう融合していくか、そこからよりお客さんに使ってもらうにはどうするかっていうところですね。

小川:そうですね。

顧客情報の見える化

高橋歩:ありがとうございます。あとは佐々木さん、最近取り組んでることって、どんなことがありますか?

佐々木:すごくオープンクエスチョンですね(笑)。

高橋歩:はい(笑)。

佐々木:もともとReproはすごくハイタッチでやってきました。最初からやろうとしてたことは、もう全件ハイタッチでいくっていうことを意識してまして。最近はけっこうグローバルなクライアントが増えてきて、こないだはプノンペンにハイタッチに行きました。

(会場笑)

それで、カテゴリとか海外とか、ローカルとか含めてオンボーディングの仕方とかも違うので、そのテンプレ化をグイグイと押し進めているところですね。

高橋歩:そうすると、かなり大きな組織をつくっていったりしなきゃいけないんじゃないですか?

佐々木:そうですね。いまは顧客の情報の見える化を意識してやっています。海外にいるメンバーを含めて、データをインプットするっていう癖付けをしないといけないなと思ってます。我々はマスタをSalesforceで管理してるんですけど、Salesforceにプロダクトのアクティビティのデータとか訪問した内容とかを入力して見える化するってことに最近は取り組んでがんばってます。

高橋歩:なるほど。ありがとうございます。

クラウドサインが掲げる「Customer Centered Design」

高橋歩:このように4社4様のさまざまな取り組みをしているわけですけども、ここからは「組織」の話に移っていけたらなと思います。

今日お越しいただいてるほとんどの方がカスタマーサクセスに携わっていて、日々社内でその仕事をされてらっしゃると思います。なので、そもそもカスタマーサクセスっていう仕事はあるし、組織もありますと。

じゃあ、そういうなかで「全社としてどう取り組んでいくのか?」とか、「カスタマーサクセスが、よりお客さまにとって大切に思ってもらえるためにはどうしていけばいいのか?」といったところについてのお話を進めていければなと思います。

岩熊さんのところでは、けっこう早くからカスタマーサクセスがあったそうですね?

岩熊:そうですね。明確にチーム化はしてませんでしたが、取り組みとしては初期の初期からありました。

高橋歩:トップの人がそれをつくっていこうって思ったのってなにがきっかけだったんですか?

岩熊:トップがつくろうとしたのはもちろんありますが、クラウドサインの立ち上げメンバーが心から顧客至上主義の文化をつくってきたというのがありますね。リリースの段階では、エンジニア、デザイナー、あとビジネスサイドを含めると、4名、5名ぐらいでした。

そのなかに、いま事業部長をやっている橘という人間がおりまして、その橘を中心として「お客さん中心の組織であろう」という文化を幸いにも初期から根付かせることができました。

これは一緒に働いている仲間に恵まれているなと思うことでもあるんですが、エンジニアもデザイナーも、本当にお客さんの声を聞こうとするんですよね。これも本当にただのラッキーなんですけれども、そういうカルチャーがあったので、お客さんを大事にする文化が醸成されてきたところがあります。

昨年ぐらいから組織が急拡大して、去年1年間で人数が3倍とか4倍とかになりました。弁護士ドットコムという会社としてのミッション・ビジョン・バリューはもちろんあるんですけれども、クラウドサインはクラウドサインで独立したミッション・ビジョン・バリューをそれぞれ策定しています。

そこで真っ先に挙がったものの1つに「Customer Centered Design(CCD)」というフレーズがあります。組織として事業部長がいてみたいなのはあるんですけれども、事業部長がえらいんじゃなくて、「その組織の中心はカスタマーだよね、お客さんだよね」っていうのを改めて明文化したんですね。それが頻繁に言葉として出てくるような文化づくりっていうのを進めてきましたし、いまもやってるっていう感じですね。

高橋歩:そういった文化をつくってこれた背景というか、ポイントみたいなことってあったりするんですか?

岩熊:そうですね。1つは初期からそうだったっていう、まあラッキーでもあったんですけれども。採用の段階でこれは候補者様に伝えるようにはしていて、その想いに共感してくれる人を採用するようにしたのはあるかなと思っています。

あと、次の機能は何にするかとか次の施策は何を打つかっていう時に、自分たちに都合の良いことであったりやりやすいことであったり、自分たちの社内的な評価につながることをやりたくなってしまう瞬間はもちろんあるんですね。そんな時に、誰かしらがうまくブレーキをかけられるというか、「でも、いまお客さんが求めてるのはCCDだっていうのに基づいて考えたら……」っていうフレーズが誰からも出てくるようにはしています。

カスタマーサクセスはSansanの起点

高橋歩:そういった文化を早くからつくる、明文化されているっていうところで、より醸成されていくみたいなところがあったと思うんですけど、小川さんのところはどうですか?

小川:当社がカスタマーサクセスを定義したのは、実は2012年からなんですね。外資系のSalesforceさんとかは別として、日本国内ではたぶん一番早いじゃないかと思います。

先に紹介のあった『カスタマーサクセス』という本に書いてあったんですけど、Salesforceさんは2005年からカスタマーサクセスを定義されてるんですよね。我々も遅れているんですが、まあ追いつけ追い越せじゃないですが、そういう中でやってきています。

その前は何だったかっていうと、「サービス部」っていう名称だったんですよ。僕は入社して3年なんですけど、当社のいわゆる経営陣たち、いわゆる創業メンバーたちが非常にいいなと思うのは、その当時からカスタマーサクセスにこだわってたっていうところが大きいなと思っています。

何にこだわってたかですが、Sansanのサービスって名刺を登録していただかないとサービスが展開しないんですね。「名刺を入力する」っていうところが大事なので、当時の経営陣たちは契約をいただくとお客さま先に訪問に行って、「ファイリングされてる名刺を渡してください」って言って、そこで名刺を取り込むっていうことをやってたんですね。

高橋歩:やってもらったことがあります。

小川:あ、そうですか。以前の会社で?

高橋歩:はい。

小川:覚えてくれていてありがとうございます、まさにそのカスタマーサクセスが我々の起点なんですよね。

何が言いたいかというと、結局契約をいただくというのは、まあマーケティングがあって、いわゆる我々のサービスを展開します。セールスがあって、その後にカスタマーサクセスがあってプロダクトを磨いて……みたいなところでいうと、当社では「7人8脚」って言葉を使ってるんです。組織としてフラットであるっていうことがけっこう重要かなと思っていて。

セールスがえらいとか、開発がえらいとかって、どうしても組織ってなりがちだと思うんですけど、そこはフラットなんだというところがポイントです。LTVも大事だし、受注することも大事だし、プロダクトを磨くことも大事なんですが、それはみんな一緒であるっていうスタンスが創業当時からあったのかなっていうのは、すごく感じていますね。

いろんな会社さんとお話ししていると、そこで悩んでる会社さんがけっこう多いなと思っていて。会社としてカスタマーサクセスっていうものをどこにポジショニングして、どういう役割構成をするのかに対するフラットな関係性みたいなものは大事だなと個人的にはすごく思ってますね。

カスタマーサクセスがボランチである所以

高橋歩:小川さんは、よくカスタマーサクセスをボランチに例えてお話されてますけども、社内ではどうやってそういった理論を組み立ててるんですか? 

小川:はい、僕は「カスタマーサクセスはボランチだ」っていう定義をしてまして。ボランチっていうのは何かっていうと、ハンドルっていう意味です。守備的ミットフィルダーみたいな位置付けなんですけど、決して攻める立場ではないということですね。

サッカーに例えると、点を決められなければ勝てる、もしくは引き分けられるじゃないですか。でも、点を決められたら負けるんですよ。じゃあその重要なポジションがどこかっていうと、僕はカスタマーサクセスだと思ってます。

解約が起きなければ、みんなハッピーなんです。お客さんもハッピーだし、自分たちもハッピーだし、そこで使っていただくユーザーもハッピーになるみたいなところがあると思うんですよ。

そういう意味でいうと、ボランチの役割っていうのは、絶対に解約を起こさないことだと思っていて。そういう意味では対顧客、セールス、プロダクトでもきちんとハンドルを握って、そこに対しての責任を全部負うってことかなと思うんですね。

どの部署からも何を言われても、お客さんからどういうこと言われても絶対迎合しない、といったスタンスが築けると思っていて。いち早くその「ボランチ」っていう表現を使って、社内的にはもちろん、人材エージェントを含めたいろんなパートナー会社も含め、発信してますね。

高橋歩:社外でお話をすることで、それが社内に戻ってきたりもするんでしょうか?

小川:そうなんですよ。いまインタビューの記事とかにもいろいろ出させていただいて、「ボランチ」っていう表現をあえて使ってるんです。そうすると結果的に、僕が直接社内のメンバーに話さなくても、その記事を見たメンバーが、「あ、カスタマーサクセスってボランチなんだ」みたいになってくるんですね。それは好循環です。

高橋歩:そうなんですね。なので、この会でもぜひ使っていただいて。

小川:ぜひ「カスタマーサクセスはボランチです」って、ログミーさんにちょっと記事を書いていただければ(笑)。

(会場笑)

高橋歩:ログミーさんにもウンウン頷いていただきましたね(笑)。

小川:(笑)。

全プロダクトの開発チケットの内、2割を担う

高橋歩:「7人8脚」っていう言葉出てきましたけど、佐々木さんのところだと「カスタマーサクセスを実現していくために、プロダクトチームを重視してる」みたいな話がありましたね。

佐々木:カスタマーサクセスで一番意識してるのは、プロダクトチームとの連携です。背景としてなんですが、Reproは今年で5年目の会社なんですけど、これまでに死にかけたことが3回ぐらいありまして。

高橋歩:多いですね(笑)。

佐々木:(笑)。カスタマーサクセスをつくる時にきっかけになったのが、一番おっきなクライアントがチャーンしたっていう。それが売上でなくなりました。……30パーセントぐらいだったかな。

高橋歩:大きいですね。

佐々木:これは死ぬと。「カスタマーサクセスをやらないと死ぬ」っていうのが、一気に全社で共通の理解になり、代表の平田が旗を振って「やるぞ」といって始まったのが、Reproのカスタマーサクセスなんです。

Reproはバリューの起点がプロダクトなんですよね。なので、プロダクトを良くしていかないと出せる価値も出せなくなって。働く側も労働集約的になっていったりするので、プロダクトの進化がすごく大事になってくるんですね。やっぱりお客さまからのプロダクトへのフィードバックっていうのが、すごい大事になってくると思ってまして。それをすごく意識してます。

具体的にいうと、プロダクトマネージャーと握っているのは、全部のプロダクトの開発チケットの約2割を、僕らCSが権限を持って決めるっていうのがあります。

2割っていうのが大きいのか少ないのかわからないんですけれども、プロダクトアウトしすぎてもダメだし、クライアントに重きを置きすぎてもダメ。そういった絶妙なバランスでプロダクトマネージャーと日々会話し、お客さまと会話しながらつくっていっていますね。

なので、プロダクトチームとの連携が、ReproのCSのなかで一番重要視しているポイントになります。

高橋歩:ハイタッチのカスタマーサクセス、お客さまと対面する機会が多いカスタマーサクセスの場合って、どうしてもそういうことが起きたときに「お客さまとの関係性をつくらなきゃ」とか、お客さまのところにたくさん足繁く通うみたいなオペレーションで保とうとしたり、営業的活動で守ろうとしたりしがちじゃないですか。そうはならなかったんですか?

佐々木:Reproの……何て言うんでしょうね、価値観として「結果を出さないと意味がない」ということがあって。「なんかワークしてるね、このプロダクト」っていうのがイヤなんですよ。結果が出ないと意味がないので。

例えばアプリでプッシュ通知が出るという機能があるんですが、「プッシュ打てたね、ワーイ」って継続することはあるんですけど、実はすごくイヤで。お客さまの事業のKPIが1パーセントでも2パーセントでも上がっている状態っていうのをどれだけつくれるかっていうのを意識しているので、CSが甘んじるみたいな状況は会社として否定してます。

プロダクトが良くなければサクセスできない

高橋歩:プロダクトで解決していこうっていう文化が、Reproには最初からあったと?

佐々木:そうですね。じゃないと勝てない事業っていうのもあった。

高橋歩:といいますのは?

佐々木:簡単に言うとアプリのマーケティングツールなので、グローバルだと競合が多いんですね。マーケティングオートメーションの領域ってたくさんのサプライヤーがいると思うんですけど、結果出してROIを示さないと継続はしないので。そういった市場背景もあるとは思いますね。

高橋歩:なるほど、なるほど。メンバーの方々は、エンジニアの比率が高いんですか?

佐々木:CSですかね? いや、そんなことないです。1人もいないです。

高橋歩:そうすると、CS的動きをしていくなかで、よりプロダクトに移っていこうと?

佐々木:そうですね。私がもともとプロダクトマネージャーっていうのもありますし、BtoBのSaaSなので、プロダクト命だと思っていて。プロダクトからのチームをつくりたいと思ってやってきたんですけどね。

高橋歩:ありがとうございます。いま話があったとおり、いくらがんばってカスタマーサクセスをしようとしても、プロダクトが良いものじゃないとカスタマーサクセスできないっていう前提があります。いかにプロダクトを良くするためにカスタマーサクセスががんばれるか、みたいなところが1つあるんですね。

佐々木:ちょっと付け足してもいいですか? BtoBのプロセスってそんなに難しくないので、私たちの考えでは前のプロセスのチームが後ろのプロセスのチームのKPIを持つことがすごく重要だと思っています。例えば、PRの持つKPIがマーケティングのKPIだったり、マーケティングチームのKPIがセールスのKPIだったり、セールスはCSのKPIを、我々はプロダクトのKPIを負う、って思ってるので。

高橋歩:なるほど。

佐々木:そこのバランスがすごく重要かなと考えている結果でもありますね。

高橋歩:それが結果的に、全社が共同することによって、同じ視点でモノが語れるみたいなことですね。

佐々木:そうです、そうです。

高橋歩:なるほど、ありがとうございます。……あ、どうぞ。

岩熊:めちゃくちゃ勉強になるな、っていう。

高橋昌:なりますね(笑)。

岩熊:いや、感想です(笑)。

高橋歩:はい、ありがとうございます(笑)。

営業チームとのパイプラインの重要さ

高橋歩:プロダクトとの連携っていう観点がありましたけど、昌臣さんのところは、むしろ営業との連携みたいなところもお考えになられてるんですか?

高橋昌:そうですね。最近カスタマーサクセスをしていて、「うまくフィットしてないな」みたいなケースがやっぱり出てくるわけですよ。「何が原因かな?」と、いろいろ考えてたんですけども、営業の時点である程度ユーザーが求めるものとか、ユーザーが期待するものっていうのがうまくすり合わせられていないと結果難しいんじゃないか、という仮説がありそうだと解りました。

まずは、カスタマーサクセスチームから「こういうお客さんがサクセスしやすいよ」「こういうお客さんに売ると、価値を感じてくれやすいよ」の様な内容をディスカッションして、「こういうお客さんが、うちのサービスを使ってサクセスしてくれる人たち」っていうのを営業とすり合わせる、といことをやりました。

営業チームも、どうやってお客さんの期待をどうやって上げていけばいいかみたいな課題がありました。、売上にもつながってくるので、営業チームからカスタマーサクセスチームへのパイプラインつくり、営業チームを巻き込んだカスタマーサクセスを試行錯誤しているところではあります。

カスタマーサクセスはいろんな人を巻き込んで実現していく

高橋歩:いまのって2つあるかな、と思ったんですけど。いわゆる正しいお客さまであるみたいなセグメントの話と、あとストーリーとかシナリオの話がある感じがしたんですけど、両方ともされてる感じですか?

高橋昌:どっちかというと前者のほうがいまは強いかなとは、感じてますね。ストーリーもちゃんとやんなきゃいけないな、とは思いますけども。

高橋歩:営業さんから「セグメント小さくなっちゃうと売上達成できないかも」って言われません?

高橋昌:あ、でも、そこはうまく(笑)。

(会場笑)

高橋昌:一応「こういうお客さんのほうがサクセスしやすいですよ」「こういうお客さんたちのほうがフィットしているますよ」っていうのは伝えてるんですね。なので、こういう人たちであればうまくハマりますっていう、指標になるだけかなと思ってて。

そこからもちろん大きく外れるとしても、私たちがサポートしやすい。「このお客さんなら、僕らがサポートしてなんとかがんばれる」みたいなことになるので、前よりはコミュニケーションがしやすくなってるのかなとは思いますね。

高橋歩:なるほど。

高橋昌:軸がわかる、っていうところですね。

高橋歩:お客さまが成功していくという、まあカスタマージャーニーみたいなものがあって、そこに乗っかりやすいお客さまを定義することによって、そこにたくさんの人たちを乗せていくといったかたちですね。

高橋昌:そうですね。

高橋歩:ありがとうございます。それぞれの会社ごとに違うことやってるけれども、共通して言えることはカスタマーサクセスをしていく時に、カスタマーサクセスのメンバーだけでやってるわけではない、っていうところかなと思いますね。

トップの人がそこに思いとか意識があるっていうことだけではなくて、各セクションのメンバーの人たちがそれぞれカスタマーサクセスを目指していくという。もしそうじゃない体制になっていた時には、しっかりそれをボランチとして支えていくみたいなところも、しっかりやっていくことが大事なのかなと思います。

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